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2007.08/27(Mon)

守り手 8話 


【More・・・】


「ん…………」

 冷えてきた風に身震い一つして、僕は部屋の中の時計を見た。
 あれから一時間経ったみたいだ。いつもならとっくになのはが戻ってきてる時間なのに部屋には誰もいない。
 まだ下でみんなと話してるんだろうか。念話で連絡をとることもできるけど僕はあえてそうはしなかった。

(せっかくの家族団欒なんだ、邪魔しちゃいけない)

 夕食のときは僕がいたせいでいろいろと話の方向がずれてたんだし、僕がいなくなった今の時間が多分本来のなのはの家族の団欒なんだから。
 今日はなのはに迷惑かけっぱなしだったからせめて今だけくらいはそっとしてあげたい。

「でも早くは帰ってきてほしい、かな……」

 と、部屋に光が差し込んだ。入ってきた誰かはすぐに部屋の明かりをつけの僕のいる所へ早足でやってきた。

「みんなと話してたら少し遅くなっちゃった。今、開けるから」

 申し訳なさそうになのはがガラス戸を開ける。待ち焦がれたように僕はすばやく部屋の中へ入るとすぐに定位置へと駆け上った。
 やっぱり結局ここが一番落ち着く。ふかふかとまではいえないベッドに僕は身を丸めた。なのはも僕と向かい合うようにベッドに腰掛ける。

「今日はなんだか大変なことになっちゃったね」
「そうだね。でも元は全部僕のせいだし、ほんとにごめんなのは」

 首を落としなのはに頭を下げる。
 再び顔を上げたときなぜかなのはの顔は申し訳なさそうに俯いていた。やっぱりすごい迷惑かけてしまったんだ。
 自分の今日を振り返りながら改めて僕は己の軽率さにやるせなくなる。

「……ううん、ほんとに謝るのはわたしのほう」
「え?」

 意外な言葉をなのはが口にした。
 そうは言われてもなのはが謝ることなんて僕には全く思い当たらない。少なくとも今日に限っては僕が今の今まで迷惑をかけたんだから謝るのはこっちの方のはずだ。
 状況が飲み込めない僕になのはは続ける。

「ほんとはね、気づいてたの。でも気づかない振りしてた」

 一瞬何を言っているのか理解できなかった。
 つまり、なのはは僕が元の姿でいたことを承知の上で家に帰ってきたってことだろうか。話から考えればそういうことになる。
 確かにいくらなんでもなのはが気づかないわけがないじゃないか。
 じゃあなんでなのはは……。

「お礼、したかったんだ。ユーノくんがいろいろ教えてくれたから今日まで来れたんだし、それに魔法先生にもなってもらって。してもらってばかりだからわたしもなにかしてあげたいなって思って」
「なのは……」
「それで何がいいのかなって考えたんだけど、ユーノくんが喜びそうなのってよく分からなくて……」

 所在なさげに手を組み合わせながら照れ気味に話すなのは。多分僕に喜んでもらおうといろいろと考えていたに違いない。

「でもおいしいものなら万国共通かなって思って今日のこと考えたの。ユーノくんいつもフェレットの姿でご飯食べてたから、もしかしたらいつもおなか一杯食べていないのかもって」
「そうだったんだ」
「うん……」

 頬はほのかに赤くなのはは嬉しそうに頷いた。確かに料理でのもてなしならミッドチルダの人たちだって喜ぶことだ。
 なのはらしい考え方だと思った。

「こういうのは驚かせたほうが喜びも大きくなるかなって思ってどうやろうかなって考えてたんだけど、ちょうどよくユーノくんが元の姿でいてくれたから今日しかないって」
「それで……」
「最初はユーノくんも気づくかなって思ってたんだけど……あっ、気づいたら気づいたで正直に言おうと思ってたんだけどね」

 区切りようになのはが一息ついた。

「でもイメージ通りにならなくて大変なことになっちゃった。まさかユーノくんがあんなこと言うなんて思ってなかったから」

 結構イメージトレーニングはしてたんだけどね、と照れ隠しになのはが舌を出した。

「あれは、そのごめん。動転しちゃって何がなんだかわからなくって、つい」
「もう、ほんとにびっくりしたんだから。でもあのときのユーノくん可笑しかった」
「そういうなのはだって」

 なのはが無邪気に笑い、釣られて僕も笑った。桃子さんの前で慌てふためいていた僕たちは今思い返してもほんとに可笑しかった。
 なのはがあんな風に慌てる所なんてそうそうお目にかかれないしね。

「それでやっぱり迷惑だった?」
「そんなことないよ。おいしかったし、久しぶりにお腹一杯食べた気がする」
「そっか……よかった」

 安心したように微かな笑みを浮かべてなのははベッドに寝転がる。
 そのまま二、三度寝返りを打ち僕と目が合った。

「でもやっぱりこうして見るとユーノくんってフェレットのほうが似合うようね」
「へっ?」
「今日も気づかないまま家に帰るし。やっぱりユーノくん……ほんとはフェレットだったりして?」

 僕を見つめ悪戯っぽく笑う。

「それだけは全力で否定させて、なのは」

 思わず肩が落ちた。
 一緒に首まで垂れた。

「じょ、冗談だよ。ユーノくんもわたしと同じ人間だよね。に、人間の男の子で……」

 僕の反応があまりに意外だったのかなのはが慌てて弁解している。冗談交じりに僕が言い返してくれるとでも思ったのだろう。

 でもそんな言い方はないんじゃないかな……。

 クロノはともかくなのはもそう思ってるんだね。そりゃこの姿の方が圧倒的に多いししょうがないけど。
 なんか心に楔を思いっきり打ち込まれたような気分になった。

「そうだ! 明日の魔法の練習のことなんだけど……」
「……うん」
「休ませてもらってもいいかな」

 なのはにしては珍しい発言だった。明日何か大切な用事でもあるだろうか。
 カレンダーにはその日は丸で囲ってもいなければ何か書いてあるということもない。しいて言うなら日曜日、この世界での休日に当たる日だということ。

「そうだね。休みの日はしっかり休まないとね」
「ううん、そういうのじゃないの。ユーノくんに町を案内してあげたいんだ」

 体を起こしながら、なのはは唐突にその言葉を呟いた。

「ジュエルシード探しばかりで、ユーノくんこの町のことよく知らないでしょ?」
「えと、一応町の様子とかはジュエルシードを探しているときに覚えたけど……。そう言われると具体的には何があるのかよく知らないかも」
「それにゆっくりユーノくんといろんなお話もしたいし、せっかく別の世界に来たんだから文化の違いとかいろんなこと知ってもらいたいの」

 言われてみれば確かに、僕はジュエルシードを探すことだけを考えていて全然この世界のことを知らなかった。事件が解決した後は多少は散歩程度に家の周りを動いたくらいだし、なによりなのはに魔法を教えることばかり考えていてそういうことは全然頭になかった。

 ベッドに腰掛けてなのははさらに続ける。

「日曜日だし、わたしの予定もないし。だから、いいかな?」
「うん、なのはがいいなら僕は――」

 だけどなのはに届いたのは僕の言葉ではなく突然鳴り出した携帯電話の着信音だった。
すぐになのはがそれを取り誰からか確認する。

「あっ!」

 なのはの顔が輝いた。それはある所から来たときにしか見ることのできないなのはの喜びの顔。
間違いない、きっと相手は時空管理局だ。
 僕がそんなことを考えている内になのはは既に電話を耳に当て話し始めている。

「はい、なのはです」

 でもこんな時間に一体誰からだろうか。いつもならこっちの時間に合わせて彼らも電話をしてくるのにどうもおかしい。もしかしたらフェイトに何かあったのだろうか。
 そんな心配をよそになのはは電話の向こうの相手と嬉しそうにお喋りをしている。なのはの表情からきっと悪いことではないことだけは窺える。考えすぎだったみたいだ。

「えっ? あっはい、すぐに代わります。ユーノくんに用があるんだって」
「僕に?」

 なのはから電話を受け取る。当然のことながらこの姿では電話は持つだけでも苦労する。なにせ自分の体とほぼ同じ大きさだし、よく考えたらこれ耳と口が届かないじゃないか。
 うかつに変身を解くわけにも行かないし僕は電話を机に寝かせて話をすることにした。

「もしもし、代わりました」
『ああ、僕だ。そっちは相変わらずか』

(………………クロノかよ)

 てっきりリンディさん辺りかと思っていた僕は聞こえてきた声に酷く落胆した。なんでよりにもよってこいつが電話をしてくるんだよ。

「なんだよ、なにか用なのクロノ」
『用があるから電話したんだ、悪いか』
「別に、それで今日は何の用?」

 相変わらずつっけんどんな態度のクロノに内心ムカムカしながら僕は電話を続ける。また今日も皮肉や嫌味でも言うつもりなんだろうか。
 話す所から聞く所へ体を捻りクロノの言葉を待つ。結構これ疲れるから、さっさと言うだけ言ってもらえると助かるんだけどな。

 むしろこいつのために無駄な体力は使いたくないのが本音だけど。

『実はな――』

 そしてこの電話が僕やなのは、さらにはミッドチルダからこの世界までを巻き込む事件の始まりだということを僕は思いもしなかった。
 僕となのは、二人の関係を大きく変え、僕のこれからも変えていく大事件。

 その始まりだった。
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