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2007.08/27(Mon)

守り手 7話 


【More・・・】

 食事も終わり僕は居間でみんなといろいろな話をした。
 家族のこと学校のこと、好きな食べ物や嫌いなもの、そしてなのはと出会った時のこと。
 なのはが念話でフォローしてくれたからなんとかなったけど、結局嘘で塗り固めなければ話すことが出来なかったのは正直辛い。
 でもそうまでしても団欒の中に身を置きたがる僕がいるのも事実で。

「じゃあそろそろ帰りますね」
「もうそんな時間か」
「少し話しすぎちゃったかな。大丈夫? 送ってあげようか」
「気にしないでください、大丈夫です」

 僕はそれだけ言ってみんなに軽く頭を下げる。

「今日はそのいろいろとお世話になってありがとうございます」
「そんないいのよ、かしこまらなくて。なんならご両親が帰ってくるまでは夕食うちで一緒に食べていかない?」
「そんな……いいですよ」
「別にうちは構わないぞ。食事は賑やかなほどいいからな。それに桃子の手料理が食えるんだからいいことづくめだろ」

 優しげな笑みを浮かべる桃子さんと士郎さん。そんな風に言われると本当に甘えてしまいそうで僕は思わず顔を逸らしてしまった。

「いいんです、ほんとに。それじゃごちそうさまでした」
「あっ、ユーノくん」

 もう一度頭を下げ僕は居間を出る。後ろでなのはに呼ばれたけど振り返ることなく玄関を抜け家を飛び出した。もうこれ以上この人たちに嘘はつきたくないから。

 近くの茂みに身を潜めフェレットの姿へ変身し、そのまま雨樋伝いになのはの部屋へ駆け上がる。部屋の明かりはついてない。もちろんベランダの窓も開いていない。

「……なのはが来るまで待つか」

 ガラスにもたれてほっと一息。夜風が体を撫で心地よさが体を包む。
 何をするでもなく、自然とさっきの食卓の風景を思い返した。
 みんな気さくでいい人ばかり。あんな家族に囲まれて毎日を過ごせるなのははすごく幸せなんだろう。僕も部族の人たちと日々遺跡を求めて各地を放浪していて楽しかったから。

 それでもやっぱり考えてしまう。無邪気に笑い合う桃子さんと士郎さん。あの二人のように僕の両親は笑い合える仲だったのだろうか、と。
 スクライア族を纏める長老から両親のことは今でも聞いていない。僕には部族のみんながいるし、部族のみんなが僕の親で兄弟であり家族だったから本当の親のことなんて知らなくてもいいと思ったからだ。
 けど、本当の所は両親に愛されていなかったのではないか、捨てられたのかもしれないとか、そんな不安から逃げることでもあった。
 幸せの形は人それぞれだけど、やっぱり僕は血の繋がった家族とあんな風に笑い合える毎日を送れるなのはが羨ましい。
 頭の中でいろんな考えが浮かんでは消え、また浮かんでは消えを繰り返して。ほんとに、一人になるといろんなことを考えてしまう。

「僕って……何者なんだろうな」

 今の僕はユーノ・スクライアだ。それは絶対だと思っているけど確固たる証があるわけでもない。
 結局は自分がそう信じている事実だけが証人なのだ。
 この名前だって誰が付けてくれたのか実際のところはわからない。部族の人がつけてくれたのか、僕の本当の両親がつけたのか。
 自分という存在の来歴に対して限りなく無知なのはやっぱり情けないことなのかな……?
 
 仮に僕の本当の名前を知ったらその時僕はどうするだろうか。今までの自分のままで生き続けることを選ぶのか……それとも本当の自分で生き直すことを選ぶのか。
 
「無理だよな……選ぶなんて」

 それすら僕には自分一人で決められないのだ。
 今までの僕を捨ててやり直すことは僕を知っている人との絆を断ち切るようなもの。だからといって新しい僕を捨ててしまうのは本当の僕を消してしまうことに繋がっていく。
 本当の自分がどちらか……今の自分の世界が嫌なことで溢れているならすぐにでも新天地を選ぶのだろうけど、生憎僕の世界の住み心地は悪くない。むしろ気に入っている。
 
 でも僕の本当の世界にさっきみたいな暖かな団欒があったら心が動いてしまうかもしれない。
 大切な人たちと強くて固い絆で結ばれることは僕には何にも代えがたいことなんだ。今の世界じゃそんな絆を結べる人なんていないから。
 もしも一人でも僕と絆を結んでくれる人がいるなら、これから先どんな本当が目の前を阻んでも僕は今を本当にして乗り越えていける。
 
 僕の今を本当の自分にしてくれる人。僕の名前を呼んで、微笑んで、手を取ってどこまでも連れてってくれる人。

「馬鹿だな……やっぱり僕はなのはが好きなんだ」

 頭の中で描かれる情景はいつだってなのはがいる。
 僕の本当を連れてきてくれる人は世界でただ一人――高町なのはという人だけなんだ。
 だからこそ僕はその人を守り抜きたいと思っているのかもしれない。今の僕を無くさないための、今の僕を一番にするための絆。

「今更こんなこと自覚してもな……格好つけてるだけだよ」

 こんな難しいことを考える必要なんて皆無だ。
 何もかも全部ひっくるめて簡単に説明すれば一言でカタがついてしまう。

 僕はなのはが好きで自分だけのものにしたい。 

 それだけだ。

「早くなのは来ないかなぁ……」

 夜空の下、フェレットが空想に耽るなんて絵にもならないんだから。
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