06月≪ 2017年03月 ≫07月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031
--.--/--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【編集】 |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2007.08/27(Mon)

守り手 3話 


【More・・・】


「はぁ……はぁ…………」

 結界を解除する。
 魔力は霧散し周囲の時が元の流れへと修復されていく。
 時間にして十数秒、元の時間の流れではこれくらいだろうか。元から封時結界は周囲と時間信号ずらして空間を隔離する魔法だ。そもそも誰かが傍から見てても知覚は出来ないはず。
 どの道この時間帯の公園には人通りはほとんどない。おかげで周りを気にすることなく魔法の修練ができる。

「……休もう」

 なんだかいつも以上に今日は疲れた。かなりの魔力を消費した上に激しく動いたせいかもしれない。
 取りあえず芝生に腰を下ろす。大きく息を吸いながら乱れた呼吸を整え、僕はゆっくりと大の字になった。
 結構汗かいちゃったな。
 空にゆったり流れる雲をぼんやりと見つめそんなことを考えた。

「まだお昼にもなってないんだな」

 時折吹く潮風に身を任せながらこれからどうしようかと考えてみる。
 けど疲労感のせいかあんまりしっかりと物事が考えられない。意識もなんだかあやふやになってきた。

 少し、調子に乗ったかな。
 一眠りしよう、何もかも忘れて。こういうときは寝ることが一番なのだから。
 ゆっくりと、僕は目を閉じた。

* * *

 ふと見上げると煌々とした夜の主役が僕らを照らしていた。
 闇に包まれた心をやさしく包んでくれる輝き。僕らを見守ってくれる存在の大きさを感じながら隣のなのはへと顔を向ける。

「準備はいい?」
「うん! いつでも大丈夫だよ」

 にこやかに答えるなのははすでにバリアジャケットを装着し、手には砲撃形態のレイジングハートがある。 
 切り株の上で僕もこの日のために用意した特注の拘束魔法の展開準備に入った。

「失敗しないかなぁ……?」
「周りは封時結界で遮断してあるから遠慮なくやって大丈夫だよ」
「そっか、じゃ遠慮なくスターライトブレイカー……行きます!」

 木々が桜色に染まる。天上の輝きに決して劣ることの無い彼女の星がここに産声を上げる。

「よし……バインド展開! 拘束!!」

 細心の注意を払いながら僕も全ての術式を発動させる。
 生まれた光は鎖でも、壁でもない。まるでそよ風のような優しさを持ったベールのような光だ。
 ゆっくりと着実に成長していく星をベールはそっと受け止め包み込む。光の揺り篭に抱かれるように星は僕の魔法へ誘われた。

「どう? レイジングハート」

『Everything is going well』

「やった! あとは――」

 今まで水平に構えていたレイジングハートをなのはは垂直に向かって掲げていく。
 慎重に、焦らず確実に、目指す場所は遥か星空の彼方だ。

「なのは……頑張れ」

 収束し、段々と不安定になっていく星を拘束魔法で安定させながら僕は小声で応援した。
 真剣な眼差しで魔法を制御し続けるなのはの横顔に浮かぶ汗。普段とは違う魔法の使い方に飲み込みの早いなのはも苦戦している。

「ありがと……ユーノくん」

 この場だけは月と星の光は届かない。あるのは僕となのはの煌きだけ。温かな光の中でなのはの星はやがて巣立ちのときを迎える。
 
「じゃあ行くよ!」

 頂点にレイジングハートを掲げ狙い定める。どこまでも高く無限の星を湛えた夜の空へなのはは自分の星を解き放つ。
 届けるのは想い。真っ直ぐで純粋で、誰にも負けない不屈の想い。
 揺り篭からあふれ始める桜色はもう待ちきれないと今すぐにでも飛び出しそう。もう少しの辛抱、そんな風に心の中で呼びかけて僕は魔法の維持に集中する。

「スターライトブレイカー平和的応用編!! ブレイク……シューーートっ!!」

 ズドン! と地鳴りのするような轟音を伴っていつもと違うスターライトブレイカーが天に放たれた。
 果てを目指してどこまでも高く、なのはの想いを乗せて星は昇る。

「――……よし」

 それでも星はこの空の一員にはなれない。上へ昇る力は重力にどんどん削ぎ落とされていくだけ。
 けどなのはにとって星に担わせた役目は全然違うもの。もうなのはのやるべき仕事は終わっている。ここからは僕の力にかかっている。

「拘束解除!!」

 重力に引かれ星が昇る力を失う寸前、その刹那のタイミングで僕は揺り篭を解き放った。
 戒めが無くなる。濃縮された魔力がここぞとばかりに一気に弾け飛んだ。


 ドーーーーーーーーンッ!!


 ――星は花となった。

 星空を押しのけ僕らの頭上で開いた大輪の花。なのはの色を空中に敷き詰めるように光の粒が広がっていく。
 桜に混じって翠も輝いていた。僕の作った揺り篭の破片は消え去ることなくなのはと共に夜空を飾る。
 二色は混じることなくそれぞれが明滅しながら溶けるように夜に消えていった。

「やったーーっ! 大成功!」
「……うん」

 なのはが歓声を上げ、僕は予想以上の結果に思わず拳を握った。

「これでフェイトちゃん驚かせられるね!」
「そうだね、最高のプレゼントになるよ」

 夜空の花に負けない笑顔を咲かせながらなのはは何度も頷く。フェイトの契約記念日になのはが考えたサプライズ。それが形になったのだからなのはの喜びは嬉しいなんて言葉で量れないくらい大きいんだろう。
 それに少なからず協力できた僕も誇らしくて胸を張りたい気分だ。

「ありがとユーノくん、なのはのお願い聞いてくれて」
「どういたしまして。僕もこんなにうまくいくなんて思わなかったよ」 
「それだけなのはの制御がうまくいったんだよ」
「だったらユーノくんの方がずっと大変だったでしょ?」

 返事の代わりに首を振った。
 僕にとってこの位はたいしたこと無い。制御関連は結果でいつもやってること。今までやったことのないことを成し遂げたなのはの方がずっと凄いんだ。

「なにもかもなのはがやったことだよ。僕は手伝いをしただけ。僕の大変はなのはの大変に比べたら砂粒みたいなものだよ。だから心配いらない」
「でも悪い気がするよ。あっ、レイジングハートを一緒に使えば少しは楽になるんじゃない?」
「レイジングハートを?」
「だって元々のマスターはユーノくんなんだし」
「今はなのはだけのレイジングハートだよ。僕はこの姿のままで十分」

 気に入っているわけじゃないけどこの世界との魔力適合の負担が無くなる分こうやってフェレット姿でなのはに合わせてる方が楽なのは事実だ。

「でも一緒にレイジングハート持ったほうがもっとうまく魔法が使えそうな気がするんだもん」
「い、一緒に!?」
 
 それは嬉しいけど残念ながら願い下げにするしかない。 
 一緒に握り合うって事はお互いに密着するわけだしそしたらなのはのすぐ傍になってしまう。下手すれば頬ぐらい触れ合えてしまえそうなものだろう。
 そんな状態じゃ正直冷静さを保っていられる余裕なんて無いと思う。好きな子とくっつくなんてそんなことしたら僕の頭の中で花火が炸裂してしまいそうだ。
 
「そ、それはいいって。もし制御に失敗したら大変だろ」
「じゃあ……しょうがないか」

 つまらなそうな表情を浮かべながらなのははレイジングハートをネックレスに戻した。 
 なのはにとっては異性とそこまで触れ合うことに抵抗は無いのだろうか。いや地球の文化じゃこれが普通なのかもしれない。

「さっ、夜も遅いしそろそろ戻ろう」
「そうだね、寝不足で本番失敗しちゃったら格好悪いもんね」

 そもそも異性として意識されて無いだけなのかもしれないけど……。
 封時結界を解除し続けて転移魔法を展開させる。なのはの肩に飛び乗り後はいつものように家まで一直線に転送するだけだ。

「でも不思議……ユーノくんが隣にいてくれるとほんとに何でも出来そうな気がする」
 
 さっきの余韻に浸っているのか空を仰ぎながらなのはが呟く。

「なのはは僕がいなくたってきっと何でも出来るよ」 

 僕がやってることはなのは行こうとする道を照らし出しているだけ。けどなのはは一人だけでも道を照らすことが出来る力を持っている。
 そう、この夜空に咲かせた星の光がなのはには宿っているんだから。
 こうやってなのはの肩の上に乗って、なのはが進もうとする道を一緒に見つめて、僕はただ照らす。
 
 ……その役目はもう終わりなのかもしれない。

「そう……かな?」

 なのはには実感が無いみたいだけど僕がいなくなればわかるはずだ。自分の力で進み続ける、飛び続けることが出来ると――。

「そうだよ。じゃ、転送行くよ」 
 
 丁度いいじゃないか。きっと別れの日は遠くないんだから。
 肩から眺める世界の景色。なのはの世界の景色。
 なのはの顔を見る。相変わらず空を仰いだままだった。眼差しはずっと遠くを見つめて、僕の言葉を噛み締めているのかそれ以上口を開くことはなかった。

 やがて転送が終わって僕らは床に就く。目を閉じ意識を手放すまでなのははその日一言も喋ることはなかった。
 だからといって気の利いた言葉なんてかけられやしない。だってこれは夢だから。もう過ぎ去ってしまった時間だから。
 
 僕に出来ること――それはもうないことを薄々感じさせてくれるお節介な夢だから。
スポンサーサイト
【編集】 |  19:00 |  守り手  | TB(0)  | CM(1) | Top↑
あれ?と保管庫に確認に行っちゃいました。
すごい加筆ですね。

なのはとの関係・・・恋心も、傍にいることすらも
あきらめ、割り切ってしまっているのが切ないです。
礼 | 2007.08.27(月) 23:00 | URL | コメント編集

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック


 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。