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2007.08/19(Sun)

リバースYou&I 第1話 


【More・・・】



 なぁ、クロノ・ハラオウン……。


 執務官がこんなことしていいのか?

 いやいや、相手は恋人だ、きっと合法だ。

 それでもまずいんじゃないか……これ?

 でもこんな機会一生にこれだけなのだろうし―― 

「ええと……クロノ君?」

 そうさ、いざとなったらもみ消してやる。

 ビバ! 執務官権限。
 
「そういうわけだ」


 ――いただきます。


リバースYou&I


 ――どうしてこんなことになったんだ。

 以前にも同じよ~な後悔の仕方をしていたような気もしないでもないが、ともかく目の前の現実に思考の照準を合わせることが先決である。 

「母さん……本格的に教育の仕方を間違えたのかしら」

 指定席にて涙を浮かべながらコーヒーに角砂糖を入れ続ける母親に、

「…………」

 口をパクパク、未だ現実に戻って来れない妹。

「今日って仮装パーティーなんてあったっけ?」

 隣の使い魔も呆然としている。

「僕は……何もしていないからな」

 非難の視線を体中に浴びながら今日クロノがブリッジで最初に搾り出せた言葉である。 
 一体どういう経緯で彼が非難の的になってしまったのか。それは単に発端となった彼女が彼と最も親しい――親しいというか恋人同士だ――間柄ゆえ。

「え……えぇっとね……」

 愛想笑いで場を取り繕うとするあどけなさの残る、というかあどけない表情の少女。
 どう見てもサイズ違いな管理局の制服を着て、補佐官が座るべき特等席を堂々と占領するこの幼子は一体誰であろうか。 

「これもいろいろ訳がありまして……」

 一応職務を全うしようとした名残だろうか、何度も折って捲った袖が涙を誘う。
 あの寝癖もどきの跳ねっ毛はこんな時も相変わらず自己主張。皮肉にも彼女が彼女だと証明する唯一の手がかりだ。
 
「その……なんだ。……エイミィ」
「なに? クロノ君」

 舌足らずとまではいかないもの本来より少しだけオクターブの高い声。彼は彼女が最愛の人だと確信する。
 そうでなくとも一目見ればわかってしまう。だから彼の問いかけに疑問符はなかった。

「僕に対しての悪戯なら今すぐ戻れ……でなければ理由を説明してくれ」

 真っ直ぐ見つめるその先で、エイミィがおずおずと頷いた。頷きついでにクロノの顔色を窺う視線は小動物がごとく不安を含んで揺れていた。

「クロノ君……怒らない?」

 上目遣いに、機嫌を損ねないように、言葉を探して。
 いつもよりもずっと高い位置から見下ろしてくるクロノの視線はなんだか少し怖い。
 落ち度といえば落ち度なのだ。だけどその過程に至るまでに他でもないクロノが一枚噛んでいるのは間違いない。
 自分なりに考えた結論は、果たしてクロノに認められるのだろうか。執務官補佐という立場なら当然クロノだって聞き入れてくれるはずなのに、だ。

「僕だって子供じゃないんだから」

 エイミィにとってこれほど緊張しているのはかれこれいつ以来か。
 物怖じしない性格はいつだって勇気をくれるのになぜか今はそれが無い。

「…………」
 
 もじもじ、いじいじ。
 俯いたり見上げたり、何度か繰り返して覚悟は決まったか。
 遥か上から見下ろしてくるクロノの視線に負けないように、エイミィも少しだけ顔に力をこめて。

「ロストロギアをさ……ちょっとだけタイマーの代わりにしちゃって……多分それで」

 だって見た目砂時計なのだからしたくなるのは人間の性だろう。彼女の中だけそうだとしても。
 
「ほ、ほらクロノ君なるべく早く分析しろって急かすから」

 両腕を振って必死にクロノにも責任があることを訴えかける。
 実際、お咎めで済まされない自体だということは百も承知。でもそこはご愛嬌というということで済まして欲しい正直な気持ち。
 それが無駄な足掻きというのはクロノの暗雲に覆われていく表情でわかりきっていても。

「ほう……インスタントでも食べていたのか……?」
「そうなのよ! あんまり急かされるからカップ麺で済まそうと思って」
「それでタイマー代わりか」
「丁度サイズも三分くらいだったし」

 ちなみにアースラ内で飲食が許されているのは食堂と自室だけである。
 エイミィがロストロギアを分析していた部屋にだってそれは適用される。取り分けデバイスの調製や種々の分析を行うのだ。
 精密機械は当然、技術の粋を集めたあらゆる機器が存在する場所。煩雑とは行かないまでも足元にはケーブルや電気コードが放り出されている。
 
「君は計器をおじゃんにしたらどうしてくれるんだ」
「だ、大丈夫よー。ちゃんと部屋の隅っこでさびしーく食べてたんだから」

 下手をすれば汁一滴で時価ウン百万が天に召されるかもしれないのに。
 いやいやいや、実際に焦点とするのはそこでは無い。
 私用で、しかも相手はロストロギア。そんなものをタイマーにしたと言っているのだ。

「エイミィ……僕はそんなに急かしていたように見えたか?」
「さっさと終わらせてデートしようって言ったのは誰だっけ?」

 質問には質問を。エイミィの切ったカードにクロノの顔が戦慄に凍った。
 
「……最低執務官」
「ご、誤解だフェイト!!」

 ぼそりと毒を吐くフェイトにお決まりの言葉で弁解。時すでに遅し。
 兄の威厳がぐーんと下がった。

「エイミィ! 僕はそんな直接的なこと一言も言ってないぞ!」

 三割増、鋭く尖った職員たちの視線がぐさぐさ突き刺す中でクロノの執務官としての威厳は情け容赦なく削り取られた。
 おまけにクロノは今の自分の一言が思いっきり墓穴を掘っていることに全く気づいておらず。

 後ろで母親が息子の昇進は当分させないだろうと密かに心に決めていた。

「きっと大丈夫だって。分析の結果じゃ効力は三日くらいだから」

 ロストロギアといってもガラクタの類。僅かに残っていた魔力が偶然にも成し得た悪戯みたいでもう本体に魔力は欠片もないのだ。
 自分の身に大変なことが起こったって肝心な所はやってみせる。
 小さくなったってプライドまで小さくなりませんよ。

「そういうわけで業務に支障ないように頑張るから。ね、クロノ君」
 
 ずり落ちてきた袖をもう一度捲り上げてウィンクして。
 十歳になった執務官補佐にクロノはただただ、

「頑張ってくれ……」

 もう……言葉が見つからなかった。

 後に管理局に提出された書類にはこう記されていた。

 ――時の揺り篭。
 砂時計の外観を有する小型ロストロギア。
 反転させることで効力を発動し、使用者の年齢をランダムに巻き戻す。
 効力の持続時間は砂が落ちきるまでに限定される。砂の流速は巻き戻す年齢と同様その時々に変わる模様。
 何の目的に誰がこんなものを作ったのか。若かりしころの自分を取り戻したいと願った人間の執念が生んだのか、それともそういう趣味のためか。 
 その他に関して危険な要素は無いためロストロギアとしての危険度は低いと判断される。
 以上がアースラにてこのロストロギアを解析した結果である。

 ある意味それは、十二時まで夢を見させてくれたシンデレラの魔法使いのように。
 こうして年上の彼女が年下となった夢の時間が始まりを告げたのだった。 
 
 三日間というえらく奮発されたシンデレラの時間が。
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