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2007.08/19(Sun)

守り手 1話 


【More・・・】



 ――君を守りたい。


 そう願ったのはいつの頃からだっただろうか。
 
 とにかく真っ直ぐで、どんな困難にも立ち向かえる強さを持った大切な人。
 僕はいつだってその人に笑っていて欲しかった。

 なぜ? って理由を問われれば答えることは出来る。
 でもその理由は一方通行で儚い想いだ。僕自身の独りよがりでしかない身勝手な想い。
 押し付けちゃいけない。彼女の翼の羽ばたきを邪魔をしちゃいけない。 
 
 想いを打ち明けないなんて馬鹿げていると思う人だっていると思う。僕がなによりそう思ってるから。
 言葉にして伝えるのは簡単。いつだって言おうと思えば言えてしまう。
 彼女がどんな答えを返すかは別の話だけど。

 それは言えない。言っちゃいけない。
 この関係を壊してまで僕がそんなことをする資格は絶対無いんだから。
 本当は拒絶されるのが怖いからなんて思いたくないのは強がりでしかなくて……。
 盾の後ろにいる僕はいつだって弱虫なんだ。

 だから見守るって決めた。

 肩越しに、ただ僕は彼女の行く道を照らしていければいい。それが僕のやるべきこと。
 きっとこれからもそれは変わらない。
 一年経っても、十年経ってもその想いは普遍であり続ける。
 当たり前の日常を僕らはずっと送っていくんだ。
  
 だけどもしも――

 普遍が壊れる日が来てしまったらそのとき僕はどうするんだろうか?
 僕から、彼女から、それとも別の何かのせいで当たり前が壊れてしまったら……。

 その時には彼女に言うことができるのだろうか。
 誰でもなく僕自身の手で守り続けたいと。

 ――なにより、



 「守る」という言葉に隠した本当の気持ちを



 彼女の守り手



 僕の名前はユーノ・スクライア。
 スクライアは部族名だから名前はユーノ……って誰に自己紹介してるんだ。

 早いもので僕達がプレシア・テスタロッサの野望を打ち砕いて二ヶ月とちょっとが経った。いろいろあったけどジュエルシードも回収できたし、なによりミッドチルダにもこの世界にも時の庭園での次元震の影響がないことが僕としては一番良かったと思う。

 なのはは勿論、リンディさんやクロノ、時空管理局の人たちの助けがなければここまでうまくはできなかっただろう。
 兎にも角にも、みんながそれぞれにまた平和な日常を送れることは大変に喜ばしいこと……のはずなんだけど。

「はぁ……」

 多分、僕だけなんだろう。相変わらずこの姿で普通とは若干違う日常を送っているのは。
 時の庭園での一件はリンディさんが押さえ込んでも余波が大きかったらしい。
 リンディさんいわく、未だこの世界とミッドチルダを繋ぐ空間は不安定にあり僕がミッドチルダに戻れる見込みは見当がつかないらしいのだ。
 
 元から放浪が常のスクライア族だから別に急いで戻る理由もないから僕はいいんだけど……やっぱり本音としては帰りたい気持ちはある。

 いろんな意味で。

「じゃあ僕は外に出てるから」
「あ、うん。いつもごめんね、ユーノくん」
「いいよ、なのはだって恥ずかしいでしょ」

 ベッド代わりのバスケットから飛び出し僕はベランダへと出て行く。
 後ろではなのはが申し訳なさそうに着替えを手に取っている。

「はぁ…………」

 ここに戻ってきてから変わったこと、それは僕たち二人の関係。
 変な言い方かもしれないけど僕となのはがようやく普通な男女の関係を送れるようになったということ。
 僕としては最初から今まで元の姿をなのはが知っていると思っていたけど、なのはは僕がアースラで変身を解くまでフェレットだと思い込んでいたなんて意外というか驚いたというか。
 確かに最初から知っていれば僕の目の前で着替えたり温泉に入ったりしなかったわけで。

 そういうわけで僕はなのはが着替えるたびこうしてベランダでなのはのことを待っているんだけど。

「正直、気は楽になったかな」

 いつもなのはが着替えをする度、顔を背けてばかりだった背徳的なあの時とは一転、こうやって潔く見なくていいのは嬉しいことだ。
 多分、部族の人たちにこのことを話したらおいしい所をなんでやすやす手放すんだ、とか冷やかされるんだろうけど。

 でも僕はそうやって相手を騙してまで着替えとか日常生活を覗き見するのはとてもいけないことだと思ってるしそんなことして見ることに価値はないと信じている。
 確かに、僕も一端の男だし絶対見たくないというのは嘘になるけど……。

 って、朝から何を僕は考えているんだ。

「着替え終わったよ」
「えっ? あ、うん」

 窓がノックされる。なのはが着替え終わったみたいだ。
 今度はベランダから部屋の中へ、そして定位置へと駆け戻る。

「ところで今日の魔法の練習は? 昨日ので制御系の課題は終わりだよね?」
「うん、そこの所は大丈夫。ちゃんと考えてあるから心配することないよ」
「そっか、じゃあ学校行って来るね」

 そうしてなのはは学校へ行く。
ここからはなのはが帰ってくるまで僕にとっての自由時間が訪れる。ジュエルシードを探して一日費やしていたあの時とは違う新しい時間。
 とはいってもこの世界で暇な時間を潰していくのは実際かなり骨の折れることだった。

 最初は町を散策して時間は潰していたけど如何せんこの姿で行動するから範囲も限られるし、時には原生生物に襲われたりで今となってはそれにもすっかり飽きてしまっていた。
 なのはの学校の教科書を見たりもしたけどほとんどが僕の知っていることばかりで興味の引く文献もない。
 せめて遺跡なんかがあればなぁ、と贅沢を言ってみてもそんなものは早々出てこないのが関の山で。

「しょうがない……少し早いけど」

 だから、というわけではないけど最近の僕はあることで毎日の暇を潰すことを日課としていた。

 なのはが開けておいてくれるベランダから外へ出て、道に出る前に変身魔法を解除する。
 元に戻ったからといってここには僕の本当の姿を知る人はいないから気兼ねなく外は出歩ける。それでも頻繁に変身を解除できないのは体にかかる負担に対してだ。

 魔導師は別の世界に赴くとき自分の内の魔力の流れをその世界の流れと同調させることで負担をかけないよう勤めている。魔力の流れに逆らうことは世界に適合しないことを意味し、そうなると魔力を失うだけでなく体にも大きな負担がかかってしまう。

 これには得意、不得意が顕著に現れ僕はどちらかというと後者だった。
 そういう魔導師はどうするかというと変身魔法などで自分の魔力流れを根本的に変えることで対応するのが定石なのだ。

「…………ハァ!」

 最初この世界に来たときはレイジングハートを使うときだけ元の姿に戻って後はずっとお馴染みのあの姿。なのはが見つけてくれた時もあの姿になっていたらしいけど、多分消耗した体が本能的にこの姿をとっていたのだろう。
 アースラに乗り込んでからは回復した魔力で多少は元の姿でなのはの世界で活動できたけどやっぱり負担は大きかった。

 けど今の僕は出来る限りこの姿を維持しようと努めている。
 なんで急にそんなことをするようになったといえばそれは――

『いるじゃないか、今もその肩に乗っている――』

 何が! 今も! 肩に! 乗っている! だ!!

 知っている上で人を使い魔扱いするなんて失礼にも程がある。たとえ冗談でもあいつに言われるとなんだか頭に来る。
 大体、絶対にわざとわかるように悪意を含ませて言ってるんだあいつは。
 だからクロノを見返してやるためにも僕はこの姿を保てるようにしなきゃならない。クロノにだけは負けたくない。

「よし、今日もいい感じだ」

 何度か拳を握り返し体の具合を確かめる。苦肉の策で編み出したこの方法、最近は随分と馴染んできている。
 魔力の流れを変えられないならそれから身を守る盾を作ればいい。僕が行き着いた結論はそれだった。

 フェレットの形を作る魔力をあえて中途半端な状態で拘束し表面の魔力だけを書き換える。
 簡単に言ってしまえば変身魔法と結界魔法の合体魔法。フェレットの姿になるのではなくフェレットの気ぐるみを被る。

 だからといって見かけは元の僕のまま。変身魔法が半端な形だからできることだ。
 ここ数日こんな調子で僕はこの姿で世界との調和を維持してきた。今や一日いられることも平気だ。
 これは慣れというんだろうか。向こうの世界では平凡な魔導師だった僕にとってコレはそこそこ大きな進歩だ。

「それじゃ行こうかな」

 まだ陽は南中には程遠い。なのはが出て行ってからそれほど時間は経っていないからきっと9時くらいだろうか。出掛けに時計を見て置けばよかった。
 でも、まぁいいか。時間なんて気にしてもしょうがない。

 大事なのはもっともっと別のことなんだから。
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