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2007.07/14(Sat)

あの雲のように 第一章 第一幕 


【More・・・】

 
 ある所に一人の魔導師がいました。

 その人はとっても無邪気で気まま。

 大好きなのは旅をすること。

 いろんな世界を旅して沢山の思い出を作って。

 旅の理由はいつも一つ。

 心がいつも空っぽだから。

 そんな彼女にいつしかお供がついて来て。

 これはそんな気ままな主と四人の騎士の物語。


 ――もうずっと昔の、永えの絆に結ばれた旅の記憶



 あの雲のように

 

 第一章 無愛想な用心棒
 
 
 助けなければ良かった。
 先刻から頭の中で堂々巡りする後悔に彼女は頭を抱えて項垂れていた。

「すいません、ほんとに助かりました」

 そう言ってすぐにその場から退散してくれるだろうと思った。
 数分後にはそれがあまりに浅はかな考えだと思い知らされた。

「ああ、それは構わない」

 丁度良い鬱憤晴らしだ。あの程度の火竜を狩るなど欠伸をしても出来る。
 だから問題はそこではない。

「付かぬ事を聞くが」
「はい? なんでしょうか」
「なぜ……ここにいる」

 パチリと燃える盛る焚き木が火の粉を吐き出した。
 上には吊り下げられた吻合。周りには切り身にされ串に刺さった火竜。
 良い塩梅に肉汁が滴り火にくべられる度に美味そうな音を立てた。

「料理をするため……でしょうか?」

 あっけらかんにそう答える辺り悪気などこれっぽちもないのだろう。ああ、騎士足るもの人を見る目は養っている。

「ああ、そうだな。料理をしているな……だからなぜ、だ」

 きょとんとこちらの質問に首をかしげ口元に手を当て思案。
 結果は――

「もちろん助けてもらったお礼ですよ」

 両手を叩いて嬉しそうに笑んだ。

「…………」

 ため息に火が嘲笑うように揺れた。
 断言できる。
 こいつは自分が最も相手にしたくない人種だと。

「あっ、そろそろ焼けましたね。頂きましょうか」

 間もなく目の前に差し出される串焼き。香ばしい匂い、未だ流れる肉汁の清流、適度な焦げが無骨な料理をどこか美しく彩る。

 ――ぐう。

「ふふ、冷めたら美味しくないですよ。竜の肉って冷めると脂が固まってべとつきますしね」

 喉が動いた。既に胃袋は臨戦態勢。唾など胃にとっては明らかな役不足。そもそも消化でもない。
 このままだとみっともない第二声を耳で聞く羽目になるか。

「……頂く」

 片意地張る理由も無い。腹が減っては戦は出来ぬ。
 そう言い聞かせて肉を口に頬張った。

「………………」

 悔しいかな、これがまた実に美味。

「近くにハーブが生えてて良かったです。肉の臭み取りにはあれが無いと始まりませんから」

 自分がやるような野性味たっぷりの料理を真っ向から否定されるような家庭的料理。野営していることが信じられない。 

「ああ、美味いな」

 これがまた飯に合うのだ。なぜだろう、数日振りに人の飯を食した気がする。

「でもすごいですね。私だったら今頃逆にこうなってましたよ」

 嬉々としながら肉にかぶりついて舌鼓。自画自賛……というものか。

「……常識から言わせて貰うと、その程度でここを渡る事態死ぬようなものだぞ」
「ですね~」

 聞いていない。
 法衣の身なりから見れば大体魔導師というのは分かる。これで騎士などと言った日には己の道を見直す羽目になるだろう。
 なら目くらましでも何でも使って逃げるくらい朝飯前ではないのだろうか。魔導師とはそれくらいの芸当楽に出来ると思うのだが。

「私、お恥ずかしながら何も魔法使えないんですよ」
「…………は?」
「ですから、魔法使いというよりは研究者みたいなものでして」

 なんだろうか……今自分は非常に聞いてはならない言葉を耳にしてしまったような。
 目の前のこれは自分自身を人外魔境とでも言っているのか。

「あっ、でもこういう火事炊事くらいの魔法なら完璧に使えますよ」

 胸を張って誇らしげに自慢。
 残念だが、別に聞いてはいない。

「そう……か」

 笑いでその場をやり過ごそうと試みるが如何せん口元が引きつっている。
 バチリ、と炭になりかけの木々が弾けて落ちた。

「あっ、もしかして喉渇きました?」

 自分のこれをどう受け取ったのか手には既にコップが握らされていた。

「ちょっと待ってくださいね」

 指を鳴らすとコップの上に小さな水滴が生まれる。
 すぐにそれは大気の水を集めて拳くらいの大きさまで成長しコップを満たす水となった。

「言った通りに炊事は得意なんです」

 そうだな。確かに魔法だ。
 蒸留なんてせずともここまで澄み切った水を指先一つで作れるなんて羨ましい限り。

「すまないな……」
「いえいえ、命の恩人ですから。あっ、そう言えばまだ自己紹介もしてませんでしたね」

 別にそんなこと頼んだ覚えもないし聞くつもりもない。
 この出会いだって一期一会。明日には別れが待っている限りだ。

「私の名前はですね」

 そんなことをおぼろげに浮かべながら喉を通る清涼感に心地よさを覚えて騎士は彼女の名前を知った。 

「ナハト」

 それは夜天の書の創造主――ナハトと

「……シグナムだ」

 後の烈火の将――シグナムの出会いだった。
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