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2007.07/13(Fri)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第十一話 Apart 


【More・・・】


 もう……どうにでもなれ。

 時空管理局提督リンディ・ハラオウンはここに宣言します。

「艦長……胃薬ならありますけど」

 気遣いは嬉しい。しかしもう手遅れ。

「始末書を書く提督って私だけよね……」
「み、みんな書いてますよ……多分」

 そうよね……きっと若いころは書いていた人もいるんでしょうね。

 ……提督になる前に。

「で、ですけど今回もやはり不可抗力が働いたと思えば」

 なんて都合のいい責任転嫁だろうか。不可抗力とは不祥事を帳消しにする免罪符そのもので、私にとっては最強の魔法に違いない。
 好転していた状況はほんの些細なきっかけでバランスを崩し、天秤は逆方向へ傾いたまま動かない。
 今までは辛うじて表沙汰にならなかった事件が今や目に見える形でこの町を騒がして。
 騒がすというよりは騒がしていた。過去形なのは不幸中の幸いってところかしら?

「後始末が大変じゃ、いい慰めにならないわよエイミィ」
「あ、あはは」

 そう、毎度毎度きれいに解決しないのが本来あるべきはずの姿。

 ――そうよそうよ、今までがきれいに終わりすぎていたのよ。

「なのはさんのお兄さんとすずかさんのお姉さん、それに使用人……」

 大体の説明はなのはさんたちが頑張ったおかげで彼らも納得してくれたとはいうものの……。

 総括すれば今回ばかりは民間人の被害者が多すぎだ。
 L・ジュエルというイレギュラー要素だったことを加味してもやはり管理局としてはもう少し穏便に、そして迅速に解決する方法があったのではないか?
 武装局員はほとんど役立たず。アースラは潜水艦もどき。唯一頼みの執務官、嘱託魔導師は出張中。

「だからって現地の民間人に協力を仰ぎ続けるのはまずすぎるわ……」

 ああ、偏頭痛がする。

「そう言っちゃ全部おしまいですよ。なのはちゃんたち一生懸命やってくれてるんですから」
「そうね……心意気は受け取ってあげないとね」

 自分たちの世界は自分たちの手で守る。
 力無き者の助けになるのが管理局の勤めなら、もしかしたら私たちの出番はないのかもしれない。
 小さな魔導師たちでもその体にはもう立派な力が備わっているのだ。なら私たちは背中を見守ることが本来の勤め。

「いろいろ開き直っちゃいましょ艦長。じゃないとクロノ頭になっちゃいますよ」
「仕事一筋の石頭?」
「ストレッチしても、お酢かけても柔らかくならないんですから」
「確かに遠慮しておくわ」

 ようは楽観的に、そして限りなく前向きに物事を考えること。
 私が悩む分はクロノに全部押し付けてしまおう。きっとあの子はこの状況を見てさぞ頭を抱えるのだから。

「ほんといつもあなたの言葉には助けられるわね、エイミィ」
「そんな、一番まいってるのは艦長なんですから。それに誰だって悩んでムスッてするより笑ってた方が気持ちも晴れますよ」
「ええ、我が息子にも今度言ってあげないとね」

 なんだか溜まっていたものが少しは抜けていった気がする。
 緊張していた顔の筋肉も、今なら愛想笑いだけでなく普通に笑うことも出来そうだ。ここ数日、私自身笑うことを忘れていたわけだし。

 席から立って思い切り背伸びをしてみる。縮こまっていた体はそんないきなりの動きになんだかギシギシ音を立てて驚いているようだ。

(年かしら……なんてまだまだ言えないわね) 

 そうして首を回して肩を軽く叩いて、大きく息を吸って吐いて――。
 まだまだこれから、むしろ正念場はここからだ。

「回収したL・ジュエルはたったの三つ……残りは六つも」
「六つしかない……そう考えましょう」

 「ええ」と気楽に私は答えた。
 硬くなっていた体も頭もようやく柔らかくなっていくのをしみじみ感じていた。

 どうやら息子以上の石頭にはならずにすんだようだ。

* * *

「……抗魔法障壁ねぇ。さしずめアンチマジックシールドってところかしら」
「こっちの言葉ではAMF……アンチマギリングフィールド呼んでます」
「なるほど対魔法使いなのね」

 だから私の体に魔法が当たっても勝手に砕けていたわけか。

「例外もあるんですけどね」
「あの鎖とか?」
「はい、結局これも魔法ですからそれようの対策さえ取ってれば大したこと無くて」
「な~る」

 オペレーターの側で昨日の戦いの様子を見返しながら、私は視線を手のひらに落とした。
 何度か握って具合を確かめてみる。もちろん痺れとか動かしにくいとか異常は無い。

「あるのはこれだけか」

 今度は開いて指先に力をこめる。同時に心の中で軽く念じる。

(――出ろ!)

 ブン! と指先から光が伸び、すぐにそれは鋭く尖った爪を形作った。
 私の主武装ともいうべき魔法爪の出来上がりだ。

「なんだかすずかたちとは違うみたいだけど……これも魔法?」
「それ以外はないですね。本当ならジュエルシードを封印すれば無くなると思ってたんですけど」

 申し訳なさそうに肩を落としながら彼女は頬をかいた。目の前のモニターには、ちょうど私がすずかの首に牙を突き立てる場面が映し出されている。

「気にしなくていいわよ。過ぎちゃったものはしょうがないし、あの子達だって気にしてない。そのL・ジュエルなんかに取り付かれた私が悪いんだから」
「それでも現地の民間人を巻き込んでしまったことは失態ですから」
「もう、かしこまらなくていいの。私のほうがいろいろ聞きたいんだし。敬語だって別にいいわよ」
「そ、そう……?」

 私から見れば相手のほうがよっぽど偉い立場だ。二歳年下でこんな戦艦のオペレーターを任されているなんて、私たちの世界の常識から見ればありえない。
 それにすずかから彼女がどんな人間か粗方知っているし、それなら彼女がもっともリラックスできる環境が私としても気を遣わずに済む。 

「そういうわけでここからはごく普通に世間話でもするようにってことで、ね。エイミィ」
「それなら……んじゃ私もよろしくね忍さん」
「呼び捨てでいいわよ」
「じゃあ忍ちゃんで」
「よろしい」

 うむうむと頷きつつ、私はモニターを見やる。ちょうどよく恭也が出てきた場面になっていた。

「そういえばエイミィ」
「なに?」
「結局の所私のこれってどんな魔法なの? 性質的には大分すずかたちとかけ離れているみたいだけど」

 なのはちゃんみたいにビームは出せないし、かと言ってアリサちゃんみたいな爆発もない。
 あんな風に空も飛べない。あるのは人並み外れた身体能力と目を合わせた相手を金縛りにすること。

「それはね、こっちの分析だと変身魔法と強化魔法の複合型って感じかな」
「変身と強化か……」

 確かに吸血鬼じみた――というか夜の一族――感じに体が組み換わってたと思えなくも無い。
 体に関してはあんなに飛び回ってたから頷ける。

「でもそれにAMFを常時発動させているわけだから、魔法の制御に関してはすずかちゃん並みの資質持ってるよ」
「だけどこの世界の人って魔法の資質なんて無いんでしょ?」
「それ、私の今一番不思議に思ってるとこ。突然変異で資質が生まれるにしたって数が多すぎるし。でも忍ちゃんにも資質が生まれてる」
「謎ね~。アプローチの仕方変えてみれば?」
「うん、でも今は目の前の事件終わらせないとね」

 目の前の事件……。
 つまりすずかたちが今まで隠してたこの魔法使いな日常について。

「願いを叶える宝石……ジュエルシードだっけ?」
「うん。それで忍ちゃんに取り付いたのはその上位版」
「私がこの力を手にしたのもそのせい……」

 あの夜拾った青い宝石。月にかざして、なんとなく考えた願いがどういうわけかこの力。
 確かに三角はーとを読んでて夜の一族のことが頭にあったから、その丸写しの姿になるのも道理が通る。私的なアレンジも加えての姿で。
 定期的に血を吸わないといけないとか余計な短所も受け継いでいるみたいだけど。

「まだまだ知らないことが多すぎるわね。この力だってまだ使いこなせてないし」

 というか昨日の今日である。ジュエルシードの無い今からが私の魔法の試運転なんだし。

「でも忍ちゃんの力なら訓練すれば自由に使えると思う。あんな風に他人から魔力や血を吸うこともなくなるだろうし」
「自分次第か」

 私だって善良な一般市民には迷惑はかけたくない。
 訓練次第なら、いくらでもしてこの魔法を我が物にしてみせるわ。

「それに欠点が無くなるなら……ね」
「ん? 何か気になることあるの?」
「お話の通りなら多分……あれも一緒についてるのかなぁって」

 言いつつそっとエイミィの耳元で囁いた。
 私が夜の一族である故に、おそらく来るであろう避けられない体質についてだ。
 こればかりは他人に頼らないといけないだろうし――相手はもう恭也一択で決まりだから問題とないといえば問題ないんだけど。

「……というわけなのよ。もっと詳しいことが知りたければその本貸すけど」

 事の次第を全部エイミィの耳に置いてきて体を起こす。
 エイミィの頬はすでに赤く染まっていた。

「あ、あはは……なるほど…………体が火照るんだ」
「簡単に言えば発情期」

 だって三角はーと3って大人の本だしねぇ。
 そういう描写があるのはある意味で当然のこと。そういえばノベライズする前にゲーム版も出ていたんだっけ。

「お、大人の世界だね。ちょーっとなのはちゃんたちには話せないね、こりゃ……」

 笑顔をぎこちなくさせながら呟くエイミィにはどうやら刺激が強すぎた様子。
 年の近い子同士ならこんなちょっと過激な話題も通じるかと思ったけど、どうやらエイミィにはまだ早すぎたみたい。

「エイミィにはいないの? 運命の人とか」
「そんなのいないってば……せいぜい手のかかる弟分がいるだけだって」

 なるほど、弟分……ねぇ。

「私には心に決めた恭也がいるんだけどね」
「惚気てたのも思いっきり映ってるからね」
「ああ、じょぶじょぶ。そこまウブじゃないから……恭也はどうかわからないけど」

 恭也はあれで結構恥ずかしやがりだし、秘密にしておいたほうがよさそうだ。

「そういえば忍ちゃんって恭也さんとどう知り合ったの?」
「ん、知り合ったきっかけ? そうね、自慢じゃないけど他の人には結構真似できない出会い方かな」
「そういわれるとすごく聞きたくなってくるよ」
「じゃあ話してあげる。ついでに恭也のプライベートなこと隅々まで」
「でも惚気は遠慮しておきます」
「え~」

 せっかく三角はーとにも負けないくらいロマンスに溢れた二年間を話してあげようと思ったのに。
 ……でも急ぐことは無いか。これから長い付き合いになるだろうし。

 なんてたって魔法と異世界の友達が出来たんだから。

* * *

 ――心が晴れない。

 きっと今までの私なら戸惑うことなく行動していたはずだ。母さんの言いつけだもん、当たり前。

「…………アリシア」

 傍らのリニスが心配そうに私を呼んだ。
 今この場所には私とリニスしかいない。雲よりも遥かに高くて、地上よりは星に近くなったこの空の只中で私は足元で輝く夜の町を見つめていた。

 ミッドチルダの中枢が位置する首都クラナガン。私たちがまいたジュエルシードのおかげでこの町も例外なく夢を見ている。

「流石に時間が経ちましたからね。遠方に派遣されていた魔導師が首都防衛に戻ってきてますね」

 数が多くても、やっぱり強い魔導師にはジュエルシードはどんどん封印されている。このままだといずれジュエルシードはこの町から一つ残らずなくなってしまうだろう。
 自分で仲間を増やす手段をこの子達は持ってないのだ。母さんがくれたオリジナルの九つの種なら話は別だけど、あれはあの世界に全部まいて手元にない。

「母さんは何をする気なんだろう……? 母さんはこの世界に本当の夢を見させるって言ってたけど」
「さあ……私たちがすべき仕事はここでこのジュエルシードを発動させるだけです」

 一体何が起こるのか私にはまったく見当がつかない。
 でも……嫌な予感がする。それだけは絶対。

「あなたらしくないですよ。いつもならこんなことすぐに終わらせてしまうのに」
「そうだよね……ただもしミッドチルダに何かあったらフェイトが悲しむかなって」

 今までは憎しみしかなかった私の心。だけど今はその中に別の感情が生まれていることに気づいている。

 フェイトから記憶が戻ってないことを聞いて、リニスからフェイトの事を聞いて――。

「私はお姉ちゃんだから……」

 リニスは言っていた。私とフェイトはいわば双子の姉妹だと。
 先に生まれた私はお姉ちゃんで、フェイトは妹で。

「あれは例え話ですよ。本当の意味ではあなたたちは姉妹ではない」
「なんだけどね」

 それでも私はフェイトのことが気になり始めている。

 憎しみ以外でフェイトのことが気になり始めている。

「可愛い妹を……慈しんでいるのですか?」 

 ――わからない。

 そんな意味をこめて首を振った。

「ただ今はちゃんと話がしたい……かな」

 多分また会えば答えは出せる気がする。曖昧だけど私の中ではちゃんとした形で存在してるから。

「あまり余計なことは考えないでください。今はプレシアの望みをかなえることが最優先です」
「うん、母さんの願いは叶えないとね。だからこれでフェイトのことを考えるのはおしまい」

 待機状態にしていたプロトを起動させる。この子もいわばフェイトのバルディッシュと双子だ。
 何から何まで似たり寄ったりな私たちに少し可笑しくなってにんまりする。

「プロト、ジュエルシード一つ頂戴」
『Yes,Sir.Put out』

 右手に舞い降りた願いの種を、ぎゅっと私は握り締め天に、星にかざす。

「アリシア、何を?」
「ん? フェイトのことをいったん忘れるためのおまじない」 

 そっと目を閉じ風の声を聞きながら、せせらぎの様な願いをそっと種へとこめていく。
 壊れてしまわないように、崩れてしまわないように、そよ風のような言葉を紡いでいく。

「お願い……ここではない……遠いけど近いところで……大きく芽吹いて……みんなに負けない輝きを……あの子に教えて――!」
 
 心からの願いはすぐに光となって私の手から離れる。光は天を目指し、そのまま真っ直ぐ飛んで見えなくなった。

 きっとこれで大丈夫。万が一この世界に何か起こってもフェイトは大丈夫。

「いいのですかアリシア……一つでも欠けてしまうと儀式に支障が」
「大丈夫だよ。私とリニスで頑張れば絶対大丈夫!」

 笑顔で気持ちを切り替えながらプロトの中にある全てのジュエルシードを宙へ放出する。
 無数の青い輝きは満天の星とまではいかないけど、優しく煌いて私たちを照らした。

「……そうですね、少しはプレシアにも苦労してもらいましょう」
「えへへ……じゃあ始めよう」
「ええ」

 そっと背中合わせ、お互いの温もりを感じながら私は杖をジュエルシードへかざす。
 やることは簡単。ただ魔力を流し込んで動かすだけ。

「アルカス……クルタス……レイギアス……」

 静かに輝きを増していくジュエルシード。怖いくらい順調に、魔力を蓄えながらゆっくりと種は芽吹いていく。
 やがて臨界点に達するころまるで共鳴するかのようにクラナガンからいくつもの光の柱が立ち上がった。

 いや、クラナガンだけじゃない。光の柱はクラナガンから離れた場所からも生まれ、天の彼方を目指していた。
 まるで世界中のジュエルシードがいっせいに芽吹いたようなそんな感じで――ううん、確かに芽吹いている。世界中で、この星全ての場所で。

 いつしか私の足元は無数の光の柱で埋め尽くされていた。立ち上った光が私やリニスの側を通り抜けて高く高く上っていく。

「これって……リニス!?」
「ジュエルシードの一斉発動……待ってくださいこんなことをすれば……」

 予感は当たった。この世界になにか大変なことが起こり始めている。
 大変って言葉で片付けられないくらいの大変が世界を包み込んでいる気がする。

「ここにいては不味いですね……やることはやりました、私たちは戻りましょうアリシア」
「あ、うん!」

 そうだ、帰らなきゃ。
 急いで転送魔法を発動させる。

「開け、失われし世界への道……我が主テスタロッサのもとへ」

 そうして私たちの存在はこの世界から消えた。後は何が起ころうと私たちには関係ない。
 どんな事実を知ったって、どんなことが起こったって、私たちが足掻くことはどうやっても出来ないのだから――。
 
 例え誰かが涙を流しても……。
 
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