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2007.07/13(Fri)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第九話 Cpart 


【More・・・】


 もう子供は寝る時間――多分私たちの歳とするなら――だ。

 六月の梅雨の所為か、夜空はどんよりとした暗雲が敷き詰められ月や星の光も届かない。
 光源が無くなったせいか心なし街から活気がなくなっている気がする。
 尤も市街地の方はまだいろんな光で溢れて賑やかだけど……。

「みんな揃ったね」
「はぁ、もう鮫島の目を盗むの大変だったんだから」
「わたしも……みんな起きてるから窓から抜け出す羽目になっちゃった」

 初の夜間作業は二人とも苦労しているみたい。
 私もファリンが時々部屋に来るから、勉強中だからって入ってこないように釘を刺してきたりして。

「やっぱり封印するのは昼間が一番だよね」
「だからって貴重なランチタイムを割くのはどうかと思うんだけど」
「ゆっくりお弁当食べられないもんね」

 苦笑いのなのはちゃんの意見には私も同感。お昼ご飯はみんなでゆっくりと食べたいよね。
 でも今だけは我慢。ジュエルシードを全部封印しないといろんな人に迷惑が掛かってしまう。だからそれが出来る私たちが頑張らないといけない。

「三人とも話はそれくらいにして、夜更かしだってできないよ」
「もちろんそんなのこれっぽっちも思ってないんだから。ね、なのは、すずか」
「うん!」
「そうだよユーノくん、私たちが力を合わせれば怖いものなんてないんだから」

 こんな時でもなのはちゃんの笑顔は星の光みたいに私たちを照らしてくれる。その笑顔を見るだけで気づかれなんてどこかに行ってしまう。

「じゃあすずか、魔力探知お願い」
「まかせて。シルフ探知お願い」
『Obey,my mistress.Wide area search』

 いつものように杖の先、くちばしから青い光が生まれる。
 光はすぐに空高く舞い上がり、ある程度の高さで円を描く。

「広域探査……対象魔力波形セット」
『Start up』

 小さな円が街全体を包み込むように大きく広がっていく。サーチするのは被害者から検出された魔力残滓の波形パターン。
 共通して検出されたことからこれが犯人の物だってエイミィさんは言っていた。私から見ても間違いなくそうだと思える。

「…………」

 目を閉じ精神を集中させる。
 暗闇に一人佇む私。その中を私の魔法が広がっていく。波紋のように、それは闇の中に隠された輝きを一つ一つ見つけ出していく。

「どう? すずか」

 アリサちゃんの声。私は頷きを返す。
 いつもなら町中のジュエルシードを調べているから浮かんでくる輝きは大小様々でたくさんある。だけど今夜はたった一つの魔力を感知しなければならない。

 見つけるのは得意だと思ったけどやっぱり難しい。

「だめ……まだ見つからない」
「落ち着いてすずか。集中すればきっと出来る」
「うん、ありがとうユーノ君」
『You are possible surely』(お嬢様なら大丈夫です)

 二人の励ましにもう一度、私は強く強く念じる。
 ジュエルシードじゃない、でもジュエルシードに似た魔力の波動。この町のどこかで息吹いている魔法の力。
 
 ――私にしか出来ないこと。
 
「見つけて……無垢なる輝き――!」
 
 ――私だから出来ること。
 
 暗闇の海、ポツンと光が生まれた。

「見つけた! ここから南東2キロ!」
「よし! なのは、アリサ!」
「言われなくても――!」
「――行こう!」

 その光はすごく小くて――そういうよりはわざと小さく見せているような紫色の星。ジュエルシードの魔力とは微妙に違う、何かが複雑に混じりこんでいる感じがした。

 なぜかどこかで感じたことのあるような……。

「気をつけてみんな、ジュエルシードは移動してる。結構早いよ!」

 飛んでいる軌道じゃない。跳ねるようにそれは町の中を飛び回っている。

「大丈夫よ、アタシの瞬発力に掛かれば」

 空中で一回転しながらアリサちゃんはぐいっと膝を曲げ、

「あっという間に!」
『Boost――』

 透明な壁を蹴り上げるように両足が空中を捉えて、

「追いついてあげるわ!!」
『Jump!』

 爆発音――!
 真っ直ぐに伸びたアリサちゃんはそれこそミサイルみたいに、あっという間に見えなくなっていった。
 まるで水泳のターン。

「私たちも急ごう」
『All right』
「もうアリサちゃん急ぎすぎなんだから……」
『Remort flier』

 猪突猛進なアリサちゃんにちょっと呆然としながら私となのはちゃんに加速魔法展開!
 スラリと伸びて鋭角的なフォルムを見せる青い翼。
 魔法の翼に航空力学が通じるのか微妙な所だけど、戦闘機を模したこの翼は私たちに十分な速さを提供してくれる。

「レイジングハート!」
『Flier fin』
「シルフ!」
『Air saucer』

 二重の飛行魔法。ぐん、と景色が加速する。
 空を切る。体中に風を感じて、鳥よりも早く、鋭く私たちは空を翔ける。

「ってもう始めてる!?」

 なのはちゃんの口から驚きが飛び出した。
 真っ直ぐ先の家の屋根。一瞬だけ赤い光が灯って消えた。

「ああもう! まだ封時結界張ってないのに!」

 フェレット姿のユーノ君が、慌てて周囲との時間信号をずらす結界を発動させた。
 最近はこうやって私が補助魔法をかけるとき無駄に魔力を消耗させないために、ユーノ君はいつもフェレット姿でなのはちゃんの肩にしがみついている。
 一人減るだけでも私としては制御に負担が掛からなくてすごく楽になる。こういうところの気遣いはユーノ君は上手い。

 そうして変わる世界の中、また赤い光が瞬く。

 ようやくその時になって私の目も犯人の姿を捉えることができた。 
 屋根を足場に踊るようにステップを踏んで飛び回る影。この空模様のせいではっきりとした姿はわからないけど、なんだか黒い霧みたいな塊が動いているように見える。

「なのはは後方援護! すずかはチャンスがあったら僕と拘束!」

 元の姿に戻りながらユーノ君が次々に指示を飛ばす。
 私はすぐに拘束魔法ウィールバインドの準備に、なのはちゃんはいつものようにディバインシューターを発動させた。

「アリサ! 何とか人気のない場所へ誘導して。そこじゃ民家に被害が出る!」

 声を張り上げ、空中で三発目の魔法の準備に取り掛かっていたアリサちゃんに一旦攻撃を制止して。

「ちょ! いきなりそんなこと言われてもどうしろっていうのよ!」
「僕となのはで追い込む! 合図したら攻撃して!」

 前へ飛び出すユーノ君に続けといわんばかりになのはちゃんが後を追う。予め打ち合わせていたみたいにその動きは滑らか。きっと念話を使っているんだと思う。

(ユーノ君、私は?)
(すずかは念のため防御の方も準備お願い。攻撃してくるかもしれない)
(うん、まかせて)

 発動できる状態にまで詠唱を進めた術式を次々に並列、制御していく。
 今は魔力の量によるけど最低でも六つは同時に展開できる。シルフがこういうことに関してはとても得意だからできる技だ。

「アリサちゃん離れて! シューーート!!」

 それぞれが別々の軌道を描きながら、なのはちゃんお得意の誘導弾が全部で五つ、影に向かって飛んでいく。
 影もすぐに気づいたみたい。屋根を足場に空中高く舞い上がって弾を避けようと試みる。

「チェーンバインド!!」

 でもその背後にユーノ君。
 回りこんで放つは三本の鎖。すぐさまそれは影に巻きつき動きを封じ込めた。

「今だアリサ!」
「スプラッシュ!!」

 待ち兼ねていたアリサちゃんの魔力弾が闇に赤い軌跡を残して飛んでいく。

 唸りを上げて、夜を焦がして、吸い込まれるように灼熱の光球が命中、そして――

「バーーストッ!!」

 爆発――!
 完全ゼロ距離からの炸裂。バリアも何もない状態からこの攻撃を受ければ相手はやられたも同然。
 それだけアリサちゃんの高密度魔力弾は威力が半端じゃない。

「どう!? さぁ、なのは、すずか封印準備!」

 デバイスを掲げながらアリサちゃんのバーサーカーは早くも封印シークエンスに入ろうとしている。
 遅れちゃいけない――そう思って私もシルフをセーバースタイルへ変形させようと、

(――えっ?)

 そんなの駄目!

「っ! アリサ!!」

 二番目に反応したのはユーノ君。もうその時には立ち込めた煙幕を真っ赤な五つの刃が蹴散らしていた瞬間だった。

「嘘っ!?」
「アリサちゃん!」

 横目になのはちゃんがデバイスを構えるのが見える。きっと射撃で打ち落とそうとしているんだと思う。
 だけど間に合わない。
 あの刃はそれよりも早くアリサちゃんに届く――!

「シルフ、三番セット!」
『Obey,open』

 六つのうち三つ目に待機させておいた魔法を最高速の中で発動させる。

「ブロープロテクション!!」

 体中を覆う青く輝く殻。
 そのままの勢いで私はアリサちゃんに襲い掛かる脅威を力任せに弾き飛ばした。
 ガキン! 魔法とは思えない音を残して、刃二つがプロテクションに突き刺さる。

「大丈夫、アリサちゃん」
「ありがとすずか。……油断したわ」
 
 ばつの悪そうな表情をしながらアリサちゃんは悔しそうに唇を噛んだ。
 展開位置を常時ずらすことで移動能力を付加したプロテクション。これがなければ今の奇襲は防ぎきれなかった。

 アースラで見たアークセイバーによく似た三日月型の赤刃は、今も消滅しないでプロテクションに穴を開けている。生半可なプロテクションじゃ貫通されていたと思う。
 これが放たれる瞬間、着弾点からものすごい大きな魔力を感じ取れたことが本当に幸いだった。

「っ! 逃がさないから!」

 桜色が私たちの傍を駆け抜けていく。
 遥か先、いつの間にか空中を舞っていた影目掛けてなのはちゃんが砲撃したのだ。
 ――悟れなかった。魔力の反応もさっきのが嘘のように静かに小さいものになっている。
 でもなのはちゃんの一発も当たらない。影はありえないような動きで砲撃を掻い潜って、また屋根伝いに逃げようと飛び跳ねていく。

「三人とも後を追うわよ!」

 号令に私たちは全速力で影を追う。
 相手はきっと飛行魔法を持ってない。その代わりに物凄い身体能力を持ち合わせている。

(それに……)

 もしかしたらあの影が纏っている黒い霧は――。

「ねぇユーノ君、自分の魔力を隠すことが出来る魔法ってあるの?」
「えっ? うん、あるけど……すずか? ――まさかあいつが!?」

 きっとそうなんだ。
 あの影はエリアサーチで見つけにくいくらいの小さな魔力しか持っているんじゃなくて、最初から強い魔力を隠しているだけなんだ。

「もしかしたらあれ……L・ジュエルじゃないかな」

 もしもの不安が口から漏れる。あの攻撃の瞬間の魔力はどう見ても普通のジュエルシードのものじゃない。

 そもそも最初から、被害者から検出された魔力だってジュエルシードのものじゃない!

「で、でもわたしたちだもん、絶対大丈夫! 今までだって大丈夫だったんだから!」
「うん、なのはたちなら出来るよ……きっと」
「そんなの当たり前でしょ!」

 なのはちゃんの励ましみたいな言葉に私たちは心を包もうとした不安を吹き飛ばす。
 そうだよ……私たちは絶対に大丈夫。

 何が出てきても、何が起きても――。

「……あいつ、止まった!?」
「ほんとだ……でもあそこって」
「わ、私の家!」

 影が降り立った場所は普通の家よりもずっと高くて、あそこからだと見晴らしもすごくいいのかなって想像できそうな場所で。
 その場所は月村邸。
 つまり私の家で……。

「とにかくチャンスよ! 今のうちにみんなでバーッと!!」
「だ、駄目だよアリサちゃん! あそこはすずかちゃんのお家なんだよ!」
「そ、そうだってアリサ。なのはの砲撃にアリサの爆弾じゃすずかの家が吹き飛ぶよ!」
「わ、わたしちゃんと手加減できるよ!!」
「アタシだって!! ……あんまり自信ないけど」

 一応、壊れても後で職員の人たちが修復してくれる手はずになってるんだけど……。
 二人が全力出したらほんとに半壊しそうでちょっと不安。

「でもチャンスなんだから一気に決める! それしかないでしょ!」
「その意見には賛成だけど……」
「四の五の言わない! 男でしょ! バシッと決める!!」
「は、はい!」

 なんていうか押しに弱いユーノ君。こういう肝心なところを率いるのはやっぱりアリサちゃんだった。

「いい? なのは、すずかは後ろから、アタシは正面から三人がかりの同時封印で行くわよ!」
「僕は……?」
「見物!」

 がくっとうなだれるユーノ君が合図になって私たちは影を囲むように散開する。
 右にはなのはちゃん、左には私、そして正面にアリサちゃんが降り立つ。上から見れば丁度三角形の中に相手を閉じ込めた格好だ。
 ここで一気に終わらせる――きっと私たちみんなそう考えていたと思う。

「いくよシルフ! セーバースタイル!」

 これでこの町を騒がせた物騒な事件も終わらせられる。
 もう誰も夜に怯えることはない。

「さ~て、そう簡単にうまく行くかしら?」

 ――!?

「でもまっ、驚いちゃった。まさか三人がこんな夜中にこんな遊びをしているなんてね」

 なんでここにいるはずのない人の声が聞こえたのかな……?
 だってその人は絶対こんなところにいない。きっと部屋でゲームをしたり本を読んだり、時には恋人と電話を通して語り合ったりしているはずなのに。

「アリサちゃんも酷いわ、いきなり攻撃するなんて。それになのはちゃん、あんな砲撃はないんじゃない?」

 からかうように聞き慣れた、聞き慣れすぎた声が頭の中に響いていく。

「けど大体二人の戦闘スタイルはわかったし、後はすずかと傍の……女の子? まぁいっか」

 多分、受け止めなきゃいけない事実が目の前にあるんだと思う。
 雲の切れ間、うっすら覗いた月が僅かな月明かりをこの場所に注いだ。

「今度はこっちの番……でいいしょ? いい加減飽きてきたのよね、毎日町を飛びまわってるだけってのも」

 黒い霧がゆっくりと晴れていく。その下にある真実を徐々にあらわにしていく。
 
 すらりと伸びたモデルみたいな綺麗な体。鮮やかな紫色に染まる髪は、私と違って真っ直ぐなびいていて。
 子供みたいに笑みを浮かべる口元が見えたとき、私の大好きな人は右腕で残った霧を振り払った。

「ね、遊びましょ、手加減はしてあげるから。あっ、でも四対一なら全力でもいいかしら?」
「嘘……」
「そんなのって……あり?」

 二人の言葉は私の言葉。心を揺さぶる衝撃は……おかしくなるくらいに大き過ぎて。
 可能性はいくらでもあったんだと思う。この町に住む誰もあのジュエルシードに選ばれる資格はあるのだから。

「嘘だよね……?」
「嘘じゃないわよ、すずか。私だってあなたがそんな格好していること信じられないもの」

 あの時感じた魔力を知っている気がしたのはこういうことだから。血を分けた姉妹なんだから当たり前だ。
 そう、今私の目の前にいるのは、

「おねえ……ちゃん」

 ――月村忍。

「違うわ、今の私はあなたのお姉ちゃんじゃない」
 
 一歩、前に踏み出てお姉ちゃんは言った。

「今の私は――」

 いつも通りの優しい笑みじゃなくて、どこか冷たくて、綺麗で妖しい笑みを添えながら。

「――夜の一族……なんだから」

 なんでだろう……お姉ちゃんがすごく遠く見えた。

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