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2007.07/13(Fri)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第九話 Bpart 


【More・・・】


「吸血鬼ぃ!!?」

 海鳴の外れにある一軒家。そのリビング一杯にアリサちゃんの声が甲高く響き渡った。
 あんまりな大声と驚きように回りに座っていたわたしたちはもちろん、原因を言ってしまったユーノくんも顔をしかめている。

「そ、そう、こっちの文献と照らし合わせてみたから間違いないと思うよ」
「被害者全員に共通した痕跡とか目撃情報とか裏は取れてるしね」

 エイミィさんがリモコンを押すとテーブルの上に大きな空間モニターが形成された。
 襲われた人たちの写真に、その横にはいくつかの共通点を示す写真が映し出されている。

「大体ねぇ、このご時世にそんな時代遅れなモンスターなんていないでしょ」
「あれって確か外国のお話だよね」

 証拠を見てもなんとなく納得しっくりこない。わたしもアリサちゃんに頷きながら紅茶を一口。

「もうアリサちゃんもなのはちゃんもこういう所は鈍いんだから」
「なによすずか、あんたはいるとでも思ってるの?」
「私だって思ってないよ。でもジュエルシードなら何でもありでしょ?」
「あっ、確かにジュエルシードなら……」

 すずかちゃんに言われてはっと気づく。
 願い事をなんでも叶えられるジュエルシードなら吸血鬼とか幽霊とか、それこそなにが出てきたっておかしくない。

「……恐るべしね、ジュエルシード」 
「でもしょうがないと思うよ。こういう形でジュエルシードが発動することって珍しいから」
「なら最初からジュエルシードの仕業って言っときなさい! マネージャー失格!」
「こ、今度から気をつける」

 ……。

 ユーノくん、マネージャーは否定しないんだ……。

「それでユーノ、相手はどんな相手かどれくらいわかってるの?」
「ああ、それは」
「この私に任せなさい!」

 胸を張ってエイミィさんが立ち上がった。
 モニターを横に手早くリモコンを操作していくと、今度は町の見取り図が画面いっぱいに映し出された。
 こほん、と咳払いをしてわたしたちの顔を一度見回してからエイミィさんは喋り始める。

「最初に事件が起きたのは5月27日、22時38分。被害者は大学生、帰宅途中に襲われたと見て間違いないわ」
「はい! エイミィさん」
「なに? なのはちゃん」
「どんな風に襲われたんでしょうか? 写真だけじゃよくわからなくって」
「そうね、被害者全員共通した襲われ方はしてると思う。私の勝手な推理でよければ……いい?」
「お願いします」

 うん、とエイミィさんが頷くと、モニターの中にあった最初の被害者の写真が拡大される。
 鮮明になる画像に思わず息を呑んでしまった。

「おそらく犯人は無理強いに相手を襲ってはないと思うの。この傷跡をつけるにはどう見て後ろから、なんてできないし」

 被害者全員に刻まれた共通の印。エイミィさんの言う通り、多分この人たちはみんな同じ方法で犯人に襲われているはずだ。
 右の首筋にぽつんと二つ。映画で見るように本当に牙が突き刺さったみたいな跡が、どの写真にも同じように写っている。

「じゃあどうやって襲ったんですか?」
「まさか頼み込んで血を吸わせてもらったとか?」

 二人と同じ疑問はわたしにもある。
 写真はこれだけでモニターに書いてある事を見ても、他に怪我は一切してないって書いてあるし。

「それはきっとチャームだね」
「チャーム? ユーノくん知ってるの?」
「うん、魔導師ならみんな知ってる」

 チャームってよく綺麗な女の人が男の人を見つめてメロメロにしちゃうあれのことかな?

「目が合うとかかるんだっけ?」
「正解だよ、なのは」

 やった、当たった。
 でもそうすると犯人は魔導師……?

「けど言葉とか仕草とか、方法は様々なんだ。目を合わせるだけなら動物とかでもできる」
「それじゃ犯人はコウモリよ! 吸血鬼のお供といえばこれに決まってるじゃない」
「でも動物ならこんなに規則正しくしないと思うけど……」

 すずかちゃんの言う通り、もし本当にコウモリならこんな風に首ばかり狙ったりするのかな?
 これじゃまるで誰かが吸血鬼だってことを証明するみたいに事件を起こしている感じがする。

「そうね、だからこれは多分人為的犯行。その証拠がもう一つあってね」
「もう一つ?」
「実は本日6月2日までの被害者五人全員に、血液を吸引された形跡がないの」
「ってそれ吸血鬼じゃないじゃないですか!」

 アリサちゃんが勢いよく突っ込んだ。
 エイミィさんが言ったことが本当だったら犯人がただ噛み付いているだけってことになって……。

 なんだかわけがわからなくなってきたんですけど……。
 そうやってわたしが戸惑っている間に今度は隣のすずかちゃんが口を開く。 

「エイミィさん、ジュエルシードって人間に取り付くことってあるんですか?」
「もちろん。以前のケースの中に人の願いを核にした発動体が出現したって聞いてるし」

 エイミィさんがわたしを方を見る。
 確かにわたしは以前、ジュエルシードに取り込まれた男の子と女の子を助けたことがある。
 男の子一人の願いが町中を大変なことにして、わたしが自分の意志でジュエルシードを集めようと決めた事件だ。

「誰かがジュエルシードに取り込まれて吸血鬼まがいの犯行を行っている。そう考えるのがベストだね」
「じゃあさっさと捕まえましょう!」
「焦らないアリサちゃん。相手の正体がわからない以上無駄に動くのは厳禁よ」
「でもこれ以上被害者は増やせませんよエイミィさん。わたしたち大丈夫です」

 一人じゃない。今は二人がいるから絶対大丈夫。
 それに動物や植物が巨大化するよりかは、小さい分てこずる事だってないと思う。

「そうだね……なんてたって三人はストライカーズだもんね」
「そうです! アタシたちは魔法少女戦隊リリカル・ストライカーズなんですよ!」

 息巻きながら両手を胸の前で拳にするアリサちゃん。続いてわたしもすずかちゃんも一緒に立ち上がる。
 三人分の視線を浴びては流石のエイミィさんもちょっと困った顔でたじたじ。

 もちろん先に折れるのは――

「……わかった、お姉さんの負け。実の所そろそろ本格的に動き出さなきゃちょっちまずいかなって思ってたとこだしね」

 少し呆れられてるけどエイミィさんも協力してくれることを約束してくれた。これでほんとに怖いもの無しだ。
 隣ではアリサちゃんが得意げな顔をして、すずかちゃんがうんうんと頷いて、二人ともクッキーを口の中へ放り込む。
 わたしも一緒に放り込んで紅茶を飲み干した。

「じゃあ早速今夜にでも作戦開始と行こっか。どうせみんなやる気満々でしょ」
「あったりまえです!」
「作戦はいつも通りでも大丈夫ですよね?」

 いつも通りの作戦はすずかちゃんが魔力探知で町中を探して、わたしとアリサちゃんで一気に叩く。今のところ打ち破られたことの無い完璧な作戦だ。

「それじゃあ私は夜に備えていろいろと手配しておくから」
「はい、お願いします」

 きっとすぐに終わる。

 絶対大丈夫だってこのときのわたしは――多分アリサちゃんやすずかちゃんも思っていたけど。
 
 まさかあんなことになるなんて思いもしなかったのです。

* * *

「ありがとうございました」

 今日最後のお客が店を出て行く。
 設えた鐘が扉の閉まりに合わせて何度か揺れて、鳴り止んで、俺は外に出て『Closed』と丸文字で描かれた木札を扉に下げた。

「さて……」

 一息つく間もない。外に出していたテーブルや椅子を次は店の中へ仕舞いこむ。
 いつもは松尾さんやバイトがするものだが、とかく言う前に俺も今はバイトの身。当然の義務だ。
 店内では床の清掃に、明日の仕込みに、おのおのが奔走している。
 最近では見慣れた風景でもこの年でこの喧騒に包まれたのはもう何年ぶりか。

「……あのころも大変だったな」

 父さんが大怪我を負って入院して、翠屋の人手が足りなくなって。
 あの時も母さんの手伝いになろうと大人たちと一緒に翠屋の中を駆け回っていた。時には、というかほとんど終わりまで店を手伝っていた。
 母さんは遠慮していたが厨房だけでなくフロアの仕事まで掛け持ちしていたら――縁起でもないが母さんまで病院送りだ。
 美由希は父さんにつきっきりだったし、なのははまだ小さかった。家族を支えるのは自分しかいないって我ながらよく頑張っていたと思う。 

「鍛錬より体に堪えたよな」

 父さんがいなくても鍛錬だってやらなきゃいけないって息巻いておきながら、気がつけば朝だったなんてことはざらだ。 
 普段使わないような筋肉を酷使したせいなのか流石に苦笑するしかない。

「さてこれで全部か」

 力仕事は男の仕事だ。手際よく全部店の中に納めて、残っている仕事は厨房の中か。
 次々に帰宅するバイトの子達に労いの言葉をかけて俺は携帯の電源を入れた。
 てっきり忍からメールがあるかと思ったが、受信しても来るのはクラスの友人だけで他には何もなし。

「…………」

 着信も何もない液晶を見つめながら携帯を閉じた。
 たまにはこういう日もあるのだろう。
 それとも俺の態度に呆れられたか……。

「大丈夫か……忍のことだしな」

 彼女を驚かすためとはいえ忍を最近は邪険にしすぎたかもしれない。
 けど目的の額にはまだ微妙に足りないのが現実だ。もう少しバイトに専念しないといけないだろう。
 少しくらい嫌われることは覚悟しなくちゃならないみたいだ。それでも俺が何のためにこんなことをしていたか知ればすぐに帳消しのはず。
 抑圧するのは忍びないが、その分受ける喜びも大きいのは誰だって同じなはずだ。

「そんなに気にしてるならデートにでも誘ったら?」
「母さん……」
「いくら恋人でも放って置かれるのは母さん辛いと思うけどな」

 いつの間にかカウンターに顔を出していた母さん。
 明日の仕込みは終わったのか、それともまた父さんに押し付けているのか……。諭すような柔らかな笑みはなにか企んでいると思うのは邪推というものなのだが。

「仕方ないさ、あれがなくなったら元も子もないし」
「そんなに欲しいものなら予約しておけばいいじゃない?」
「それじゃあフェアじゃないだろ。買うまでは俺だけのものじゃない」
「変なとこで拘るのね恭也」
「俺の好きだろ。母さんこそ何か用なのか?」

 俺の問いに母さんは口を開かず、代わりにエプロンのポケットに手を突っ込む。

「ん~、恋に悩める我が息子にすこし手助けを……なんて思ってね」
「手助けも何も恋には悩んでないよ」
「母さんお節介はありがたく受け取りなさい。……はい!」

 手渡されたのは長方形の紙切れ二枚。
 見れば遊園地のチケットで、母さんのお節介がなんなのかすぐに読めた。

「行く暇があったら働いた方が」
「その分の給料と労働時間は保障してあげるから。女の子はね、構ってあげないとすぐに拗ねちゃうものなんだから」

 確かに忍なら尚更そうなりかねないかもしれない。いや、多分今頃ベッドに寝転がりながら拗ねている予感がした。
 給料の保証がつくなら……大丈夫か。

「わかった……今度の日曜日にでも忍を誘う」
「うむ、よろしい」
「まったく、こんなことしなくたって俺は」
「はいはい、無駄口叩く暇があったら電話する」

 急かされて、俺は再び携帯を広げる羽目になる。こういう時の母さんには高町家の男はどんな手を使っても敵わないのだ。
 まったく父さんの苦労が身に沁みる。

「じゃあ、私は明日の仕込みと。士郎さんばかりに押し付けちゃ今度はあの人が拗ねちゃうからね」

 笑みを浮かべて厨房へ舞い戻っていく母さんを尻目に、既に俺の携帯は忍の家に向けて電波を飛ばしている真っ最中だ。
 電話をかける先が忍の携帯なのであっちの事情をそれほど気にする必要がないのは、世の中便利なものになったものだ。
 しみじみ思っていると聞きなれた声が耳に届く。

「あっ、忍か」
『恭也……どうしたの?』
「突然だけど今度の日曜空いてるか?」
『日曜? なぁに、デートのお誘い?」
「ん、まぁな」

 早速見透かされている俺の――母さんのともいうが――考え。

「遊園地なんだが……いいだろ?」
『ん~、遊園地ねぇ……』
「忍?」

 やけに間延びして聞こえてくる声。寝ていたのか忍の声はどこか気だるい感じがした。
 それから返事が来たのは結構後の方だった。てっきりまた寝てしまったのかと思うくらいに。

『ムリなお願いね……』
「そうか……」

 忍のことだからてっきりOKの返事が貰えるかと思ったが結果は違った。

『以前の私なら喜んで行くつもりだったんだけどね。一足遅かった……って感じかしら』

 相変わらずの調子で続ける。言葉から察するに何か予定が入ったのだろう。
 それなら無理には誘えないな。

「そうか、なら構わないさ。それじゃあいつなら空いてる?」

 一応、他に日取りがあるか聞いておく。
 後ろに母さんがついている以上、その好意は粗末には出来ない。

『生憎だけどね、もう私、恭也と遊ぶつもりないの』
「は?」
『実はね夢中になれることを見つけたの。だからもうあなたと遊んでる暇なんて無いのよ』

 不覚ながら自分の中の時間が一瞬止まった。

「い、いきなり何言ってるんだ忍。いや、確かに俺が悪かっ――」
『時間だから、じゃあねバイバイ』
「お、おい忍!」

 プツ――と電話は切れた。後には虚しくツーツーと単調な音が続くばかり。
 今までにない忍の一面。気がつけばうろたえながら棒立ちする俺が一人残される結果となった。

「なんだよ……一体」

 そんなに放っておかれたのが嫌だったのか? それなら言ってくれればいいのに……。
 怒っているわけでもなく、呆れているわけでもない。例えるなら本当に新しいおもちゃを貰ったかのような弾んだ声。

「恭也~忍ちゃん誘えた?」
「ん、あ、ああバッチリだってさ」

 一方的に電話切った忍に少しの苛立ちと戸惑いを覚えながら、俺は母さんに悟られぬようわざと口を緩ませながら携帯を閉まった。
 やはりいけないのは俺なのだろうか。
 だが今更引き返すことなんて出来るか。目標まで後一歩なんだ。忍にはもう少しだけ我慢してもらう。夢中になれることがあるならそっちで暇を潰せばいい。
 俺は忍の恋人だ。あいつのことは俺が一番良くわかってる。

 だからきっと大丈夫さ。

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