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2010.12/06(Mon)

魔法少女リリカルなのはSTEP 番外 


【More・・・】


 ――これはあの事件から平和になってしばらく経った、とある夏の日のお話。

 ミーンミーン……。
 
 ジージー……。

 この夏の風物詩は毎年毎年なぜこんなにも律儀に暑さを盛り立てようとしているのか。
 そりゃあ六年か七年も土の中にいれば鬱憤も溜まるだろう。それをぶつけようとしているのか、ぶつけるのに必死になって寿命一週間ならもっと有意義にこの夏を楽しめばいいのに。
 だからといって夏のビーチにセミがパラソル並べて寝転がられても――。
 その……すごくシュール。

「バリアジャケットって温度対策バッチリじゃなかったわけ~?」

 ぐったりと、そりゃもう溶けてしまっているようにテーブルの上に突っ伏してアリサはかすれ声で呟いた。
 ちなみに彼女の脳裏では今度はセミがビーチバレーに勤しんでいる光景が映し出されている。
 なぜか人間並みに巨大でやけにリアルな姿なのが不気味というか――。
 やはり……シュール。

「ちゃんと術者を守るために標準装備されてるはずなんだけど……」

 額に汗の玉を浮かべてフェイトが申し訳なさそうに答える。
 テーブルに並べられたコップには翠屋特製のアイスティー。ユーノが気を利かせて転送魔法で――アリサに命令されたという前口上はあえて言わない――運んできたのだ。
 さすがマネージャー。
 けど悲しいかな。そのアイスティーは半分以上を残してそれはそれは綺麗に二層に分離していた。少女たちは別のものに夢中であった。

「なんていうか気分の問題かも」

 既に半身が無くなっているソーダアイスを頬張りながらなのはは苦笑い。ゴミ箱の中にはもう9本の木の棒が煩雑に積み重なっている。
 この部屋にいるのは五人。なのは、フェイト、アリサ、すずか、マネージャーもといユーノ。
 計算上なのはがこれを食べ終われば全員が二本、アイスを平らげたことになる。コンビニで買ってきた箱入りアイスはものの十五分で完売御礼だ。

「もう勉強って状態じゃないよね」

 純白のマントもジャケットも外して、珍しくアンダーのみで絨毯に正座するすずか。やはりお嬢様は礼儀作法に完璧だ。
 ひょんなことからバリアジャケットに耐熱耐寒と温度対策が成されているという話が持ち上がったことから、この灼熱地獄を克服するためバリアジャケットを着込んでいる四人。
 だがそれでもこの日本の夏はそんな魔法防御をあざ笑うように彼女たちに試練を与えた。
 ああ、科学の力はやはり大自然の前では無力に等しいのか。
 誰ともなくそんなことを思う。

「しょうがないよ……この次元もいろいろあったから」

 転がっていた長細い毛の塊が身動き一つせず弱々しく鳴いた。
 彼だけはジャケットではなく毛皮。十八番の変身魔法なのはいろいろ理由があるから。

「きっと魔法にもいろいろ影響が出てるんだよ……。ところで元の姿に」
「却下」
「うう……」

 少しでも人口密度を減らせば暑さだって和らぐだろう。提案したのはアリサであって、賛成したのは全員。
 フェレットに夏の暑さは大敵なんです。と言っても中身は人間。そんな訴えも四人の前には無力。
 尻に敷かれる――最近はそんな暮らしにも慣れました。

「ごめんね、エアコン壊れちゃってて」
「なのはのせいじゃないんだから……気にしなくていいわよ」
「そうだよ、こういう体験も貴重だと思うよ」
「私は日本の夏って始めてだし」

 フェイトの国語力を高めるために夏休みを利用した勉強会。たまには趣向を変えてなのはの家で、ということになったまでは良かったのだが。
 急に機嫌を損ねたエアコンは風すら出さず壁にかかる白い箱。窓開ければ天然のエアコン――温風しか出ない。

「翠屋はお客でいっぱい……今更他の家にはいけないし……」

 他に冷房の効いた打ってつけの場所は無いのだろうか。
 生憎候補はどこにもない。まさか海やプールで勉強会は開けまい。それにまた裸体で戦う羽目になるのはごめん被りたい。
 特になのはに至っては……。
 ――聞くな。

「ああもう! 今日は勉強終わり! こんな環境下じゃ九九だって覚えられないわよ!」

 まずアリサが匙を投げた。

「そうだね、アリサの言う通りかも。私も……限界」

 珍しくフェイトが脱落。ミッドチルダ出身にこの暑さは厳しいようだ。

「わたしも駄目かも」
「なのはちゃんに同じで」

 残りも連鎖的に脱落していった。

「…………」
 
 すでに物言わぬ小動物は脱落していたり。
 むしろ危険ではないか?

「ねぇ、アースラはどうかな?」

 そんな中、ふとフェイトが口を開いた。
 その発言に、三人の顔が彼女へ向けられる。聞きたい、ぜひ聞きたい、そんな彼女たちの意思を酌んでさらに続ける。

「でも私用で使うとやっぱり母さんや兄さんに怒られるかな……」

 ――日和見発言。
 どっちつかずの返答に彼女たちの首はがっくりと垂れた。
 だがただでは垂れない少女がこの中にはいた。
 四人の中でただ一人、暑さに熱暴走しかけた頭脳を回して、彼女は飛びっきりのインスピレーションを閃かせたのだ。
 彼女は心中ほくそ笑んだ。これなら私用じゃない、立派な、アースラの協力者としての立派なお仕事だ。

「諦めるのはまだ早いわ……。フェイト、あなたの生み出してくれた希望は無駄にしない」

 リーダーとして、まとめ役として。アリサ・バニングスは今ここに宣言する。

「この暑さに……反逆してあげる」

 彼女の目には眩く、熱く、炎が渦巻いていた。

 それは夏の太陽を遥かに凌駕していた――。

* * *

「プロモーション……?」 

 現在いつもの停泊地――言わずもがな海鳴の海底――に認識阻害バリバリに効かせて鎮座しているのは毎度お馴染みの次元航行艦アースラである。
 首尾よく整備を終え、地球へ定期監視に訪れている中そんな任務とはかなりかけ離れたフレーズにリンディは首をかしげた。
 手元のアイスティーの底には真っ白な地層が堆積している。そこまで入れるのか……誰もが突っ込みたかったけど今はそれどころでは無い。

「はい、ご存知の通りアタシたち四人プラス一人で今まで頑張ってきました。多分、これから先も何か事件があればお手伝いすることもあるんです」
「それで?」
「これからもチームとして一つ団結力を高めるための特訓をしたいんです。そのためには今回のプロモーション製作がとても重要なことなんです」

 さすが会社令嬢。交渉の仕方は様になっている。

「それでアースラの設備を借りたい……という訳かしら」

 話が分かる相手だ。と、アリサは内心ガッツポーズ。
 向こうだって提督なのだ。そのくらいすぐに察しがつくのだろう。

「ん~、いいんじゃないかしら? 確かにみんな頑張ってきたんだし記念代わりにそういうのを作っても」
「駄目だ、魔法訓練ならまだしもそんな芸能活動じみたこと」

 淡々と、話は上手く進まなかった。
 そう、この堅物がいた。この仕事馬鹿の執務官が。
 クロノ・ハラオウンが。

「もしも緊急のことがあったとき誰が責任を取るんだ? 確かに君たちは今回の事件に功労者であり感謝すべき存在だがそれとこれとは――」

 くどくどくど……。小姑のごとくお説教が幕を開けた。
 こんなものを聞くためにアースラにわざわざ来たわけではないというのに。こんな耳の毒を聞かされてはせっかくキンキンに効いた冷房で涼んだ体がまた温まってしまいそうだ。
 すでに3℃、彼女たちの体感温度が上がった。

(フェイト……一思いにやっちゃいなさい)
(うん、全力でかかるね)

 そっちがそっちならこっちもリーサルウェポン投入。 

「あの、どうしても駄目かな……兄さん」
「フェイト……妹の頼みでも」
「お願い……お兄ちゃん」

 ぜんまいが切れた。
 突如クロノの動きが停止した。続いて紅潮する頬。

「い、いやだから……」
「記念ぐらい、いいよね?」

 キラキラと星でも出そうな潤んだ瞳で、クロノを見つめる無垢な少女。
 弱いのだ、その視線にクロノは。最大の弱点なのだ。
 すでに彼の中で何か大切なものが崩れた。

「しょ、しょうがないな。た、但しあまり長くは使うなよ……」

 心の中で全員がハイタッチを交わした。気分で言うならまさにそれ。

「ありがと……お兄ちゃん」

 とどめの一撃! こういうところは普段のフェイト同様、手は抜かない。
 クロノはクロノで

「ん……」

 真っ赤な顔で軽く手を上げた。
 これでしばらくアースラで涼める。アリサの一計は完膚なきにアースラを、クロノを屈服させたのである。

* * *

 どこかの次元のどこかの平原。
 整然と、しかしある種の貫禄を漂わせて少女たちが杖を構えて佇んでいる。
 気候風土はすこぶる良好。まるで高原にでも旅行に来たみたいに清涼な風が吹き抜けていく。
 ああ、夏の太陽しばらくさようなら。今日は日がな一日ここでのんびり過ごさせてもらいます。
 そんな感じでまったりとしている四人の元へ、監督役のエイミィが通信音声最大で呼びかける。

「はーい! じゃあみんな準備はいいかな?」
『バッチリです! エイミィさん!』

 モニターの中でなのははこの上なく上機嫌で、

『綺麗に取ってくださいね! 一応、アタシたちのデビュー作品ですから』
「はいはい」
 
 アリサはくるりとデバイスを片手で一回転、

『え、えとエイミィ……つき合わせちゃってごめんなさい』
「いいのいいの! 細かいこと気にしない!」

 遠慮がちなフェイトの背中を押して、

「じゃあ最高画質でお願いします」
『もち! 容量はたっぷりあるからね!』

 どんな注文にも答えて見せよう。
 コンソールを目まぐるしく叩きながらエイミィは暇な日常に降ってきた思わぬ娯楽にノリノリであった。

「えと……いいのかな僕が入っても」

 アリサを中心にずらりと並んだ少女たちの只中、一番右端に配置されたユーノは恐る恐る尋ねた。ちなみにちゃんとした人間形態。

「色合いとバランスを考えるとこうなるのよ。そりゃあもう一人魔法少女がいるなら別だけど」
「あっ、やっぱりそうか」

 つまり穴埋めですね。
 偶数じゃ画面映り的にもなんとなく見栄えが悪いし。

「大丈夫、カッコよく取ってくれるから、胸張ってユーノくん」
「なのは……」
「いつも頼りにさせてもらってるし」
「うん」

 これは役得なのだろう。
 想いを寄せる少女の一言にどうでもよくなった。

「で、みんな名乗り口上は完璧でしょうね?」

 魔法少女戦隊を飾る名前はもうすっかり馴染んだものがあるのだが、肝心の名乗り口上や決め台詞など決めることをすっかり忘れていた四人である。
 実際その全てが決まったのもアースラへ赴く数分前。なのはの部屋で五分とかからず採択されているのだが。 

『では、みんなオッケー!?』

「「「「「はい!!」」」」」

 それではポチッとスイッチオン!!
 押されるエンターキー。流れ始めるBGM。
 一昔前の特撮を思わせるような、レトロチック音楽が鼓膜を震わせ、その中で少女たちが高らかに叫ぶ。

「この手に宿るは星の光! リリカルなのは!」

 どこまでも真っ直ぐで、

「この手に宿るは凛々しき雷! ライトニングフェイト!」

 誰よりも気高き心を持って、
 
「この手に宿るは猛き炎! バーニングアリサ!」

 希望をかざす少女たち。

「この手に宿るは優しき風! ノーブルすずか!」

 その名をここに――

「無敵の絆はこの胸に! 勇気の魔法よ今ここに!!」
(えっ!? 僕台詞なし!?)

 轟かせた。

「「「「魔法少女戦隊!! リリカル!!」」」」

 風を切る相棒は光放って、

「「「「ストライカーズ!!!」」」」

 ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 五人の背後から爆炎が咆哮した。

「うわあああああ!!!」

 そして男が一人、爆炎に空を舞った。

「あっ、ユーノくんが!!」
「あら、火薬の量間違えたしら……?」

 ちなみに火薬とは名ばかり。実際はアリサのスプラッシュバーストだ。

「やっぱり……僕ってこんな扱いなんだ」

 遥か地平線まで吹っ飛ぶ勢いで空を翔ける少年は思う。
 炎はすごく熱くて、涼みに来たことが嘘みたいだ。
 むしろマントが燃えている。
 でも、四人の笑顔を見てるとやっぱりどうでもよくなって。これがいつまでも続けばいいと、素直に思った。

「じゃあエイミィさん、今のでお願いしますね」
『はいはーい! ばっちりいい絵が取れたし、永久保存版にするよ!』

 NG無しの一発撮り。端から一人だけ吹き飛んで行ったのはとしては絵的にはギャグ調ではあるが、編集すれば問題無いだろう。
 前向きに考えつつ、アリサはエイミィにGOサインを送るわけで。

「微笑ましいわねぇ」
「ですねぇ」
「親バカかもしれないけどフェイトも綺麗に撮れてるし。知り合いみんなに配りたいくらいだわ」
「じゃあ何枚かデータコピーしておきましょうか」
「そうねぇ、手始めに1000枚くらいお願いしようかしら」

 て、おい。

「あっでも、せっかくだからちゃんとしたレーベルも入れないといけないわね。パッケージだってしっかりしたものにしないと」
「それじゃあもういっそ売り出しちゃいまょうか?」
「意外といいかもしれないわね」

 何勝手にあなたちは話を進めているんですか。

「儲けは全部アースラ持ちで!」
「当然じゃない」
「ついでに映画でも作っちゃいましょうか!」
「それならいっそフェイトとなのはさんの出会いから今までを辿る大長編で」

 もう、頭の中では次のイベントの計画案が進行中。アイドルユニットでデビューするのも夢じゃない。
 目指せ、100万人コンサート!

「……もう好きにしてくれ」

 ただ一人、執務官は涙した。
 

 こうしてとある夏の日は笑顔と共に――。

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