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2010.09/04(Sat)

俺は何を書いていたんだ 


いやもう9月だし

なんかカウンタ見たら9万こえたし

ありがとうだし


で、この数日でなぜか前回のスト魔女アナザー展開を作っていたり

時系列気にせず、今回はシャーリーとの好感度が一定以上の場合に起きるイベント的なお話


割と突貫工事で作りました。


【More・・・】


 飛べなくなること。

 それはわたしが心の奥底で一番恐れていたことなんだ。
 ウィッチとして空を翔け抜け、遅い来るネウロイを倒し、みんなを、大好きな人たちを守る。
 わたししか出来ない、わたしだから出来ること。どんな時だってわたしは「守る」そのためだけに空を飛んできた。それはきっとこれからも、ウィッチとしての戦いが終わるまで絶対に変わらないもの。
 
 そう……思っていたはずなのに。

 今わたしの目の前には大きな壁が通せんぼしてる。とても大きくて、大きすぎて乗り越えることを諦めさせてくるくらいに。壁の影に覆い隠され、心も暗闇で塗りつぶされて……。
 出口の無いトンネルをただ歩き続けているようにわたしの心はしおれていくばかり。
 飛ぶことを忘れた鳥はどうなるの? 飛ぶことを忘れたウィッチはどうなるの?

 飛べなきゃ戦えない。みんなを守れない。わたしにとっての今のすべてが空にあるのに!
 
「……なにがいけないの?」

 自分に問いかけても答えなんて返ってこない。
 ストライカーも、自分の体調も、考えられるありとあらゆるものを調べてもらった結果に突きつけられたのは「原因不明」という容赦ない事実だけ。
 ついに飛ぶことさえ禁止にされて今にまで至る。
 
「治癒魔法だって……シールドだって張れるのに……どうして」

 基本を忘れたせいなのかも、そう思って夜の格納庫で隠れてホウキに跨ってみたりもしたけれど、少しだけ浮くだけが精一杯でついにはホウキを壊す始末だった。
 だから昨日の夜はいつもみたいに寝つけなくて、何度も寝返り打って、ついにはリーネちゃんにまで心配かけちゃって最悪だった。
 結局まどろむ程度が昨日のわたしの限界で、夜明け前にはすっかり目も冴えてしまって、ただ当ても無くフラフラ歩いてこの場所に辿りついた。

「……わかんないよ、助けてよ……」

 薄暗い格納庫はまだここが夜みたいに錯覚させてくる。わたしは膝を抱えて自分のストライカーに寄りかかり朝を待っていた。もう他にすることが思いつけないから。
 ううん、泣くこと以外に思いつかないから、だ。
 
「助けてよ……お父さん!」

 こんな惨めな姿お父さんに見せられない。約束を満足に果たせないわたしはもう役立たずの女の子だ。
 もしかしたら明日には扶桑に帰されるかもしれない。湧き出してくるのは真っ暗な未来ばかりで希望なんてどこにも見つからない。
 そんな逆境を跳ね除ける強さが欲しい。坂本さんみたいな凛々しくて、諦めない強さが欲しい!
 でも強くなんてなれない。強くなろうと思った矢先にこれなんだからどうしようもない。

「強くなっちゃ……駄目なの……いけないことなの?」

 誰も答えてくれない。だからせめて今だけはここで暗い気持ちは吐き出そう。吐き出してみんなに心配かけないように笑顔にならなくちゃ。

「――あ~、どこにやったのかなぁ……。まさかルッキーニのやつが持っていくわけ……あるか? いや確かにここに置いて――」

 びくん! 擬音が目に見えてきそうな勢いでわたしは体を震わせた。
 誰もいないと思っていた格納庫に誰かがいる。唐突に耳に届いた声は空耳じゃない紛れも無い本物の人の声だった。

「おっ! なんだこんな隙間にあったのか! いい加減同じサイズのレンチ買わないとな……おっと! 手が滑ったー!」

 最後だけ妙にわざとらしい口調と一緒に響く金属音。カラカラカラカラ――何かが転がるような音がする。音はそれほど時間をかけず鳴り止んだ。

「悪い悪い! ちょっとそこの彼女それ持ってきてくれないかーー!」

 わたしの目の前でピッタリ停車したのは所々機械油にまみれたスパナだった。
 
「シャーリーさん……」

 絶対わざとだ。もしかしたらわたしが格納庫に来る前からいたのかもしれない。
 じゃあ今までの全部聞かれちゃった……? 途端に顔が熱くなって辺りをきょろきょろ見渡した。まさかみんないましたとかそんなことないよね?
 いない、と前向きに考えてわたしは転がってきたスパナを拾い上げた。
 火照った顔とは対照的にスパナはひんやりと冷めていた。

* * *

「なるほどな……まぁ大体の話は聞いてたけどさ、まさかそこまで重症だったのか」
「はい、ほんと急になんです。急にストライカーの調子が悪くなって、飛べなくなって」

 あれから少しだけ時間が経った。その少しだけの間にわたしはシャーリーさんに今までのことを話し続けていた。わたしは相変わらずうずくまったままでシャーリーさんはその側で同じようにストライカーに寄りかかりながら話を聞いてくれた。

「こんなわたしじゃ501のお荷物ですよね。今ネウロイがやって来たらわたしきっと戦えない。もしかしたらその内普通に飛ぶことすら出来なくなるかも」
「ならいっそのこと飛ぶの止めたらどうだ?」
「――そんなの嫌です!! 飛べなくなったらわたしに何が出来るんですか!! ほんとに役立たずじゃないですか!!」

 酷い、何もそんな言いかたしなくても。
 そんな抗議の代わりに喚き散らすのが今のわたしだった。わたしとシャーリーさん以外誰もいない格納庫にそれは良く響く。

「あっ、いや悪い、そういう意味で言ったんじゃなくてさ……。その……なんだ、気楽に考えたほうがこういう時はいいだろって思っただけ、ほんとそれだけ」
「気楽になんて……無理ですよ」
「だってハッキリとした原因だってわかってないんだろ? ならそれがわかるまでウジウジするのは早いと思うけどな、あたしとしては」

 確かにシャーリーさんの言うことはもっともだ。でもその原因がどうしてもわからないからこうしているのに。これ以上どうすればいいのかわたしには答えが出せない。
 自然と顔も俯き加減になっていく。

「ん~……なんというか、宮藤がそんな感じだとあたしも調子狂っちゃうんだよ。もちろん基地のみんなだってそうだと思うけど」
「そんなこと言われても……」
「さっき言ったよな、飛べない自分は役立たずだって。それは大間違いだって最初に言っておく」
「え……・? でもわたし――」
「ああもう! みなまで言うな! 飛ぶだけならウィッチはみんな出来る。ほんとに飛ぶ以外に何もないわけじゃないだろ?」

 それって治癒魔法が使えることを言っているのかな?

「まず宮藤の作る扶桑の料理は美味い! 次に宮藤が頑張っている姿は微笑ましい! そして宮藤の慎ましい胸は時々羨ましい! あんまりグラマラスだと肩が凝っちゃってさ、あっはは!」

 ……全然違ってた。

「あのシャーリーさん……」
「ん? 何か間違ってたか?」
「あのそれは多分大丈夫ですけど……治癒魔法とかは」
「あっ、それもあったか。ごめん、忘れてた」

 わたしが一番大事なことだと思ってたことがどうでもいいことにされてる……。やっぱりわたしってそのくらいの扱いなんだ。

「ようするにだ。宮藤の考えている以上にあたしらは宮藤の世話になってるんだよ。魔法のことなんてわすれるくらいにね」 

 気がつくとシャーリーさんが目の前にいた。わたしの顔を覗き込むように眺めている。
 目が合った。ニヤッとシャーリーさんが笑った。

「おまえが501に来てからみんな変わった。リーネにペリーヌ、サーニャや……バルクホルンもか、いやあれは変わりすぎかな」
「そうですか……?」
 
 とてもそんな気がしない。だってみんなは最初からみんなのままで、変わったなんて思える実感がないんだから。

「あっ、今変わってないって思っただろ宮藤~」
「……はい。だってほんとうのことだから」
「あははっ! そりゃ本人にはわからないだろうけどさ。まぁ、宮藤が来る前の501を見ればわかるかもしれないけどね」
「はぁ……」
「宮藤が繋げたんだよ。バラバラだったみんなを一つに。だから今の501があるんだ。みんな笑って馬鹿できるくらいに自由奔放な501がね」
「そんなことバルクホルンさんの前で言ったら呆れられますよ」

 実際、シャーリーさんとバルクホルンさんは何かと衝突してることが多い。主にシャーリーさんのだらしなさをバルクホルンさんが注意する形で。

「あたしは好きだけどねぇ……だからあいつは堅物なんだ。宮藤がいなかったら今頃あたしでも手に負えないほどガッチガッチの人間になってただろうな」

 ガッチガッチ……。
 何故だか筋肉モリモリのバルクホルンさんが脳裏に浮かんだ。ほんとに何故だか知らない。

「たまにはガス抜きしてやらないと責任感で押し潰されるタイプだからな、アレ。……そういえば責任感で潰れそうになってるのは目の前にもいたなぁ。案外、実は生き別れの妹なんじゃないか?」
「えぇーー!? そ、そんなことあるわけないですよーー!」

 そりゃあバルクホルンさんはお姉ちゃんみたいで頼もしいなぁって思うときはあるけど。

「でもシャーリーさんってみんなのことちゃんと見てるんですね」
「意外かい?」
「いつもルッキーニちゃんの相手をしてばっかりだから」

 なんというか二人で一つみたいな感じに思えるくらいシャーリーさんとルッキーニちゃんは一緒にいるはずだ。
 多分わたしとリーネちゃんとなんて比べ物にならないくらいに。

「はは、これでも一応は大尉だし部下のコンディションには気を使わないとね、と格好つけてみたり」

 おどけながらシャーリーさんがわたしの隣へ座った。

「みんなほっとけない連中ばかりだからな。性格なんだろうね、これ」
「でも立派ですよシャーリーさん」
「立派なのは宮藤さ。あたしはみんなのことを見守ることしかできなかったけど宮藤はそれ以上のことをやってのけた。みんなの中にぐいぐい入ってどんどん変えていった。今はわからないかもしれないけどきっといつかわかるさ。自分がどれだけみんなを変えていたのかは」

 そこまで言い終えるとシャーリーさんはわたしの肩を軽く叩いて立ち上がる。そのまま元来た方向、シャーリーさんのストライカーがある方へ歩いていってしまった。

「あの! シャーリーさん! わたしみんなと一緒にいてもいいんですか!? 飛べなくてもいいんですか!?」
「それは自分で考えるんだ! 本当に飛べなくなったわけじゃないんだろ? なら飛ぶ方法を探してもいいし、飛ばなくても宮藤にできることを探せばいい! それは宮藤次第だ!」
「――は、はい!!」

 後姿のままシャーリーさんが手を上げた。その指先は真っ直ぐ空を指していた。

「ありがとうございますシャーリーさん! わたし頑張ります! また空を飛べるように! みんなと一緒に飛べるように!」
「ああ、頑張れよ! ……ん? そういえば宮藤」

 シャーリーさんが急に足を止めた。何かを思い出したかのように振り返る。

「おまえストライカーは見てもらったんだよな?」
「はい……でも異常は無いって」
「……ふぅん。なぁ、あたしにもストライカー見せてくれるか?」
「えっ? いいですけど」
「おっ、それなら今やっちゃうか! じゃあさっそくストライカー穿いてくれ!」
「見るだけなら別に穿かなくても……」

 一体どこから取り出したのかスパナ両手に構えながらシャーリーさんがゆっくりと戻ってくる。なんだか歩き方が妙に嬉しそうに見えた。

「一緒じゃないと意味ないんだよ、これがね」

 とびっきりのウィンクしてシャーリーさんが悪戯っぽい笑みを浮かべた。まるで気に入ったおもちゃを見つけたような子供みたいな無邪気な顔だ。
 シャーリーさんは早速わたしのストライカーのネジを外し始めた。

「ほーら、入った入った」
「えぇ……本当に大丈夫なんですかぁ!?」

 そんな状態で動くのか不安になるわたしを尻目にシャーリーさんの手は止まらない。あっという間に外装が引っぺがされて地面に転がっていた。
 ここまで来ちゃったら仕方ない。わたしも意を決して両足をストライカーに突っ込んだ。

 これで飛べるかも――淡い期待をシャーリーさんに全部預けてわたしは魔力を集中させた。

* * *

「つまり……不調だった原因はストライカーのせいだった、ということでよろしいのですわね?」
「はい! ご迷惑おかけしましたペリーヌさん!」
「ほんとこれくらいでいちいち悩まれてはこっちの気が持ちませんわ! 心配していたわたくしが馬鹿みたいじゃないですの!」

 ぷいっとそっぽを向くペリーヌさんは本当にいつも通りのペリーヌさんだ。やっぱり怒らせちゃったことには申し訳ない気がするけど、こうやって練習に一緒に付き合ってくれる嬉しさのほうがわたしの中ではずっと大きい。
 隣にいるリーネちゃんと目を合わせ笑いあいながらそう思う。

「それでまたホウキなんて使って……これで一体何を致しますの?」
「えっと魔力の上手な出し方の訓練です」

 飛べなくなった原因はわたし自身のせいだった。ストライカーを穿いた状態でもう一度全ての機関の点検をシャーリーさんにしてもらってわかったことだ。
 ストライカーが空を飛ぶために必要な魔導エンジン。それにわたしが知らずにいつも以上の魔力を一気に流し込んでたせいで、エンジンを守るためのリミッターが動いてしまい思うように動かなくなったのが事の顛末。
 普通なら魔力の流しすぎでエンジンが止まることはないらしい。だから整備の人たちも見つけられなかった許してやってくれ、というのは坂本さんの弁。
 
「一気に出すんじゃなくて、少しずつ流し込むようにして一番大丈夫なところで止める。そうすれば今のストライカーでも前みたいに飛べるって」

 もちろんその状態から魔力を一気に開放したらエンジンが止まるのは変わらないけど。

「ホウキはストライカーと違って少ない魔力で飛べる分コントロールも難しいし、なにより魔力を入れすぎたらすぐに壊れちゃうし、特訓にはピッタリだって坂本少佐が教えてくれたんです。ねっ、芳佳ちゃん!」
「うん!」
「まったく、それなら坂本少佐の期待を裏切らないためにも一刻も早く飛び方を覚えなさい! わたくしも手伝って差し上げますから!」
「ありがとペリーヌさん」
「お礼は飛べるようになってからでよろしくてよ。ほぅら! とっととホウキに跨りなさい! 時間は待ってくれませんわよ!」

 あの時みたいに三人でホウキの練習だ。ペリーヌさんの言うとおり時間は待ってくれない。いつネウロイが出てこないとも限らない。
 今日一日で魔力の新しい使い方を身につけないと大変だ。
 昨日とは焦燥感がわたしを駆り立てる。不思議と、それは不安を掻き立てるものじゃなくて、わたしはホウキで宙に浮きながらどこかワクワクした気持ちを感じていた。
 これを乗り越えれば今度はもっと大空を自由に飛べるって、そんな他愛のない予感をわたしは心の中に芽生えさせていたせいなのかもしれない。
 
 ――ボン!!

「わっ!? わわ! きゃあーーー!?」

 爆発音がしてホウキがガクンと高度を下げた。お尻にかけていた体重がふわっと消えて、後ろの方から段々落っこちる。

「芳佳ちゃん! ホウキ壊れちゃってるよ!!」

 リーネちゃんの悲鳴と共に後ろを確認すれば、本来そこに束ねてあったホウキの枝は綺麗さっぱりなくなっていた。
 その事実をわたしが知るまでホウキは我慢していたのか、わたしがホウキの有様を確認した次には――。

「……いったぁ~~!」

 思いっきり尻餅をついていた。幸いあまり高く飛んでいなかったから大事にならず済んだみたい。

「あはは、失敗しちゃった」
「大丈夫、芳佳ちゃん! 怪我してないよね!?」
「うん、ちょっと尻餅ついただけだから平気平気!」

 笑って誤魔化して立ち上がる。と、なんだか背中に猛烈な寒気が。

「み・や・ふ・じ……さ~ん!」

 唸り声みたいな低い声が後ろから。恐る恐る振り向けば、

「平気平気……じゃありませんわ! どうしてくれますのこの有様!!」

 体中から枝を生やしたペリーヌさんが物凄い剣幕でわたしに迫っていた。
 どうやらわたしが吹き飛ばしたホウキの巻添えになったみたい。派手に枝を撒き散らしたから当然といえば当然だよね。

「わぁペリーヌさん大丈夫ですか?」
「心配するならこの枝を早く抜いてくださいまし! せっかく手入れしたばかりのわたくしの髪がぁ!」

 ペリーヌさんはあたふたしながら髪の毛にからまった枝を引き抜いていく。ほとんどがペリーヌさんの髪の毛を道ずれにしながら。
 
「あ、あんまり勢いよく抜かない方がいいと思いますけど……髪の毛も痛んじゃいますし」
「リーネさんは黙っててくださいまし! こんな姿誰かに見られたらもうわたくしお嫁に行けませんわー!」
「なんかプチプチ音がする……」
「言わないで! 自分でも嫌ってくらいわかっていますのに! というより張本人が言うことですの!?」
「ご、ごめんなさい」
「誤る暇があったら練習しなさい! 実戦じゃこんな真似できないことくらいわかってますでしょ?」
「は、はい! 宮藤芳佳、頑張ります!」
「よろしい! ああもうわたくしの髪が……髪がぁ……」

 半分泣きべそをかきながら枝と格闘するペリーヌさんを横目にわたしはリーネちゃんのホウキ借り受け練習を再開する。
 ペリーヌさんの言うとおり実戦で迷惑をかけないためにもここが踏ん張りどころなんだから!
 慎重に魔力をこめながら再び空へ。今のわたしに出来ることはこれだけなんだ。これだけって思わなきゃ!

* * *

「まったくおまえには規律以前にマナーというものを知らないのか! 自分のだけならともかく宮藤のにまで手を出すとはどういう根性をしているんだ!」
「あたしだって普通は手を出さないさ。ただ可愛い後輩が困ってるなら手を貸してやるのが上官ってもんだろう? 違うか、バルクホルン大尉」
「うぐ……だ、だがこれでもしものことがあったらだなぁ……」

 練習を終え、格納庫に戻ってくるなりわたしたちを出迎えたのはいつもの二人の口げんかだった。
 わたしたちに気づいてシャーリーさんが手を振った。一方のバルクホルンさんは難しい顔のままわたしたちを見ている。

「おかえり宮藤。で、練習の成果どうだった?」
「はい! おかげさまで何とか形にはなれました!」
「なんとかでは駄目だ! 完璧に仕上げろ! もしもの時に困るのは自分なんだぞ!」
「相変わらず堅物だなぁ、おまえは。まだ一日なんだしそこまで上達しないだろ」
「無理は承知の上だ! せっかく原因がわかって対策を講じられるんだぞ。一刻も早く飛行禁止などという馬鹿げた命令を取り消さないと宮藤だって夜もおちおち眠れないだろう!」
「おまえもおちおち眠れないわけか……大変だなあ」

 ニヤニヤするシャーリーさんと顔を赤くして固まってしまうバルクホルン大尉。なんかんだで心配してくれてるのがわかって嬉しいやら申し訳ないやら。

「そ、それはそっちに置いておけ! こいつが宮藤のストライカー勝手に改造したことをだな」
「なんだよ話聞くなりジェットストライカーを手配しようとしてたやつよりはマシなもんだと思うけどなぁ」
「あれは例え話だ! 出力が有り余るならそれ以上のものを用意するのは当たり前の話だろう! それにあんなどこの馬の骨かもしれんストライカーに宮藤を乗せられるか!」
「自分の国のだろ……しかも最初はあんなに絶賛してたくせに」
「ああ言えばこう言うか……往生際が悪いぞリべリアン!」
「それ、そっくりそのまま返すよ堅物」

 なんだか取り残されてるなぁ、わたしたち。

「あ、あのお二人とも……今は宮藤さんのことでお話があったのではないかと」

 たまらずペリーヌさんが仲裁に入るも振り向いた二人の眼光に「ひぃっ!」と悲鳴を上げていたり。
 それでも効果はあったみたいでシャーリーさんはため息、バルクホルンさんは咳払いをしてこの場をなんとか収めたみたいだ。

「まぁペリーヌに免じてこの場は水に流そう」
「妥当な判断だ。それでこそ軍人というものだ」
「それでわたしのストライカーがどうしたんでしょうか」

 恐る恐るたずねてみた。
 途端に顔を明るくするシャーリーさんにムスッと納得いかなそうに眉をひそめるバルクホルンさん。

「簡単に言えばエンジンのリミッター改造した。エンジンがギリギリ持つ手前まで魔力をこめられるようにね」
「暴発したらどうするんだ! 大体そんなところ改造するなど聞いたことがないぞ!」
「あたしとしては大分前から知ってた裏技だけどね。これにあたしの魔法を合わせれば音速突破も余裕ってとこさ」

 あたしが見つけたというよりルッキーニが弄ってくれたおかげだけどね、と付け加えて。

「元々ストライカーの魔導エンジンは余裕を持ってリミッターが設計されてるみたいなんだ。まるでこういうことを予期してたみたいにね」
「じゃあもう芳佳ちゃんホウキで練習しなくていいんですか!?」
「それはこれから調整次第だよ。やっぱり宮藤の魔力はこいつには大きすぎる。感情のままに魔力を流し込めばまた元の木阿弥さ。まっ、そのハードルが下がったって言うのがいい表現だと思う」
「なら冷静さを保てるよう私が扱いてやろう。カールスラント軍人たるものいつ何時も冷静さを忘れず、戦況を見極め、勝利を掴む! 今の宮藤に必要なのはそういうことだ。そうだリーネ、ペリーヌおまえたちにもこの際びしっと叩き込んでやろう!」

 腕組み何度も頷いているバルクホルンさんにみんなで顔を見合わせ苦笑いだった。
 う~ん、今日は疲れちゃったし明日に、は無理かな?

「そういえばシャーリーさん。この見慣れないフタ何なんですか?」

 ちょうどストライカーの付け根の下、足の位置からすると膝小僧の少し上に窓のように四角いフタがくっついていた。

「あ、それはさ……リミッター切ったりしてたら色々配線とか収まるスペースがなくなってきちゃってさ」

 照れくさそうに頬をかきながらシャーリーさんがフタを開ける。中には細いコードとそれを押さえつけるように赤くて太いコードが張りだしていた。

「一応言っておくけどこの赤いコードはリミッターの最後の一本だ。これを切れば魔力を全てエンジンへ流し込める……けどエンジンが無事かどうかは保障できない」
「爆発……するんですか?」
「実際にやってみたわけじゃないからな。でもいい結果にならないって忠告はできる。何秒持つのか、それともリミッターがなくなった瞬間に駄目になるのか」
「まさに神のみぞ知る……ということか」
 
 真剣な眼差しコードを見つめるシャーリーさんに思わず唾を飲んだ。これだけはどんなことがあっても切っちゃいけない。言葉なんていらないくらいにシャーリーさんの様子が全てを物語っていた。

「宮藤、あとはおまえ次第だ。こいつとまた空を飛べるようになるかはそのウィッチ自身の問題だからな」
「はい、シャーリーさん。あの、今まで本当にありがとうございました!」

 言葉だけじゃ表しきれない感謝の気持ちは思いっきり頭を下げてもまだ足りない。だってもう頭の中じゃストライカーで自由に空を飛ぶわたしが見えているんだから!

「なにいいってことよ! なんだか妹を世話するお姉ちゃんみたいな気分になれたしな!」
「なっ!? おまえが宮藤の姉になどなったら宮藤の素行が乱れるだろうが!」
「じゃあバルクホルンがお姉ちゃんなら規律ガッチガッチで五月蝿いやつになるかもなぁ。そういうの嫌われるぞぉ!」
「そ、そそそそんなわけないだろ!」
「なんならあたしとおまえのダブルお姉ちゃんならいいかもな。足して割って二なら意外とバランスよくなるんじゃないか?」
「おまえにしてはよく考えたなシャーリー。なるほどそれなら宮藤も……」
「いや、そこは突っ込んで欲しかったんだけど……」

 とにもかくにも騒がしかった一日はこうして幕を閉じていく。なんだか今夜は気持ちよく眠れそうだ。
 早く明日になればいい。明日のわたしはとびきりのウィッチになれているはずだから。

* * *

 その日は朝から騒がしかった。
 ミーナ隊長から今度の作戦の要となる戦艦「大和」の医務室で事故が起きたらしい。沢山の怪我人が出て大和の人たちだけではもう手に負えないということも。
 突然の救難要請だ。もちろんわたしは一番に志願した。治癒魔法が使えるウィッチは501にはわたしだけしかいないし、何よりわたしの力を待っている人たちがいるのなら飛ばなくてどうする。
 いつネウロイが攻めてくるかわからない状況だからわたしの他についていくことになったのはリーネちゃんだけだった。心細くはなかったけどみんなにわたしがまた空を飛ぶ姿を見せられないのは残念かな。

 大和までの飛行はストライカーとの呼吸を合わせる慣らし飛行だ。最初こそ煙を吹いていたストライカーも特訓の成果もあって大和につくころには普段と変わりない飛び方が出来るようになっていた。
 リーネちゃんと抱き合い喜ぶこともそこそこに、わたしは大和到着と同時に怪我人の医療に回った。前は一人治療するだけでも疲れていたのに今日は十人治療してもまだ力が有り余る感じ。こんなんじゃストライカーも飛べなくなるのも当たり前だよね。
 そして治療を終え、艦長さんに挨拶をしに行こうと思った矢先に戦艦を轟音が襲った。
 
 ――ネウロイ!

 大和も護衛の艦もみんながネウロイ目掛けて大砲を放つ。砕けるネウロイだけどすぐに再生を始めてしまうおかげで焼け石に水だ。せっかくの大和の主砲も台無しだった。
 このままじゃいけない。わたしとリーネちゃんはすぐに空へ飛んだ。守らなきゃいけない。今ここでみんなをネウロイの好き勝手させるわけにはいかないんだから!!

「はあああ!!」

 シールドが襲い掛かる閃光を引き裂いていく。シールドを押す圧力は物凄いけど負けるわけには行かない。

「このっ!」

 リーネちゃんのボーイズが次々に銃弾を放つ。けどネウロイの体には傷一つつかない。当たっても火花が散るだけで何もない。

「リーネちゃん! 大和は!?」
「大丈夫! もう安全な場所まで退避出来たみたいだよ!」
「よかった……――くっ!!」

 目の前が赤く染まる。こっちのことはお構い無しにネウロイが光を浴びせてくる。このままじゃわたしたちも危ないかもしれない。
 飛行機が落とす爆弾がそのまま大きくなったみたいなネウロイはゆっくりとわたしたちに舵を向け、一度に何発も、何十発もの閃光を放つ。戦艦を思うように攻撃できなかった恨みをぶつけるようにその攻撃は収まることを知らない。

「攻撃できる隙さえあれば……きゃっ!!」
「リーネちゃん!!」
「だ、大丈夫だよ! もっと弾丸に魔法力をこめればネウロイにも通じるはずなのに!」

 悔しそうに唇を噛んで次の攻撃を避けて、受ける。もっと沢山ウィッチがいれば攻撃が分散されたんだと思う。
 でもここにはわたしとリーネちゃんの二人しかいない。本当なら撤退するのが一番なのはわかってる。

(でも逃げるわけに行かないんだ!)

 後ろには大和が沢山の人たちがいる! わたしたちが逃げたら誰がその人たちを守るの?
 守るためにわたしは飛んでいるんだ。
 その役目を投げ出すなんて出来ると思う? 出来ないよね!
 問いかけ自分で自分を奮い立たせた。せっかくまたこうやって飛べるようになったんだ。わたしはみんなの想いを背負ってる。

「だから! 負けないんだ!!」

 巨大なシールドで攻撃全部受け止める。いくら魔力があってもこんなこと繰り返してたらいつかやられる。その前に何とかしなきゃいけない。
 
「リーネちゃんは……」

 攻撃を避けようと動き回ってたのが仇になった。散り散りになったせいでリーネちゃんの居場所がわからない。
 攻撃を受け続けながら見える範囲全てを探す。あっちへこっちへ、目まぐるしく変わり景色の中でリーネちゃんはどこ!?

「あっ、リーネちゃ――!!」

 見つけたと、リーネちゃんのシールドが砕けるタイミングは完全に同時だった。あろうことかネウロイはわたしよりもリーネちゃんの方へ攻撃を集中させていた。きっとリーネちゃんがこの場で唯一ダメージを与える存在だってわかってたんだ。
 リーネちゃんの体が投げ出される。ふわっと一瞬浮いてからすぐに真っ逆さまに落ち始めた。完全に気を失っている。あの状態でネウロイの攻撃を受けたら!!

「リーネちゃーーーーーん!!」

 駄目! そんなの絶対嫌だ!!
 でも離れすぎてる。今のストライカーの速さじゃ追いつけない。追いつく前にリーネちゃんが海に叩きつけられるか、ネウロイに――。

「……シャーリーさん、ごめんなさい!!」
 
 迷うなんて選択肢は初めから無かった。どんなに沢山の選択肢が目の前に広がっていても書いてることは一つだけ。
 ストライカーのフタを開ける。赤いコードが見えた。

「お願い! リーネちゃんを守って!!」

 掴む、引きちぎる!! 魔力を注ぎ込む!! 空気が震える!! エンジンが雄叫びを上げる!!

「いっけえええええええええええええ!!」

 その瞬間、わたしは少しだけシャーリーさんの速さに追いついた。強烈な加速力に自然と顔をしかめ歯を食いしばり耐える。
 伸ばした手の先にはもうリーネちゃんがいた。ほとんどぶつかるような格好でリーネちゃんを抱きとめた。
 止まらない加速も魔力で思い切り押さえ込んで急ブレーキだ。

「……んぅ、芳佳ちゃん?」
「気がついたリーネちゃん」
「あ、あれわたし? え? 芳佳ちゃんそれ!?」
「えへへ、リーネちゃんのピンチだったから約束破っちゃった」

 リーネちゃんがどんな光景を見たかはわからない。わたしはというと極力ストライカーを見ないようにしてたから。
 
「リーネちゃん……少し離れてて」
「だ、駄目だよ芳佳ちゃん! シャーリーさんの言ってたこと忘れちゃったの!?」
「忘れたよ。忘れきゃ守れないよ。今だけは大好きな人みんなを守るためになんだって忘れるよ」

 リーネちゃんを庇いながら舵を向けるネウロイを睨みつける。リーネちゃんがみたら驚くかな? すごい顔してると思うし。

「大丈夫だよ、すぐにネウロイやっつけるから!」

 銃を構えた。わたしの中で何かが弾けて吹っ切れる!

「よくも……よくもリーネちゃんを! みんなを!!」

 ストライカーが熱い。プロペラの音もいつもより甲高い。体中の魔力が暴れまわってる。
 だからこんなの簡単にやっつけられる。やっつけられなきゃおかしいんだ。

「絶対に……許さないんだからーーーーーーーーっ!!」

 ネウロイがビームを放った。全部わたしを目掛けて真っ赤な雨が降り注ぐ。
 そんなの効かない、全部シールドで受け止めストライカーの推力で押し返す。光が途切れると同時に一気に上へと回りこみ。

「いけぇぇ!!」

 銃弾の雨を浴びせる。魔力がとことんまでこめられた弾丸はネウロイの装甲を光の欠片へ根こそぎ変えていく。
 相手の反撃は今度は受けずに避ける。考えて飛んでいるのかわからないくらい光をすり抜け今度は後ろへ。
 撃つ、撃つ、撃つ!! さらに下へ回り込みながら撃ちつづける!!
 一周して真正面! これだけ周りを破壊してないのならもうコアをそこしかないんだ!

「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!」

 吠えたのはわたしだ。真っ直ぐに銃を構え突撃。照準の向こうのネウロイにありったけの弾丸をお見舞いする。
 ネウロイの欠片がわたしを通り過ぎていく。眼差しの先、バラバラになっていくネウロイの体の奥に赤い結晶が見えた。ちょうどネウロイの体の中のど真ん中だ。
 しかもこのネウロイは中身は空洞みたいでコアはその只中に浮いているだけ。このまま進路は真っ直ぐに。
 終わらせてみせる!!

「これでぇぇぇぇぇぇぇ!!」

  バキ! ボン……バーーーン!!

「え――っ!?」

 ネウロイのコアが砕けた音じゃなかった。景色が物凄い勢いで斜めに傾いて、思いっきり落ちた。
 バランスが取れない。右足の感覚がおかしい。風を肌へ直に感じる。足全体が風に撫でられてる。

「……嘘」
 
 錐揉みしながらわたしが見たのは空中でバラバラに砕けていくストライカーだった。悲鳴を上げてもなお桁外れの魔力を注ぎ込んだ先にあったストライカーの姿はあまりに無残で、悲惨なものだった。
 エンジンがやられて強制的に足から抜け落ちたみたい。そんなこと冷静に考えている場合じゃないのは目の前に向かってくるネウロイを見れば一目瞭然だ。

「きゃああああああ!!」

 千載一遇のチャンスは絶体絶命のピンチに一瞬で裏返ってしまった。
 体勢を変えられないままネウロイの攻撃が直撃した。片腕での精一杯の防御はあっさりと崩されてわたしのシールドはバラバラになって消えていった。武器まで手から零れ落ちた。
 次が来る。頭の中ではわかっていてもシールドが張れない。投げ出された体を支える力をもうわたしは生み出せない。
 かたっぽの、傷だらけのストライカーで何が出来るの? これじゃ何も出来ないのと同じだよ。
 頭に血が上っていたんだ。バルクホルンさんの言うとおり冷静に戦ってこんな風にはならなかったはずなのに。力押しで行けるって思い込んでた。
 格好つけて、守れないなんて最悪だ。けどもうどうしようもない。わたしには翼が無いんだから。

(もしも願いが叶うなら――)

 わたしに翼をください。

* * *

「芳佳ちゃん! 前っ!!」

 ふいに、押し上げられる感覚がわたしを包み込んだ。仰け反っていた体が自然と起こされて目の前がネウロイが一杯になる。

「――シールドっ!!」

 操り人形になったみたいに両手が前へ。生まれた盾に赤い奔流が弾き飛ばされていく。

「はぁ……はぁ……」

 虚ろになってた意識が思いっきり引っ張り上げられた。ううん、押し上げられた。
 落ちるしかなかったわたしの体を誰かが押し上げていた。
 その「誰か」は紛れも無く、

「リーネ……ちゃん?」
「うん! 良かった間に合って!」

 わたしを肩車しながらリーネちゃんが声を弾ませた。わたしはというといきなりの展開に少しだけボーっとしている。
 
「なんで……駄目だよ! 危ないよリーネちゃん!」
「それなら芳佳ちゃんの方がずっと危ないよ! どうして一人で向かっていったの!」
「それは、えっと……守らなきゃいけないって思ったから」

 顔が見えなくてもわたしにはリーネちゃんがすごく怒っているのわかった。怒った顔を見れないのはある意味助かったかも。
 
「いくらなんでも一人じゃ無理だよ! わたしたちウィッチーズなんだよ! 一緒に頑張らなきゃ駄目だよ!」
「でもわたしもう一緒には……」
「わたしが芳佳ちゃんの翼になる! わたしが芳佳ちゃんを支えてあげる! いつも芳佳ちゃんがしてくれること、今度はわたしがしてあげる!!」
「リーネちゃんが……」
 
 そうだこの体勢をわたしは知ってる。
 初めて二人でネウロイを倒した時や、アンナさんの家を守るためにネウロイを倒した時、わたしはいつもリーネちゃんを支えて、助けてきた。
 
「今までいっぱい芳佳ちゃんにもらったから、少しずつでも芳佳ちゃんに返したいの! わたしが悩んだり、困ってる時に手を差し伸べてくれたよね。だから芳佳ちゃんが困ってるならわたしだって!」

 言葉通りに今はリーネちゃんがわたしを支えてくれてる。リーネちゃんがわたしの翼になってくれてる。

「もし一人で駄目でも一緒ならきっと出来る! 遠くから見守るだけなんて嫌だもん! いつだって一緒に守ろうよ!」
 
 リーネちゃんが笑ってる。こんな状況なのにリーネちゃん笑ってるのがわかる。

「芳佳ちゃんと一緒ならわたしいくらでも勇気が湧いてくるの! どんなピンチでも立ち向かえる勇気が湧いて来るんだよ!」

 心の中が温かい。まるでリーネちゃんの言葉が魔法みたいにわたしの心を生き返らせていく。

「そっか……そういうことだったんだ」
「芳佳ちゃん?」
「わたしもリーネちゃんに一杯もらってるよ。リーネちゃんの笑顔わたし大好き。だからもっと守ろうって思える」

 みんなが笑ってくれる。それってわたしにとっての守った証なんだ。笑顔を守りたいから、もっと笑顔になって欲しいからわたしはいつだって飛んでいけた。たとえ目の前が暗闇でも迷わず飛んでいけるくらい。
 一人で守ろうって意地張ったのは守りたい笑顔が沢山増えたから。独り占めしたいくらいの笑顔が増えたから。 

「一緒に行こう! 二人で一緒にみんなを守ろう!!」

 それはみんなも同じなんだと思う。だから一緒になれば何倍も、何十倍も、何百倍も勇気が湧いてくる。わたしはそれが普通だと思って今まで気づいてなかった。
 わたしはいつだってみんなと一緒に飛んでいたんだ。それはこれからも絶対に変わらない。  

「芳佳ちゃん……うん! もちろん!」
「よーっし! わたしがシールドを張るからリーネちゃんは」
「ネウロイのコアを撃ち抜く!」

 きっちり役割分担で一気に終わらてみせる。
 二人の無敵の勇気で!

「行くよ!!」
「任せて!!」

 待ちわびたようにネウロイが波状攻撃してくるけどわたしのシールドなら防ぐことなんて造作も無い。
 下ではリーネちゃんが魔力全部を一発の弾丸にこめている。あのネウロイを倒すのに必要なのは正面の装甲を突き破ってコアまで達することの出来る一発だ。

「今度こそ終わらせる! 準備はいいよね!」
「うん!」

 全部の攻撃を防いで、全部の魔力をかき集めて。
 
「「いっけえええええええええええ!!」」
 
 たった一発の弾丸が正面からネウロイを突き破り、中のコアもろとも貫いて撃沈させた。
 今までに無いくらいの量の欠片が当たり一面を多い尽くしていく。もうそこにネウロイはいなかった。わたしたちが守った空だけが広がっていた。

「やった……の?」
「そうみたいだね……」

 しばらくの間、わたしたちは勝利したことに実感が持てなかった。あまりに現実離れしたネウロイをやっつけた気がしてこれは実は夢じゃないのかなって思っちゃったり。

「あはは、ボーイズすっかり使い物にならなくなっちゃたね」
「ほんとだ。芳佳ちゃんのホウキみたいだね」

 リーネちゃんの銃は銃身が半分以上なくなっていた。あまりの魔力で溶けてしまったのか、発射の反動で吹き飛んでしまったのか。

「あれ、ストライカーが……」

 ボーイズの心配をしていたら今度はわたしの左足に異変が訪れる。今までぴったりはまっていたストライカーが煙を上げながら段々と抜け落ちて来たのだ。
 役目を終え、力尽きたかのようにストライカーは海へ向かって落ちていく。ずっと、最後までわたしの我侭に頑張ってくれた子へわたしは自然と敬礼を送っていた。
 
「あっ、みんなだ! おーい!!」

 海に落ちたストライカーはあっという間に白波に揉まれ跡形もなく消えていく。
 ふと視線を上げれば遥か遠くに501のみんながいた。わたしは大きく手を振ってみんなに答えた。

「帰ろっかリーネちゃん!」
「うん! 芳佳ちゃん!」

 ゆっくりと景色が動き出す。穏やかな風を受けながらわたしたちはみんなの下へ飛んでいった。
 守りたい笑顔のある場所へ。大好きな人たちが待ってる場所へ。

 
 後日、501にストライカーが届けられた。
 「震電」という名前の、あのお父さんの手紙から作られた最新型のストライカーらしい。
 もちろんそれはわたしの新しい翼になった。まるでお父さんがわたしをお祝いしてくれるみたいで嬉しかった。
 
 唯一つ気になる噂があって。

 この震電が大和の中で輸送されていた頃、夜な夜な格納庫のリフトが勝手に動いたり、誰もいないのに男の人の声が響いたりな怪現象が多発していたとか何とか……。
 
 大丈夫だよね、これ。

 
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