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2010.01/14(Thu)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十六話 Cpart 


【More・・・】


「じゃあアタシたち先に戻ってるわね」
「後でねなのはちゃん」
「うんまた後でー!」

 二人を見送りわたしはちょっと夕涼み。もう夜も遅いから夕涼みって感じじゃないけど。
 縁側から足を投げ出してうんと背伸び。

「ふぅ……全部終わったんだよね」

 一人残ったのはちょっとだけ考え事をしたいから。
 夏休みと共に始まった思い出を守る戦いは気がつけばカレンダーが八月になる前に終わってしまった。
 わたしたちからすればアースラの中で一週間近く過ごしていたりするわけだからちょっとだけ他の人よりも得した気分かな。
 宿題はドリル関係は全部終わって風景画はちょうどここの風景を描いて仕上げたから大丈夫。自由研究は四人で集まればいい考えが浮かぶと思うから今は置いておくってことで。

「ちゃんと世界を守れてよかったな……」

 ミッドチルダも地球も、みんなの世界が消えずに済んだ。みんなで力を合わせて手に入れた勝利はこれから先どんな戦いがあっても手に入らないくらい大きいもの。
 
「戦いか……」

 無我夢中で駆け抜けてきたけどわたしたちは下手すれば取り返しのつかない所に足を突っ込んでいたんだ。失敗なんて考えなかったけど、こうやって振り返ると怖くなってしまう。
 
「みんながいてくれて……ほんとによかった」

 ありがとう、そう心の中で呟いて星空を見上げた。
 後ろの障子を開ければすぐに宴会場だ。縁側と直結してるおかげでこうやって涼んでいてもすぐに戻れる。気兼ねなくノンビリ出来るのは中々いいと思った。
 足をブラブラさせながら後ろから聞こえる楽しげな喧騒に耳を澄ます。

「あれ? なのはも涼み?」
「ふぇ?」

 そこからじゃない声がかけられた。
 よく知ってる声に顔を向ければやっぱりあの子がいるわけで。

「ゆ、ユーノくん……」
「あ……いやその……昼間はゴメン! 本当にゴメン!!」

 顔を合わせるなりユーノくんはその場で何度も頭を下げる。その様子に忘れようと勤めていた昼の出来事は嫌でも思い出されてしまって。

「い、いいよ! もう謝らなくて! わたしだってその手加減無しでユーノくんにスターライトブレイカー撃ったりしたし……」
「いやでもあれは当然のことで」
「いいから! 怒るよわたし!」

 正直なことを言ってしまうとあの時はもう反射的に撃ってたわけでよく覚えていなかったり。それだけあの出来事が恥ずかしすぎて……もう思い出したくないよ。

「それにわたしのこと助けてくれたのはユーノくんでしょ?」
「そのつもりだったんだけど……」

 あの怪物を倒した瞬間の爆発に巻き込まれたわたしはフライヤーを制御することもままならないまま真っ逆さまに海へ落ちていた。
 一応プロテクションを張っていれば大丈夫かなって思ってた時にわたしの手足へ鎖が巻きついた。
 もちろんユーノくんのチェーンバインドでわたしはそのおかげで飛沫の嵐から脱出できた。そのまま砂浜へ着陸っていうのが理想だったんだけど、どうやらその時にユーノくんを押しつぶしちゃったみたい。

「海の中じゃ揉みくちゃにされるし、目も瞑ってたからコントロール誤っちゃって……ごめん」
「もうそっちの方が危ないよ……」
「そうだよね……でも見られるほうが恥ずかしいと思うし」
「思うじゃなくてほんとに恥ずかしかったんだよ」

 わたしの勝手な希望だけどユーノくんが起きる前に吹き飛ばしたから本当なら何も見えてないはず。
 でももしものことを考えると顔が熱くなってどうしようも無くなる。
 それ以前にわたしだって……その……ユーノくんの……・あれを……お、おち――。

「にゃああ!! やっぱり駄目! ユーノくんの馬鹿ぁ!!」
「え!? えぇ!?」

 ふぇぇん! さっきのことを帳消しにしたいよぉ!

「うぅ……せっかくしみじみしてたのに台無しだよぉ」
「ほんとごめん……僕お邪魔だったね」
「いいの! 隣座って!!」

 許せないのはほんとだけど……でもやっぱりわたしはユーノくんと二人きりってことに嬉しくなってる。
 なんだか心の中はぐちゃぐちゃだけど、このままユーノくんと喧嘩したくないから取り合えずお話ってことでわたしはユーノくんを隣に座らせた。

「……ふぅ」
「落ち着いたなのは?」
「うん……多分」

 気持ちを落ち着けて、一体自分は何を振り返っていたのか再確認。

「えっと、えっとねユーノくん」
「うん……」
「これからミッドチルダどうなるのかなぁ?」

 リンディさんから聞いた話だとなんだか次元の座標がずれてるとか、アルハザードに飲み込まれた記憶がないとか、元に戻っても色々と大変なことが起きてるみたいだし。

「そうだね……こればかりは僕も確かなことは言えない。ただ座標がずれてるから次元航行には影響が出ると思う」
「そうなんだ」
「気になるのはアルハザードに取り込まれてたことだよね」
「わたしもそうだよ。ほんとにただ取り込まれてただけなのかなって。もしかしたら少しぐらいは世界の思い出が変えられたのかもって……」

 だってアルハザードだもん。もしかしたら取り込みながらミッドの人たちの願いを叶えてたかも知れない。ジュエルシードのように完璧じゃなくてあやふやなままに。
 そう思うと元に戻った世界もなんだかどこか違う世界になってしまう。本当に守れたのか分からなくなってきちゃう。

「仮にそうでも僕達はそれを確かめる方法は無いよ」
「ほんとに?」
「最初の形を知らないから。僕達から見た誰かが幸せな毎日を送っていても、それが元々の日常だったのかアルハザードが気まぐれでくれた日常なのかはわからないだろ?」
「そうだよね。アルハザードはわたし達が封印しちゃったし確かめようが無いもんね」

 封印され機能を停止したアルハザードは世界の形を崩して虚数空間へ消えていった。正確には虚数空間がアルハザードだから本当に元の姿に戻っただけ。
 もう願いも何もない空っぽな世界が残っているだけなんだ。

「だからこれは自分達それぞれの捉えかたでいいと思う」
「捉えかたって?」
「例えばある親子がいたとする。その親子は本来は血の繋がりなんて全然無い他人だったけど、アルハザードが本当の親子にしてしまった。この場合どっちが幸せかな?」

 それはもちろん血の繋がりがあった方が良いに決まってる――……。

「ううん、そんなの無くたって絆は消えないよ。本当の娘じゃなくたって家族だもん! 寂しいって思う時もあるかもしれないけどみんながいることは絶対変わらない!」

 わたしの家族がそうだった。
 お父さんとお母さんの本当の意味で娘なのはわたしだけ。お兄ちゃんはお母さんが違うしお姉ちゃんはどっちも本当じゃない。
 でもそれが嫌だってわたしは思ったことが無いし、二人だってそんな顔したことは無い。親子とか兄妹とか、それって血の繋がりよりもどれだけ強く絆で結ばれているかの方が大事なはずだ。

「じゃあさっきの親子はどっちが幸せなのかな?」
「どっちも! きっとどっちも幸せだよ!」
「うん、それでいいんだよ、なのは。アルハザードが何かしてたって僕らには関係ない。僕らが今を選んでアルハザードを封印したようにその人たちも自分達なりの幸せを選んで歩いていくはずだから」

 少しだけスタート地点が違っていても踏み出した先にある答えはいつか同じ場所へ。どんな大きな力が襲ってきてもわたしたちは諦めないで一歩一歩少しずつだけど、確実に進んで行ける。

「えへへ、やっぱりユーノくんは頼りになるね」
「僕は思ったことを言ってるだけだよ。そこまで頼りにされても……」
「アルハザードから脱出する時わたしたち助けてくれたのもユーノくんでしょ。クロノくんも言ってたよ少しは自信を持てって」
「あいつに言われてもなぁ……。というか本人からも似たようなこと言われたよ」
「じゃあもっと欲張りになっていいんだよ。ユーノくんいつも遠慮してる感じだし」
「う~ん、性格だからだと思うけどなぁ」

 腕を組み、首を傾げ、ユーノくんは唸ってしまった。そんな姿を見てると本当に真面目だなぁって思ってしまう。
 
「やっぱり先生とか似合ってるかも。ほら眼鏡とかつければ」
「そりゃなのはたちには先生かもしれないけどね。先生するよりかは発掘してたほうがいいよ」
「うにゃ……そういう所は譲らないんだね。頑固なんだから」
「ならなのはだって頑固じゃないか。いつも一人で頑張りすぎて」
「それは……今はもう違うと思うけど」

 これじゃお互い様だ。
 でもなんだかんだでユーノくんが一人で頑張ろうとするのをお手伝いで魔法少女も始めたわけだし、わたしたちにはこれが合ってるのかも。 

「今はみんながフォローしてくれるしね。一人で行こうとしてもみんなついてくるし」
「二人だけでジュエルシード集めてた時とは全然違うよね」

 あの時は二人きりで色んなことにぶつかって乗り越えてた。やっぱり最後はアースラの人たちの協力も合ったおかげで事件を解決したけど。
 
「これだけ沢山の人たちと出会えたのもユーノくんと出会えたおかげだね」 
「僕もだよ。なのはが僕の声を聞いてくれたおかげで全部始まったんだし」

 なんだかこんな話前にもしたことがあるような気がする。

(あっ、そっかあの時だね)

 わたしがL・ジュエルに取り付かれた時に助けに来てくれたユーノくんとお話したこと。
 夢のようにおぼろげだった光景が僅かに色づき、輪郭を持った。

「なのはの久しぶりのわがままだったよね。封印する前にいっぱいお話ししようって」
「ほんとあの時はまいったよ。なのはがあんなに子供だったなんて。何発痛い目にあったか」
「いいもん、わたしまだまだ子供だもん。子供の方が良いもん」

 もういい子になるのは止めだ。素直に真っ直ぐわたしは歩いていこうって決めたんだから。

「そう思わせてくれたのだってユーノくんのおかげ」
「あの時は僕もみんなに結構思われてることなのはに教えられたんだ。もう一人じゃ突っ走らないよ」

 ほんとに似たもの同士だ。こういうのっておそろいって言うのかな。

「ユーノくん、ほんとに今までありが――」
「なのは、ほんとに今までありが――」

 ぴったりと、完璧に同じタイミングで声が重なった。あまりにぴったりだったから二人してきょとんと顔を見合わせてしまう。
 それも一瞬、すぐに笑いあって今度も一緒にって見詰め合って目で合図。
 
「ユーノくん、ありがとう!」
「なのは、ありがとう!」

 二色の旋律が混じり合い夜風に溶けていった。

「あっ、そういえばユーノくんこれからどうするの?」
「これからって?」
「事件も解決したし、もしかしたらミッドチルダに帰っちゃうのかなって」

 もしも帰るならちょっとだけ……ううん、すごく残念。
 せっかく一緒に学校通えるようになったのにもうお別れってのはなんだかすごく勝手というかわたしは嫌だ。
 よく考えたらフェイトちゃんだって本来はアースラの嘱託魔導師で管理局の仕事がある。
 じゃあ二人揃っていなくなっちゃうの? もしそうだったら無理してでも残ってもらいたい。せっかくみんな一緒になのに……。

「ああ、心配しないで。この世界もアルハザードに巻き込まれたことに変わりは無いし、ジュエルシードだって沢山発動してる。何よりL・ジュエルだって後一つが見つかってない」

 てっきりL・ジュエルって全部消滅したかと思ってたけど、よく考えたら確かにまだ一個見つかってない。

「しばらくこの世界も様子を見ないといけないからね。また大事件に巻き込まれる可能性だってあるわけだし」

 それってつまり……。

「第97管理外世界は向こう数年間は監視することが決まったんだ。担当は引き続きアースラで現地の駐在職員としては協力者が一名選抜された」

 そういうことでいいんだよね?
 期待が膨らみ嬉しい気持ちが心の中を駆け巡っていく。ユーノくんの返事を待たなくたって飛んで喜んじゃうくらい。

「そういうわけでまた高町家の厄介になりたいんだけど……いいかな?」
「うん! うんうん!! うんうんうんうんっ!! もちろん大歓迎だよ!!」

 思わずユーノくんの両手を取ってわたしは全身で喜びを表していた。もう誰が見ていたって気にしないくらい笑みがこぼれて、握った手を上下に振って、とにかく今考え付く全部の方法でわたしの気持ちを伝えた。

「良かったぁ……。じゃあこれからもよろしくお願いします」
「にゃはは、こちらこそ! ようこそ高町家へ!」

 なんだかわたしの願いをL・ジュエルがまた叶えてくれたみたい。これでこれからもみんなと素敵な思い出を作っていけるね!

「そうだ! せっかくの夏休みだし今度はミッドチルダに行こうよ!」
「ミッドに?」
「ほら! 春に約束したでしょ! 夏休みにミッドに行くって!」

 もうかなり前の話になるけど今夜みたいに星空を見上げながら話した事は今も忘れずにわたしの中に残ってる。

「そういえばそんな話もしたね」
「もしかして忘れちゃった?」
「実は……今思い出したけど」

 気まずそうにユーノくんは頬をかいている。もう調子いいんだから。

「でもいいかもね。フェイトたちみんなで行ったらきっとすごく楽しいよ」
「でしょ! じゃあ早速計画立てないとね!」

 今年の夏休みはイベント盛り沢山だ。夏休みはまだまだ始まったばかりなんだし考えたこと全部できそう。
 両手で抱えきれないくらいの思い出はどれもみんなキラキラ輝く最高の宝物になるはず。

「夏祭りもあるしプールだって行ってないし、もういっぱいありすぎて困っちゃうよ~!」
「勉強も忘れないでね」
「ほどほどに頑張りま~す」

 予習復習は大事だけどせっかくの夏休みなんだし、難しいことは全部しまっちゃって後で考えれば大丈夫なはずなのに。
 やっぱり先生みたいだよユーノくん。

「あっ、そうだユーノくん。フェイトちゃんって見た?」
「そういえばさっきから見かけないな……どうしたんだろ」

 あれから大分時間も経つし、もしかして疲れて先に部屋に戻っちゃったのかな?

「わたしたちも取り合えず戻ろっか」
「そうだね。まだ宴会も終わってないし」
「じゃあ――」

 考えても始まらない。フェイトちゃんには悪いけどわたしはまだまだ楽しみたいわけで。
 勢いつけて立ち上がってわたしは自然と手を差し出す。

「行こっユーノくん!」 
「うん!」

 わたしの手を取りユーノくんも立ちあがる。くるっと回ればすぐに宴会場。楽しいひとときがお待ちかねだ。
 今夜だけは子供のわたしたちもちょっぴり夜更かし。デザート食べてゆっくりしたらまた温泉に入ろうかな。その後はみんなと枕投げとか、みんなと眠るまでお話しをしたり。まだまだ夜は終わらない。
 二泊三日の旅行はまだ一日目。のんびりなんて油断してられない。

 全部これから始まるから! だからわたしは全力全開なの!! 

* * *
 
「レディースエンドジェントルメーーン!! みんな宴会楽しんでる~~!?」

 戻ってきたわたしたちを出迎えたのはとても威勢のいいエイミィさんの声だった。
 マイクの音量全開の声に何事かとそちらを見れば宴会場に設けられたステージの上でエイミィさんがみんなの注目を浴びていた。マイク片手に浴衣姿ではしゃぐ様子に見ている人たちも盛り上がっていく。

「もう旅館の出し物が無いみたいだから思い切ってステージ借りちゃいました! というわけでここからは自由演目! まずは宴会と言えばかくし芸! 華麗なマジックショーの始まりーー!」

 そういえばさっきまで民謡とか舞踊とか色々と旅館の人たちがステージの上でやってたっけ。
 
「なんか始まっちゃったみたいだね」
「あっ、なのはお帰り。なんかトントン拍子に話が進んじゃってね。ん~……フェイトには悪いけどちょっと見ていく?」
「いいと思うよ。面白そうだしね」

 旅館の方の演目が無いなら迷惑にもあんまりならないだろうし、なにより賑やかで楽しそうだからわたしたちはみんなでステージの前まで行くことにした。
 行ってみればちょうど舞台の袖から出演者が出てくるタイミングにピッタリだった。
 遅れなくて良かったな、と安堵して座るのも束の間、

「え、えと……みなさんこんばんわ。た、楽しんでいますか?」

 目の前の舞台で可愛くお辞儀する子にわたしたちはまた何事かと目を白黒させていたり。

「こ、今夜は私フェイト・ハラオウンと」

 そこまで言って舞台袖に目配せすると、

「私、月村忍が一夜限りの夢のイリュージョンをご披露しちゃいま~~す!」

 ほんのりと顔が赤い忍さんがいた。

「お、おお、お姉ちゃん……」

 一目で出来上がってしまっているのがわかった。おまけに乱れた浴衣に黒味を帯びた動物の耳と尻尾が標準装備という有様。それが魔法で作った猫耳と尻尾であるのは以前同じ魔法を使ったわたしには嫌でもわかるわけで。

「……すずか、前を見なさい。これは現実よ」 

 隣ですずかちゃんが頭を抱えている。ちょっと離れた所にいたお兄ちゃんは口をあんぐり開けていた。

「うわぁ、フェイトちゃん可愛い~!」

 もじもじしているフェイトちゃんは真っ白なタキシードにシルクハットを被った可愛らしい姿を披露している。歓声もどちらかというとフェイトちゃんに対するもののほうが大きいような。

「はい、それではまずは定番! フェイトちゃん!」
「あっ! はい! そ、それではこの種も仕掛けも無いシルクハットですが」

 くるりと帽子を回して見せれば確かに中には何も無い。というよりは回すのが早すぎてあんまり良く見えなかったんだけど。
 フェイトちゃん絶対緊張してるよね……。

「このスバルディッシュでじゃなかったスティックで叩くと」
『1,2,3!』
「は、早いよバルディッシュ! ……えと気を取り直してワン! ツー! スリー!」
 
 上下反対にしたシルクハットを叩くスティックはもちろんバルディッシュだった。先だけ見れば黒いスティックだけど反対側には光るコアと斧がそのままになっているので物凄くバランスが悪い。

「わっ! わーーっ!?」

 バルディッシュに叩かれたハットは一瞬間をおいてテレビで見るお馴染みの光景をわたしたちに見せてくれる。
 被る穴から先を争うように飛び出していく真っ白なハトの群れ。羽が飛び散り宴会場のあっちへこっちへ次から次へと飛んでいく。あまりの勢いに歓声が上がるより早くフェイトちゃんが悲鳴を上げて尻餅をついているけど。

「し、忍さん! これ少し多すぎなんじゃ!?」
「あ~……ごめんねフェイトちゃん。ちょっと予定より多く頼んじゃって」

 どちらかといえば笑いの方が大きい滑り出しにわたしも笑っていいのか微妙な気分だった。
 大体、ハトが出てくる瞬間ハットの中に魔力が感じられたのは……触れない方がいいんだよねフェイトちゃん。

「それじゃあ次は世にも不思議な空中浮遊~!」

 忍さんの合図にふわっと三十センチくらいフェイトちゃんが浮いてみせるけど、どうみてもそれは飛行魔法じゃないのかなって突っ込むのは駄目なんですよね忍さん。

「つ、次は瞬間移動します!」
『Sonic move』
「はいっ!」

 舞台の端から端へフェイトちゃんが移動してもシステム音で完全にばれているんじゃないかな、と思っちゃいけないんだよね!?

「あはは! ごめん! あ、アタシもうフェイトを見てられない! ふふ、あははは!!」
「マジシャンって種がみんな魔法だったんだね……」

 お腹を押さえながら笑い転げるアリサちゃんとどこか遠い目で何かを悟ってしまったすずかちゃんは見なかったことにしておこう。もうこの際だから。
 なんだかんだでみんなに受けてるし、わたしも楽しくなってきたし後は野となれ山となれと言いますか、なんと言いますか……。

「それでは最後にフェイトちゃん!」
「はい! 皆さんが幸せになれる光の魔法をお送りします!」

 バルディッシュを水平に構え目を閉じる。今までと違う雰囲気をまとったフェイトちゃんに会場のみんなも思わず動きを止めてしまう。
 魔力が集中しフェイトちゃんの頭上にピンポン玉くらいのスフィアが生まれ淡く輝く。相当集中してるみたいでフェイトちゃんの口元が微かに歪んだ。

「ワン……ツー……スリー!」

 カウントが終わると同時に会場が真っ暗になった。薄暗い部屋の中じゃフェイトちゃんもわたしたちもシルエットになる。

「みんな明日も明後日も、その先もずっと笑顔でいられますように!!」

 高まる魔力に髪がふわっと大きく舞った。フェイトちゃんがバルディッシュを掲げ、三度叩く素振りを見せた。

「わぁ……!」

 ――目の前を金色が舞い踊った。

 弾けたスフィアから小さな光の粒が飛び出してわたしたちを、会場を一息で染めていく。
 蛍の光が全部金色で出来ているような儚くも力強い光が天井から畳まで色んなものにくっついてゆっくり明滅し続ける。
 闇はあっという間に逃げ出して、残った僅かな闇は光を引き立たせるコントラストになった。
 
「凄い! 凄いよフェイトちゃん! いつこんな魔法覚えたの!?」
「えと、旅行に出る前にちょっとだけ。あの時のなのはの花火みたいにすごいのは出来なくてこのくらいしか出来なかったけど」
「どんだけハードル上げるのよ。ちょっとでこれだけ出来るんだから凄い才能じゃない」

 光に照らされたフェイトちゃんの顔に朱が混じる。見てるだけでもきっとすごく複雑で難しい制御なのが伝わってくるのに、それを短時間で身に付けるなんてわたしには絶対無理だよ。

「みんな幸せになれるかな?」
「もちろん!」

 フェイトちゃんがみんなを笑顔にしたいっていう願いが込められた魔法だもん。絶対出来るに決まってる。
 何より魔法に包まれたみんなの顔に笑顔が咲き誇っているのが証拠なんだから。

「フェイトちゃん! 素敵な思い出ありがとう!」
「なのは……私からもみんなから色々……色々もらって……えぐ、おかしいな何で涙出てるんだろ」

 フェイトちゃんの瞳から涙が溢れていく。それを拭いながら自分の涙に戸惑っているのは無理もないことだと思った。

「フェイトちゃん嬉し涙だね」
「嬉し……涙?」
「自分がすごく嬉しい時って自然と涙が出て来るんだよ」
「そう……なんだ。うん、私凄く嬉しいよ……みんなと会えて、色んなもの……もらって……だから私……」

 ひとしきり泣いて、フェイトちゃんは顔を上げた。まだ潤んだ瞳でみんな見渡し、それから頭を勢いよく下げた。

「みんな……ありがとうございました!!」 

 ちょっと掠れてたけどフェイトちゃんの気持ちは心に届いたよ。
 わたしもフェイトちゃんに会えて良かった。

 ありがとう、フェイトちゃん。

「よーーーし! それじゃあこのまま一曲行くわよ!! なのは! すずか! ほらフェイトも!」

 わたしたちの手を引っぱってアリサちゃんがステージへ駆け上がった。突然のことに成すがままのわたしたちだったけど、アリサちゃんにマイクを渡されれば何を歌うかはすぐにわかった。

「ここの設備調べておいて良かったわ。やっぱり宴会と言ったらカラオケでしょ!」
「もうアリサちゃんたら」
「にゃはは! せっかくだから歌っちゃおうよ! わたしたち四人リリカル・ストライカーズ十八番!」
「いいのかなアリサ、急にこんなことしちゃっても」
「無礼講よ! 遠慮なんかする方が損! 楽しんだもの勝ちよフェイト!」

 舞台袖に隠してあったカラオケにはとっくにリクエストが送信済みだ。
 光に飾られた飛びっきりのステージでわたしたちを包み込むメロディ。自然と心は弾んでつま先がリズムを取るのを抑えられない。
 
 前奏が終わる。静かに息を吸って、わたしたちは歌を紡ぎだす――。

「人ごみの中ー♪ 振り向かず行こう♪ 今、始まる生まれたてのストーリー♪」

 最近覚えたばかりの曲だけど、なぜだかずっと昔から知っていたような懐かしい調べ。

「冷たい夜もー♪ 悲しい朝もー♪ 瞳閉じない見つめてくメモリー♪」

 みんなで魔法を使うように息も自然と合ってしまう。不思議だけど当たり前な気持ち。

「Feeling heart♪ 指を繋いで誓った約束♪ 向かい風に消えそうでもーー♪」

 この手を繋げば絶対負けない。それが私たちにとっての約束なのかも。

「ハートはいつも全開無敵♪」
  
 だから無敵になれる。不安なんてどこにもない。どんな向かい風にだって飛んでいける。

「長すぎた嵐の夜♪ すぐにほら青空に変わる♪」

 いつだってわたしたちは親友で、魔法少女で、ストライカーズで――。

「ハートはほらね♪ 究極無敵ー♪」

 いろんな人と出会って、支えられて、沢山の絆を結んでいく。
 きっとそれはこれからも続いていくこと。まだ知らない世界で、知らない人たちと、数え切れない絆を結んでいくんだ。

「風の中胸張ってー♪ 行こうよーー♪」

 一歩一歩、ステップ踏んで。
 たまにはつまずくこともあるけど絶対、絶対大丈夫!
 昨日とは違う。


 わたしたちは――


「オールライト!!」


 ――ひとりじゃないから。


* * *

「それじゃあなのは行ってきまーす!」

 下ろし立ての服で取って置きのおめかしをして、詰め込めるだけ詰め込んでパンパンになったリュックを背負いわたしはみんなに元気よく挨拶する。

「はい、いってらっしゃいなのは。リンディさんによろしくね」
「車に気をつけるんだぞ。……ん、ミッドチルダに車ってあるのか?」

 やんわりと微笑んで送り出してくれるお母さんに、心配してくれるお父さん。

「心置きなく遊んで来い。でも無駄遣いはするなよ」
「あ~ユーノも行っちゃうんだよね。もっと充電しとけば良かったかも」

 お兄ちゃんの言うとおり、ハメを外してもお小遣いは無駄遣いしないように気をつけなきゃね。
 肩を落としているお姉ちゃんにはなんとなくこっちが心配になってくる。まさか禁断症状とか出て苦しんだりしないよね……。

「にゃはは、じゃあ改めて行ってきまーす!!」

 そういえば向こうのお土産って何があるのかなぁ。お饅頭とかでもいいけどなるべく日持ちのする物の方が……。

「わぁ……やっぱり暑いや」

 なんてことを考えながら家を出れば遠慮無い熱気が肌を包み込む。まだ朝早い時間なのに遠くからセミの声まで聞こえてくる。
 八月最初の土曜日から月曜日までの二泊三日のミッドチルダへの旅行。待ちに待った今日のために準備は万端でもう後は出発を残すだけ。
 このギラギラと照りつける太陽ともしばらくお別れなんて普通の人なら絶対しない経験なんだろうな。そう思うとこの暑さも気にならなくなってくる。

「そういえば向こうの季節聞いてなかったなぁ」

 なんか思いっきり夏服着てきちゃったけどあっちまで夏だとは限らないし。地球の反対側みたいに季節が逆だったら大変だ。

「まっ、いっかな」

 いざとなったらバリアジャケットで誤魔化して……それも変だけど。

「あっ、なのはー!」
「なのはちゃん、おはよう!」
「うん、おはよう! アリサちゃん! すずかちゃん!」

 バス停まで歩けば待ち合わせてた二人と合流する。二人ともわたしと同じでバッチリ夏服でおめかしだった。

「あれ? ユーノはどうしたの?」 
「ユーノくんは先に行って準備だって」
「なによ~道案内がいないなんて駄目駄目じゃない。マネージャー失格!」
「まぁまぁアリサちゃん」

 まさかバスや飛行機でミッドチルダまでは行けないから、ちゃんと準備はしないといけないしね。
 次の目的地はすっかりお馴染みのアースラの駐屯基地。もうすっかりフェイトちゃんのお家になったそこへわたしたちは昨日のテレビや今日の旅行について話しながら歩いていく。

「あっ、いたいた! フェイトちゃーん!」
「やっほー! 来たわよー!」
「もう準備できたー!?」

 フェイトちゃんはもう待ちきれないって感じで家の前でわたしたちを待ってくれていた。わたしたちが声をかけるとぱぁ、と太陽に負けないくらい顔を輝かせて走ってきた。

「三人とも遅いよー! もう母さん達準備出来てるってさ!」
「うにゃ、ごめんね。ちょっと話に夢中になってたみたい」

 どうやらミッド行きの艦も待ちくたびれてるらしい。これからのワクワクにちょっと夢中になっちゃったかも。

「なら早速行かなきゃね」
「私用で乗せてもらうみたいなものだし、遅れちゃいけないもんね」
「そうそう、母さんも大変だったみたいだし」
 
 まるでVIP専用の扱いなの。旅行の移動手段に管理局の戦艦を使わせてもらうなんて一生に一度だって無いだろうし。
 そう、ミッドチルダには丁度管理局へ戻るアースラを利用させてもらうのだ。
 整備も兼ねてまた地球に戻ってくるのがちょうどわたしたちの旅行最終日に重なり、そこでフェイトちゃんがリンディさんに頼み込んだおかげである。

「そういえばみんなはミッドについたらどこか行きたい場所決めた?」
「アースラの中でガイドブックでも見ながら一気に決めるわ」
「私は管理局の中も見学したいかな。アースラのほかの次元艦も見てみたいし」
「何度ミッドには下りたことあるけど私も観光はしてないからなぁ。なのはは決めてるの?」
「にゃはは、それはみんなと一緒で行き当たりばったりな感じで……」

 違う国じゃなくて違う世界へ行くからこそ計画なんて立てようが無いよ。答えるなら絶対わたし全部行きたいって言っちゃうし。

「ならストライカーズのチームプレイで観光コースをとっとと決めるわよ!」

 鶴の一声に「おー!」とみんなで片手を掲げて声を上げた。こんな時でも役立つのがチームの強みかな?

「それじゃあさっそくアースラへ! みんな!!」

 もうじっとしてるのももどかしい。ほとんど駆け足で家の中へ、そのまま転送ポートからアースラへ!

「レッツゴーーーーーッ!」

 まだ見ぬ世界のその先へ! 迷うことなく大きく一歩!!


 わたしたちは始まりはいつだってこのステップから始まるんだから!
 
 
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