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2009.12/31(Thu)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十五話 Bpart  


【More・・・】


「ぶっ飛べーーーーーーーーーっ!!」

 灼熱の圧縮弾が怒声と共に雪崩のように全てを巻き込み爆砕させていく。
 弾頭の直撃を受け有無を言わさず粉砕されるものもいれば、爆発の余波に巻き込まれて前に出ることなく散っていくマヌケもいる。
 息継ぎをすればアタシを取り囲むように生み出される魔力の塊その数五十ちょっと。

「どりゃあああ!!」

 鉄槌振りかぶりコマのように回る回る回る――!
 片っ端から、方向なんて気にせずに弾頭が打ち放たれ方々で炎と煙の花が満開になる。

「アリサ! 上!!」
「わかってるわよ! バーサーカー!!」
『Slpash burst over』

 フェイトが巨斧をぶん回し動物やら魚やら新手の雑魚を蹴散らす向こうで、夥しい魔力を両肩の巨砲へ注ぎ込むのは金甲冑に身を包んだ寸胴ロボット。

「チャージなんてさせないっての!! それをやっていいのは――」

 超圧縮の弾頭を渾身の力で打ち上げチャージ真っ最中の砲身の中へ叩き込む。爆音に右の砲台が木っ端微塵に、その反動でロボットも大きく姿勢を崩す。
 その瞬間、世界を桜色に染め上げながら極太の光の柱がロボットを包み込み残さず消滅させていった。

「――なのはだけなんだから!」

 一直線に伸びる光が射線上全ての障害物を欠片残さず蒸発させる。
 すぐにでも次の砲撃が始まるだろう。いくら相手が無数の尖兵を繰り出そうがそれ以上のペースで吹っ飛ばされればたまったものじゃ無いはず。
 
「さてと、次はあんたよ!」

 真正面から突っ込んでくるアルマジロみたいな奴とは真っ向勝負! ゴロゴロ転がって来るのを一発食らわせて勢いを殺す。
 次いでその叩きがいのある体へ、

「スプラッシュウェーブ!!」

 遠慮無しの鉄槌が装甲をひしゃげさせ縦横無尽に亀裂を入れる。アタシの魔力はマグマのように亀裂を走り敵は断末魔を上げる暇も無く爆発していく。

「どんどん来なさい! アタシの所に!」

 最前線で雄叫びを上げたアタシにもう敵は釘付け。ロボットも化け物も何でも来い! 千客万来で迎えあげる!

「腕が鳴るわね」

 相手はこのアタシたった一人――

「すずか今よ!!」

 ――だと思った?

「旋風よ! 全てを縛る戒めに!」
『Whirl bind」

 背中を押す追い風は敵にとっては向い風。五条の光が巻き起こす嵐は敵陣に拘束の二文字を刻み付ける。

『Break charge』
「よっと」

 もちろんバインドはアタシも例外なくかかるけど即破壊だから問題ない。
 
「さっさとやられて! さっさと親玉出しなさい! フェイト、なのは!!」
「オッケー、アリサ!」
『Voltaic lancer stand by』
「待ってました! レイジングハート!!」
『Starlight breaker』

 槍を構え、砲を構え、二色の魔力が極限目指して高ぶっていく。

「アタシたちも負けられないわね!」
『Yeah! Let's begin carnival!!』
「後悔させてあげるわ! リリカル・ストライカーズを敵に回したこと!」
『Meteoroid! Splush burst!』

 弾頭は全部で十五。数で倒すことを考えるなら二人に数段劣る誘導弾攻撃も使い方次第でどうにもなるのが魔法ってもの。
 二人のチャージが完了する前にアタシが先陣を切る。ハチャメチャに振り回した鉄槌が煮えたぎる弾頭を撒き散らし敵軍を周囲から取り囲む。身動きの取れない相手はこの光景にその先の敗北をとっくに認めただろう。

「弾け飛べ!!」
『Slug shower!』

 振り上げた左手を握り締め全弾起爆! 夕日から降り注がれるは破壊の雨!!
 夕焼けならず丸焼けにする勢いで四方八方から茜色の散弾がこれでもかと撃ち込まれる。
 いつもなら削る程度の威力もL・ジュエルが合わさった今じゃ敵の体を容易く貫通するほどの威力だ。小さい奴や柔らかい奴はいち早く蜂の巣になって爆散していく。

「全力全開! スターライトブレイカーーッ!!」
「羽ばたけ! ボルテックランサーーッ!」

 残ってしまった敵は満身創痍で虫の息。それを金色の翼が砕き、光が迸れば後には何も残らない。

「これでほとんどやっつけ――違うっ! みんな巨大な魔力反応だよ!!」

 いち早くすずかが叫ぶ。どうやらいよいよその時が来たらしい。

「なるほど……確かにラスボスに違いないわね」

 綺麗になった空がガシャンと音を立てて崩れていく。空を内側から突き破ったそれは今まで見てきた黒い泥の塊だけどもうすでに人の手のような形をしていた。
 開いた穴から突き出た一本の腕はその手の鉤爪で空間をガリガリと引っかき始めた。今まで空だったものはガラスのような欠片になって空の只中へ落ちていく。穴が広がればその向こうの存在の大きさにアタシたちも流石に圧倒された。金色に光る眼光が否応無しに寒気を走らせる。

「わ、わたしに言われても……こんな相手初めてだよ」

 ひとまず集合して作戦会議が必要だ。幸い相手は穴から出てくるのに時間がかかる様子だし。

「それにすごい魔力だよ……頭が痛くなりそう」
「きっと私たちを倒すためにアルハザードが記憶を集めて作ったんだ。プレシア母さんだけじゃない……囚われたミッドの人の記憶から」

 要するに集大成ってことかしら? ならそれって言い換えれば、

「ってことは世界を作るための記憶の整理は後回しってこと?」
「もしかしたらそうかもしれない。確かなことはアルハザードは私たちを一番の敵だって認識したことぐらいだけど」
「十分よ」

 やっと本気になってくれたわけね。今まで遊ばれてたなんて思うとちょっとムカつくけど。 

「動き回った方が良さそうね……クロスシフト行くわよ! アタッカーはアタシとフェイト。サポーターにはなのは、すずかでいいわね!」

 いよいよ相手の全身が世界に晒される。
 まずその大きさだ。軽く見積もって約二十メートル近くある。アタシたちの学校と比べても負けない大きさだ。
 大きさのせいか丸まってずんぐりむっくりな上半身でもあまりの筋骨隆々さに身震いしそう。芸術家が苦心の末に生み出したようにも思えてどこか神秘的なものを感じさせる。
 猛牛のような荒々しさを称えた角は頭から左右に突き出してるし、おまけに額からいぶし銀に光る角……というより剣そのものが天を貫かんと飛び出している。

「いくら魔力が無尽蔵でも直撃されたらまずいかもね。私やアリサには厳しいかな」
「弱音吐いても手加減してくれないわよ」
「……わかってる。それに私とアリサなら当たるわけないでしょ? 当たる方が難しいよ」
「言うじゃないフェイト」
「お互い様」

 背中の翼は悪魔そのもの。一度広げれば暴風が肌を打ち据えていく。
 瞳は黄金を埋め込んだように眩く光り、鋼色をした体のおかげでよりそれが引き立ってしまう。顔から幾分突き出ている口は開けばサメもワニも真っ青な牙が整列している。尻尾なんてティラノサウルスのをぶんどってきたのかと思ってしまうくらいにうねっている。
 トドメと言わんばかりに半身のあちこちには赤や黒で描かれた線や奇妙な紋様やトゲが生えているのだから始末に終えない。

「どこの世界も魔王のイメージって共通なのね」

 昔ながらのロールプレイングゲームに出てくる魔王様が目の前にいた。デビルかサタンかデモンかカオスか……どれもこれもアタシには似たようなもので姿形もやっぱり似てる。
 
「出てきた穴は地獄かしら?」
「あながち間違いじゃないと思う。みんなの記憶から一番強いものが目の前のあれなんだ」
「だったら見せ付けようじゃない。あんなのよりアタシたちの想いがずっと強いこと」
「アリサ自信満々だね」
「当たり前でしょ? アタシまで尻尾丸めたら誰が前に出るのよ?」

 なのはもすずかも内心はこのラスボス相手に竦んでしまってる。フェイトもアタシとのお喋りで気を紛らわせてる。
 そりゃ本音を言っちゃえばアタシだって震えたいわよ。ゲームでも冗談でもなく、本当に世界を救っちゃう勇者様になるのよ。
 これでプレッシャー感じてないなら超がつくほどの鈍感……というか人間じゃない。

「もし少しでも挫けそうになったらリンディさんの言葉をお守りにするのよ」
「そうだね、母さんのくれた魔法だもんね」
「まったくリーダーも楽じゃないわ」
 
 これは責任感? それとも強がり?

(どっちもか……) 

 覚悟決めなきゃね。
 肩に遊ばせていたバーサーカーを構え直す。ついでにアタシの気持ちも構え直したい。

「苦戦しているか? ストライカーズ!」
「なんだいなんだいこんな怪獣ただのデクの坊じゃないか!」
「所詮人の記憶からの借り物。恐れるに足りませんね!」

 唐突に、自信満々な声が頭上から降り注いだ。

「三人とも少しは緊張感を……あっ、みんな大丈夫だった?」
「ゆ、ユーノくん?」
「アルフにリニスもなんで」
「それにクロノさんまで」
「そ、そうよ! あ、あんたたちなんで……」

 返事を待たずしてアタシたちを周りに降りてきたのはてっきりお留守番組かと思った面々だ。

「流石に君たちだけに任せるのは酷と思ってな。微力ではあるが手助けに来た」
「本当はフェイトが心配でしょうがなかっただけなんですけどね」
「リニス……黙っててくれ」
「まぁ見てるだけっては辛いものがあるからねぇ。それにみんなもいいけどフェイトにはあたしがいなくちゃさ」
「さっきまで暴れたいって歯噛みしてたけどね」
「そういうことは言わない約束だろユーノ」

 てっきり決戦はアタシたちだけかと思った。L・ジュエルの数もそうだし今までが今までだけにこの援軍はまったく持って予想してなかったもの。

「でもみんな大丈夫なの? わたしたちだってL・ジュエルの力でここまで来たのに」
「それは大丈夫だよ。一応はこの通り」

 ユーノが開いて見せた手の平にはお馴染みの種が一つ。他のみんなも同じように一つ。

「あれ? でもジュエルシードって全部アースラに使ったんじゃ……」

 なのはが首を傾げた。確かに人伝だけどアタシも聞いている。

「こんなこともあろうかと一番質の良かったものを残しておいてたんですよ。転ばぬ先の杖と言うわけです」

 人差し指を唇に添えてリニスが軽くウインクをした。
 流石猫だけに随分と抜け目が無いじゃない。

「ジュエルシードでも戦うことは出来る。それに戦いは魔力だけじゃない経験もあるだろう?」
「実際L・ジュエルはアルハザードの封印に使うためのもの。戦うだけならこれで十分です」
「暴走しちゃおしまいかもしれないけどとやかくは言ってられない。そうだろ?」

 なによそれ、無茶苦茶ご都合主義じゃない。

(まったくあんたたち……)

 どこまで目立ちたいのよ。主役はアタシたちなんだからね。

「――クロノ! アタシたちのフォローお願い!」
「ああ、穴は埋めてやるから安心して突っ込んでくれ」

 お人よしというか世話焼きというか……。

「アルフはアタシとフェイトと一緒に前衛。敵がバリア持ちならアタシと突き破ってフェイトに繋げる」
「あいよ、合点承知!」

 やられたってアタシ知らないわよ。

「リニスはなのはとすずかを守りつつ射撃でかく乱。隙があったら突撃よ!」
「ええ、任せてください」

 もう弱音吐いても遅いんだから。 

「ユーノは相手の攻撃に合わせてシールド展開、後ろに攻撃通すんじゃないわよ! これでポジションはいいわね?」
「うん、アリサなら絶対負けないからね」
「もう生意気なのよマネージャー!」

 まったく! 心の中で震えてた自分が馬鹿じゃない!

「さぁみんな!」

 こんだけアタシをアタシたちのことを支えてくれる人たちに情けない姿見せられないでしょうが!

「とっとと行くわよ!」

 リーダーは一人じゃなれない。当たり前なこと。みんながいつもいてくれるからアタシはここにいられる。リーダーとして立っていられる。

 それもこれもみんなのことが放っておけないくらい――……大好きだから。

 だから弱音を吐いたり塞ぎ込んだり、目の前の困難につまずきそうになってる子がいたら黙って手を差し伸べる。誰でも無い自分自身の手をその子へそっと差し出すんだ。
 導くとかそんなご大層な物じゃ無い。ただ単にその子に悲しい顔は似合わないから。笑顔になれるまで引っ張っていくのがアタシのやり方。

(わかってるわよ……一番のお節介が誰なのかは)

 よく考えれば昔だってすずかのヘアバンドとって気を引こうとしたのもウジウジなんかすずかに似合わないと思ったからじゃない? 
 実際あの子の笑顔は可愛いしね。
 
「あいつをぶっ倒せばアルハザードの中枢が出てくる! それで間違いないわねリニス!」
「え、ええ! 世界の構築中に別のプログラムを走らせればアルハザードだって相当な負担のはずです! このまま敵を倒し続ければいずれ本体も満足に動かなくなるでしょう!」
「ビンゴね! やっぱり女の勘は当てになるわ!」
「思い付きですか!?」

 まぁ……自惚れは置いておくとしてアタシにはそれだけ大切なものがあるってこと。いつもみんなの笑顔に引っ張られてる。
 その恩返しってわけじゃないけど困難が目の前に立ち塞るならアタシがみんなを引っ張り乗り越える。
 
「さぁ! 準備はいいわね!」

 目配せ、視界には頷く顔だけ。

「行くわよっ!」

 構え、魔法を唱えて。

「突撃ーーーーーっ!!」

 さぁ、みんなついて来なさい。

 アタシがどこまでも連れてってあげる!!

* * *

「スターライトブレイカーーーッ!!」 

 特大のスフィアが弾けて星の光が解き放たれた。
 一直線に突き進む砲撃は当たれば絶対に無事じゃ済まないわたしのとっておき。

『ゴォォォォォォォォ!!』

 地鳴りの音じゃない。雄叫びが耳をつんざく。
 あまりの迫力にたじろぐわたしの目には、あっさりと鋼の翼で光を蹴散らす魔王の姿があった。
 みんなの記憶から生まれた一番強い存在。やっぱり一筋縄じゃいかない。

「遅い!!」
「これでも食らいな!!」

 アリサちゃんとアルフさんがゼロ距離から攻撃を叩き込んでも鋼の体には意味が無い。お返しとばかりに巨大な腕が振り回されて避けるのがやっと。
 
「みんな離れて! 砲撃来るよ!」

 すずかちゃんの叫びに後方で攻撃に集中していたわたしも慌てて距離をとる。遠目にでも魔王の開く口に真っ赤な光が瞬くのが見えた。
 放たれたのはあまりに無数の、ただひたすらに真っ赤な光の渦だ。口の中から次から次へとマシンガンみたいにどんどん発射される。

「シルフみんなを守って!!」
『Guardian sphere』

 着弾寸前、すずかちゃんのシールドがみんなを包み、真紅の凶弾は鉄壁の前に残さず散らされる。
 
「くっ……強い」

 それでも徐々にシールドのあちこちにヒビが見えれば安心なんて出来るわけが無い。

「意外と考える頭もあるから始末に終えないな」
「ええ、幸いこの大きさ良い的ですけどね」
「でもここで倒さなきゃあたしたちの方がピンチってわけだろ? だったらやるしかないね!」

 すずかちゃんが壊れそうなシールドを修復させな持ちこたえる間にクロノくんがリニスさんとアルフさんを呼んで何か話し合っている。執務官だけあってその目は冷静に状況を見極めていた。

「まずはあの翼を破壊して確実な防御を奪い取る。間髪入れず攻撃して隙を作りなのはたちで一気に終わらせる」
「やはりそれしかないでしょうね……時間は待ってくれません。この砲撃が止み次第作戦開始ということで」
「単純明快だね。こりゃ腕が鳴るってもんさ。それでいいねフェイト!」
「なのはたちも大丈夫だな?」

 頼もしい助っ人の言葉にはただわたしたちは頷くしかない。やっぱり年上で沢山の戦いを経験してきただけに作戦を考えるのも早いし、わかりやすい。
 こういう風に格好良くわたしも出来たらいいなぁ……なんてちょっと羨ましく思ったり。

「四人は攻撃に徹して。防御は全部僕が引き受ける!」
「頼りにしてるねユーノくん!」  
「うん! 特訓の成果の見せ所だ!」

 やっぱり強敵はみんなで力を合わせなきゃね。

「アタシとフェイトで……あれやってみる?」
「望む所」
 
 四人じゃ出来ない時だってみんなになれば出来るに変わる。無茶無謀、無理難題なんでもかんでも吹き飛ばすんだから!

「すずかちゃん! わたしたちはあれで行こう!」
「そうだね。あの大きさならあんまり角度とか計算しなくても大丈夫だし」

 見せてあげる。教えてあげる。
 わたしたちが本当に何があってもどんなことがあっても止められないってこと!

 魔王の番が終わる。当然今度はわたしたちの番!

「スティンガーブレイド! エクスキューショナー!!」

 クロノくんがありとあらゆる方向から剣を生み出し一斉発射。魔王の姿を覆い隠す数の刃は雨を通り越して滝と化す。着弾、爆裂、ひっきりなしの攻撃に相手も溜まらず怯む。

「フェイトたち待たず粉々になりなさい! フォトンランサー! アバランチシフト!! 」

 さらにリニスさんがダメ押しに大小様々なフォトンランサーを手当たり次第ぶつけていく。小さいものは顔を中心にかく乱し、大きいものはその威力で持って鋼の体を削り取っていく。発射するランサー全部を的確に制御した射撃の嵐だ。

「その悪趣味な羽いただくよ!!」

 オレンジ色の軌跡が魔王目掛け一直線に突っ込む。それに気づいても魔王は降り注ぐ猛攻に身動きが取れない。

「鉄拳無敵ぃぃ――」

 降り立つは背中に。アルフさんはこれでもかと大きく腕を振りかぶり、

「マキシマムスマッシャーーッ!!」 

 狼の遠吠えが空気を揺るがし魔王の右肩が大爆発に包まれた。とんでもない爆音が空気を押し上げ巻き起こる風は飛んでくる剣やランサーを遠慮なく吹き飛ばす。
 
「見て! みんな!」 

 指差せばすでに魔王の体から悪魔の翼が千切れ飛んでいた。

「そろそろ出番だぞストライカーズ!」

 魔王がアルフさんに気を取られた隙にクロノくんが残った翼にデバイスを突き立てる。次に起こる事は予想する前に目の前に。

「仕上げだ! ブレイクインパルス!!」

 もう片方の翼を水色の光が縁取り、ただでさえボロボロだった翼をものの見事に粉々にしていく。無数の欠片と爆煙に姿を変えた翼はもう本来の力を取り戻せない。
 翼もがれ魔王もとうとう堪忍袋の緒が切れる。お腹のそこからライオンみたいな唸り声を轟かせながら両腕を突き上げる。

『グオオオォォォ!! オオオオオオオ!!』

 手が真っ赤に染まった。桁違いの魔力が集中しあっという間に両手が赤い輝きの中に。
 その手を組み合わせれば光が噴出し、際限なく空の彼方へと伸びていく。あまりに巨大で果てのわからない真紅の剣がわたしたちの前に現れた。

「ちょっとなのはたちには物騒すぎると思うんだけど」
「ゆ、ユーノくん! 避けなきゃ危ないよ!!」

 真正面から魔王と向き合うユーノくん。まさかこの剣を受け止めるつもりなの?

「なのはたちの全力全開にこれは邪魔だよね? だったら僕が受け止める!」

 にっ、と笑って両手を広げれば魔法陣が手首に巻きついていく。それも二重に巻きついていてそれぞれが互い違いに回っていた。

「透明なる旋律ここに! 我が祈りの下、虚空を拓く調べとなれ!!」

 両手が胸の前で忙しく踊る。目の回る速さで結ばれる印に魔法陣が次第に輝きを増し回転も上がっていく。

「下がってなのは!」
「う、うん!!」

 ついに魔王が両腕を振り下ろす。ゆっくりとした速さに見えても握られた剣に触れればただではすまないはず。
 迫り来る脅威を前にしてもユーノくんは一歩をも引かない。空を削りながら落ちてくる破壊の審判を前にまったくの不動でその場にいた。
 近づくに連れて赤い剣は空を塗りつぶしていく。頭上に迫ってくる光の塊はもう剣というより帯みたい。
 線じゃなく面で叩きつぶす。わたしがスターライトブレイカーを発射しながら振り回してもこうはならない。

「僕なりの新しいやり方! 見せてやる!!」

 もう避ける距離は無い。その時になって初めてユーノくんが動いた。

「ディストーションレイヴ!!」

 声が響き赤い光がユーノくんに覆いかぶさった。
 シールドを発動させるわけでも無く、ただユーノくんは両手を剣に向かって突き出していただけ。あっさりと、ユーノくんは赤い光の中に消えていた。
 何がなんだかわからない。まさか失敗したの? そんなの有り得ない!
 ぐるぐると色んな考えが頭の中で飛び回りわたしは一瞬、最悪を想像してしまった。

「くぅ~~! やっぱり迫力あるな……」

 だけど元気な声が弱気な考えは杞憂だと教えてくれた。 

「でもどんなに大きくしたって魔力の塊、流れなのは変わりない!」

 圧倒的過ぎる赤い流れの中にぽつんと取り残された小さな輝き。思わず目を疑ってしまった。
 ユーノくんはたった一人で魔王の剣を受け止めていたのだ。

「ユーノくん!!」
「大丈夫! このくらいなんでもないさ!!」

 決して強がっているわけじゃない。こうしてる間にもユーノくんの両手から溢れ続ける輝きがどんどん大きくなっていく。

「見えない盾の底力見せてやる! 引き裂け!!」

 両手が鮮やかな弧を描いた。
 扉を開けるように左右へ振りぬかれた手に翠が沿う。そして赤は翠に導かれるように真っ二つに引き裂けていった。
 
 空が見えた。

「さぁ! みんな!!」

 真ん中から裂けた剣は元の形を壊されたせいでボロボロを砕けながら振り下ろされていった。流石の魔王もこの光景には目を白黒させただろう。
 空間を捻じ曲げる魔法。ユーノくんはやっぱり凄いや。わたしがどんなに頑張って力をつけてもユーノくんを起こすことなんて無いと思う。
 やっぱり魔法の先生だ。

(でも今はそんなことより!)

 痛いくらいにレイジングハートを握り締める。

「フェイトちゃん! アリサちゃん! すずかちゃん!」

 これまでを頑張ってくれたみんなに心の底からありがとうをして。
 
「うん! なのは!」
「キッチリ決めるわよ!!」
「頑張ろうね!」

 わたしたちが最後の仕上げだ。
 泣いても笑っても最後の勝負! わたしたちで作るんだ!

 ――これからを!

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