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2009.12/24(Thu)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十五話 Apart  


【More・・・】


 無限の蒼穹は下手をしたら方向感覚さえ奪ってしまうくらいに果てしない。
 陸とかあればいいのに目印となるものなんて何一つ無い。横目に流れていくのは白い雲だけで後は体にぶつかる風を残すだけ。
 アースラの分析と私の探知でアルハザードの中心部の場所は大体把握しているはずなのにそれらしいものは未だ見えない。

「なんだか自分がどこに行ってるのかもわからないね」

 呟いて一回転してみても世界は大空だけを映すだけ。形の定まらない雲だって今は既視感を覚えるくらいに同じものが流れているように思える。
 
「すずか、本当にこの方向でいいんだよね?」
「アースラの分析にシルフのサーチがあるんだよ。間違うわけが……」
「ならなんか見つかったっていいはずじゃない!」
 
 アリサちゃんの急ブレーキにみんなが急停止。風切る音は掻き消え世界は静けさを取り戻す。

「どこかに入り口があるわけじゃないのかなぁ……? アルハザードだって簡単にわたしたちに封印されるわけには行かないだろうし」
「それ言っちゃおしまいでしょ。第一そうだったらある意味お手上げよ? 方法が無いわけじゃないけど」
「アリサまた強行突破?」
「そんなデリカシーの無いやり方じゃないわよ。入り口作るだけ」
「でもアリサちゃん入り口作ろうにもどこがいいかわからないよ」

 アリサちゃんもなのはちゃんもデバイスを構えて既に臨戦態勢だった。
 端から二人はヤル気みたい……。
 
「それならすずか! あんたの出番よ!!」
「へっ?」
 
 いきなり指差しされて呆気に取られる。

「見つけるのが得意はすずかの専売特許! なら入り口を見つけるのだってお茶の子さいさいよ!」

 その指はアリサちゃんのまくし立てた言葉と共に明後日の方向へと掲げられた。自信満々な態度はまるでその役割が自分のものだと言わんばかりに。   

「そ、そうかな?」

 確かに探知系統の魔法なら私がストライカーズの中じゃ一番だ。だけど今までだってアルハザードの中枢を探知しながら飛んで来たのだ。入り口みたいなものがあるなら絶対引っかかってくるはず。
 私だって魔法に自信を持ってる。探知に引っかからないならこの世界に初めから入り口なんてないことになるのだ。だったら「見つける」ということ自体が間違いになる。

「大方探して無いんだからアタシやなのはに入り口作らせたほうが早いって思ってたり?」
「そ、そんなことないよ!」
「けど今少しぐらいそういうこと考えてたのはほんとよね」
「…………うん」

 ちょっと沈黙して、頷いた。

「ごめんなさい……」
「いいのよ。謝るくらいならやることあるでしょ?」
「そうだよすずかちゃん! すずかちゃんなら出来るよ! 根拠ないかもしれないけど、にゃはは……」

 やるべき事はもちろんわかってるつもりだ。問題はそれを本当に形に出来ること。
 アルハザード相手に先鋒としていきなり押し出されたせいかちょっとプレッシャーを感じてしまっている。出鼻を挫くなんて真似できないから失敗なんて許されないんだ。

「すずか、母さんの言うこと思い出してみて」
「フェイトちゃん? リンディ提督の?」
「失敗は絶対許されない。だからこの作戦は何があっても成功するように出来てる」
「あっ……」
「すずかなら大丈夫。一番初めに私たちを導いて」

 シルフを固く握っていた手へ不意に温もりが与えられる。ハッとして顔を上げれば優しく微笑むフェイトちゃんがいた。
 優しい言葉と温もりと、何よりその笑顔に私は忘れていた何かを思い出させてくれる。
 
「――うんっ!」

 私は一人じゃない。みんながいる。全部の気持ちを分け合える友達がいる。辛いことはうんと小さく、楽しいことは何倍にも大きくして大きな力に変えることが出来る。 

「私出来るよね? 失敗しないよね?」

 だから背中をちょっと押して欲しい。弱い心をみんなと分け合いたい。

「失敗する方が難しいわよ。なんならジュース一本賭けてみる?」
「まず肩の力を抜いて、落ち着いて気楽に。魔法を使う時の心構え! ユーノくんの受け売りだけどね!」
「自分とデバイスを信じて。それを知ってるすずかなら絶対失敗しない」

 ……もう、みんな緊張感ないんだから。

(でも――)

『Saver style stand by』

 勇気は充電完了だよ!

「行くよシルフ! 隠れた道しるべを見つけよう!」
『Obey,mistress』

 リソースを全てを探知系の魔法へ割り振り魔力を全開まで開放する。携えたL・ジュエルも私に呼応するように柔らかな光を放ち、空に負けない蒼さを私へ注いでいく。
 目を閉じて、耳を済ませて、雑念を払い落として神経を研ぎ澄ませる。
 闇の中で感じられるのは今まで辿ってきた魔力と同じ。これがダミーなんかじゃなくてアルハザードの中枢だってことはL・ジュエルを通して確信している。
 場所はわかるのに道がないという事実。目を閉じれば本当にすぐそこにあるのに届かないってこと。

(この世界にあるのに無い……世界にあるのに無い……あるのに無い?)

 もしも――。
 本当に中枢はここには無いのかもしれない。世界には確かにあるけどここには無い。
 
「そっか……それなら!」

 初めから私のいるここに目指すものは無いんだ。

「シルフ! 探査対象を変更! 魔力の流動に再セット!」

 それはあくまでこの「世界」に無いだけだから――!

「道なんて最初から無い! だったら私が出来ることは!」

 世界を包む風の、魔力の流れを一気に汲み上げる。目には決して見えないその流れがどこから始まってどこへ行き着くのか。この体をコンパスにして気まぐれな流れの中に潜む確かな本流を探し出す。
 世界の端から集う魔力の雫は寄り集まって小さな流れになる。小さなな流れは他の流れと結びつき多き流れへと変わっていく。

「風よ運べ! 想いと願い!!」

 全ての雫が最後は海へ注がれていくように、この流れだって無秩序に見えても必ず同じ場所へ行き着くはず。
 調べを流れに乗せてその先を見極める。絡み合った光の流れは確かにどれも海へと注がれている。
 けれどその流れには私にとってはどこか違和感を覚える場所があった。

「世界に覆われし光の標よ! 我が声と力の元にその姿をここに!」

 その違和感へ向けて私はシルフを投げつけた!

 ダン――!!

 有り得ない音が響く。何かにぶつからない限りそんな音はこの世界には許されない。
 目を開く。感覚を頼りに解き放たれたシルフは空間の一転に突き刺さったまま羽を広げていた。それがこの世界と中枢へとを繋ぐ入り口になる。
 海へ注がれる流れはそのどれもが海を前にして奇妙な蛇行をしていた。何かを跨ぐように折れ曲がる意味はきっと世界を跨いだことに他ならないはず。
 アルハザードが一つの世界って考えることは間違いなんだ。私の世界とミッドチルダが違う世界のようにアルハザードもいくつもの違う世界が繋がった世界。

 それが答え!

「みんな! これが入り口だよ!!」

 刺さったままのシルフを思い切り引き抜けば破れた穴の向こうにまた違う空が見えた。

「行こう!!」

 穴が塞がれる前に飛びこまなきゃいけない。みんなを急かしながら私が一番に新たな世界の入り口をくぐっていく。
 空気が変わる。風向きが変わる。アースラにも座標の連絡をして私は全速力で世界を越えた。

「私もみんなも絶対に止められないよ!!」

 風は追い風だ。背中を押してくる気ままな精に感謝して、

 どこまでも高く、限りない速さで空を駆け抜ける!

* * *

 開いたトンネルの向こうはもう空だけの世界じゃなかった。
 大空をキャンバスにして山や大地が浮島のように上下左右あちこちに浮かび、そのいくつかには鋏で切り取ったかのように街の断片が植え付けられている。ビルや家がそのままの形で浮かび通り過ぎ去っていくものまである。
 滅茶苦茶な光景に目を疑いたくなる。だけどそれさえアルハザードにしてみればごくごく普通の世界なんだろう。
 
「うわぁ……ぶつかったら危ないね」
「なんだか漂流してるみたいだね」

 目の前から流れてくる大木を危なげなくかわしながらなのはとすずかが目を丸くしていた。障害物の一切無かったさっきの世界とは違ってこの世界には本当に邪魔者が多い。何よりこれに紛れて何かが襲ってきたらひとたまりもないだろう。

「二人とも油断しないこと。ラスボス前に怪我してちゃ世話ないんだから。それですずか方向はこっちでいいの?」
「方向というかもうここが中心部なんだけど……」
「ここが? でも怪しいものとか全然ないよ?」

 首をかしげるなのはに私も同調する。確かにさっきとは色んな所が違うけどアルハザードの中枢というにはどうもピッタリな風景では無かった。
 
「まさかまだ次の世界があるわけじゃないでしょうね」 

 アリサが訝しげな視線をすずかに向ける。すずかはというとそんな視線に慌てて首を振った。

「じゃあまだ何か隠れてる――?」

 不意に辺りが薄暗くなった。何気なく仰いだ空はすでに視界一杯に黒みがかった巨大な何かがゆったりと流れていく最中だった。
 
「か、怪獣!?」
「ようやくお出ましってわけね!」
「シルフ戦闘準備だよ!」

 口々に叫んでデバイスを構える三人に私もバルディッシュを上段に構え――ようとして止めた。

「違う……敵じゃないよこれ」

 呆気に取られた表情を見るより早く私は高く飛び上がる。私たちの真上に漂ってきた謎の存在は敵ではないと言い切れる。ただその圧倒的な大きさに全体像が掴めないだけで。
 高度をぐんと上げて遥か彼方まで舞い上がる。記憶の中の存在とどれくらい離れれば全体を見渡せるかイメージしながらあるところで制動する。そして眼下を見下ろせば私の予想通りのものがそこに横たわっていた。
 ミッドにある建造物の中で一番高く、一番の象徴であるそれがそこにあった。

「時空管理局地上本部……中央タワー」

 地上の平和を守る象徴こそ眼下に漂う建物の正体だった。
 細身の巨大タワーはクラナガンに存在するどんな高層建築物よりも高く、最上階はミッドはおろか地平線の向こうまで見渡せそうな最高の展望台となっている。私も嘱託魔導師の試験を受けに来た時に、観光がてら上ったことがある。それ故、この建物が中央タワーだと気づくことが出来た。
 しばらくすればなのはたちも私の所へ上ってくる。見下ろせばさっきまで自分達を覆い隠していた圧倒的な存在の正体にただ声を上げるばかりだ。
 
「みんなは知らないかもしれないけどこれミッドチルダの建物なんだ」
「ミッドチルダの……? じゃあフェイトちゃんここにあるものって――」
「多分、ううん絶対そうだ」

 なのはの言おうとしていたことはすぐに伝わった。

「ここにあるものはミッドチルダの記憶……・。間違いないよ、ここがアルハザードの中心なんだ」

 プレシア母さんが成そうとしていたことはたった一つだ。全ての記憶から過去の世界を作り直し、幸せだった時間を取り戻すことだけ。
 そのための材料が今ここに漂っている全てだ。

「でもそれなら人とか生き物の姿が無いじゃない。ここが中心ならおかしくない?」
「それは多分まだ記憶を一つにまとめられてないからだと思う」
「まとめる? もうミッドチルダはアルハザードに全部取り込まれてるんでしょ? それならそんなことしなくても」
「する必要がなければもうとっくにミッドも地球も無くなってるよ」

 過去の世界を作り直すためにはその過去がどのような形であったかを正確に復元しなければならない。もちろん寸分違わず、一切の歪みの無い完全無比の過去になる。
 悠久の時を過ごしてきた自然や命を持たない建物にとってその記憶は年月だけのものに他ならない。それはもうアルハザードには単なるオブジェみたいな存在なんだろう。だからここに留めている。
 
「思い出って色んなもので出来てるよね? それにあんまり時間が経つと段々思い出せなくなる。思い出そうとして色んなものを付け足していく」

 脚色された過去じゃ本当の過去は取り戻せない。全ての記憶をまとめあげた時それはみんなノイズになってアルハザードの目的の邪魔になる。
 
「つまり記憶を一つに最適化するために無駄なものを取り除いてる途中ってこと?」
「うん、すずかの言う通りだと思う」

 無限大の記憶を照らし合わせて記憶同士で答え合わせをする。いろんな形や色の記憶の中で変わらないものだけを掬い上げ本当の形に仕上げていく。
 
「なら、それが終わったらいよいよってことなのね」
「だからその前に止めなきゃいけない」
「じゃあ早く行かなきゃ! 急ごうよみんな!」
「待ってなのは」

 先走ろうとするなのはを軽く制して私はL・ジュエルを取り出し握り締める。

「フェイトちゃん?」 
「世界の中心はここだけどアルハザードは記憶をまとめるまで本当の姿を現さないと思う。でもアルハザードが動き出した時はもう遅いんだ」
「じゃあどうすればいいの? わたしたちここで立ち止まってるわけには行かないよ!」
「簡単だよ。姿を現さないなら引きずり出せばいい」

 願いを込める。拳の隙間から漏れ出す光が掲げた腕に沿って残像を残した。

「アルハザードにとって主以外の記憶は邪魔者なんだ。沢山の邪魔者が現れればアルハザードは必ず動く!」

 過去へ集束する世界の中で未来へ向かおうとする意志が生まれればアルハザードには一番の毒になる。過去のどの記憶とも答えの違うものがそこにあればアルハザードはそれを排除しようと必ず何か行動を起こす。
 その引き金を私は作り、

「アルカス、クルタス、レイギアス! 願いの種よ我が声の元に記憶を紡げ! 時を紡げ! 未来を紡げ!」

 ――引く!

 拳から光が噴出し瞬く間に濁流と化し幾重にも放たれていく。世界を押し流すがごとく蒼い濁流は周りに浮かんでいた山を、大地を、街を飲み込み、粉々に破壊し、押し流していく。
 壊れた記憶は光の粒になりながら次から次へと消滅する。アルハザードによって過去へと固定されたそれが元の形に戻っているのだと直感で理解した。
 もはや濁流は大蛇のようにうねり触れるもの全てを蹂躙していくのみ。

「――っ!? フェイトちゃん!!」
 
 なのはが叫ぶ。魔法の制御に集中していた私はその声に我に返りL・ジュエルを一気に停止させた。

「あらら、フェイトが好き勝手やったおかげで本当に向こうから出てきたみたいよ」
 
 意地悪っぽく呟いたアリサの見つめる先には空間から湧き出すように這い出てくる黒い泥。滲むように空を侵食して広がりながらボコボコと泡立ち膨らんでいく。

「数は……もうわかんないね。……多すぎ」

 すずかが呆れるのは当然のことだ。近くで生まれた泥ならその振る舞いをつぶさに観察できる。けど生まれる泥は一つじゃなかった。あっちでこっちで空間を破り染み出していく泥は遥か彼方の空まで延々と続いていた。
 もうそこまで距離が離れれば黒い点でしか認識できない。まるで青空に浮かぶ黒い星だ。私たちから見て正面の空は快晴の空に満点の黒き星が散りばめられた不気味な世界となっていた。
  
「ここから本番ってところだね」

 膨張しきった泥がどこかで見覚えのあるシルエット作れば、すぐに泥は弾けるように散り散りになりその内に育まれた者の正体を明らかにする。
 私たちにとってはすっかりお馴染みの傀儡兵の一体を見据えながらなのはは既に臨戦態勢を取っていた。

「ふぅ……じゃあ頑張ろうか」
『Yes,sir』

 あの黒い星一つ一つが敵ならばその数はもう無限大と言っても過言ではない。 
 だからどうした。きっと私たち誰も心の中で考えることはそれだけだ。

「リリカル・ストライカーズ! レディ――」

 アリサが前に続けて私が、すずかは中央、なのはは後方に。私たちの得意をもっとも発揮できる場所に並び替えて詠唱を始める。
 アルハザードもどうやら準備を終えたらしい。形を変えた星が動き出しどんどん群れを成して巨大な塊へと成長していく。あれ全てを相手にするなんて無茶無謀いいところかも。
 ただ尻尾を巻いて逃げ出すなんて選択肢は最初から無い。私たちは信じているから選ぶ必要なんてどこにもない。

「――ゴーーッ!!」

 選択肢は自分達で作る。
 全てを取り戻すための一番の選択肢を心に宿す。
 それ即ち、 

 絶対に勝つ!
 
 それだけをこの手に掴み取る!!
 
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