10月≪ 2017年11月 ≫12月

123456789101112131415161718192021222324252627282930
--.--/--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【編集】 |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2009.09/03(Thu)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十三話 Bpart  


【More・・・】


 アイスティーのひんやりした喉ごしにほっと一息つきながらモンブランの最後の一口を頬張る。
 決して甘すぎない絶妙に調節された味に疲れていた心と体もすっかり元気一杯だ。

「なのは、おかわりする?」
「うん! じゃあお言葉に甘えまして!」
「じゃあ今度はなにが良い? ほかのみんなも遠慮なく言ってね」

 すぐに口々に聞こえてくる追加オーダー。お母さんはご機嫌な表情ですぐにショーケースの中からケーキを持ってきてくれた。
 
「やっぱり翠屋のケーキは最高ね。アタシこれ以上の美味しいケーキ屋知らないわ」
「なのはちゃんのお母さんが羨ましい。今度ノエルやファリンにも教えて欲しいな」
「そ、そうかなぁ……? 二人ともありがとう」

 面と向かって美味しいと改めて言われてもわたしにはそれほど実感がなかったりするわけで。
 だって昔からケーキなんてお母さんの作ったもの以外口にしたことは無かったから。みんながここまで絶賛するなら今度町中のケーキ屋さんを回って食べ比べしてもいいかもしれない。

「お礼を言うのはこっちの方だよなのは。あんなに走り回ってたのにもうすっかり元気なんだよ。なんだか魔法みたい」
「魔法……か」

 当たり前なことだけどお母さんは魔法使いじゃない。でもこうやってケーキを食べてみんなで仲良く話しをしているとあれだけ疲れてた体も嘘みたいに軽くなってくる。
 不思議だな、って思いながらおかわりのショートケーキを見つめていた。

「けどほんとにこの人たち大丈夫かしらね?」

 お母さんの声に我に返る。心配そうな顔で見つめる先には今まで翠屋でティータイムを楽しんでいた人たちがいた。
 彫刻みたいにカチカチになって息一つしないのではわたしだって心配だ。もしかしたら固まっていても意識だけはあったりするかもしれない。確かめる方法がないのがもどかしい。

「だから早く助けなきゃ……。リンディさん! これからわたしたちどうすればいいんですか!」

 もう元気は十分だ。後はこれからをどうするか考えるだけ。
 募る気持ちを抑えながらわたしはカウンター席のところを飛んでいたリンディさんに声をかけた。

「そうね。みんな鋭気は養えたみたいだからそろそろ大丈夫そうね」
 
 小さな体がふわりと舞い上がり店内の中心へ。みんなから見えることころに浮きながらリンディさんが口を開く。

「ではこれより我々の母艦奪還、及び地球次元脱出の作戦プランを発表します」

 光の羽を震わせながら僅かに上下を繰り返す姿は絵本に出てくる妖精そっくりだ。でも今はそれに見とれている場合じゃない。
 凛々しく表情を引き締めたリンディさんに倣うようにわたしの顔も自然と力が入る。

「ごめんなさいね、こんな姿のままで。本当ならすぐにでも戻りたいのだけどそうもいかなくて」
「アースラで何が起こったんですか? リンディさんの今の姿と関係あるんですか?」
「ええ、じゃあ順を追って説明していきましょうか」

 軽く腕を組んでリンディさんが頷いてみせる。

「まず海鳴を中心とした周辺の町は時間の流れが完全に停止しています。おそらくまだ町に残っていたL・ジュエルの仕業ね」
「それって封時結界に包まれてるってことですか?」
「そうね……この際そう考えてもらっても問題ないわ」

 ユーノくんがいつも作ってくれる魔法使いの世界。それが海鳴の町全体をつつみ込んでるのならば関係ない人たちが固まってしまっているのもわかる。
 あれ? でもそれじゃあ……。

「あの、リンディさん! なんでわたしたちは固まらなかったんでしょうか?」

 ぱっ、と手を上げて質問する。だってこれが封時結界なら絶対おかしいところがあるから。

「いい質問ね、なのはさん。これは私の推測だけどおそらくみんな免疫がついていたからよ」
「めんえき……?」
「私たちは魔法が使える。体も魔力を扱えるよう体質が変わっているの。L・ジュエルに影響されたのは魔法の存在すら知らない一般人だけでしょ?」
「でもそうすると家族のみんなが動けるのは何ででしょうか?」
「そうね、この場合別に本人が魔導師じゃなくてもいいの。必要なのは魔力と触れ合えるかどうか」

 魔力と触れ合う――。
 そう言われてパッと思い浮かんだのはディバインバスターを発射するわたしだったり、スターライトブレイカーを浴びているフェイトちゃんだったり。 

(うっ……なんかそれ違う気が)

 触れ合うというかなんというか……。

「どうしたのなのは? なんだか難しい顔してるけど」
「な、なんでもないよフェイトちゃん!」

 これならちゃんと魔法についても勉強しておくべきだったかもしれない。周りが見ればきっと物騒すぎるイメージをどうにかしたくてわたしは少し離れたところにいた先生に念話を飛ばす。

(ユーノくん……説明お願いできるかな)
(なのは? あっ、うん。つまり魔法が使えない、知らない人でも毎日魔力が濃い場所にいれば少し体質が変わるんだ)
(それで結界とかが効かなくなるの?)
(すごく弱い魔法に限るけどね。幻惑とか少し魔力で相手の感覚に作用するのとか。風邪を引いたらしばらくは引かないだろ? それと同じことだね)

 なるほど、つまり魔法使いが近くにいた人はみんな助かったんだ。

(ありがとユーノくん、すっごくわかりやすかった! じゃあL・ジュエルの魔法って実は大したことないんだ)
(多分、願いって明確な形が無かったからだと思う。動かしているのもきっとアルハザードだと思うし人の思いがどこにもないからね)

 願いも想いも無い魔法。聞いてるだけで冷たい感じがする。
 
「おそらくなのはさんの場合は資質が放出に傾いているから尚更。むしろこうなってのはなのはさんの周りだけかもしれないわね」

 それじゃあ止まった世界に取り残されたのはわたしの場合家族だけで済んだみたい。
 
「出力系統が圧縮なら外に魔力は漏らさないし、制御系に秀でれば自分の適した形に浮かべて他へ伝播させないと思うし」
「そういうことだったのね。鮫島に電話が繋がらなかった訳がようやくわかったわ……」
 
 納得はしてもアリサちゃんの顔は晴れ晴れとしていない。当たり前だよね。

「どちらにせよ時間は無いわ。状況説明はここまでにしてこれからの作戦の説明を始めましょう」

 リンディさんの言う通りもう呑気に構えている時間は無い。
 みんな緊張に表情を固くする中でわたしもさらに気持ちを引き締めた。

「私たちの最終目的はアースラの奪還にあります。これが最優先事項であり全てです」

 アースラの中の人たちが無事なことを祈らずにはいられない。
 何よりも早くわたしたちの翼を取り戻さないとアルハザードへ向かうことも出来ないんだから。

「現状アースラはL・ジュエルのバインドにより完全に拘束されています。ですがその仕組みは私がすでに把握しています」
「アタシにも壊せるものですか?」
「ええ、ただのバインドなのよ。多少性質は異なるだけのね」

 わたし達が使うバインドとは違うバインド……。つまり手足を縛ったり貼り付けにしたりするものとは別のもの。
 それならわたし達の中で一人いる。多分わたし達の中で一番硬くて強いバインドだ。
 
「私のウィールバインドみたいなですか……・?」

 すずかちゃんのバインドはわたし達のとはかなり違う固め方をする。
 確かすずかちゃんが言うには、魔力の渦で空間の魔力密度を一時的に上昇させてその結果生まれる斥力で押し固める――らしいけどちょっと聞いたたけじゃ良くわからない。

(ユーノくんまたお願いしてもいい? すずかちゃんのバインドってわたしたちのとどう違うの?) 
(簡単に言うならすずかのバインドは相手の周りに小さなボールを敷き詰めて全体から押さえ込むって感じだね)
(ぎゅうぎゅう詰めにするってことかな? 確かに動きにくそうだね)
(多分リンディさんはそのボールの隙間から抜け出たんだと思う。すずかに比べればL・ジュエルのバインドは大したことないみたいだし)

 こんがらがりそうだった疑問の糸がユーノくんのおかげで次々に真っ直ぐになっていく。

(じゃあもう元の姿になってもいいんじゃないかな)
(きっと魔力で居場所を悟られないためだと思う。リンディさんぐらいの魔導師だと魔力を完全に抑えるには変身するしかないだろうし)

 気配を悟られないためならそういうことになるのかな?
 確かに窓の向こうにはさっきから暴走体の影も見えないし気づかれてる感じも無い。すずかちゃんが何も言い出さないところを見るとやっぱり敵はみんな別の所にいるのだろう。

(ユーノくんも変身してたのはそういうこと?)
(僕の場合は体力の回復のため。魔力も抑えられてると思うけど、今度確かめてみる?)
(うん! 百聞は一見にしかずだね!)

 やっぱりユーノくんは戦う時でもこういう時でも隣にいてれるとすっごい頼もしい。心もなんだか弾むみたいで嬉しくなってくる。
 
「敵も学習してるのかもしれないわね。やり方を真似ても質が伴ってないみたいだけど」
「じゃあクロノたちも無事なんだね母さん」
「取りあえずは、ね。後は時間との勝負かしら。アルハザードが本格的に動き出す前に止めないと」
「あれ……? でもアースラってまだ修理中なんじゃ」

 わたしがユーノくんと話してる間にも本筋はどんどん前へと進んでいく。いつの間にかお話の内容はアースラのことになったみたい。
 もしかしてわたし結構置いてけぼりだったり?

「それについては一つ大きな賭けに出ることにしたの。無茶だってことは承知なのだけれど」

 リンディさんが一体何を考えているのかわからないけど真剣な眼差しが冗談じゃないことを教えてくれる。
 
「残るは人員の選抜だけなんだけど……」

 そこまで言ってリンディさんは黙ってしまった。何か言葉を選んでいるのかとても言いにくそうな感じで唇を噛んでいた。
 理由はすぐにわかった。今この中で外をうろついている暴走体をやっつけられるのはわたしたちリリカル・ストライカーズじゃない。
 リンディさんからすればこれ以上関係ない人を巻き込みたくないんだと思う。でもその人たちに頼らなきゃこのピンチは抜け出せない。

(大丈夫……だよね)

 誰かに迷惑をかけちゃいけない――だから今の自分だけで、自分の力だけでどうにかしようと思うのは立派かもしれないけど、ほんとは全然駄目なこと。
 一度くらいならそれでもいいかもしれない。でも何度も何度もそれを繰り返してたら最後に痛い目にあうのは自分自身だ。
 だからわたしは甘える時はとことん甘えるって決めた。むしろ頼られて欲しいと思ってるのがその人たちなんだから。

「なるほどな……。俺は場数は踏んでいるが恭也、美由希、おまえたちは戦えそうか?」
「俺だってやる時はやるさ。一応はそれなりの修羅場は踏んでる」
「私だって! ユーノと修練もしてるんだし大丈夫に決まってる!」

 三つの席が空く。立ち上がったのは紛れも無いわたしの大好きな人たち。
 
「じゃあ話は早いな。……まったく、もうこんな仕事はしないと決めたつもりだったんだがなぁ」

 まるで最初からこの仕事を引き受けていたように軽い口調で呟くのはお父さん。
 
「俺たちがこんな力を身に付けたのもこの時のため……なのかは知らないが、思う存分暴れるかか」

 なんだかちょっと不敵に笑っているのがお兄ちゃん。

「ユーノの防御も抜けるんだしあんな奴ら大丈夫だよね……よしっ!」

 ぱんぱんと頬を叩いて気合を入れているのはお姉ちゃん。

「うむ、それじゃ忍ちゃんとユーノには殿を頼むが大丈夫だな?」
「はいおじ様! 恭也を尻に敷くぐらい私だって強いですから!」
「まかせてください! みんな僕が守り抜きます!」
「頼もしいな! よし! 敵に家族の力を見せつけてやるぞ!!」

 一致団結だ。これなら絶対にアースラまで辿り着ける。
 どんな敵に襲われたって負けないはずだ。

「ということで宇宙船までの道は俺たちが切り開きます。リンディさんは大船に乗った気分でいてください」
「ごめんなさいねリンディさん。士郎さんってこうなっちゃうと中々止められないから」

 呆気に取られているリンディさんをよそに俄然やる気なわたしの家族。普通こんなめちゃくちゃなことに巻き込まれたら驚くばかりでそれどころじゃないと思うけど。
 肝が太いのかただただノリがいいのかそこのところはよくわかりません。
 でも考えてみればわたしだって最初のころから結構飛ばしてたし、もしかしたらうちの家族ってみんなそうなかもしれない。

「そ、それではみなさんアースラまでよろしくお願いいたします」

 呆気に取られていたリンディさんも気を取り直してぺこっとお辞儀をした。

「よおし! 御神の剣士の力を思う存分見せ付けてやるか! しかし無茶はしないようにな二人とも!」
「父さんこそ張り切りすぎて怪我するなよ」
「おっ、言うようになったな恭也! なに心配するな! 今更傷が一つ二つ増えたところで――」
「士郎さん!」
「――い、いや桃子これは言葉のあやだ。無茶はしないから安心してくれ」

 うう、なんだか他の人には緊張感の無いやり取りに見えているかも……。
 
「……では作戦を開始します。おそらくアースラに乗ったら事件が終わるまで海鳴には戻ることが出来ないと思います。それでもよろしいですね?」

 みんなが力強く頷き、リンディさんも頷く。

「それじゃアタシたちは士郎さんたちの活躍を眺めながら優雅に行きましょうか」
「うん、ここはみんなに任せて私たちは自分のやるべきことに備えて」
「アースラまで走る!」
「そしてわたしたちはアルハザードへ!」

 舞台は整った。ここからはわたしたちの番。今までの分をキッチリお返しするんだ。
 
「それじゃあお父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん! よろしくお願いします!!」
「ああ! 父さん達に任せておけ! なのはたちは安心してついて来い!」
 
 胸を張りつつお父さんは腰からを刀を引き抜いた。わたしたちの相棒がデバイスならお父さんたちの相棒はこの小太刀。レイジングハートみたいに応えてくれなくたって、その子たちもやる気になっているのは何故だか不思議と感じられた。
 臨戦態勢に銀色の刃が魔力の光に包まれ宝石みたいな刃へ変身する。わたしたちのみたいな派手な魔法じゃないけどお父さんが握っていても役不足になりそうなくらい威厳を放ってる。
 
「ユーノには礼を言わないとな。流石に普通の刀じゃあいつらに効くかどうか怪しいもんだしな」
「僕は大体の使い方を教えただけです。きっとなのはの資質とか色んな要素があったおかげですよ」
「いや謙遜するな。どんなことがあるにしろお前が教えたことに変わりは無い。自分が出来ることをやり抜いたんだ。胸を張れ!」
「は、はい!」
「俺もこれから自分の一仕事だ。もしもの時はなのはや母さん、他のみんなは任せたぞ!」
 
 ユーノくんに一声かけてお父さんの顔つきが変わっていく。
 優しさが消え、鋭さを帯びる眼差しに寒くなるような言い表せない雰囲気がお父さんを包み込んでいく気がした。
 
「さぁ! 相手に目に物見せてやれ! 行くぞ恭也! 美由希!」
「ああ、派手に暴れてやるさ!」
「お姉ちゃん達だってすごいんだからね!」

 三人が勢いよくお店を飛び出していく。チリンチリン、と響くドアベルは作戦開始におあつらえ向きな合図だ。

「それじゃあアタシたちも行きましょうか」
「そうそう。私とユーノ君もいるんだし問題ナッシングね」
「もうお姉ちゃんってば……」
「海鳴ともしばらくお別れ……なんだよね」
「大丈夫だよフェイトちゃん! すぐに事件を解決すればまた夏休みが始まるんだから!」
「……なのは。うん、そうだよね!」

 不安はあるけどそれはみんな同じ。同じ気持ちは分け合って、どんどん小さくしちゃえば大丈夫。
 
「お母さんも大丈夫?」
「うん、大丈夫。魔法は駄目でもお母さん駆けっこなら負けないわ」
「本当にすいません。こんなとんでもないことに一家全員巻き込んでしまって」
「困った時はお互い様です。それにリンディさんはうちのお得意さんなんですから! こちらこそいつもありがとうございます」
「にゃはは……」

 なんというか適度な緊張感が保てるくらいの小ささがちょうどいいとは思うんだけど。
 これは流石に小さくし過ぎたかな?

 何はともあれここからは待った無しの一本勝負だ。翠屋を出ればもう立ち止まってなんていられない。
 この夕焼けで止まった世界をもう一度動かすために。

「全力全開でアースラまで走る!」

 考えていいのはそれだけ!

「行こう! みんな!!」
 
 みんなの笑顔を守る! 

 ――わたしが!

 ――わたしたちが!!

スポンサーサイト
【編集】 |  01:26 |  なのはStep  | TB(0)  | CM(0) | Top↑

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック


 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。