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2009.06/08(Mon)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十三話 Apart  


【More・・・】


「はぁ……はぁ……んく」

 苦しさを押さえ込んでここに身を潜めてからどのくらい経っただろう。
 オレンジ色の町から取り残されたように薄暗い空間は一人だけでも狭いのに四人もいるから大変だ。

「どうしよう……」

 路地から見える数十センチの商店街はとても静かで誰一人通らない。普段なら一番賑わう時間なのに買い物に来る人は誰もいないのだ。
 ううん、誰もいないんじゃなくて来れないと言った方がきっと正しいと思うけど……。 

「駄目だ、アースラにも連絡繋がらない」
「通信妨害されてるのかな……・? ただでさえデバイスが無いのに」
「とにかくどこか安全な場所へ避難することが先決でしょ。このままここでじっとしていたってどうしようもないんだから」

 逃げるだけじゃ駄目なのは誰だってわかってる。もうとっくに息は上がって走ることもままならないんだから。

「みんな大丈夫かな?」
「お姉ちゃんたちなら今の暴走体ぐらい相手に出来ると思うけど」
「わたしたちだって魔法が使えれば」

 今までデバイスに頼っていたツケが回ってきた。デバイスが手元に無いこの状況でわたしたちが使える魔法はほとんど無い。
 魔法少女になって日の浅いアリサちゃんやすずかちゃんはもちろん、わたしだって今だとディバインシューター一個が――しかも相当威力の低い――限界だ。頼みの綱のフェイトちゃんだってどこまで善戦できるかわからない。

「デバイスってほんとに大事だよね。魔法の詠唱もそうだけど」
「いるだけで心強い相棒……でしょ?」
「アリサちゃんわかってる」
「すずかうるさい。アタシは当たり前のこと言っただけよ」
「――っ! しっ! 二人とも!」

 気配にいち早く感づいたフェイトちゃんが二人を止める。睨みを利かせた向こう側にはさっきから散々追い立てられた黒い塊がゆっくりと通り過ぎていくのが見えた。

「……お母さん達大丈夫かな」

 商店街までやって来れば翠屋は目と鼻の先だ。
 この状況だとどうしても気になってしまう。もしもお母さん達も町の人たちと同じ状態になっていたらこの事件が解決するまでそのままだから。
 
「見に行くなのは?」
「フェイトちゃん……」
「大切な家族なんだから心配になって当然だよね」

 そんな言葉に素直に甘えてしまいたい。でもここからどうやって翠屋まで行けるかといわれるといい作戦は思いつかない。

「一か八か……翠屋までダッシュ。それしかないわね」

 わたしの不安のよそにアリサちゃんが腕をまくり始めた。
 なんだか「覚悟を決めなさい」なんて言われてるみたいに。

「それに翠屋まで逃げ込めれば休憩ぐらいはできるでしょ? ケーキでも食べれば少しは気分も紛れるわ」
「い、いいのかな、お店のもの勝手に食べても……」
「お得意様ってことでツケ払い……いいでしょ?」
「え、ええと、ちゃんと払ってね」

 茶目っ気全開にウインクまでされてしまうと流石にわたしも断れないというかなんというか。
 アリサちゃんなりの気づかいなんだとは思うけど、翠屋でツケ払いはやっていないわけで。

「アリサって結構大胆だね……」
「エマージェンシーなら多少の無茶許してくれてもいいでしょ」
「じゃ、じゃあ翠屋までみんな一緒にいいかな?」
「最初から断るなんてしないよ、なのはちゃん」

 首は振った子はいなかった。こういう時でもみんな同じ気持ちなのはやっぱり嬉しくなる。

「じゃあまずは翠屋に避難して態勢を立て直して、それからアースラまで行くってことで」
 
 外の様子を窺い安全を確認するともう後戻りは出来ない。

「――行こう!!」

 一気に飛び出しオレンジ色の世界へ。
 翠屋はここから百メートルと少し。普通の競争みたいに走るだけならいいんだけど。

『ヴァァァァァァァァァァ!!』
 
 聞きたくなかった雄叫びが空気を震わせ背中を貫いた。

「待ち伏せ!?」
「気にするより走りなさい!!」

 アリサちゃんが叫んでわたしの隣に並ぶ。リレーのアンカーみたいに必死な形相で、視線は前しか見ていない。
 
「でも翠屋の中まで入ってこられたらどうするの!?」
「知らないわよ! こうなったら追い払うしかないでしょ!!」
「だったら私が行く!」
「フェイトちゃん!?」

 並んでいたフェイトちゃんが急ブレーキして視界から消える。振り返った先ではフェイトちゃんが暴走体に向かって走りながら店先にあったのぼりを引き抜いていた。

「やぁっ!!」

 バルディッシュを振り回すようにのぼりが風を切り黒い体に叩きこまれる。「大安売り」の文字も一緒にはためき暴走体が僅かに傾く。

「でぇえええい!!」

 続けて強烈な突きが見事に決まった――

「えっ!?」
 
 ――と思った瞬間、大きくしな垂れたのぼりが「パキッ」と軽い音を響かせ真っ二つにへし折れたのが見えてしまった。
 最初からプラスチックの武器で勝ち目なんて無かったわけで。フェイトちゃんは一目散に回れ右してこっちへ走って来た。

「ご、ごめん! やっぱり無理!!」
「でも時間は稼げたわ! グッジョブよフェイト!!」

 気になってスピードを落としていたおかげかフェイトちゃんが追いつくまで時間はかからなかった。
 半分泣きそうな顔で謝るフェイトちゃんを慰めながら気づけば残り三十メートル。

『ヴァアアアアアア!!』

 重低音が耳に飛び込み風が吹き荒れる。何事かと思った矢先、頭の上が一瞬暗くなって今度は目の前から音と風がぶつかってくる。
 砂埃に足は止まり嫌な予感が背中を走る。煙が晴れた先には当然のようにそれがいてせっかくのチャンスが逃げ出してしまっていた。

『ォォオオオオオオ!!』

 一声鳴いて黒い塊が宙を舞う。赤い目がギラリと光ってわたしたちを完全に捉える。

「みんな下がって!」

 絶体絶命のピンチにすずかちゃんが前へ飛び出す。構えた両手に青い光が瞬いてわたしたちを息つく間も無く包み込んだ。

「プロテクション!!」

 ギリギリのタイミングで発動した壁が暴走体を明後日の方向へ弾き飛ばした。切りもみしながら暴走体は電気屋さんのショーウインドーに激突してガラスやテレビを滅茶苦茶にしていく。

「ありがとうすずかちゃん!」
「うん……でも次は上手く行くかわからないよ」 

 呼吸を整え暴走体が突っ込んだ方向を見つめながらすずかちゃんが呟く。傍から見れば完璧なプロテクションに見えても、やっぱりデバイスがないせいで制御に苦労しているみたいだ。

「だったらディバインシューターで!」

 こんな切羽詰った状況で詠唱から発動、そして制御までスムーズに出来る自信は無いけどやるしかないのがまさしく今で。
 
「福音たる輝きこの手に! 鳴り響け! ディバインシューター!!」

 省けそうなところは省いて手の平に輝きを。
 それをボールを投げるように敵に向かって思い切り投げつける!

「アクセル!!」

 暴走体はちょうど起き上がろうとしていた所だった。そこに加速したシューターが飛び込みはじけ飛んでいく。
 レイジングハートがいればこんなのいくらでもぶつけられるのにわたし一人じゃこれが精一杯。こんな難しいような面倒くさいようなことをいつも文句も言わずにやってくれていたレイジングハートには頭が上がらないかも。

『ウヴォオアアアア!!』
 
 雄叫びが響き渡り暴走体が身を震わせた。どう見ても「怒ってます」なんて言いたそうな反応に足がたじろいでしまう。

「わっ! わっ! これじゃ逆効果だよ!」
「じゃあディバインバスターとか撃てないのなのは!?」
「アリサちゃんこそ何か頑張ってよ~!」
「自爆でいいならやってやるわよ!」

 つまりは無理。

「に、逃げるしかないんじゃ……」
「フェイトちゃんはデバイス無くても魔法使えないの? 私たちよりずっと経験あるんだし」
「まだ体のほうに慣れて無いんだ。……その、バルディッシュないと制御しきれないと思う。最悪みんな感電するかも」

 横から聞こえた不安げな声にわたしは確信した。
 
「え、ええ~と、これはつまり――」

 周りを見渡し改めて何か使えそうなものがないかを確認する。
 そしてそんなものは欠片もないことを思い知ってわたしは小さく呟くのだ。

「大ピンチ……」

 まさに絶体絶命の大ピンチだった。

「みんな走って逃げられると思う?」
「フェイト……それ嫌味かしら」
「私たちの足でも無理だと思うよ」
「わたしかけっこはあんまり……」

 悪あがきを考える間にも相手は目をぎらつかせながら唸り続けている。あからさまに襲ってくる気満々だ。

「ど、どうしよう……」

 ジリジリと追い詰められる。逃げ場が無くなったわけじゃないけど相手が相手だけにその逃げると言う選択肢がどんどん駄目なものに思えてくる。
 こうなったらやっぱり強行突破しかない。一応ラウンドシールドとかも使えるようにユーノくんから教えられてるからそれで攻撃を防ぎながら――できればいんだけど。
 半端な魔法だとどうしても不安ばかり沸いてしまう。
 
『ヴァアアア!!』

 聞きたくも無い吠え声を残して黒い塊が大きく跳ねた。こちらの事情なんてお構い無しの待った無しだった。

「きゃあ!?」

 避けなきゃいけない! 
 動転しながらもわたしたちは四方へ散らばる。すぐにそこへ暴走体が落ちてきて地面に亀裂をいくつもいれていく。

「ま、また来るの!?」

 忙しく動き回る目はわたしたちの誰かに狙いを絞ろうとしている証拠。このまま目でも回してくれればいいんだけどそんなことなくて。
 暴走する眼差しの動きが止まる。その先にいるのはフェイトちゃんただ一人だけ。

「フェイトちゃん!」

 大きな体を縮こませるのはジャンプの合図。またさっきみたいに宙を舞ってわたしたちを押しつぶそうとするつもりだ。
 躊躇無く暴走体が夕日の中を飛ぶ。フェイトちゃんなら避けられると思っても、こんないたちごっこをいつまでも続けるわけにも行かない。これじゃあ相手の思う壺だ。 

(こうなったらもう一度シューターで――) 

 上手く目にでも当てられれば流石に相手だってたまったもんじゃないだろう。
 思ったら即行動。着地を狙って今度こそ決めてみせる。

『ヴァアアア――!?』

 けど予想を裏切って、放物線を描いていた巨体はいきなり真下へ落っこちってしまった。まるで何かに引っかかったみたいに勢いを止められ、唐突に地面へ叩きつけられたのだ。
 呻きながらもがいている暴走体も今までと何か様子が違う気がした。

「そのままじっとしてろよ――ハァ!!」

 よく知った声が耳に飛び込んで、一陣の風がすぐそばを通り抜けるのを全身で感じ取った。

『――ァア!?』

 電源が切れたようにブツ切れになったのは叫びだけじゃない。
 黒い巨体も十文字に切り裂かれ黒い霧になって消滅していった。
 静まり返る商店街。力を失い地面にぽとりと落ちたジュエルシードから光が消えうせるまで、わたしたちは呆気に取られたようにその人の背中を見つめていた。

「みんな大丈夫! 遅れてごめん!」

 駆け寄ってくる声に我に返る。

「ユーノくん! どうしてここに?」
「今まで商店街にいた暴走体を封印してたんだよ。それよりよかった。急に町全体がおかしくなるし暴走体は出てくるしで……」
「でも助かったよユーノ。今の私達じゃどうやっても勝てなかったし」
「まぁ、僕も足止めくらいしか出来ないからね。戦える人がいたからなんとかなっただけだし」

 軽く上げてみせた手には無数の糸が夕日を受けて輝いていた。きっとこの前使っていたユーノくんの新しいバインドなんだと思う。さっき暴走体を止めたのもこれなんだろう。
 振り向けばチン、と鞘へ刀が収められる音。二振りの刀がそれぞれの定位置へと落ち着くとようやくと言った感じに息をついてこちらに顔を向けた。

「……まったく俺たちが来なかったらどうするつもりだったんだ」

 案の定、怒った顔だった。
 
「俺たちが商店街の掃除してなかったら今頃もっと大変な目にあってたかもしれないのに。兄としてはもう少し妹には考えて行動して欲しいんだが」
「あぅぅ……ごめんなさ~い」
「まぁまぁ恭也さん。なのはたちも反省してますし取り合えず翠屋に行きましょう」 
「確かにそうだな。探す手間も省けたんだし、今はお互い無事だったことを喜ぶべきか」

 そう言うなりお兄ちゃんは強張っていた表情をやっと崩してくれた。まだまだ不機嫌そうな顔だけどわたしたちが無事だったことに安心してくれているみたいだった。

「ほら、早くしろ。みんな待ってるんだからな」
「あっ、うん! みんな行こっ!」

 ちょっと危ないハプニングもどうにか潜り抜け、取りあえずの目的地へ到着だ。
 これを第一関門クリアとするならわたしたちは後いくつの門を潜り抜けるのか今はまだ全然わからない。
 ただ一つわかることとすれば潜り抜けた先には必ず――

 ――ハッピーエンドがある。

 それだけなんだ。

* * *

 アースラ現地駐屯地・臨時支部『翠屋』――。

 ちょっとかっこつけすぎたかな……。
 店内に揃ったお馴染みの面々を見渡しながら私はアイスティーを一口飲んだ。

(それにしても……)

 窓際の席には今も彫刻のように微動だにしない学生や親子連れが座っている。
 私たち以外の人はみんな例外なくこんな風に停止しているのが今の世界のあり方だ。まるで時間そのものを奪われてしまったようにある人はストローを口に付けたまま、ある人はケーキを口に運ぶ途中でその動作を完全に止められていた。
 窓の外を眺める人の瞳には何が映っていたのだろうか? そんな些細な事だってこの世界を戻すまで永久に知ることは出来ないだろう。

「お店の中の人はこのままにしておくとして……あなた、外の商店街の人たちは大丈夫かしら」
「運べそうな人は安全なところに押し込んでおいたからな。気がついた時には驚くかもしれないがしょうがないな」
「とーさんどこに押し込んだの?」
「コンビニとかだな。いやぁ丁度人が出ようとしていたところだったから助かったよ」

 自分の苦労を笑い飛ばす士郎さんの腰には小太刀が括られていた。あれのおかげで暴走体も商店街に寄り付いていないんだろう。
 もしかしたら私たちが相手にしたのは一体所の騒ぎじゃなかったと考えると寒気がしてしまう。

「けど不思議な話よね。他の人たちは固まってるのに私や士郎さん、恭也達が無事なのは」
「ユーノわかったりする?」
「すみません美由希さん、こればかりは僕でも」
「魔法が使えるとかなら母さんも固まってるだろうしね……」

 異変を回避できた原因はよくわからない。もしかしたら私たちと関わり合いがあった人たちだけがこの世界にいられる資格を手にするのかもしれないと思ったけど、あんまり確証の無いことは口にしないようにしようと思う。下手に混乱させたくないし。

「やっぱり駄目! 私たち以外はみんな同じみたい――ってすずか! 無事だったのね!」
「お姉ちゃん!!」

 ドアのベルが音を立てれば忍さんが血相を変えて飛び込んできた。

「忍、大丈夫だったか?」
「そりゃもう。道中何体か雑魚を片付けたくらいで後は同じ。時間そのものが止まってる感じ」
「お姉ちゃん! ノエルやファリンは?」
「二人も無事だけど下手に連れてくるよりは屋敷の中の方が安全だから残って貰ったわ」
「そうなんだ……よかった」

 こんな状況でも大事には至ってないのが幸いなんだろう。胸を撫で下ろすすずかに私も安堵してまたアイスティーに口を付けた。

「けど問題はこれからでしょ? アタシたちのほんとの目的地はアースラなんだから」

 私の隣で頬杖をついていたアリサが重々しく口を開く。

「わたしたちのデバイスだってあそこにあるわけだし」
「このままこの世界に居続けるわけにも行かないよね。……大丈夫フェイトちゃん?」
「えっ……? あ、大丈夫。このくらいじゃ母さんたちはやられないよ」

 内心は不安で一杯だけど、母さんは私たちなんかと比べることすら失礼なくらいすごい魔導師だ。それにクロノだっているんだしあんな暴走体にやられることは無いだろう。

「そうねぇ……。そこまで思ってくれるのは嬉しいけど実際はそうも行かないのよ」
「そうなんだ、母さんも大変だね」
「フェイトのほうこそ怪我は無い? 治癒魔法ぐらいなら使えるから」 
「ありがとう母さん。私は大丈夫だよ」

 やっぱり母さんでも手こずってるんだ。
 いつの間にか目の前で羽を震わせ飛んでいる小さな母さんを見ながらそんなことをしみじみ思う。

「……それにしても」
「なに? 母さん」

 少し首をかしげながら母さんが呟いた。

「驚かないのね……こんな姿でも」
「え、えともう何でもありだから……」
「そ、そうよね。こんな姿でも私は私なんだし」

 肩を落として高度も落としていく母さんの顔はすっごくガッカリしましたと言わんばかりにしゅんとしていた。
 確かに私の知ってる母さんはもっと背が高くて格好良かったような気がするんだけど……。

「変身魔法とかあるし変じゃないと思うけど」

 例えるなら絵本に出てくる妖精そのものだ。いつもの提督の服装だけど背中には半透明な2対の羽が背中から普通に生えている。

「そうよね……そうなのよね」

 こういう時は小さい方が小回りも聞くし敵にも見つからない。ここまで来るのなら打ってつけの変身だ。

「母さんどうしたの? もしかしてどこか怪我してるんじゃ」
「大丈夫。大丈夫よフェイト。ほんとに大丈夫だから」
(フェイト! フェイト! あんたどこまでにぶちんなのよ!)
「え? どうしたのアリサ?」
(なに冷静に現実を受け止めてるのって聞いてるのよ! こういう時はリアクションして上げなきゃ駄目でしょ!)

 なんとなくアリサの言いたいことはわかるような気がしないわけでもないけど。

(あ……そっか) 

 母さんのこんな姿なんて初めて見るわけだし、いきなり目の前に現れれば普通は驚いて当然だろう。
 よく考えれば、これは気が張り詰めていた私へ母さんなりの気遣いかもしれないわけで。それをあろうことか普通に流して会話していた私はすごく悪いことをしたのではないだろうか。

(……私、やっちゃった?)
(フェイトちゃん……言いにくいんだけどそうだと思う)
(あっ、なのはもそう思うんだ……)

 まずい、非常にまずい。
 なんというか飛び方すら不安定になり始めている母さんに気づいて今更ながらに罪悪感が沸いてきた。

「え、えと……あの母さん」

 取り合えずここで返すべきリアクションは私としては一つだけ。
 期待を裏切っちゃいけない。娘としてこれだけはやり遂げなきゃ。

「――び、びっくり!!」

 で、母さんはというと、

「うん、ありがとねフェイト」 

 テーブルに不時着してがっくり頭を垂れていた。

「……はー」

 なんだか誰かのため息が聞こえてすごく気まずくなって……。

「か、母さんもアイスティー飲む?」

 こんな時だというのに思いっきり空気の読めない私だった。
 そういえば以前もアリサやすずか相手に勝手に魔法の話で盛り上がろうと失敗してたな。私ってなんでいつもこうなんだろうか。

「うぅ、ごめんなさい」
 
 恥ずかしくなって思いっきり俯いてしまった。
 確かに体の力は抜けたけどこれで万事オッケーと考えていたら私は馬鹿以外の何者でもないと思った。
 
「これからの作戦でも立てましょうか……」
「そうだね……母さん」

 肝心な時にチグハグ。他の人から見ればくだらないやり取りの一つなのかもしれないけど、私にとっては結構重要なわけで。 

(……やっぱり親子って難しいなぁ)

 なんて感じで束の間の休息は過ぎていくのでした。

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