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2009.03/12(Thu)

魔法少女リリカルなのはSTEP 二十二話 Bpart  


【More・・・】


 あれから二日が経ちました――。

 あのアルハザードでの出来事は今では夢のように思えて、なんて語りたくなるくらい今の海鳴は平和そのものです。
 
「うにゃあ……もう限界だよアリサちゃ~ん」

 ただしわたしの部屋を除けばのお話ですが……。

「弱音は全部やり終わってからよ! まだ国語ドリル半分も終わってないじゃない!」
「うう……でも算数はもう終わったよ。残りは明日で――」
「先延ばしにして夏休み最後の思い出を宿題で埋め尽くすのは不許可だからね」
「ふぇぇん……」

 テーブルの上に折り重なるように並んでいるのは何を隠そう夏休みの一大イベント。イベントと言うには嬉しくなくなる厄介者です。

「そこっ! 答え丸写しにしない!」
「わっ!? ご、ごめんなさいアリサ!」

 わたしにアリサちゃんの注意が行っている隙にドリルの最後についている答えをこっそりめくっていたフェイトちゃんは抜け目ないアリサちゃんにたじたじです。

「算数ならまだしも国語なんてあんた一番勉強しなきゃいけない科目でしょ!」
「だ、だって漢字とか全然わからないよ~」
「だったら書き取りよ! 書いていればこんなのすぐに覚えられるわ!」
「そ、それでも無理だよ」

 流石に海鳴りでの生活が一年目のフェイトちゃんにそれは辛いのでは、と心の中で思ってみたり。

「そういえばすずかはさっきからやけに静かね。もしかしてみんな終わったとか」

 みんなの視線が一斉にすずかちゃんの方へ集まる。

「…………」

 で、すずかちゃんは数十分前と同じ格好でクッションの上にちょこんと座っていた。

「す、すずか~。もしも~し」

 背筋をピッと伸ばして、ゆっくり動く視線は手元の本に注がれていた。
 漫画ではなく読書感想文の課題図書である。

「聞いてるよアリサちゃん。もう少しで2回目読み終えるから」
「そ、そう……頑張りなさいよ」

 本の虫がそこにいた。

「とにかくアタシとしては国語と算数のドリル……それに漢字ドリルは終わらせたい」 
「ええと後は読書感想文に風景画……だよね?」

 いつもは平凡な小学四年生であるわたしたちにとって夏休みの宿題は切っても切れないというのはしょうがないとしても、やっぱりアリサちゃんの思い付きには今更ながら無理ではないかと思い始めていて。

「うにゃあ……二日、三日で終わらないよぜったい~」
「楽しい夏休みを無駄にしないためよ。それにアタシたちの戦いはまだ終わってないでしょ?」
「うん、きっとアルハザードが動き出すはず」

 話を振られてフェイトちゃんの顔が曇る。
 これで全部事件が終わっていれば今頃わたしたちはどこかプールにでも遊びに行っていたかもしれない。
 プレシアさんが言っていたことが嘘である証拠は無い。きっと本当のことだからわたしたちはいつでも飛んでいけるように出来るものは出来る限り片付けようと決めたのだ。

(と言っても実際は遊びたいからなんだけどね)

 昨日はすずかちゃん家に集まったけどお喋りしたりゲームしたりで宿題は手付かず。
 ならばとわたしの家に場所を移したけど……。

「ドリルとか感想文は書くだけだからなんとかなったわね」
「それはアリサちゃんだけだよ~。わたし全然終わってないよ~」
「私は感想文書けば後少しかな」
「国語……漢字……」

 どうにか終わらせるレベルまで進められているのはアリサちゃんとすずかちゃんだけ。わたしも頑張れば明日か明後日には終わらせられるかもしれないけどフェイトちゃんだけは危ない気がする。

「教えてあげようかフェイトちゃん?」
「出来れば……ううんお願い!」
「もうしょうがないわねフェイトは」

 お手上げ状態のフェイトちゃんにわたしとすずかちゃんは苦笑いして、アリサちゃんに至ってはニヤニヤしている。

「悔しいけど私だけじゃ絶対終わらないし……」
「始めから敗北宣言なんてらしくないじゃない」
「こんなに難しいなんて思わなかったもん」
「ふふ、大丈夫だよ。時間はたっぷりあるんだから」

 からかうアリサちゃんに拗ね気味のフェイトちゃん。それをフォローするすずかちゃんといつもの風景が目の前に広がる。
 ここ数日にいろんなことが沢山起きて通り過ぎていったせいか懐かしく感じてしまう。
 今までも、そしてこれからもずっと続いていく変わらないもの。見ていて自然笑みがこぼれてしまう優しくて素敵な日常だ。

「そうだ! アースラに遊びに行こうよ!」

 そんなわたしたちを自慢したくなったのかな。
 気づけばわたしはみんなに遊びに行こうと誘っていました。

「なのは……あんたサボる気?」
「ち、違う違う! 気分転換だよ! ほら、ずっと部屋にこもってるとやる気も出てこないでしょ?」

 やる気の温度が違うせいかアリサちゃんの視線が痛い。
 あんまり考えずに言ってしまったことだけど、よくよく考えてみれば宿題止めるためのちょうどいい口実だったりするわけで。
 でもわたしとしてはせっかくの夏休みなんだしお日様が昇っているときは遊びたいのが本音なわけで。

「じゃあ模擬戦とかして体動かしたいな」
「そうだね。きっと今頃デバイスの調整も終わってるころだし」

 なにかやつれた感じでこぼすフェイトちゃんに本を閉じながらすずかちゃんが同意する。 
 そういえばリニスさんにみんなデバイスの整備をお願いしていたんだっけ。

「三対一……。うぅ、わかったわよ。民意には逆らえないわ」

 学級委員長だからこそ多数決には弱いみたい。

「その代わり! 今日の分はちゃんと夜にはやりなさいよ。後で泣くハメになっても写させてはあげないから」

 ため息をアイスティーで飲み干してアリサちゃんがゆっくり立ち上がる。みんなもそれぞれ持ってきたドリルやノートを仕舞い身支度を整える。
 ひとまずはわたしの家にさようなら。進路は真っ直ぐフェイトちゃんの家へ。

「それにしても暑いね。うちの猫大丈夫かなぁ」
「人も動物もバテバテよね。ここにはバテてるいるし」
「フェイトちゃん大丈夫?」
「うん、最近は大分慣れたから大丈夫だよ」

 アスファルトの地面はギラギラな太陽のせいで目玉焼きでも焼けそうだ。ムアッとした熱気はわたしたちを残さず包み込んでいるし遠く先の景色はゆらゆら揺らいでいる。
 
「あーー! そこのセミ! Shut up!!」

 指差し叫んでもどこ吹く風でアブラゼミは忙しく鳴き続けていた。
 ああ、やっぱり夏なんだなぁと入道雲を見上げながら改めて実感する。
 
「許してあげようよアリサちゃん。セミさんだって七年間土の中にいたんだし」
「あっちの都合だってわかってるわよ。口だけなら別にいいでしょ」
「うにゃ、確かにそうかもしれないけど」 
「私は夏だなって思えて好きかな。……まだ初めての夏だけど」
「ふふ、なんだかフェイトちゃんが羨ましいな」

 感じることは人それぞれ。それは気持ち次第でなんだって変えられるってことだ。

「これからなにが来たってわたしたち大丈夫だよね」

 次にやってくる相手がアルハザードそのものだったとしてもきっとわたしたちなら超えられる。
 世界を救う――そんなゲームの中だけの現実だって本当に出来そうな気がしたんだ。

「当然じゃない! 厄介ごとはさっさと終わらせてこの夏も最高の思い出にするのよ!」
「出来ないことを探す方が難しいはずだよ。今の私たちってそれぐらいすごいって思える」
「私もみんなと一緒ならどんなことでも乗り越えられるって思えるよ」

 でもここまで気持ちが同じだとなんだか可笑しくもなってきて。

「みんな早く行こうよ! アースラまで競争しよ!」

 暑さ気にせず思いっきり走ってみたくなった。

「運動オンチが大きく出たわね」
「もちろん手加なしだよね、なのはちゃん」
「うん競争だったら負けないよ」

 いつもの友達といつもの毎日がある。 

「じゃあ行くよー! よーい――」

 やがて訪れるだろう困難は今はちょっとだけ忘れて。
 ずっとずっとこんな楽しい日々が送れるように願いをこめる。

「――ドーーーン!!」

 小学生も魔法少女も今はひとときの休息の中にあるのだから。

* * *

 文明の利器とは時間の流れに身を任せるのがとてもうまいものだ。
 私が幻想の中に引き篭もっていたのが大体十年程度と考えても、ここまでの進歩が望めることに誰が予想しえただろうか……いや無い。
 
「さぁ! みんな起きる時間ですよ!」

 なんて反語的表現を浮かべながら私の手足となる機械たちに一斉に火入れをする。
 それに伴って目の前の円筒状のカプセルに光が灯り、その中で浮かぶ宝石たちを露わにしていく。

「気分はどうですか? ……なんて聞きはしませんよ。なにせ私が一日がかりでオーバーホールしたんですから」

 戦いに一区切りすれば彼らに必要なのは酷使された体を癒す他にやるべきことは無い。

『All light.Thank you very much』

 皆を代表してかレイジングハートが感謝と共に点滅してみせた。

「感謝はいいですが、作り手の方から一言言わせて貰えばもう少しやんちゃは控えて欲しいものです」

 インテリジェントではなくともデバイスにはある程度の事故修復機能は備えている。それでも日々蓄積していく慢性的な疲労だけは誤魔化すことは出来てもきれいさっぱりに消すことは出来ない。
 レイジングハートは言うまでもなく、バーサーカーやシルフもこの短期間でのよほど無茶な使い方をしたのだろう。基礎フレームに相当な負担がかかっていた。

「バルディッシュを見習って欲しいですね。自分の体のこともちゃんと考えないと後で痛い目を見るのですから」

 口ではこう言っているのだがバルディッシュの場合はシステム面での最適化に時間を費やしているのだが伏せておく。
 なにせ二基のデバイスを一つに融合させたのだ。磨耗していたシステムを補填させる目的とはいえデバイス同士の融合など古今東西考え付くものはいないだろう。
 同型といっても差し支えないものでも異なる使い手と共に歩んできた歴史がある。それを纏めるのは相当に手間がかかった。
 それでも作り手である私のプライドはその難題を見事にやってのけた。天狗になるつもりは無いがにやけてしまうのだけは抑えられなかったり。

「リニスー! 入るよー!」

 ドア越しでもはっきり聞こえる声を響かせながら私の聖域に侵入者がやってきた。
 正直、水を注されました。

「引き篭もってばかりじゃ体に悪いよ。あたしと一緒に買い物でも出かけないかい?」
「まだまだ忙しいんですよ。買い物なら他を当たってください」
「なんだいなんだい、お日様に当たらないともやしになるよ。せっかく生きて帰ってこれたんだし」
「……生きて、ですか」

 私にとってその言葉は他人とは遥かに違う重みを持っている。
 夢か幻か、そんな世界の中に産み直されて今日まで歩いてきた私にしてはこうやって存在していることですら幻想の続きだと思えてしまう。

「どうだい? あたしたちの世界は。居心地……悪くないだろ?」

 少し躊躇いを含ませるアルフに私は静かに頷いた。

「ええ、とてもいい世界です。こうやって最先端の科学に触れられるのですから」

 手元の機器を撫でればひんやりとした感触が指先に広がる。進み続ける時代の証をこうやって己の目で見つめることが出来るのは幸せなことだろう。

「……それだけじゃないだろ? 素直じゃないね」

 もちろんそれは理由の一部に過ぎない。軽い冗談みたいなものだ。

「主と共に、再び歩んでいけること。使い魔としてそれが至上の幸福……言い過ぎかもしれませんがね」
「うんにゃ、いいと思うよあたしはさ。あたしたちこれからずっと家族なんだから」
「ええ、いい響きです」

 フェイトを教育するために生み出された私にはおおよそ似合わなかった言葉も今はしっくり来るように思えてくる。
 あの時の私はプレシアに代わってあの子の母になろうとしていた。
 単純に出来の悪い母親に不満を募らせていたからだ。私が母性の強い山猫だったこともあるのだろうけど。
 
「今のフェイトには沢山の家族がいる。掛け替えの無い友人も沢山いる」

 あの提督はきっとフェイトのいい母親になれる。無愛想だが芯の強い執務官は頼れる兄になるだろう。笑顔を絶やさず常に周囲を思いやる管制官は姉とするなら逸材だ。
 
「私はせいぜい先生役が関の山ですかね。少し嫉妬します」

 フェイトもアリシアも教育係止まりだった私である。今更母親になるつもりは無いが、やはり家族の一員になりたいという願望は嘘ではない。

「やはり私は家庭教師辺りが妥当ですかね」

 ロールプレイングしようにも最初から枠が埋まっているおかげで結局は元鞘に収まるのがちょうどよさそうだ。
 
「それもいいけど、あたしたちにはもっと相応しい呼び名があると思うけどね」
「なんですか? まさかペットに成り下がれとでも」
「あたしたちは使い魔だろ。ならあたしたちにしかなれないものは相棒じゃないかい?」

 ぴんと指を立てたアルフの顔は実に得意げにだった。

「相棒ですか……。これはアルフに一本取られたかもしれませんね」

 確かに一理ある。
 一理あると言うかごもっとも。
 私たちは主を守り、共に歩んでいく相棒だった。それこそ家族とは違う形の私たちだけの絆を独占しているではないか。
 新しい世界に放り出されて、ふと自分の立ち居振る舞いを模索していた自分がいかにバカだったかと思う。そんな簡単な問題さえ解けなかった自分に苦笑を隠せなかった。 

「なんだか馬鹿にされてるような気がするけど」 
「ああすいません。馬鹿にしているのは私自身ですよ。もう少し柔らかい頭にならないといけませんね」
「わけわかんないけど、リニスだからしょうがないね。昔からそうだし」
「昔からは余計ですよ」

 今度は心からの笑みがこぼれた。

「そういやちびっ子達が来るんだってさ」
「デバイスの修理なら万全ですよ」
「ついでに相手でもしてやろうか」
「いいですね。ビシバシしごいてやりましょうか」

 心の余裕はちょっとした悪戯心だって生み出してくれる。あのころの私には考えられなかったことだ。
 変わっていく自分……でも変わらない絆。

「リニスー! バルディッシュ直ったー?」

 噂をすればご主人様ご一行の登場だ。
 誰もが気色満面な様子は見ているこっちまで活力を注ぎ込まれるようだ。外の気温は相当高いだろうにまったく元気なものだ。
 若さという奴か。

「はいはい、完璧に仕上げてますよ。もちろん他のみんなのもね」
「うん! ありがとねリニス!」

 覇気にあふれた笑顔は新しく生まれてきた彼女だからこそ出来る笑顔だ。
 フェイトも変わっていく。けどそこには変わらないものだって一緒にある。
 彼女達にデバイスを渡しながらそんなことをふと思った。

「これから修練するなら手ほどきいたしましょうか」
「そうだね、お願いできるかなリニス」
「言わずとも」
「ふふ、なんだか随分やる気だね」

 そんな他愛ない会話を終えれば準備のためにフェイトたちは一足先に退出する。
 
「そういえば訓練室って今ユーノたちが使ってたんじゃなかったかな……?」
「なら、終わるまで待ちましょう。他人の稽古を見るのも立派な修練の一つですから」

 時間ならたっぷりある。
 彼女達が育ちゆく日々はゆっくりと、一歩一歩歩んでいけばいいのだから。何も急ぐ理由はどこにもない。

「まったくこの世界はなんて楽しいんでしょうね」

 過去なんて振り返ってる暇も無いくらい騒がしい世界で今日も私は生きていく。
 
「行きましょうか……アルフ」
「あいよ」

 時に教え、時に学ぶ。
 愛しいものたちと過ごしていく毎日は今や私にとって掛け替えの無い宝物だ。

 ようやくプロローグが終わった私の物語はこれから賑やかになりそうだ。

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