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2007.07/11(Wed)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第六話 Cpart 


【More・・・】


「せぇぇっ!」

 ガキンと重い金属音に腕に伝わる確かな手応え。
 すぐ前にアリサちゃんの顔、それを隔てるように杖二本。
 組み合う杖は拮抗する力にギシギシと音を立てた。

 危なかった――あと少しのとこでやられてた。

「どうしてよなのは! こんなになのはに近づいているのにそれでもダメなの!?」
「違う……違うよ。わたしは二人に傷ついてもらいたくないだけなの!」
「それが気に入らないのよ! 自分がやったから、自分のせいだから、自分だけで終わりにしようなんて考え、アタシは認めない!!」
「わたしだって大切な友達が傷つく姿なんて見たくない!」

 押されかかる杖を腕に全身全部の力を注いで踏ん張る。だけどぷるぷると腕が震えて力が入らなくなってくる。
 まだ頑張れるよ、このくらいで!!

「もしもあの時、アリサちゃんがもっと大変なことになってたらわたしどうしていいかわからないよっ!」

 勝手なことを言ってるのはアリサちゃんだ。
 そう思いたかった。けどわたしも、アリサちゃんも、言っていることはなんら変わりがないことで結局同じことなんだ。

「アタシは、ううん、すずかもユーノもあんたが傷つくの見ていられないのよ。なんで強がりばっかり言うのよ!」
「強がってなんてない! みんなを守りたいだけだから!」

 杖が軋み悲鳴を上げる。腕が痛くて、手はもっと痛くて、感覚も薄れてなにより目頭が熱かった。
 想いをぶつけて分かり合えなくて、もっと分かり合えなくなって、笑顔になれなくて。
 でもわたしは譲らない、譲りたくない。

 我が侭がわたしだとしても譲れないんだ!

* * *

 譲れない、絶対譲らない。

 こんな分からず屋に負けてたまるもんか!

「それが! 強がりって! 言うのよっ!!」
「きゃああぁっ!!」

 信じられないくらいの力で、アタシはなのはの腕を弾き飛ばした。お互い杖を握り締めた腕が宙に放り出される。
 腕が上がらない。なのはとの鍔迫り合いは自分でも気づかないくらいに力を出していたみたいだった。びりびりと痺れが走り、感覚が曖昧になっている。
 でも痛いとか、辛いとか、なんて言葉は頭の中には浮かばない。片腕はバーサーカーを離さないようにするだけで精一杯だけど、まだこっちの腕は動かせる。

 だって目の前になのはがいるんだから。
 今ならきっと、ううん、絶対に届くから。
 だからアタシは残った腕を振るった。アタシが一番伝えたい想いをぶつけるために。

「いい加減に……しなさいよっ!!」
 
 ――パンッ!!

 懐かしい。不意にそんなことを思う乾いた音がした。
 あの子が頬を押さえている。アタシの手はジンジンと痛い。
 薄っすらと赤みを帯び始めた頬が、改めてアタシがなのはに平手をしたことを実感させる。
 言葉でしか伝えられない想いがある。だけどアタシはぶつかることでしか伝えられない想いだってあると思う。

「アリサ……ちゃん……?」
「痛い? でも見守ることしか出来ない人の心だってすっごく痛いのよ!!」

 放心するなのはを見つめながらアタシは叫んだ。これ以上にないくらいお腹の底から声を出して。

 時が止まったように辺りから音が消えた。残ったのは木々を揺らす風の音と、耳障りなくらいのアタシの息遣い。
 頬に違和感が伝う。熱くて頬を濡らしていく何か。

 涙だとわかった。あの子の頬にも同じものが流れていたから。

* * *

 アリサちゃんにぶたれた……。
 思いっきり、手加減なしで。
 何がなんだかわからなくって……わたしの心が一瞬真っ白になって。
 止まらない熱いもの。それが悲しくて出ているのか、悔しくて出ているのか。

(痛いよ……)

 それ以上に心が痛くて泣いていた。
 傷つけたくないのに傷つけてた。守っていたはずなのに守れてなかった。

「……でも」

 頑張ってやってきたことが、わたしが信じてきたものが全部崩れていくような気がした。
 でも心のどこかではわたしは少しだけ安心していた。
 多分、わかっていたんだ。友達だからって、わかってくれるって甘えてただけなんだ。

「でも――!」

 一年前もそうやって、親友だからきっと待っててくれるって。
 でも信じていたものは何一つあってなくて。
間違いだらけで。

『Restrict rock』
「え!? なのは?」

 わたしが魔法少女だって二人にばれた時はあんな怖い思いさせたから嫌われると思ってた。
 二人はそんなわたしを優しく包み込んでくれた。すごく嬉しかった。
 だから二人が魔法少女になった時は本当なら飛び跳ねるくらいに嬉しかったんだと思う。
 諦めることを思い知らされなければ、怖いって思いを知らなければ。

「ごめんね……アリサちゃん」

 両手両足、四肢全部空中に貼り付けてアリサちゃんの自由を奪い取る。ここまですればアリサちゃんだって何もできない。
 一瞬フェイトちゃんにアリサちゃんがダブって見えて、前にも最後はこうだったなと思い出して。

「でも言ったよね、わたし本気だって」

 それにわたしは、アリサちゃんやすずかちゃんの魔法に嫉妬してたんだと思う。
 わたしが倒せなかった敵をあっさりやっつけて。なんか今まで努力してきたこと全部パーにされたみたいで。
 もし一緒にジュエルシード集めたらあっという間に追い抜かれちゃう気がして。置いていかれちゃう気がして。

「なら受けてみてよ、わたしの本気」

 いつも一緒じゃなきゃ……嫌だよ。

 巨大な魔法陣を目の前に展開させて輝きを集める。

『Starlight breaker stand by』

 そっか……わたしみんなと一緒にいたいだけだったんだ。

 三人仲良く、いつも一緒に――。

「カウントダウン――スタート!」

 だから譲れない。
 これがわたしの考えた三人が一緒にいられ続けるための答えなんだ!

「それで勝ったつもりなの……? だったらまだよなのは!!」
『Break charge』
「砕けろっ!」

 レストリクトロックが破られた!? やっぱりアリサちゃんだ。一筋縄ではいかない。
 でも、もうスターライトブレイカーは撃てるはず……なのに魔力が全然集まらない。

(そっか……これも)

 アリサちゃんはわたしよりも魔力を集めるのがうまいって聞いた。多分そのせいで空間の魔力に偏りが生まれているんだろう。

 地上では拘束から逃れたアリサちゃんがわたしと同じように魔力を集めてる。小さいけれど赤々と光る様は夕日がもう一つ出来たみたいで眩しく映る。
 魔法も想いも全力全開。その時もう目の前に。

 引き下がれない、負けられない!

* * *

 着地と同時に空へ放る魔力球。夕日に負けない赤光を放ち、アタシの手を離れた途端周囲の魔力を根こそぎ吸い込み膨れ上がる。
 アタシの顔より一回り大きいだけだけど、それは魔力が極限まで圧縮された証拠だ。

『Okay splash loaded completion』

 足元から魔方陣が広がり、バーサーカーの宝玉が唸りを上げて光を放った。
 アタシはゆっくりと杖を後ろ手に構え直し、その時を待つ。

「絶対に負けない」

 空でなのはが、

「絶対に勝つ!」

 地ではアタシが、
 
 いくわよ……バーサーカー! 
 
 ――なのは!

『Starlight breaker』
『Splash burst over』

「ブレイク! シューーーートッ!!」
「クリティカル! バーーーストッ!!」

 力の限り、自分の全てをぶつけるように、アタシは想いを天高く打ち上げた。
 全部をかけた一撃。風を引き裂き、赤の軌跡を残して光は飛び続ける。その先には桜色の激流が、同じように風を吹き飛ばしながら突き進んでくる。

「いっけぇぇ!!」

 声が重なり二つの力がぶつかり合う、その瞬間――!!

「二人とも駄目ーーーーー!!」

* * *

 気づいたときには足が動いて、とにかく叫んで、私は飛び込んでいた。
 上からはなのはちゃんの、下からはアリサちゃんの最大魔法。 
 受け止めるなんて出来ないのはわかっていた。でも止めなきゃならなかった。
 
 魔法を、なにより二人を。

「お願いシルフ……二人のために力を貸して!」
『Obey,mistress.Saver style stand by』

 フルドライブへの変形。鉄の翼は離れ、青く輝く光の翼が生まれ、

『Guadian sphere』

 私の願いは高らかに唱えられる。
 生まれる真っ青な球体は私を、周りを包み込んで大きく成長していく。

 刹那、衝突する二色の光。
 突然塞き止められた光はもちろん暴力的な奔流になって私という邪魔者を押し潰そうとする。
 とんでもない魔力を両側から貰っては流石の結界にもヒビが入って行く。だけど私はすぐにそれを塞ぐ。壊される前に修繕して立て直す。
 拷問――そんな言葉さえ浮かんでしまう光景。ぶつかり合う魔力が火花みたいに散って、眩さに目を細めて。

「私が……絶対……やってみせる!」
『I am here for you.Sphere full scale!』(私もそのために。スフィア最大展開!)

 大きく、激しく、シルフの輝きが増していく。
 体から急速に力が抜けていく感じがして、襲ってくる眩暈を首を振って振り払って、ありったけの魔力を送り続ける。
 激しく稲妻を散らしながら球体は蠢く。受け止めるだけならとっくに壊れてる魔力の量。
 こんな手加減なしに魔法を使って二人とも大人げないよ。

「いくよ……これで――!」

 だから二人の想いは私が受け止める!

「風よ運べ! 想いと……願い!!」 

 習ったばかりの魔法の概念やインテリジェントデバイスのこと。
 私一人では最後まで組み上げられない。
 だからシルフがいる。互いに補い合って、決して一人じゃない。

「見てて二人とも! これが私の答え!!」

 木々を、大地を、空を染める蒼穹の光。
 それを前にアリサちゃんの魔法も、なのはちゃんの魔法も、今までの勢いが嘘のように失われその中へ吸い込まれていく。
 掃除機で吸い込むように、膨大な魔力を閉じ込めた結界は一際鋭い閃光を放ち、甲高い音と共に粉々に砕け散った。
 キラキラと輝き大気に霧散していく魔力の欠片からすごい魔力を感じる。
 私たち三人分の魔力、混じりあった想いと願い。
 
 ――私の答え。

* * *

「すずか……」

 すずかの足元、飛行魔法の時に出てくる光の輪は今にも消えそうなくらい淡い輝きを放ちながら明滅している。それがすずかにどれだけ無茶な量の魔力を使わせたのかわかってしまう。

 ゆっくりと地面に足をつけるすずか。ぐらりと体が揺れた。
 それでもバランスを崩す寸前、杖を支えになんとか踏ん張る。

「す、すずかっ!」

 慌ててアタシは駆け寄った。
 らしくないほどに荒々しい息遣い。肩で息をして、額には汗がにじみ、こめかみから一筋汗が流れた後が見えた。
 向こうからもなのはが同じように駆け寄ってくるのが見えた。

「あ、アリサちゃん……」
「な、なんでこんなことしたのよ……。大丈夫なの、すずか」
「そんなの……決まってるから」

 息も絶え絶えに言葉を吐くすずか。顔は白く、とても儚くて。
 どうみたって立っているだけでやっとじゃない!

「二人とも……もう気は済んだ?」
「ユーノくん……」

 木の陰からユーノが現れる。いつもと違ってどこか冷たい表情は、呆れられてるようで怒っているようで。

「後から来てみればあんな派手に戦って……封時結界がなかったら大変なことになってたんだぞ」
「あ……その、ごめんなさい」

 なのはがしゅんとしながら肩を縮こまらせた。アタシもユーノの静かな剣幕に気まずくなる。

「ふぅ……今度からは気をつけること。僕からはこれだけ、あとは」

 ユーノが振り返った先にはすずかがいる。目配せしながらユーノは一方後ろに下がった。
 代わりにすずかがわたしたちの間に立ち、そのままおもむろに、

「はい……仲直り!」

 アタシの手となのはの手を取り触れ合わせた。

「すずか……ちゃん?」
「なのはちゃん、私たち二人でジュエルシード集めるの今日で止めるね」

 すずかの言葉に思わず自分の耳を疑った。でもいきなり耳がおかしくなるなんてあるわけなくて。
 一体この子は何を口走ってんのよ!

「ちょ! すずかなに言って!」
「アリサちゃん、今日から三人になるけど大丈夫だよね」

 えっ……?

「すずかちゃん、わたし」
「そ、そうよ勝手に決めないでよ!」
「じゃあ二人はどうしたいの?」

 紡がれる言葉一つ一つにアタシもなのはも大いに戸惑って。なんだか強引に言いくるめられている気がして。
 唐突な質問にもアタシはどう答えていいのかわからずどぎまぎしてしまい。

「ぶつかったんだよね。言いたいこと全部言ったんだよね。だから何も言えない。そうだよね?」
「えっと……」

 ふっ、と表情を崩す。すずかの微笑になのはは恥ずかしそうに目を逸らして。
 そう言われてしまうと……確かにそうで……そんな気がして。

「って、一体何が言いたいのよ……すずか」
「気持ち……押し付けあっちゃ駄目なんだよ」

 ゆっくりと静かに、語り聞かせるようにすずかが言った。相変わらず優しげな笑みを浮かべて、なんだか楽しそうに。

「なのはちゃんは私たちに怖い思いさせたくなかった」
「うん……そうだよ。だってしたくないでしょ?」

 それは痛いくらいに伝わってきたなのはの想いだ。

「アリサちゃんはなのはちゃんが一人で頑張りすぎるのが見ていられなかった。もちろん私も」
「……そうよ」

 がむしゃらにぶつけたアタシの、すずかの想い。

「同じだよね、それって。友達が傷つくのが嫌だから守ろうとして」

 黙って、ちょっとしぶしぶな感じで頷く。

「そこまで考えて私……気づいたんだ。こうすればいいって」
「どうすんのよ……」
「どうするの?」

 綺麗に声が重なって、その様子にすずかが笑って、

「すごく簡単なこと……回り道しちゃったけど、いつでも始められること」

 そっと囁いた。

「分け合おうよ、気持ち全部を」

* * *

「手を差し伸べるだけじゃない。その手を繋いで、嬉しいことも悲しいことも、みんな分け合おう」

 今まで触れていただけの手を、すずかちゃんが握り合わせた。
 わたしの右手とアリサちゃんの左手。指と指を絡ませて、すずかちゃんに促されて自然とそうなって。
 あったかい……アリサちゃんの温もりが伝わってくる。

「守るんじゃなくて守りあおうよ」

 そよ風みたいに優しくて、わたしの心を全部包み込むような声。じんわりと胸に広がる言葉はわたしの中にあった何かを溶かしていくような感じがした。

 守りあう……今まで思いもしなかった言葉。

「私たちはなのはちゃんを守る。でも私たちが危ないときはなのはちゃんが守って」
「そうすればわたしもアリサちゃんもすずかちゃんも傷つかない」
「ほら、簡単なことでしょ?」

 ほんとだ、ほんとにわたしたちの想いが一つになった。
 すずかちゃんのさっきの魔法みたいに想いが一つになった。

「怖いからって一人で抱え込んじゃ駄目。辛いことや悲しいことは分け合えば半分こにできる。私たちは三人だから三人分こ。でもね楽しいことや嬉しいことは三倍になるんだよ!」
「ずいぶん都合いいじゃないのよ」
「そうだよ。それにフェイトちゃんだっているから四人分この四倍だよ!」 

 今の喜び全部表すようにすずかちゃんが大きく頷けば、釣られてわたしたちも頷いていた。

「これならいいよね、なのはちゃん」
「……うん」
「アリサちゃん」
「……ええ」

 もう拒む理由なんてどこにもなかった。
 あんなにいがみ合ってたのに、もうそんな感情どこかに飛んで行っちゃったみたい。

「不器用すぎるね、わたしたち」
「でも分かり合えたからこれで良かったんだよ」
「そう思わないとやってられないものね」

 そうしてみんな笑いあった。ほんとに可笑しくて、馬鹿馬鹿しくて。すごくちっぽけな問題にわたしたちは頭を抱えていたんだ。
 ひとしきり笑いあうとすずかちゃんがまた口を開く。

「じゃあ改めて魔法少女として自己紹介しないとね。自分の得意なことと意気込みを。まずはアリサちゃん」
「あ、アタシ!? ちょ、言いだしっぺから言いなさいよ」

 指名されたことに驚きながらもアリサちゃん冷静にすずかちゃんに返した。
 すずかちゃんはというと、結構ノリノリな感じになっている。

「しょうがないな。じゃあ私からだね」

 すっと息を吸って、デバイスを見せながら話し始める。

「私はジュエルシードを見つけることと防御が得意。二人が危ない時はシルフと一緒に絶対守るよ」
『I'm pleased to meet you』(お目にかかれて光栄です)

 スラリとしたすずかちゃんのデバイス――シルフが輝きながら挨拶する。

「はい、アリサちゃん」
「も、もう? ……わかったわよ」

 少し照れ気味に、でもやっぱり自慢げにアリサちゃんが口を開いた。

「アタシは叩き壊すこと。このバーサーカーと一緒になのはの道を拓いてあげる。感謝しなさいよ」
『If so you need a little devote yourself』(なら、もう少し努力してくれ)
「あんたは余計なこと言わないの! わかってるんだから」

 あはは、なんだかアリサちゃんらしいデバイス。バーサーカーって名前のわりに面白い性格だ。

「まったく……ほら、あんたの番」
「うん!」

 もちろんわたしは、

「魔法少女暦一年! 高町なのは! 得意なことは撃つこと。レイジングハートと一緒に狙った獲物は逃しません!」
『Let's make an effort to become a best partner together』(共に最高のパートナーとなれるよう磨きあいましょう)

 レイジングハートが光ると他の二つも挨拶するみたいにピカピカと光る。

「敵に回すと厄介ね」
「大丈夫、敵に回る時だって一緒だよ」
「それはそれで物騒じゃない?」
「かも」

 わたしの望んだものが今この手にある。ほつれかけた絆はまた一本の揺ぎ無い絆になって、前よりもどんなことにも負けないカタチになって。

「よかった……三人ともまた仲直りできたね」
「ユーノくん……」
「僕も体を張った甲斐があったよ。二人とも手加減なしなんだから。こんなに結界を維持するのに力使ったの初めてだよ」

 言うなりユーノくんは光になってフェレットに変身した。

「少し疲れたからさ、ちょっとこの姿で休むね」

 わたしの肩に乗るのだろう。いつもと違ってやけにゆったりした足取りで、とてとてわたしの方に寄ってくる。

 て、あれ? 確かユーノくんって……。

「ちょ、ちょっと待ってユーノくん!!」
「え? なに?」

 ユーノくんは疲れのせいで全く気づいてない。
 二人にはフェレットのユーノくんはユーノくんじゃないって言っちゃってるし……。

「やっぱりそうだったんだ」

 すずかちゃんにはなんだか感づかれていたみたいだけど、

「…………」

 アリサちゃんは口をパクパクさせながら石像みたいに固まっていた。

 なんだか微妙に震えてるのは気のせいですか?

「あっ……」

 ユーノくんもようやく気づいた。
 わたしたちの顔をきょろきょろ見回して、最後はわたしの方を助けを請うように見上げている。
 瞳が潤んでいる。

(なのはぁ……)
(うん、手遅れだね)

 ほらアリサちゃんがご立腹だ。無言でバーサーカーを振り上げてる。
 わたしはとばっちりを受けないようにユーノくんから離れる。

 そっと、そーっと。

「なの――」
「去勢」
『Hammer squash』

 ズドン!!

 名前を呼ぶ前に鉄槌が落ちた。

『Hammer squah squah squah squah sqaush squah squah squah squah squah sqaush squah――』

 ズドズドズドズドズドズドズドズドズドズド!!

「去勢去勢去勢去勢去勢処刑去勢去勢去勢去勢去勢処刑去勢去勢――」

 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ!!!

 ――こ、怖い……。

 ロボットみたいに無表情。右手だけがすごい勢いで上下してる。
 ハンマーが地面を叩くたび砂煙が舞い上がって、だんだん大きくなって。時々細かい砂や小石の破片が飛んでくる。
 最初の一発からユーノくんの悲鳴すら聞こえず、砂煙で無事なのかすらわからない。
 削岩機みたいに地面を粉砕し続けるアリサちゃん。

 これは止められない……。

(ええと、これはほら温泉の時わたしだって見られたわけだし、すずかちゃんも、それにお姉ちゃんや……その分ってことで)

 ごめんね、ユーノくん。

「天誅ーーーーーっ!!」

 ズゴーーーーンッ!!

 そんな一際大きな爆音が炸裂したのを最後に、アリサちゃんの怒りもようやく収まったみたいで。

「生きてるかな……ユーノ君」
「大丈夫だと思うよ、アリサちゃんだし……多分」

 しばらくしても、もうもうと立ち込めた煙は消えなくて、気まぐれな風のおかげでうようやく晴れて。

「あ……お…………ひぃ」

 目も当てられないくらい地面は陥没して、月面のクレーターよろしく大きな窪みが完成していた。三十センチくらい深さはありそう。
 その窪みの中心に見事なくらい毛並みが乱れたフェレット一匹。時折痙攣して呻いてる。

(大丈夫? ユーノくん)
(きゅ……きゅうう…………きゅー)

 ……。
 …………。

(駄目だこれ)
『He have brought it on himself』

 うん自業自得。

「思い知りなさい、乙女の怒り」
『Yeah!』

 未だ先端から白煙を上げるバーサーカー。このアリサちゃんには絶対勝てないんだろうな。

 もちろん忠告じゃなくて警告だ。

「さて! 気も済んだことだし帰りましょうか」
「そうだね……うん! 帰ろう」
「なんだかすごい疲れちゃった」
「ほんとへとへとだよね」

 時刻はいつしか夕方の只中。 
 見上げれば、真っ赤な夕日に茜色に染まる空。夕日から離れた空は日暮れに遠いようでまだ青い。
 でもオレンジ色の雲を浮かべて、少しずつ青も夕日と混じって鮮やかなコントラストを見せてくれる。
 景色全部が夕日へ集まっていくような、そんな錯覚さえ覚えてしまう。

「あっ、二人とも見てよ!」

 指差す先にぽつんと光る輝き。夜空を始める一番星に自然と微笑み、わたしにはこの全てが今のわたしたちのように思えて。

「まっ、なんにもしても荷が下りたって感じがしてよかったわ」

 もうすぐ日没。すごく赤くなって眩しくて、みんな引っ張って星を、夜を連れてくる。
 だから夕日はアリサちゃん。わたしやすずかちゃんをいつもぐいぐい引っ張ってくれるリーダー。

「ほんと一時はどうなるかと思った」

 すずかちゃんは空。夕日や雲や星を浮かべてくれるように、わたしたちを優しく包んで橋渡ししてくれる。

「なんだかまた明日って頑張れる気持ちになるね」
「まさに記念すべき今日を飾る最高の景色よ」
「記念すべき?」

 アリサちゃんが静かにデバイスを掲げた。デバイスの先にはもちろんあの星。

「アタシたち海鳴魔法少女隊の結成記念日よ!」

 自信たっぷりに言い放ってアリサちゃんは満面の笑顔になった。

「そうだよね、私たちようやくまた仲良しになれたんだから」
「……うん」

 喧嘩もしたけど、こうやってわたしたちは三人揃ってここにいられる。
 笑顔だけじゃない。涙だって今は全部分け合える。なんでもっと早く気づかなかったのか自分が恥ずかしい。

「ねぇ、アリサちゃん、すずかちゃん」
「なに?」
「ん?」

 だってわたしにはこんなに誇れる、

「わたしたち親友だよね」
「当然! さらに言うなら大親友よ!」
「そうだよ、それ以外に思いつく言葉ないもん」

 ともだちがいるんだから!

「でも、なんだかんだでなのはのこと大切だからここまで出来るのよね」
「私たちがここまで出来たのもなのはちゃんのおかげだよ」
「一人で何でもかんでも頑張れて、でも一人だから放っておけない」
「なのはちゃんに笑っていて欲しいから、どんな時も一緒に居たいって思えるんだよ」

 二人の言葉に胸が温かくなっていく。
 そう、だからわたしは一番星なんだ。
 みんなのために光り輝いて。でも時々不安になったり、だけどみんなそばにいてくれるからもっと、もっともっと輝ける。

「誰が欠けても駄目なんだよね」
「ようやくわかってきたじゃない、なのは」
「これでもう怖いものなしだね」
「当たり前よ」
(よかったね丸く収まって)

 すごく遠慮がちに念話。そういえばユーノくん生きてたんだっけ。

「こっち来ればいいのに」
「なんだか邪魔する気も悪いかなって思ってさ」

 いつの間にか木陰に隠れてたみたいでこっそり出てくるユーノくん。
 ちゃっかり元の姿で、なんだか足取りが重いのは気のせいかな。

「大丈夫よ、もう気は済んだし」

 今度こそぺっちゃんこになるんじゃないかって思ってるんだろうな。

「ほんと勘弁してよ。本気で命の危機を感じたんだから」
「まぁいいじゃない。お詫びにあんたもアタシたちの魔法少女隊に入れてあげるわ」

 腰に手を当て胸を張って、すっかりアリサちゃんが上の立場だ。
 ユーノくんがちょっと可愛そうにも思えるけど、でもしょうがないか。

「あんたはマネージャー! スケジュール管理とか雑用もろもろよろしくね!」
「えーっ! 何で僕が」
「文句ある?」
「ないです」

 あはは、決まっちゃったみたい。でも仲間はずれにはならないんだしよかったんじゃないかな。

「さぁ明日も明後日も全力全開で頑張るわよ!!」
「うん!」
「もちろん!」

 きっとこれから先どんなことが起こったってわたしたちは負けない。
 芽吹いた絆を友情を、胸に掲げて勇気と希望、不屈の心で、

 リリカルマジカル頑張ります!!

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