06月≪ 2017年03月 ≫07月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031
--.--/--(--)

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【編集】 |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2007.07/11(Wed)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第六話 Bpart 


【More・・・】


 しまった――!

 そう思った時には全てが手遅れ。
 アタシを捕らえた無骨な拳は今まさに振り下ろされようとする瞬間だった。

「――っ!!」

 すずかがいればすぐにフォローを入れてくれるはずだった。でもすずかはアタシが置いてけぼりにしてここにはいない。つまり自分で守らなきゃならない。

(どうやってよ!?)

 当然のことながらアタシのバーサーカーは攻撃一本に特化した杖。
 守ることは大の苦手……ううん、守るという魔法自体入っていない。
 連休の時リンディさんの授業で聞いたことを思い出した。インテリジェンスデバイスは自分の中の材料で魔法を作る。つまり材料がなければ出来るものもできない。

「あ……ぅ……」

 すずかだったら咄嗟にバリアを張って苦もなく弾き飛ばすはずだ。
 だけどアタシにはそんな力も、余裕も、持ち合わせてなんていなかった。足が竦んで、自分の意思じゃどうにも出来ないのだ。
 不覚だった。ちゃんと二人で向かっていればこんなことにはならなかったのに。
 感情に任せて行動して、自分を過信して、その結果がコレなんだ。

(なによ、結局アタシが全部悪いんじゃない)

 なのはを支えて、手伝ってあげようと思って手にした魔法の力。なのにいつの間にか見返してやるための力にしてた自分。

(……最低じゃないのよ)

 あとちょっともすればあいつの拳の餌食にされるのだろう。バリアジャケットが何処までアタシの体を守ってくれるのかわからないけど、あんな重そうな拳だ。少なくとも無事じゃすまない。
 狼の時は幸い軽傷ですんだけど多分今度は――考えたくない。
 バーサーカーに笑われちゃう。こんな不甲斐ない人間がご主人様だなんて聞いて呆れる話だもの。
 悔しくて悲しくて怖くて、アタシは目をぎゅっと瞑った。

(悪い夢なら覚めて、なんて言わない。一思いにやりなさいよバカッ!)

 せめて心の中だけでは負けないように、精一杯アタシは相手を罵ってやった。
 真っ暗な世界でやってくるであろう衝撃に身を任せ覚悟を決める。

 ――その時だった。

「シューーーート!!」

 何かが頭の上で弾けた。
 誰かの声、知っている声、あの子の声――。
 ゆっくりと目を開ける。アタシを押しつぶそうとした拳は明後日の方向へ弾かれ、巨人は大きくバランスを崩している。
 続けざまに打ち込まれる光球。どれもが正確に相手に命中しさらにバランスを崩させていく。

(すごい……)

 言葉が見つからない。体当たりなアタシの魔法とはぜんぜん違う華麗な魔法。踊るように光球は巨人にぶつかり、弾けて、ついには相手の背中を地面へと叩きつけた。
 轟音が響き砂塵が舞い上がる。一瞬遮られる視界の向こう、砂のカーテンを吹き飛ばす光の柱。追い討ちが終わると同時に眩い輝きがアタシの目に飛び込んでくる。

『Sealing mode set up』

 レイジングハートが羽を広げた。光が辺りを包み込み巨人の体に幾本もの光の帯が絡み付いていく。
 勝負はあった。もうなのはの魔法から逃れられない。

「これで三個目! ジュエルシード封っ印!!」

 崩れていく巨体。光が巨人の体を元の岩へと変えていく。
 最後に嘶きのような音が辺りを劈くと、もうそこに巨人の姿はなくなっていた。
 後にはぽつんと、ジュエルシードが鈍い光を照らしながら浮いているだけだ。
 すぐになのははジュエルシードのところまで降りてきてレイジングハートの中に収納した。本当に非の打ち所がない手際の良さだった。

「……なのは」

 堪らずアタシは声をかけた。
 エイミィさんが教えてくれたんだろう。なんでなのはがここにいるのかは大方予想がついた。
 ともかく助けられたのは事実なんだしお礼は言わなきゃならない。
 未だバクバクしている心臓は自分の愚かさを教えられているようでばつが悪い。それを振り払うようにアタシは口を開こうとした。

「えと……なのは」
「どういうこと……アリサちゃん」

 だというのになのはの言葉に全てを止められた。

 変わりに、

「……見ての通りよ。やるべきことをやって何が悪いの?」

 そんな目一杯の強がりが言葉になっていた。
 アタシは踵を返す。これ以上なのはの顔を合わせていられる自信がないから。

「悪いよ」

 足が止まった、止められた。
 静かに、でもはっきりと耳に飛び込んだ声はそれだけでアタシの体を支配してしまったようだった。
 アタシもそのままで言い返す。見なくたってなのはの顔は想像がつく。だからこそなのはの顔を見たくなかった。
 胸の中に沸くのは罪悪感。抑えながらアタシは誤魔化すようにぶつけた。

「あんたが来なくたってあんな奴ぶっ飛ばしてたんだから。余計なお世話なのよ!」
「余計……なんだ。それでも続けるの? こんな目にあったのに」

 続けるつもり、なんて言わない。
 遠まわしに「こんなこともう止めて」って言っているのだ。答えた所でなんにもならないことくらい、わかってる。

 それがなのはなりの優しさだってこともわかってる。

「じゃああんたは一人でジュエルシード集め続けるの? またあんなぼろぼろになるわよ」
「……うん、そうだよ」
「だからアタシ達には黙ってみてろって?」
「わたしのせいで始まったことだから、わたし一人で終わらせる。誰にも迷惑かけないように」
「――っ!」

 だからこそアタシは絶対に引き下がらない。
 絶対この子はこう言うから。自分の事は自分だけで解決しようとするから。
 心の中に閉じこめてしまうから。

「ふざけるのもいい加減にしなさいよっ!!」

 なんでこの子ってこんなに責任感が強いんだろう。アタシだったらここまで出来るのだろうか。
 きっと途中で折れて誰かに相談したりして、少しでも自分の心の重みを分かち合おうとして。

 アタシはなのはに少しでもそうしてもらいたかった。
 だって秘密を共有し合えるなんて親友じゃなきゃ出来ないことじゃない。誰にも内緒で、自分達の世界を作ること。それって親友の証みたいなものだと思えるから。
 あんな突然のきっかけじゃなくて、なのはから手を伸ばして欲しかった。

 一年前のあの時だって――。

「アリサちゃん……」

 アタシはずっと、ずっと怒りながらなのはを待ち続けることしかできなかった。何も出来なった自分だったから。
 だけど今は違う。アタシにだってなのはと同じ魔法の力がある。同じ秘密がこの手にある。

「なんでよ、アタシじゃ力不足だって言うの? 確かになのはに釣り合うような力は持ってない」

 手の届く距離。伸ばせばいつだって隣にいてくれる。その子が躓きそうになったら支えてあげられる。助けてあげられる。力になってあげられる。

「でもね! それでもなのはのこと手伝うことぐらい出来るわよ。だから今日までこうやってジュエルシード集めてたんじゃない!」

 仮に力になれなくても話ぐらいは聞いてあげられる。悩みを、心配を、不安を分かち合ってあげられる。

「少しでも、少しだけでもあんたのことを支えてあげられてると思ってたのに!」

 きっ、となのはの顔を睨みつけて、心の中のありったけの想いを叩きつけながらアタシは強くバーサーカーを握り締めた。
 悔しいけどさっきみたいな有様じゃ半人前以下だってイヤでも思い知らされる。
 それでも負けたくない。

「アタシやすずかは駄目なの? フェイトじゃなきゃ駄目なの?」
「そ、そんなことないよ! フェイトちゃんはわたしよりもずっと魔法の使い方上手だし、強いし」

 そう、フェイトは強い。アタシたちの当分の到達点として見せてもらった戦闘の映像。
 アタシは二人の闘いに息を呑み、ただ見ていることしか出来なかった。近づけたと思って手を伸ばしても届くわけがないほどなのはが遠くにいると思い知った。

「じゃあ強いって見せ付ければ一緒にいてもいいわけね」

 だから不安になる。怖くなる。
 なのはが手の届かないくらい遠くにいってしまうこと……。

「何も出来ないなんて思わせなきゃいいんでしょ?」

 きっとその時なのはが躓いてもアタシは助けてあげられない。
 なのはが一人で立ち上がれる保障なんてないのだ。もしも立ち上がれなかった時、誰がなのはに手を差し伸べて上げるのだろう。 

 でもなのはは立ち上がれるのだ。
 無理矢理、いつも通りの笑顔で誤魔化して。一人で大丈夫だって言い聞かせて。

「足手まといじゃないって証明してあげればいいんでしょ?」

 アタシすごいお節介者だ。きっと昔のままなら「勝手にしなさい」みたいなこと言って突き放すだけ。心底心配なんてするはずがない。
 ていうか、それ以前に友達なんて作れないか……。

「それは……」

 でも今アタシには友達がたくさんがいる。
 それはアタシが変われたから。変えてくれた人がいたから。
 他でもない目の前のなのはのおかげで。

「いいんでしょ? それなら」

 アタシは、嫉妬してるんだ。
 ずっと強いなのはにも、一緒に隣で戦えるフェイトにも。
 
 そしてなにより魔法の力に。

 わざとってわけじゃない。でもアタシやすずかをノケモノにして二人で絆を結んで。
 不公平じゃない。たった数週間で親友になれるのなら、アタシ達が積み上げてきた三年間はなんだっていうの? 
 友情をそんなことで測るなんて馬鹿馬鹿しいことぐらいはわかっているつもり。
 でも、なのはとフェイトにはそれ以上に強い絆がある気がして、その強い絆がアタシも欲しくて。

「アタシが勝ったらアタシもすずかも一緒に手伝わさせなさい」

 力不足なんて言わせない。なのはに近づけるならアタシはなんだってする。

「本気……なの?」
「見下さないでよ。これでも負けないつもりよ」

 なのはのことが大好きだから。

「わたし……負けないよ。それで二人が納得してくるなら」
『Shooting mode set up』

 なのはの杖が音叉みたいな形へと姿を変える。

「アタシだって負けるつもりさらさらないから」
『Hammer position set up』

 宝玉の後部を覆っていた装甲が原型を崩し、二又の爪に。攻撃形態へバーサーカーが移行した事を知らせる。

「全力全開……力の差、見せて上げる」

 ゆっくりと天へと掲げる杖。なのはの周りを光が囲んだ。

「いいわよ、来なさい……返り討ちにしてあげる」

 ゆっくりとバーサーカーを肩に担いで魔力を高める。
 自分の実力でどこまでなのはに食い下がれるか、そんなことは全くといっていいほど考えていない。

 あるのは――

(勝つ!!)

 ――それだけ。

「バーサーカー! Go!!」

 アタシのこの子を信じてぶつかるのみ――!

* * *

『Splash wave』

 駆け出すと共に、杖をこれでもかと言わんばかりに大地へ叩きつける。
 地表を派手に巻き上げながら弾ける茜色の閃光。なのは目掛けて一直線に突き進んでいく。

「行くよ! レイジングハート!!」
『Flier fin』

 なのはの体が浮き上がる。足には羽、確かフライヤーフィンっていう飛行魔法だ。
 ほんの一瞬でなのはは宙高く舞い上がり、さっきまでいた場所へアタシの魔法が空しく駆け抜けていく。完全に間合いが遠すぎた。

「まだこれからよ!」
『Boost jump』

 距離をとるつもりなのか、一気に空中へ逃げるなのは目掛けてアタシも大地を蹴った。
 弾丸になったみたいに体が躍動する。これにはなのはも驚いたみたいですぐさま別の方向へ体を切り返す。そこへ目掛けてアタシはもう一度杖を今度は虚空に向けて振り下ろした。
 弾ける閃光。今度は大きく扇のように波が広がっていく。

「そんなの!」
『Round shield』

 なのはが右手を前に突き出した。すぐさま広がる魔法陣。容易く波を防いで見せた。
 やっぱり伝動させるものがない空中じゃ威力が分散してしまう。

「今度はこっちから行くよ」
『Divine shooter』

 なのはがアタシに杖を向け、周りに浮いていた光が次々に放たれる。
 数は六つ、なのはがもっとも得意とする魔法だ。

「シューート!!」

 トリガーが引かれる、もう考えてる暇はない。

「ブースト!!」

 空を蹴り上げその場から一気に離れる。同時にそこへ襲い掛かる光。一歩間違えば全部当たっていた所だった。
 でも息をつく暇はない。

(確かこれって誘導弾――!)
 
 鋭い軌道転換。すぐにこっちへ向かって来る。

「こっの!」

 もう一度空を蹴る。瞬間的な速さならアタシの方が上、この間だけなら追いつかれる心配はない。
 だけどそれだけでかわせれば苦労はしない。

 後ろの方でアタシを追っていた球が突然二手に別れる。二つがそのまま、残りはさらに二手に分かれて左右からアタシを挟み込もうと大きく曲がった。
 逃げ道を全部塞ぐつもりなんだろう。流石なのは、頭の回転は速い。

「なら、こっちだって」

 すぐにアタシも体を捻り、今度は今飛んできた方向へ足を再び蹴り出す。

「でぇぇぇぇぇい!!」

 あっという間に距離が縮まり、目の前には二つの球。それ目掛け、バーサーカーを力任せに振りぬいた。
 ガラスのように光は砕け桜色が目の前を覆う。綺麗って素直に思える光の欠片。だけどなのははこの魔法でみんなを守ってきたのだ、さっきみたいに。

 当たれば倒される力の結晶、それがこれ。

「次っ!」
『Splash burst』

 振り向きざまに魔力をかき集め発射! 二発の弾頭が完璧なタイミングで残りの球を蹴散らし爆発!
 これでなのなの持ち弾はゼロ。今度はこっちが仕掛ける番だ。

「こっちだって伊達に訓練してたわけじゃないのよ!」
『Meteoroid』

 アタシの周囲を小さな恒星が取り囲む。こっちだってリロード魔法は心得ている。
 全部で五つ。赤熱して今にも破裂しそうな魔力の塊を、

「これでも食らいなさい!!」

 一斉発射!
 進路はなのは。あれだけ魔力を持っていればみんなうまく誘導される。

「くっ!」

 突然なのはが霞のように掻き消える。と、思えば少し離れたところに現れる。
 高速移動魔法を使ったみたいだ。でも五つの弾はアタシが誘導してるわけじゃない。視認しきれなくたって問題ない。

「一気に詰めるわよ!!」 
『Yeah! Buddy!』

 いうなれば自動追尾弾。大好きなご主人様に一目散に駆け寄っていく犬なんだ。

「こんなのでーーーっ!!」

 なのはも黙っているわけじゃない。しつこく追尾してくるアタシの弾丸を自分の誘導弾で冷静に撃墜していく。
 一つ一つ爆発するたび膨大な煙幕が雲みたいに空に浮かんだ。

「アタシにも気をつけなさい!」

 今のなのはは隙だらけ。縮まる距離にアタシはバーサーカーを振り上げる。

「もちろん気をつけてるよ!」

 大降りの一撃はあっさりとかわされる。横目に見たなのははまだ余裕綽々といった所。焦りも何もあったもんじゃなかった。

「アリサちゃんだって自分ので自滅しないようにね!」

 背後で爆音。風圧と共にアタシの後ろからくすんだ雲が噴き出してきた。
 気がつけばあっという間に視界不良。なのはの姿を完全に見失っていた。

「う、うそ!?」

 まさかアタシの弾を目くらましに利用された!?
 やられた。あっちだってこっちの情報持っているのだ。アタシの得意な距離に詰められないよう勤めるのは当然のこと。

「まだ終わりじゃないよアリサちゃん!」

 上から響く声に見上げても目に入るのはいっぱいの煙。なのはは見えない。
 ここから出ないとまずい。全速力で上へと飛ぶ。

「これは受けきれる? シューターバリエーション! テンペスト!!」

 すぐに視界に捉えるも、なのはすでに発射体制に入っていた。
 それだけならまだなんとかなっただろう。でも流石に十発も弾を用意されては話が別だ。

「なっ!?」
「いくよ! シューート!!」

 そこにあったのは理性ではなく本能めいた何か。
 感覚が足を動かし、景色が急降下し、風が体へ容赦なくぶつかる。
 後を追うのは光り輝く十発の誘導弾。

「スプラッシュ!!」 

 地面スレスレで方向転換しそのままスプラッシュウェーブ。
 それでも球はいとも簡単に波を潜り抜けていく。遊んでいるようにことごとくかわし、結局二つしか仕留めることが出来なかった。

(残り八つ!!)

 間違いなく止まったらやられる。
 止まったら最後、四方八方から襲い掛かる光の応酬にノックダウンは確実だ。

「こんのっ!」

 空を蹴り上げ最初の三つを交わす。
 続けざま上と下から、二つ、三つの光と肉薄する。そして避けた瞬間を狙って最初の三つが四方から襲い掛かる。

「ちょこまか!」 

 反射的に杖を振り下ろした。鉄槌が空を薙ぎ払う。けど球は触れるか否かのところで軌道を曲げてアタシの攻撃を簡単に避けていく。
 その動きさえ目で追ってる余裕はない。一箇所に留まった時点でアタシの負けは確定する。

 ――次はどこから!? 頭の中はそれだけでいっぱいだ。

 もしもなのはがこれにまぎれて攻撃してきたらと思うと、ぞっとする。

「でいっ!!」

 だけどなのははさっきと同じ格好で浮かんでいるだけだった。
 数は減ったけど八発も誘導するのは集中力が必要なのだろう。注意して見れば、球の動きもさっきとは違って散発的なものになっている。
 冷静になればよく分かる。動いている横で全然動いていないものがあったり、明後日の方向から急に引き返してきたり。
 球数が逆になのはにも思いもよらない隙を作らせていた。これならアタシが踏み込めるチャンスが出来るかもしれない
 かすかに見え隠れする希望。アタシは何度も空を蹴り上げその瞬間へ近づけようと試みる。

「はぁっ!」

 どんなに数が多くたって。

「こっちよ!!」

 球の間を掻い潜り。

「吹っ飛べ!」

 急停止、急発射。

「なのはーーっ!!」

 真っ直ぐに、ジグザグに、がむしゃらに動いて。 
 球の一つがジャケットを掠めても止まるなんて絶対しない!

「っ!! レイジングハート!」

 なのはが叫ぶ。瞬間、目の前から飛んできた光がいきなり弾け、消えた。
 数は三つ。数を減らした?

(――後ろっ!?)

 ぎりぎりの所で何とかかわすも今度はアタシの上や下、さらに左右から残りが一斉に襲い掛かる。
 さっきよりも軌道が鋭敏。しかも速い!

「なるほどね……自分が最も得意な数で勝負するって! わけ!」

 突っ込んで来た一つを後ろに下がってかわしつつなのはを睨み付ける。
 正直まずい。一つ一つが違う生き物みたいに動き回られてはこっちだって避けられるかどうか。
 アタシの周りをぐるぐると回る光の球。完成間近の包囲網がある。

(どうするの……?)

 なのはもいつ攻撃するかタイミングを図っているのだろう。アタシを眼下に捕らえたまま動こうとしない。
 逃げられるかは微妙な所だ。完全に避けきれるなんて確率的に見れば一桁程度もいいとこ。
 かといって一つ当たって体勢を崩せば、残りの餌食になるの目に見えたこと。

(動いたら負ける、動いても負ける)

 最悪のジレンマを抱えてもアタシはそれでも決して諦めない。
 例えアタシの限界が目の前にあっても。

(ほんとにそうなの?)

 自分に問いかける。
 答えの代わりにバーサーカーを強く握り締めた。

(そんなわけ……ないでしょ!)

 ここまで来て負けるなんて冗談じゃない。
 諦めるなんてすずかもユーノも、ましてやなのはだって絶対にしない。

 ――だから考える。

 今は計算や理論が通じる場面ではない。必要なのは即ちアイディア、発想。
 限界と思ったら超えればいい。限界なんて、考えた時にしか生まれないんだから。
 答え見つけ出す時間はまだやって来ていない。

(避けられない……弾いてもダメ……なら――!)

 インテリジェンスデバイスは願いを形にする杖。
 アタシは願う、襲い掛かる光を振り払う魔法のカタチを。
 守れなくても守ることは出来る。

 攻撃は最大の――!

「防御よ!!」

 鉄槌の先に光の輪が生まれた。すぐさまそれは勢いよく回転し始める。
 新しい魔法が完成するのとなのはの攻撃開始の合図は完全に同時。

「これで終わらせるから!」
『Divine shooter』

 ピタリと全ての球が運動を止め、一呼吸の後アタシへ一気に襲い掛かる。

「それはアタシも同じ!」
『Counter presser』

 心の中でバーサーカーに声をかけ、アタシは芽生えた魔法を打ち下ろす。
 まずは一つ目。正面から来た球を受け止める。だけど今度は砕かない。体を捻りそのまま後ろへそれを解き放つ。
 まるで野球のように、飛んできたボールを打ち返すように。

「いっけぇぇ!!」

 空へ再び放たれた球は、今度は飛んでくる球目掛け衝突し砕け散る。続けざまに横から飛んで来た二つも同じように、次から次へ受け止め反対に弾き返す。
 一つを相殺させ、余った一つはなのは目掛けて! 

「ブースト! ジャンプ!!」 

 そっくりそのまま、相手に魔法をお返しする。それが土壇場で思いついたアタシの策。
 バーサーカーは応えてくれた。そう、この子だって簡単に諦めたくはないのだ。

「チェックメイト! バーサーカー!!」

 なのはは驚きながらもぎりぎりの所で球を避け、すぐに杖を構え直した。
 魔力が集中し生まれる光。今までとは二倍、三倍も大きさが違う。
 距離は近い――でもなのはが仕掛けてくる魔法おそらく一つ。

「ディバインバスターっ!!」

 ドン! と轟音。それに続いて一条の閃光がアタシ目掛け突っ込んでくる。
 このまま飛べば直撃は当然。
 だからってアタシに避ける気なんて、

「毛頭なし!!」

 下から上へ一閃。バーサーカーは光を苦もなく受け止めそのまま空高く弾き飛ばした。
 今まで直線だった光はアタシを始点にベクトルを直角に捻じ曲げられ明後日の方向へ飛んでいく。
 これには流石のなのはも面食らったみたいだ。顔には驚きと戸惑いが交互に表れ、発射中だった魔法をすぐに止めてみせた。

 不意に生まれた隙。待ちに待った瞬間。
 距離は十分。足が風を踏みつけなのはの姿があっという間に大きく鮮明になる。
 刹那ゼロ距離、アタシのフィールド。今度こそほんとにほんとのチェックメイトだ。

 なのはは正面! 当然アタシは突撃するだけ!
 全速前進、渾身の力を両手に込めて!!

『Crush dasher』
『Round shield』

 力と力、魔法と魔法が激しくぶつかり合う。
 眩い閃光、鼓膜を揺るがす轟音、交錯する桜色と茜色。

「はぁぁぁぁぁ!!」
「くぅぅ!!?」

 鈍い音と共になのはを守っていたシールドにヒビが入る。なのはも必死に防御してるけど、もうこの先どうなるかぐらいわかっているはずだ。
 亀裂は大きく、そして無数に際限なく増えていく。シールドを覆う蜘蛛の巣の中心、ミシミシと音を立てひときわ大きな亀裂が走った。

 アタシは握る手にありったけの力を込めもう一度杖を振り下ろす。

「やりなさい! バーサーカー!!」
『Yeah!』

 そして――割れた。
 粉々に割れた。

 桜色のガラスが夕日の照り返しを受けて鈍く輝く。

「でぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 今なら届く。絶対届く!

 もう二人を遮るものは何もない――!

スポンサーサイト
【編集】 |  00:54 |  なのはStep  | TB(0)  | CM(0) | Top↑

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック


 | BLOGTOP | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。