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2008.07/11(Fri)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第十九話 Cpart 


【More・・・】


「手加減は無しだからねフェイト」

 金髪をなびかせながらアリシアがバルディッシュ・プロトを私へ向ける。黒い切っ先から溢れる光はすぐに穂先を形成し彼女の槍を作る。

「本気出さなきゃ駄目だよアリシア」

 駆動音と共にヘッドが開き光が私の得意を形作る。サイズフォームの起動を確認すると、私はそれをゆっくりと正面に構えた。
 頭の中には相手の出方に合わせていくつもの術式を並べている。なのはやすずかみたいなマルチタスクは出来ないからあくまで考えているだけ。

「そういえばアリシア、勝ったらどうするかって決めて無かったね」
「じゃあ今決める? 私はもう最初から考えてるんだけどね」
「奇遇、私も」
「なら早く始めちゃおう。みんな退屈してるよ」

 にやっと笑えば彼女の周りが強力な魔力で帯びていくのがわかる。
 準備は万端ということらしい。

「そうだね」
『Photon lancer get set』

 私だって負けちゃいない。選んだ魔法を自慢の高速詠唱で一気にくみ上げる。牽制と本命とを織り交ぜ、切っ先全てをアリシアへ向ける。
 彼女の周りに生まれるは巨大な光の矢――というよりは槍だ。数は少ないものの破壊力を馬鹿にすると痛い目にあうな。

「じゃあ――」

 踏み出そう、

「――行くよ」

 この一歩を!

「フォトンジャベリン! ファイアーーッ!!」
「フォトンランサー! ファイアッ!!」

 一斉射撃は二人同時。
 だけど弾速は私のほうが圧倒的に上だ。
 
「一気に行くよ!!」

 突っ込んでくる五つの槍をまずはかわす。
 そして――、

『Yes,sir.Brizts action』

 ぐんと風を追い越して空を翔る。狙いはただ一つ、迷いは無い!

「プロト!」
『Lance lunge』
「やあぁぁっ!!」

 アリシアは槍を振り回しランサーを弾き飛ばしている。当然、私にだって気づいているけどランサーをかわすことで精一杯だ。
 高速移動で接近して、体勢を整える前に全てを決める。アリサの時は先手を打たれたけど今度は抜かりない。

「切り裂けっ!!」
『Scythe slash』

 上段から一気に振り下ろす。風を巻きこみ刃がアリシアへ迫る。

「そんなので!!」

 アリシアの体が後ろへ加速した。ほんの数十センチ、必要最低限の距離。
 切っ先が触れるか否かの絶妙な距離を取られる。

「お返しっ!」
「くっ!」

 反射神経は大したものだ。そしてスピードに振り回されていない。瞬間的な加速力を自分のものにしている。
 突きこまれた一撃をいなしながら、冷静に分析できるのはまだまだ私が余裕の証拠。

「せいっ! でぇい! でやああ!!」

 猛烈な勢いでの三連撃。一撃目は柄で機動を逸らし、二撃目も同じく、が威力を殺しきれなず体勢を崩す。
 三撃目は脇腹を掠めどうにか窮地を逃れることができた。
 武器の相性じゃアリシアの方が上だ。ここまで懐に飛び込まれるとサイズでは戦えないか。

「なら!」

 即座にサイズを変形させヘッドを折りたたむ。

『Ax bite』
「これで!!」

 斧ならばこの距離でも打ち合える。躊躇い無く横へ、一気に振りぬく。
 確かな手ごたえとガラスの砕けるような音。タイミング良く私の斧がアリシアの槍を弾き飛ばし、魔力で構成された刃を粉々にする。

「しまっ――」

 槍を大きく跳ね飛ばされてアリシアの顔が驚愕に染まった。
 生まれた隙は逃さない。構えの崩れたアリシアに向けて再び変形させた鎌で喉笛を狙う。

「――なんてね!」
『Photon spear』

 眼前に閃光が走る。ほとんど反射的に発動させたディフェンサーへ弾けていく何か。

「勉強するのも悪くないかもね! ジャベリン、ターン!!」

 防御に徹する間にアリシアが一気に距離を取る。威力は弱いくせに数が多いせいで時間を稼がれた。
 撃たれたのはおそらくフォトンランサー。でも大きさと威力を犠牲に展開速度を何倍にも引き上げてる改良型だ。なるほど目くらまし、足止めには打ってつけか。
 そして得意げに振られた右腕には環状魔法陣が起動されている。

「こっの!!」

 何か仕掛けられた――!? 
 思ったことを自覚する頃にはもう私は横合いへ飛び退けている。私がいた場所には光の大槍が突っ込んでいた。

「まだまだ! もう一度!! ターン!!」

 甲高いトリガーボイスに飛翔していたジャベリンに環状魔法陣が展開される。急停止させられた矢はその魔法陣に導かれるように反転していく。

「いっけーーーっ!」

 振るわれる右手に爆発音が轟き、魔法陣の中から金色が飛び出していく。

「加速してる!? くっ!!」

 目標を二度も射抜けなかった槍は三度の進行でも疲れの色一つ無い。
 むしろより速く、より鋭く、研ぎ澄まされていた。

(避けてもまた!!)

 全弾回避するのはまだ容易い。だけど振り返れば槍は再び私に切っ先を向け放たれる瞬間だ。

「これでもまだ余裕? 避けてるだけじゃジャベリンからは逃げられないよ!」

 すっかり得意気なアリシアだけど、使い手が使い手だから槍の動きは直線的で単調なもの。小回りが利かない欠点を補ってもこれなら追い詰められることは無い。
 けどそれはあくまで最初に限ったこと。こっちの集中力が切れてしまえばたちまち餌食にあるのは目に見えている。

(そう……逃げてるだけなら)

 誰でも出来る!

「逃げるなんて……しないよ!」
『Ark saber』

 飛び込んでくる槍をかわしながら鎌を振るい、その刃を二つ空へと放る。
 もちろんそれで迫りくる雷を落とそうなんて――

「無駄無駄ぁ! フェイトの魔法じゃ落とせっこないよ!!」
「どうかな?」

 ――考えている私だ。

『Thunder cakram』

 弧を描く二つの鎌はバルディッシュの声にその身の回転数を一気に引き上げ、甲高い鳴き声を上げた。
 瞬く間に鎌の残像は消え去り、金色の輪となった私の刃が手元へ帰る。

「はぁっ!」

 一つを指に、一つをバルディッシュに。真円の内へそれぞれを通し前を見据える。

「一つ一つ確実に……」

 相手は五つ。一気に撃墜しようなんて欲はかかない。こういう時に慌てたら負けなのだから。
 指先からチャクラムへ魔力を伝導。スナップを利かせ最初の一発を投げる。即座に杖に引っ掛けた方も杖を軸に回転を加え一気に放り投げる。

「行って! チャクラム!」

 この空さえ引き裂いてしまうような鳴き声を木霊させ、二つの輪は最も先行していた槍の一つと交錯する。
 
「ほら! 効かないって言ってるのに――」

 そんな余裕なアリシアも、

『Shooting down confirmation』

 スパッと三つに裂ける槍に、

「なんでぇ!?」 

 目を白黒だ。

「これでもまだ余裕? 撃ってるだけじゃチャクラムからは逃げられないよ!」
「~~っ!」
  
 さっきの台詞をそのままお返しにしてアリシアへ距離をつめる。背後では不規則な軌道でチャクラム達が残りの槍をズタズタに切り刻んでいる。
 悔しそうに唇を噛むアリシアもこんな事態は予想していなかったのだろう。
 やっぱりアリシアはツメが甘いよ。

「それにこれじゃ終わらせない!」

 ランサーを従者に私は空を翔けていく。このままこれを撃ってもいいし、フェイントの代わりに展開しておくだけでもいい。
 私の方へ天秤が傾いたならどんな選択肢だってチャンスになる。

 そしてそれは――勝ちへ繋がってる!!

* * *

(こんなんじゃ駄目! これじゃフェイトの思う壺だ!!)

 フェイトの後ろでバラバラにされていくジャベリンにもう歯噛みしたい気分。でもそんな暇あったら手を動かすほうが百倍マシ!
 まだまだ私にはチャンスがてんこ盛りなんだから。

(あのわっかってそんなに強度ないみたいだしね)

 ジャベリン全部撃墜すると同時にフェイトのわっかは粉々になって消える。いくら強度があってもあれだけの回転じゃ刃こぼれするのは当たり前。
 突撃するフェイトには高速射撃魔法のフォトンスピアをお見舞いしてやる。威力は無くても邪魔には十分だ。

「プロト!」
『Volt smasher』
「いっけえええ!!」

 妨害に顔をしかめ、横へ飛びずさるフェイトへさらに追い討ち。三頭の雷獣が空を焼き焦がしながらフェイトに牙を向ける。

『Britzs action』

 ものともせず高速移動で避けるフェイトだけど私の狙いはまさにそれ。

「アルカス・クルタス・以下省略!!」

 一夜漬けのスパルタで身につけた取っておきのお披露目だ。

『Photon spear genocide shift』

 ランサーを超える展開速度を持つスピアだから出来る荒業。宝石箱をひっくり返しても足りないくらいの光を浮かべ、私は一息で詠唱を完成させる。
 その姿に冷静なフェイトも流石に焦ったか。一瞬、目を見開きその場に急停止。すぐに後ろへ距離を取った。 
 とにかく沢山のスフィアを浮かべれば、相手には見るだけでも十分な牽制になる。確かにリニスの言うとおりだ。

(見かけによらず燃費もいいしね)
 
 威力が無いは魔力が少なくていいということ。だからこんな芸当も平気で出来る。

「撃ち滅ぼせ!! フルファイアーーッ!!」

 攻撃は点でも線でも無く、面だ! 
 フェイトのいる方向へ、その周りも命中なんて気にしないで撃ちまくる! とにかくハチャメチャに撃って撃って撃ちまくる!! 

「持ちこたえて!!」
『Difencer』

 フェイトの目から見れば目の前全てが光で埋め尽くされているはず。
 降り注ぐ金色の豪雨に金色の盾は稲妻を散らしながらも耐え続ける。
 足は止めた。後は攻撃が終わると同時にボルテックランサーをぶつけるだけ。ヘトヘトになったフェイトにならきっと直撃コースだ。

(でも万が一……)

 フェイトがまだ切り札を隠し持っているなら話は別になる。相手が指一本でも動かせるなら勝負は終わらない。止めを刺してこそ戦いは本当に終わるのだ。

(何事も、結果が出なければ終わりではない――よね!)
 
 リニスに言われたことを思い出し、自分のツメが甘い癖を心へ刻み込む。

「格好つけてるだけじゃ勝てないよねプロト!」
『Yes,sir』
「ならこのまま押し切る!!」
『Photon lancer phalanx shift』

 それならばリニスから教わったこの最大魔法の出番!
 一気にスフィアを形成し、全部で占めて三十八基! 一斉射撃で相手を落とす!!

(魔力は持ってかれる……けどね!)

 それぐらいしないと勝てないのがフェイトなんだ。私と同じで全然違う私。何でも知ってて全然知らない。
 だからもっと知りたい。フェイトの本気を、私の本気を!

 二人で歩いていきたいから!!

* * *

 空に踊る二条の光を見つめながら、私は教え子の成長にある種の高揚感を抱いていた。
 死力を尽くし、振るわれる輝きはどれもが一級品の魔法。それぞれに編み出した努力の結晶を残さず開花させていく。

「フェイトは当然だけど、アリシアもやるね」
「むしろフェイトがここまでついてこれているのが不思議なくらいですよ」
「こりゃまたリニスも言うねぇ」

 くくっ、と笑いを堪えるようにアルフが腕を組み直す。主が窮地に陥ろうとその態度は決して変わらない。
 その余裕がどっちのあっけらかんに傾くのかはまだまだ先らしい。

「それにしても随分とフェイトに対して対策を練ってるじゃないか。あの戦い方、まるでフェイトみたいだ」
「あくまで真似事ですよ。ですが自分と似た相手ほど厄介な敵はいない」

 速さと速さ。突き詰めていけばお互いの手の内はどんどん限られ、絞り込まれていく。

「わかりすぎるからこそわからない」
「ああ、確かにそうだ。同じもの同士ぶつけてちゃ決め手にはならないからね」

 双方、弱みが同じになるならぶつけるものは当然同じもの。そしてそれは同じ力ゆえに相殺される。
 鈍き者には速さを、硬さには一点集中で脆さを作る。そんなセオリーが通じない相手。
 言わば鏡――それが目の前で戦っている敵の名前だ。

「けど鋭さならフェイトが上だよ」
「大胆さならアリシアのほうが上です」

 同時に主人の自慢を始める辺り、私たちもまた似たもの同士の二人だ。それだけに次の言葉を見つけるのが少々面倒だ。

「用心過ぎると勝ちが逃げますよ」
「あんな雑だと勝ちは見つけられないね」

 この通り、子供じみた罵り合いを始めてしまうのだから。
 もう少し対応を大人にする、そんな考えが私の中にもあっていいものだがどうにもプライドのせいか退けないのである。
 そして彼方ではアリシアがその大胆さでフェイトへ先手を打つ。

「撃ち滅ぼせ!! フルファイアーーッ!!」

 大胆さを支える正確無比な射撃の嵐。私のイメージよりかは幾分違う形となった物量攻撃も、今のフェイトには十分すぎる足止めになるのは果たして喜ぶべきか。

「ありゃ、ちょっとフェイト……ヤバイかな」
「このままならば……アレをやるつもりでしょうね」 

 アリシア最大の必殺であるボルテックランサー。
 デバイスそのものを魔力媒体として相手へ叩きつけ、魔力を炸裂させる魔導師にはおおよそ考えれない常識外れ。

「ならフェイトだって同じのをぶつけるさ」

 顔には出さず、心の中で首を横に振る。確かにフェイトが同じようにボルテックランサーを使えれば状況は均衡したまま。
 しかしあれだけの魔法を防御に徹するまま撃つことは不可能だ。隙を突かなければ到底無理な話となる。その隙さえアリシアの向こう見ずの魔法で残さず潰されているのだ。
 アルフには悪いが勝負は決した。私の知る限りこの局面を打破するフェイトの策は無い。

「ファランクスシフト!! 続けていっけぇーーっ!!」
 
 そして駄目押し――……!?

「なっ! あれまで使うってのかい!? フェイト!!」
「そんな! なぜファランクスシフトを!?」

 驚愕は同じでも意味は全く違う。
 この場面でそれを使う利点が無い――そう結論付けるならまだ私には良かったイレギュラーだ。 

(あの魔法は……教えてないはずなのに!)

 そうなのだ。ファランクスシフトはあくまでフェイトのために私が考えたものだ。戦闘スタイルが異なるアリシアにはアリシアなりの方位射撃を教えているというのに。
 確かに触り程度は教えたが……いやそれでもおかしい。どう見てもあの発動速度は既存の術式に改良を施し、さらなる高みを目指したもの。悪いがアリシアにそこまでの応用力はまだ無い。

「バルデッシュ!」
『Britzs rush』

 フェイトは強化型の加速魔法で難を逃れるつもりか。無理だということを自覚していたとしても。

「逃がさない!!」

 スフィア一つから毎秒五発のフォトンランサーの斉射攻撃。
 詠唱時間を減らした反動か秒間あたりの発射数は減っている。その反面、威力と初速は上がっているようだ。
 無数の猛襲はいかに速さを突き詰めても焼け石に水だ。雷光を討たんと空間全ての方向からフェイトを狙う。

「これでも……避けられない!? っ! きゃああ!!」

 加速の切れ目にフェイトの背中へ二本の矢が弾ける。ここからでも苦悶する表情が見えた。

「ま……まだ!」

 フェイトは諦めない。マントを焦がしながら目の前に障壁を張る。それで防ぐなど不可能へ挑戦状を叩きつけるに等しい。
 所詮は正面だけの守り。完璧な包囲網はその死角すら容易に張り込めるというのに。
 
「終わりましたね」

 なぜアリシアが知りもしない魔法を振るったのか。そんな疑問ごと飲み込むように言い聞かせた。

「……まださ! まだフェイトは諦めてない!!」
「アルフ……」

 決して目を逸らさず、アルフが吼える。
 精神リンク越しにはフェイトの心はまだ屈してないということなのか。それでも出来ないことはある。

「フェイト! 見せておくれ! あんたの力がこんなもんじゃないってことをさ!!」

 その時、アルフの言葉にフェイトが頷いたように見えたのは気のせいだったのか。
 
「バルディッシュ!!」 

 もう着弾まで時間は無い。ここから逆転する術がもしもあるとするならば、

『Sonic move』

 金色の帆で風を、空を、世界を捉えるしかない。
 そしてフェイトはそれを見事に顕現させた。

 有り得ない奇跡は二人に等しく舞い降りたのだ。

* * *

 ――ここは風の世界?

(すごい……まるで時間が止まったみたい)

 襲い来る光の乱舞は今や空中に浮かぶ障害物にしか見えない。無数の中に空いた間隙を縫うように移動しながら、私は眼下のみんなを見つめた。

(格好悪い姿なんて見せられないよね)

 なのは、アリサ、すずか、ユーノ――。
 みんなが私を見守って、応援してくれる。そのことを思い出すだけで私の心は折れかかってもすぐに息を吹き返す。
 
(ありがと、アルフ!)

 何よりアルフの声が私の背中を強く押してくれる。

「バルディッシュ! スピアーセット! ファイア!!」

 アリシアの標準が定まらないうちに上へと一気に回り込む。同時にフォトンスピアーを発射する。
 狙いはアリシアではなく発射台であるスフィアだ。三十八基全てをスピアー持ち前の高速展開で一気に撃ちぬく。

「ソニックムーブ!? 忘れ――きゃああ!!」

 稼働中だったスフィアは残らず爆発し煙幕がアリシアを取り囲んだ。撃ち終わる寸前だったせいで爆発の衝撃は大したことは無いみたいけど。

『Sir!!』
「わかってる!!」

 衝撃音と共に煙が四散すれば金色が残像を残して飛び掛ってくる。

「はああ!!」

 金髪を振り乱しアリシアが斧を振り上げ、向かい討つ私も斧で真っ向勝負!

「すごいよ! やっぱりフェイトは!!」

 鍔迫り合い、すぐに距離を離し助走をつけもう一撃。
 
「アリシアだって!!」

 次は鎌で、さらに槍から斧に。私の意志にバルディッシュも千変万化。
 縦横無尽に空間を飛び交いアリシアと刃を交え続ける。
 
「サイズスラッシュ! 切り裂け!!」

 アリシアが渾身の一刀に身を躍らせ飛び掛れば、 

「ランスランジ! 押し通る!!」

 私が渾身の突きで下から牙を向く。
 交錯する刃は互いに届かず、頬を掠める風の嘶きに肝を冷やす暇は無い。

「まだまだーーーーっ!!」

 それはどちらの声か。

『Photon spear and lancer and javelin!!』

 スピアーが、ランサーが、ジャベリンが! 
 大空狭しと幾千の軌跡を残し、標的狙って狂乱する。

「だあああ!!」 
「でりゃあああ!!」

 金色に飾られた空の中で私もアリシアもそんなことお構い無しに得物を振り回し、せめぎあう!!

「はぁ……はぁ……くっ!!」

 息を無理やり飲み込み鈍くなった腕に渇を入れる。こめかみを伝う汗を拭い捨て四方から襲いくる槍や矢を華麗にかわす。
 埒が明かない。消耗戦なんて泥仕合はこの舞台には相応しくない。

『Sir! Voltaic lancer get set!!』

 そうだ、それだ!
 私にとって、アリシアにとって、最後の切り札を使うのはまさに今だ!!

「羽ばたけ!! ボルテックランサーーーッ!!」

 疾風の中で愛杖は不死鳥に転生する。

「飛んでけ!! ボルテックランサーーーッ!!」

 互いの利き手に振りかぶられた杖は先を競わんと翼を広げ、高らかな声に迅雷のごとく飛翔した。

 持てる全てをかけた翼は小細工無しにぶつかり合い――

「「いけええええええ!!」」

 ――金色の羽を大空に散らした。

 漆黒の体に刹那のうちに入る亀裂が彼を亡き者にしようと魔手を伸ばす。
 限界を超えてなお主の想いを遂げようとした相棒は、電撃を撒き散らしながら粉砕され真下に広がる海原へと落ちる。

「それでも!!」

 意地を見せろ! フェイト・テスタロッサ!!

「我が手に宿れ! 雷獣の双牙!! サンダースティンガーぁぁぁぁぁっ!!」

 この両手を相棒の代わりに、この世界の雷光全てを集め、押し込め、形作る!
 煌く双剣を引っさげて、体中から根こそぎ力をかき集めて、私はこれが最後の飛翔になると確信した。

「この手に宿るは雷神の逆鱗! 全てを砕け!! ボルトザンバーぁぁぁぁぁっ!!」

 心の中で私を後押しするこの魔法は一体どっちが考えた魔法だったのだろうか。流れ込む激しい感情の昂ぶりを全身で感じながら、アリシアが眩く光る大剣を携えるのを見つめる。
 無意識の内に相手の手札を使い、そして最後の一撃もこうして自分の物か分からない力に賭けている。
 最後を飾るのは自分が信じた魔法と想いと思っていた。でも違ってたみたいだ。

「はああああああっ!!」
「でああああああっ!!」

 きっとこれは二人の想いが交じり合って生まれた魔法だ。二人で信じた、二人で作った想いの形だ。
 唯一つ違うのは最後に込めた想いの違い。

 ――プライドだ。

 剣と剣が切り結び、暴力的な手応えに腕が悲鳴を上げる。
 握力なんてとっくに無い。震え、限界を通り過ぎていることを訴えても私は意地でも認めない。
 
「アリシアぁ!」
「フェイトぉ!!」

 軋む、たわむ、歪む――。
 砕ける刃を前にしても心だけは砕けない!!

(おまえだって……そうだよね!!) 

 その身砕けても、宿る魂が砕けることなんてないんだから。 
 
「もう一度! 羽ばたけぇーーーっ!!」

 爆音に白波が吹き上がり海が割れる。躍り出る翼は青い海を金色に染め上げながら真っ直ぐ天へと昇っていく。
 二度羽ばたき翻れば、狙いはすでにアリシアの背中へ。
 だから私は振り返る。目の前の子だって同じ魂を持っているから。

「最後までこの空に!」
「いられたほうが勝ちだね!」

 背中合わせで掛け合って、私は双剣を高く振り上げる。
 アリシアの翼はもう目の前に。

 思いっきり息を吸い、目を見開き、私は力の限り吼えた。

「これで――最後だああああああああっ!!」

 視界が雷光で塗り潰されながら、

 全てが白と黒に還る世界の中で、

 私は魂を振り下ろした――。
 
 手応えはすぐに消えて、怖いくらいの浮遊感が体を包み込んで私の世界が終わる。
 最後に目に映ったのは夜明けに白む空だった。

(終わったんだ……全部)

 後悔なんてない。もうここは昨日じゃないから。
 
 生まれたばかりの私の明日だから――。

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