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2007.07/08(Sun)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第五話 Bpart 


【More・・・】


 今日は五月にしか許されていない国民の大連休。
 カレンダーには赤い数字が行列して、老若男女みんなが遠慮なく羽を伸ばせる日々。

 ……のはずなんだけど。

「これでーっ! どうっ!!」
『Splash burst』

 思い切り振りかぶって、浮かぶオレンジの弾へバーサーカーをフルスイング!
 一直線に唸りを上げて打ち出される三つの弾丸。襲い掛かるはアタシと同じ新米の魔法使い――すずか。

「防ぐよ!」
『Highly protection』

 すずかを包みこむ青い半球。それ目掛けて弾の一つが物凄い勢いで衝突した。
 ちなみに残りの二つは狙ったつもりでも明後日の方向に着弾、爆発してたりする。命中率に関してはてんで駄目なのは認めざるを得ない。

「てぇぇーーーい!!」

 すずかが受けると同時に突撃!
 鉄壁を押し通すのには遠距離からじゃどう見たって無理なのだ。隙を作ってそこを突く――これしかない。
 案の定、アタシの打った弾はバリアの前に激しくぶれるぐらいしかしていない。
 着弾点を中心に波紋が広がり、目を凝らすと弾がぶつかっている所には蜂の巣のような青く澄んだ六角形が群れを成していた。

(ああもう、二重に防御してるなんて欲張りなのよ)

 ならこっちにあるのは、

「バーサーカー! やりなさい!!」
『Yeah,Hammer squah』
「でりゃ!!」

 その壁を叩き壊す銀色の鉄槌だ。
 丁度、臨界点超えて炸裂する弾丸。もわっと広がる煙幕の内側から奇襲攻撃。

 壁に阻まれるも、

『Break』

 一瞬でヒビを入れ一息で粉々に叩き壊す!

「今度はアタシの勝ちね!」

 盾がなくなっちゃえば後はこっちが一方的に攻められる。
 体ごとぶつけるようにして一気に距離を縮めて最後は、

「チェックメイト!!」

 ――やっぱり振り下ろすだけ!!

* * *

「はい、そこまで」

 二度手を叩いて合図を送る。
 横目に僕を見て、二人は組み合わせていたデバイスを下げ大きく息を吐いた。

「うん、じゃあ休憩しよ」
「そうね……ああ、もうなんでゴールデンウィークなのにアタシたちは朝からこんなことやってんだろ」
「言い出しっぺはアリサちゃんだよ」
「ごめんなさい」

 流石に朝から、三回も実践まがいな訓練をしていれば投げ出したくなるのはしょうがないと思う。
 一昨日魔法使いになってもう本格的な戦闘のイロハとか、魔法の使い方を訓練してるなんてどこを探してもここしかないだろう。
 それでもデバイスをぶんぶん振り回してる様子ではへこたれてはいないみたいだけど。

「で、ユーノから見て今の試合、どっちが勝ってた?」

 どこかちょっと自慢げなアリサ。当たり前のことを尋ねるように僕を斜に見つつ、にやっと笑った。

「そうだね、あのままの状態が続いてもアリサが押し切るのは目に見えてるし、今回はアリサの勝ちだね」
「よし! これでイーブン」

 といっても一勝一敗一引き分けなんだけど。

「でも油断しないこと。並みの魔導師ならその距離でバインドすることだって出来るから」
「私のバインドって強力だけどいろいろ条件があるからね」
「むー……万が一そうなったって壊すだけよ」

 実際それを有言実行してしまうのが彼女の怖いところだ。今の障壁を突破したのだって普通のバリアブレイクの比じゃない。
 正直、脱帽の領域だ。
 一般的なバリアブレイクは対象となる術式へ自身の魔力を介入させ生成を遅延、妨害、強度を低下させ破壊する。
 介入させる魔力を楔に例えるなら、アリサの場合それが爆弾になっている。介入した側から周囲の術式を破壊して機能そのものを強制停止させるのだ。

 こういう類の魔法は構造解析し、適した箇所へ魔力を打ち込み、緩めていくのが第一というかセオリーなんだけど……。
 もはやアリサは楔を打ち込める穴があれば十分なのだ。小さい穴でも魔力を爆破させて無理やり穴を広げしてしまう。
 あまりにシンプルな原理で容易に想像できる辺り敵に一番回したくないタイプだ。

「もう少し解析とかしないの? アリサは」

 普通ならこんな力任せの方法は燃費が悪すぎる。魔導師なら誰だって、余程のことが無い限り使わない手法だ。

「まだ全然魔法知らないのよ。フィーリングよフィーリング」

 それを感覚だけで出来るなんて末恐ろしいよ。

「でも射撃は課題有りだよね」
「自分でも思い知ってるんだから言わないでよ」

 横からすずかに突っ込まれそっぽを向くアリサ。
 確かに誰が見たってあれじゃ失敗だ。なのはのシューターを見慣れた僕にとってはもはや射撃の域にすら到達していない。

「しょうがないでしょ。野球選手じゃないんだから狙ったところに打つなんて」
「えっと……誘導できない?」

 自分で言っておいて無茶な要求だと感じるけど、このまま実戦で使って誤爆されたら堪ったもんじゃない。

「初心者に手厳しいわね」
「……ごめん」

 今は素質を伸ばすことを重視したほうがいいんだろう。一人で戦うわけではないのだから。

「まだ二日目だし魔法に慣れよう」
「てか普通はそうでしょ。プールだってまず水に慣れるとこから始めるのよ」
「……だよね」
「でも私たち上達はしてるよね」

 それには僕も頷いた。多分上達の早さはなのは以上のはず。
 こうやってアースラの施設を借りて集中的にやっていることもあるのだろう。それに二人の魔法資質が驚くほど分かりやすいのも一因している。

「防御、飛行、捕獲……攻撃は出来ないけど一通り使いこなせるようになったし」
「すずかの防御力はすごい高いからね」

 僕みたいな純粋な防御魔法の展開と違って、すずかの障壁にはいろいろと二次的な効果が付属している。
 敵の魔力攻撃を反射したり、魔法を組み合わせて防御力を強化したり。

「いろいろ分かってくると試してみたくなるの」
「エイミィさんやリンディさんにも積極的に聞いてたもんね」
「うん。それに私のやりたいことシルフがどんどん形にしてくれるから」
『Your order is exact always』(あなたの願いがいつもわかりやすいからですよ)
「そうかな? ありがとう」
『I am very much obliged to you』(恐縮です)

 すずかはどちらかというと仕組みを知って理論的に詰めていくのが性分みたいだ。エイミィさんから聞いたけど機械と触れ合ってるとそうなるのかな。
 対してアリサは大胆に、次々に感覚で術式を組んでいく感じだ。なんというかアリサの性格そのままを現していてなんとも彼女らしいというか。

「こういうのは習うより慣れろって感じでしょ。まっ、十分慣らしたらアタシもいろいろ試そうと思ってるし」
「アリサちゃん頭いいもんね」
「学校のレベルが低いだけよ。それに賢いってのはどれだけ突飛なこと思いつくかなんだから」
『When what say is right,you are wise man』(となると、君は賢人というわけだな)
「なんか馬鹿にしてない?」

 ……デバイスとも仲はいいみたいだ。インテリジェントデバイスとはシンパレートが大事だしね。

「ふふ、じゃあテラスでお茶にしよう」
「そうね、アタシも流石に喉乾いちゃった」

 それにしても、一週間も満たない日数でどこまで二人を魔導師として育てられるのだろうか。
 ……いや育てなきゃいけない。なのは一人で敵わなかった敵がもう現れないとは限らない。僕だって不覚を取ってあの有様だ。
 もうあんなことにさせないために、二人もこうやって休日返上で頑張ってくれてるのだ。

「ほらユーノも早く来なさいよ」
「えっ、あ、ごめん。今行くよ」

 プレッシャー……感じてるのかな。
 駄目だ駄目だ、僕がしっかりしなきゃ。なのはのためにもここが頑張りどころだ。

「もう、あんたがぼけっとしてちゃ駄目でしょ。一応アタシたちの魔法の先生なんだから」
「そうだよ、だからよろしくお願いします……ね?」
「はは……」

 先生、この新しい生徒たちにたじたじです。

* * *

「なかなか調子いいじゃないの、二人とも」

 見習い魔導師の成長を褒めながらも手元にコーヒーに砂糖を入れるのは忘れない。
 次いでミルクが投入され、褐色が漂白されていく様は何度見てもため息をつきたくなる。
 クロノ君も小さいころはこんなもの――失礼なのだけど――を飲まされていたと思うとある意味涙を誘ってしまう。

「あ、ありがとうございます」
「でもまだまだ課題が山積みですよ」
「大丈夫よ、午後は私がみっちりレクチャーしてあげるから」

 強化合宿初日は私たちミッドチルダのことや今まで使った魔法のおさらい。
 教えてもいないのに念話を使いこなしたり、起動コードなしにバリアジャケットを起動できたりと予想外の出来事ばかりで私も艦長も驚っきぱなしだった。
 二日目はもう模擬戦を通して本格的な魔法の使い方を教える、というより体に叩き込むなんてことが午前のメニュー。
 デバイスのサポートもあって、データを見る限りじゃかなりいい線いってると思う。まだまだ荒削りもいいところだけど二人がダイヤの原石であるのは間違いない事実だ。

「それにしても計器壊れてたのかなぁ。今じゃ二人が結構な魔力持ってることわかるんだけど」
「デバイスが二人の資質を引き出したんでしょうか」
「それもあると思うけど、多分以前から二人にも資質があったんだと思うわ」

 二人の魔法資質はあのデバイスと同様、相当偏っている。
 データの量は少なくともデバイスのコンセプトに彼女たちのシンパレート、さらには発動させた魔法の特徴。
 いろんなものから導いた答えは今の私の中で九割方固まっているわけで。

「アタシは魔力を集めたり圧縮させたりすることが得意で」
「私は魔力の感知に魔法の並列制御が得意」
「そう、しかも二人のデバイスはそれにピッタリ合うように調整されちゃってる」

 自分や周囲の魔力を掃除機のごとく集積、さらに圧縮させて強力なエネルギーへ変換する。
 攻撃のみを主眼に置いたバーサーカーにこれはもう打ってつけ。
 対照的にシルフは防御的な魔法のみに重きを置いたデバイスだ。強力なバリアや補助魔法を幾重にも同時展開、且つ制御できるのはそれだけで戦況を変える鍵となり得る。

「封時結界の中になんで二人がいたかようやくわかったよ。これじゃ僕にもお手上げだ」

 ちょっと悔しそうにユーノ君が肩を竦める。ほんと種さえ分かれば簡単なものだ。
 アリサちゃんが結界の一部を圧壊させて、すずかちゃんがうまく制御して穴を塞いで。無意識に行ったというのがまたすごい。

「ほんとになのはさんといいあなたたちも、なんでここまでいい人材が揃うのかしら」

 魔力値を計測したところ二人ともすでに常時百万以上の値を叩き出している。すでに魔力だけなら以前のなのはちゃんと肩を並べているのだ。
 偶然にしては良くできた話だ。でも現実に目の前にいるんだから信じるしかない。
 言い方を変えればこう言うのだろう。

 ――必然と。

(なんて格好つけてもねぇ……)

 兎にも角にも、心強い味方が加わったことは事実なんだしそれで良しとしよう。

「なのはちゃんだけを危ない目には合わせたくないですから」
「すずかの言うとおりです。アタシたちにも出来る力があるのに見ているだけなんて……アタシ嫌です」

 三人が友達になったきっかけは知らないけどこれだけ想い合えるなんて感動してしまう。

「幸せ者だね~なのはちゃんは」
「この二人のためにも教えて上げられることは全部教えないとね」

 うんうん、と頷いて同意。
 まったく艦長の言う通りだ。 

「それにしてもここ数日はジュエルシードの反応がないのは助かったわね」
「おかげで安心して訓練できますからね」

 二個目のL・ジュエルを封印してから嘘のように平和な今。
 こうやってのんびりしている間に発動する可能性もあるだけに気は抜けないけど。

「なのはにもきっといい休息になります」
「ほんとここ数週間頑張りっぱなしだったからね」

 思わず敢闘賞をあげたくなっちゃうくらいの活躍っぷりなんだから。給料支払ったって罰は当たらない。
 貨幣が違うからあげたくてもあげられないんだけどね。

「そんじゃ午後はエイミィ先生の歴史の授業から」
「あんまり変なこと教えないでね、エイミィ」

 釘を刺されるけどここだけの話自重はしない。
 郷に入りては郷に従え、なんて便利な諺もあることだし、いろんなことを教えてしまおうと思ってる私です。

「あははは、大丈夫です。……でもこれならなのはちゃんも連れてきたほうが良かったんじゃないかな?」
「い、いいんです。なのはには休んでもらったほうが」
「そっかな……」
「はい」

 なにかアリサちゃん言葉が引っかかった。隣のすずかちゃんやユーノ君もなんだか気まずそうな雰囲気を帯びてきている。
 もしかして私の一言が原因とか?

「そ、そうだね。うん、休める時は休むのが一番! 寝る子は育つ」

 前言撤回とまではいかないけどお茶を濁してその場を取り繕った。

「じゃあ改めてテストはないけどだからって居眠りしないようにね!」

 そんなことより今は勉強勉強!

* * *

「それじゃあまずバリアジャケットを装着してみましょうか」

 私の声にすぐに待機状態のデバイスを起動させる。なのはさんもそうらしいがせっかく設定してある起動パスワードを無視するのは少々製作者に申し訳ない気がする。
 まぁ、格好つける程度のもので問題は無いのが現実であるけど。
 そうやって私が思考する間に、二人は刹那の煌きを残し魔導師としての姿へ滞りなく変身していた。

「もう基本は大丈夫ね」

 術者のイメージそのままを転写しているだけあって二人とも個性的な姿をしている。

「アリサさんはなんというかシンプルね」

 黒のアンダーシャツに炎を形にしたような赤いベスト。どちらもノースリーブで彼女の腕を露にしている。
 朱を基調としたキュロットスカートを履き、膝には白銀のプロテクター。無駄を無くし、重量をとことんまで削った姿はどこか野生的だ。

「魔法使いっていうよりかガールスカウトみたい……かな?」
「あの化け物ぶん殴ってやろうって思ったらいつの間にかこんな感じになったのよ」

 軽く振っても、ひゅんひゅんと風を切るデバイスにその姿は良く映えるのだが、

「杖……なのかしらね」

 誰が見てもハンマーとしか形容できない杖。燻し銀に光る鉄槌にコアとなる紅玉、それを守るように金色の装甲が殻のように覆っている。
 甲羅のようにも見えてこれが攻撃形態になると爪のように再構成されるのだ。
 私にもその形に見覚えがある。日曜大工のお供、なんてことはない釘抜き付トンカチ。
 早い話はネールハンマー。

「アリサちゃんならもう少し凝ると思ったんだけど」
「これでも結構アクセントはつけたつもりよ。ほら腕のところや手のところ」

 言われてみれば二の腕に丸みをもったリングが嵌められており、そこから茜色のリボンが結ばれている。それに腰からも革紐を思わせるような質感の帯が二本ぶら下がっていた。
 拳の方は銀色の手甲で覆われており、なるほど彼女なりのお洒落があるようだ。
 軽くその場で一回転するとリボンや帯が彼女を追って軽やかに舞った。

「動きやすさ抜群! 通気性良し! 完璧でしょ!」
「私とは大違いだよね」
「そうよ、すずかの方がよっぽど凝ってるじゃない」
「そうかな?」

 自分の身なりを眺めながら首を傾げる。

「そうよ上着のデザインからそうだし下はミニスカートじゃない。マントまでつけちゃってるし」
「ん~、色々デザイン考えてたら全部混ざっちゃった感じなんだけどね。一応、機能性重視って所かな」

 上は青地に白のラインを走らせたシンプルな出で立ちだ。ただ袖が幅広で腕を伸ばせば垂れ下がることは間違いないだろう。まるで鰭か翼か普通の服では見ない形状だ。肩口もパックリと開いていてアンダーが見え隠れしている。
 対して下は真っ青なプリーツの入ったスカートで行動的な印象を持たせる。

「……狩衣や巫女装束みたいなものかしらねぇ」

 以前になのはさんたちとコンタクトを取った際に仕入れた日本の知識が役に立った。おそらくすずかさんの意図したデザインは神事を執り行う役職の人間に近いものなのだろう。
 それを踏まえれば、なるほど色々混じってあれやこれや試行錯誤した感じが見受けられる。

「そこまで咄嗟にデザインできるなんて流石すずかね」
「アリサちゃんだって可愛いよ。アリサちゃんらしさが出てるって感じだし」

 いつも下ろしている髪も今は後ろに纏められ綺麗なポニーテール。

「もう、おだてたって何も出ないわよ。でもありがとね」
「ふふ」

 肩のバックルに止められた純白のマント。裏地は淡いラベンダー色で地面につきそうなくらい長い。確かに魔導師というなら彼女の方があっているかもしれない。
 そういう意味ならすずかさんはデバイスも凝っている。
 シルエットだけなら流線型に色々取り付けた形だ。柄から伸びる銀色の本体には青のプレートが両側から盾のように寄り添い、その間からコアである青い宝玉が顔を出している。
 先端には嘴を模したような突起がついており、後部には尾羽のように細長い排気塔が四本接続されている。
 それぞれの部位が鳥を想起させるデザインだ。彼女を空と表すならデバイスは本当の意味で鳥なのだろう。

「二人とも自分のやるべきことを形にしたのよ。どちらも甲乙つけ難し、立派よ」

 コンセプトが正反対に特化したデバイスだからこそここまで差が出るのだろう。もちろん二人の心意気も大いに影響されているのは間違いない。

「まぁ、比べるものじゃないんだけどね。大切なのはまず心構えよ」

 とは言っても、二人はもう十分魔導師としての心構えは出来ているだろう。
 蛇足だったかな、と思いながら訓練室の結界を起動させた。

「じゃあ早速始めましょうか」

 エイミィに言わせれば差し詰めこの時間は体育といったところだろう。

「これから私の出す課題をお互いに協力し合いながら乗り切って」
「わかりました」
「まかせてください!」

 うん、意気込み十分。やる気も申し分無し。

「それと最初に言っておくわ。一週間そこらで魔導師にはなれない。あなたたちはまだまだド素人」 

 出鼻を挫くつもりではないがこれだけは言わなければならない。

「だからこそ常に二人で協力して、互いをフォローしあうことを第一に目標とすること」

 攻撃と防御にそれぞれが秀でた杖。反対に言えば秀でないほうは一人ではカバーできないくらいに脆弱。
 返す返すもそのために連携を組むことを前提としたデバイス。当然戦闘スタイルもそのような形に帰結する。時間がないだけに尚更だ。

「大丈夫です、親友としてすずかのことは誰よりも知ってます」
「私もアリサちゃんの親友として胸を張って言えます」
「よろしい。ではビシバシ行くわよ!」

 ようやく見つけた大人の出来ること。

 私にとってそれはこの小さな魔法使いたちを導くことだ。

* * *

 夕暮れまじかの帰り道。カラスの鳴き声も聞こえなくなって街灯が灯る。

「少し遅くなっちゃったね」

 ちゃんとそれなりな言い訳で出てきたけど、やっぱりみんな心配してるはず。
 連休だからって帰りを遅くしていいって決まりはないし、明日はもう少し時間に気をつけなきゃいけないな。

「でも収穫は余るほどあったんだし御の字でしょ」
「そうだね、私おなか空いちゃった」
「Me too」

 ほとんどため息な返事だった。
 実は私も結構へとへと。普段動かしてない筋肉を動かしたせいか体中に疲労感が纏わりついている。

「はぁ、これでアタシたちもあんなのと戦うのよね」
「そうだね……でも」
「出来るわよ」

 そう、出来るに決まってる。なのはちゃんと一緒に歩いていけるんだと思う。
 まだ今は歩幅が足りなくて遅れて歩くけど。でも背中を見つめられるのはきっと大きな一歩。
 もう名前を呼べば振り向いてくれるのだから。

「けどすずかっていつの間にか運動神経よくなったわよね」
「え?」
「だってドッチボールの時も、競争とか水泳だって多分クラスで一番よ」

 アリサちゃんの言うことは本当のことだと思う。
 自分でも運動神経にだけはそれなりの自信がある。

「人は見かけによらないって言うけどあんたの場合まさにそれ」
「そんなに私イメージと違うかな?」
「少なくとも初めて会ったあの時はおどおどしてて、いじめてオーラ全開だったわよ」
「あの時は……うん、そうだね」

 入学したてでまだ友達も一人もいなくて。今までがお姉ちゃんやノエル、ファリンに囲まれて、我ながら過保護に育てられていたのが仇になったんだと思う。
 いきなり一人学校に放り出されて右も左も分からない。何することも出来なくて俯いて。

「アタシも嫌な子全開だったわよね。なんだかんだでトゲトゲして誰も寄せ付けなくて」

 あの日のことは今鮮明に焼きついてる。足音が近づいてきたと思ったら大事なヘアバンドが取られて。
 びっくりした、というよりは何がなんだか分からなくて。辺りを見回すと私のヘアバンド持った子がいて。

「あんな大人しそうでオドオドしてて、悪戯心くすぐられたのかしらね。ほんと子供じゃないアタシ」

 あの時はまだアリサちゃんの方が走るの速くて全然追いつけなかった。
 そういえば家でも運動と呼べそうなこと全然してなかったな。

「それであの子が出てきて」
「大喧嘩」

 クスッと二人同時に笑った。

「最後は当人が怒鳴って終わり」

 あんな大声出したのは生まれて初めてだったと思う。今でも思い返すとやっぱりちょっと恥ずかしい。

「あの後は大変だったわ……パパまで出てきちゃったりして。すっごい叱られた」
「でも私たちが友達になったのもそれがきっかけ」
「気がついたら仲良くなってるんだもん、びっくりしたわ」

 いつの間にか私たちは一緒に学校に行くようになって、お弁当を食べて、一緒に帰って。
 時にはお互いの家に遊びに行ったり。

「それでさらにびっくりしたのはあの後のドッチボール」

 あっ、それなら私も覚えてる。アリサちゃんが言おうとしたことはきっと、

「あんたが男子のボール取って、おまけに倒しちゃったんだから」
「驚いた?」
「太陽が西から昇るくらいにね」

 結局、その後クラスで一番の男子にやられちゃったけどね。

「私が運動得意になっていったのはやっぱり二人のおかげだよ」

 あの出来事は友達のきっかけであると共に自分を変えるきっかけ。

「きっと見た目どおりに見られたくなかったんだと思う。大人しそうなお嬢様とか思われたくなかったんだと思う」

 そうやって始めた体を動かすこと。

「みんなをあっと思わせるようなことしてみたくなって、誰にも負けたくなくて」
「それではまっちゃったわけ?」

 ちょっと苦笑いして頷いた。
 始めて分かったことだけど、駆けっこは風を切るのが心地いいし、水泳は人魚になったみたいで気持ちいい。ドッチボールは意外にも自分が負けず嫌いなことを発見したり。
 庭が広いのもあったし走り回るのには苦労しなくて。家の中でみんなとお喋りしたり、猫と遊んでいただけの私とは大違い。

「アタシもあんたも変わったわね」
「なのはちゃんのおかげだよね」

 私たちを友達にさせてくれたことに、ありがとうの気持ちで一杯。

「ほんと何かあると原点に戻るのね、アタシたちって」
「でもそれが始まりだもん」

 魔法使いになったことで私たちとなのはちゃんの距離は実は離れてしまっていた。
 あの戦いの後、私たちはなのはちゃんに協力するって言った。私たちは魔法使いになったことに驚いていたなのはちゃんだけど答えはすぐに返ってきて。

「私たちのこと巻き込みたくないんだよね」

 あんなに追い詰められて、私たちがちょっとでも遅れてたらどうなっていたかわからない。
 なのはちゃんでああなのだから実力のない私たちじゃ多分……。

「でもそれで魔法を捨てるなんてアタシしない」

 怒ったような顔でアリサちゃんが空を見上げた。
 同じように顔を上げると夜の混じり始めた空に一番星が顔を出していた。

「この子達だってそんなこと望んでるわけないでしょ」
「うん、少しでも早くなのはちゃんに追いつかないとね」

 きっと私たちが選ばれたことには意味がある。なのはちゃんを助けることだったり、この町を守ることだったり、まだいろいろありすぎてわからないけど。

「フェイトも驚くんじゃない? アタシたちが魔法使いなんて知ったら」
「でも意外とあっさりしてそうな気もする」

 その時が来るのはきっと遠くない。初めて四人が顔を合わせる時どんなことが起こるのだろうか。
 いろんな期待やちょっぴりの不安。心の中に全部閉まって私はもう一度空を仰ぐ。

「明日も……頑張ろう」

 また一つ夜空を星が飾った。

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