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2007.12/16(Sun)

インジュー・ジョーンズ第九話 


【More・・・】


 揚陸艇が停泊している場所まであと少し。四人は疲労感をお土産に来た道を黙々と歩いている。

「でもよかったわ。ふたりが無事で」
「僕も何よりです」

 聞かなくても、やつれた笑みを浮かべる辺りシャマルが相当な心労を抱え込んでいるのはよくわかる。

「しっかしゾンビとお友達になるなんてシャマルも物好きだよな~」
「お漏らしは黙ってなさい」
「漏らしてねーよ! あれは、あれはそう股間の汗だ!」
「股間の汗って……」

 なんだか激しく意味を勘違いしそうな響きだけど触れないでおくことにする。きっと本人のためだ。
 どちらにせよ、二人がそれぞれ無事に生きていられたことは何にも引き換えに出来ない一番の宝なのだから。

「私だって騎士だけど生き延びるためには恥も外聞も捨てるに決まってるもの」

 そう言ったシャマルはあのゾンビに襲われる瞬間一か八かで使えた変身魔法によってどうにか事なきを得た。あろうことかこちらから彼らの仲間入りをすることによってだが。
 晴天の書が呼び寄せるなり大量のゾンビをお供にやってきた光景は思い返しても肝を潰す。
 そりゃ自分達を見るなり周りのゾンビを殴り飛ばして駆け出してくるのだ。名前を呼ぶのだって濁声の呻き声そのもので。
 片方目玉をぶら下げてあり得ない方向に首を曲げて。面影すらない醜い姿ではシャマルが仲間入りしたことさえわからなかったものだ。

「大丈夫だよ、誰にも言わないから」
「い、言ったらぶっ飛ばすからな! ぜってー誰にも言うんじゃねーぞ!」

 両手を振り上げて必死の形相のヴィータ。再会した時の様子は今思い出しても涙を禁じえない。
 全身誇り塗れでボロ切れ同然の騎士甲冑にウサギのように真っ赤に潤んだ青い瞳。髪はほつれて寝癖と化して自慢の相棒は鉄槌が泣き分かれたのかただの棒になっていた。
 何より特筆すべきは股間の所だけ妙に色が濃くなっていて――まぁそういうことなのだ。
 だから今の彼女は私服姿で密林の景色から妙に浮いていたりする。

「みんな、もうすぐ舟につくよ。えと、なにかもう気になることとかないよね?」

 ユーノの一声に全員が首を縦に振った。顔にはそれぞれもう帰りたいという意思表示がありありと浮かんでいた。

「うん、それと今日はみんなありがとう。それとご苦労様。何も僕からは上げられるものはないけどほんとありがとう」
「いえいえ、最初は嫌々だったけど報酬もたっぷり貰ってますし。それに少しは楽しかったしね、ユーノ君」

 嫌味か皮肉か微笑みとともにシャマルはさりげなく毒を吐いている。

「あたしはあんまロクなことしかなかったけど……でも結構……楽しかった。また連れてけよ、ユーノ!」

 視線そらして少しだけ照れくさそうに頬を染め、最後は面と向かって感情を表すヴィーダ。

「わたしもいろいろあったけどすごく楽しかった。ユーノくん大好きだよ!」

 今回の冒険で一番の宝物を手に入れたヒロインは最初から最後まで笑顔に飾られている。自分の想いを混ぜることだってお手の物だ。

「あ、あはは……」

 何はともあれ三者三様だけど思い残すことはなさそうでなによりだった。隊長としては一番満足できる結果といえる。

「けどよ、よく考えたらなんであたし達がこいつらのお守りしなきゃなんならなかったんだよ」
「空いてるのが私達しかいなかったからしょうがないのよ」
「大体よ……高町なにょはをお守りするなんて怪獣の世話するのと同じじゃねぇか。こっちが危なっかしい」

 おまけに怪獣に一番見られたくない姿まで見られてしまって鉄槌の騎士の姿も形無しだ。
 もし我らが主に知れ渡ったら――。
 止めようまだ絶対と決まったわけじゃない。頭の中で小悪魔的な笑みを浮かべている少女に寒気を覚えながらヴィータは隣を歩く危険物に視線を送る。

「ヴィータちゃん……あんまりそんなこと言うと後ろから撃たれるわよ」
「そんなことしないってば!」

 さらりと口走る毒舌の騎士――もとい湖の騎士になのはは思い切り非難の声を上げた。
 同時にまだそんな風に思われているのかと思うと少し、いやかなり頭にきた。

「まぁまぁ、もう仲間なんだし仲良くしよう」
「んだよ、おまえもなにょはの肩を持つのかよ」
「そういうわけじゃないんだけどね」
「じゃああたしたちの仲間だな! へっへーんだ。どうだ高町、こいつもあたしの魅力にめろめろらしいぜ」

 両手を腰に添えながら胸を張るヴィータ。ちなみに魅力とかめろめろとか意味は知らない。
 取りあえず言ってみれば相手を馬鹿にできる言葉だとは思ってはいるが当然ながら使う場所を間違えている。

「むぅ……それならユーノくんはわたしの魅力にめろめろなの! でしょ! ユーノくん!」
「えっ、あ、うん」

 腕を引っ張り自分に引き寄せるなのは。なのはの剣幕にユーノは少々押されぎみに声を出した。

「あっ! もう裏切るのかよ!」
「い、いやそういうわけじゃ」
「ならおまえはこっちだ! ユーノ!」

 負けじとユーノの片腕を引っ張るヴィータ。こいつにだけは負けられないというプライドがヴィータの中で燃え上がる。

「ユーノくんはこっちなの! 大体ヴィータちゃんはユーノくんはちゃんと名前呼んでるのにわたしは呼んでくれないの!?」
「うっせー、おまえなんてなにょはでじゅ~ぶんだ!」
「ひ、酷い! じゃあなおさらユーノくんは渡さない!」
「いや、ちょっと二人とも落ち着いて、ねぇ。あっ、痛い! 痛いってば!!」

 右へ左へぐいぐい際限なく腕を引っ張られ顔をしかめるユーノ。だけどその声に耳を貸す余裕、今の二人にはほとほとない。

「バーカっ! なにょはのバーカッ!」
「馬鹿って言った方が馬鹿なの! ヴィータちゃんの馬鹿!」
「ね、ねぇ二人とも止めてって、ちょ、痛い! いたたた!!」
「……ほんと子供なんだから」

 いつの間にか一歩引いた所で成り行きを楽しむシャマル。やっぱり自分達は妙な取り合わせだと三人を眺めながら今一度思った。

「さてと、それじゃ私は先に行ってようかしら。触らぬ神に祟り無しってね」

 今晩のおかずのことを考えながらシャマルは一足先に歩き出した。それにより八神家の食卓がまた悲鳴に包まれるのだがそれはまた別のお話。

「ちょ、二人とも腕ちぎれる! ちぎれる~~!」

 後ろから聞こえる賑やかな悲鳴にやれやれと表情を崩して一人微笑んだ。

 ――そういえば晴天の書の彼女はどうなったのかというと

* * *

「空間形成、フィールド固定完了。マテリアライズ開始――」
「……にしてもリインフォースの親戚……みたいなもんやろな。ほんま言葉もでぇへんよ」

 次から次へと世界の風景が創造される様にはやてはため息を漏らした。
 空中に両手を広げ晴天の書は無数に積載された記憶から注文どおりの世界を具現化させていく。
 山、川、森、海――。彼女の思う心は無地のキャンバスに絵でも描くように楽々と作業をこなしている。

「模擬戦闘空間、広域型。……これでいい?」
「うん、上出来」
「えっへへ~」

 無邪気に笑んで彼女が降りてくる。地に立つと同時に彼女は軽やかに走ってユーノに抱きついた。

「もっとほめてほめて~」
「はいはい」

 局員達の演習世界の創造。それが今の彼女の仕事だ。
 いつ何時、ありとあらゆる状況に対応しなくてはならない時空管理局から見ればニーズに応じた世界を瞬時に作り上げられる彼女の存在は重宝される以外の何者でもない。
 特に武装職員達の演習は時に地を砕き、空を引き裂く文字通りの激戦となることがある。
 魔導師としての格が上がれば上がるほど彼らが演習をする土地も世界も少なくなり、下手をすれば彼らが次元世界を破壊する犯罪者に成り下がってしまう。

「もてもてやなぁ……」

 取り分けこの隣にいるはやてのような魔導師同士が本気で戦いあうなんて想像しただけで二日三日悪寒で涼しい思い間違いなしだ。

「あはは……なんか懐かれちゃってね」
「なのはが好きだから私もユーノが好き~」

 それを彼女が肩代わりする。仮想世界ならばいくら破壊しようが誰にも迷惑は及ばない。
 しかも術者たちの希望に沿った世界を完璧に創造可能なのだ。至れる尽くせりとはまさにこのこと。

「……ああもう、お腹一杯や。ごちそうさんなユーノ君」
「いや……その、ね。ほらハーレー離れて」
「それ、この子の名前か?」
「うん、なのはがつけたんだ」

 契約者として――もっとも今は既に元契約者の身だが――彼女に晴天の書以外に名前がないというのはなんとも虚しいことだ。
 堅苦しい名前はこの際捨ててもっと親しみある呼び名こそ彼女にはふさわしい。なのははそう考えハーレーという名前を彼女に授けた。
 無論、もう誰も捨てはしないという決意も兼ねているのは言うまでもない。

「晴天だけに晴れ……なかなか上手いこと言うな、なのはちゃん」

 顎に手を添え感慨深げにはやては頷いた。自分が夜天の書――現在、蒼天の書――にリインフォースと名づけた時とは大違いだ。

『マイスター……』
「もちろんリインフォースって適当につけたわけやないから安心し。寝ずに考えた名前やないけど誰にも誇れる立派な名前や」

 それは今も昔も変わらない。あの子はあの子、この子はこの子。確かに今のリインフォースはあのリインフォースではない。だけど背中を押す幸運の追い風である事実は絶対の普遍だ。
 同時に頼れる相棒であることも。

「ねぇユーノ、このお姉ちゃん誰?」
「ん? この子ははやてのデバイスで」
「蒼天の書、またの名をな。リイン出ておいで」

 はやての肩に腰掛けていたリインフォースが光を纏いながらはやてより一回り小さな少女となって実体化する。

「リインフォースといいます。よろしくお願いします」
「は~い! 私はハーレー、よろしくねリインお姉ちゃん!」
「うちのリインフォースはいい子やから仲良うしてな」
「うん!」

 流石同じ魔導書同士気が合うのだろうか。早速、意気投合してる辺りいろいろな心配は杞憂になりそうで何よりだ。

「じゃあ僕は仕事があるからこれで」
「司書の仕事か? そんなん後でええやろ。もうちょいゆっくりしてもバチあたらへんと思うよ」

 はやての言葉にユーノは首を横に振った。

「みんなを待たせちゃ悪いからね。それにロストロギアは待ってくれないから」

 その仕事は今のユーノに司書以上に大事なもの。むしろ司書などコンピュータにでも任せておけばいい。
 すでに足元から転送方陣を呼び出し転送の準備を始めるユーノにもうあの場所は昔の職場だ。

「ああ、もしかして遺失物捜索班のどえらいホープっていうんは……」

 思い出す頃には既にユーノは遥か遠く、別世界へ旅立った後だったりする。

「……せっかちやなぁ」

 どこか遠い目ではやては晴天の空を仰いだ。
 
 ――うん、いい天気。

* * *

「ついに……ついにこの時が来た!」

 厳かな雰囲気を醸し出す祭壇の上で法衣を着込んだ男が感嘆の声を上げる。血走った目は狂気に染まり視線で人を殺せるくらいの迫力を持っている。
 台座の上には不気味に明滅する真紅の宝玉。それを前に初老の男が両の手を空へと掲げる。

「古より言い伝えられし幻想! 今この時を持って現世せん!」

 男の言霊に宝玉が応えるように光を投げかけ始める。
 何を成そうというのか、少なくともそれは人の世のためになるものとは思えない。きっとこの世を混沌へ導く滅びのに違いない。

「現れよ……現れよ……現れ――」
「待て! そこまでにしてもらうよ!」

 だが誰も指を加えて滅びを待つことなどするものか。

「誰だ!!」

 振り向く男の先には、

「あなたのやろうとしていることはロストロギア無断使用の立派な犯罪です」

 男を見据え、風に金髪を遊ばせながら年長者の風格を漂わせる女性一人。

「人様の物は勝手に使っちゃいけねーって教わらなかったのかよ」

 また隣には呆れたように腕を組み斜に構える小柄な少女が。

「あなたにどんな事情があるかは知らないけど悪い人なら邪魔させていただきます!」

 凛と声を響かせ愛杖を構える黒の魔導師。

「今ならまだ間に合います、退いてください。それができないなら然るべき罰を受けてもらいます」

 杖を左に右手は相手を指差し、高らかに言い放つは白きエース。

 ――そして、

「ロストロギアは希望を育てるために生まれたんだ。それを私利私欲で利用するなら」

 眼光と共に逆の意味で紅一点の少年が一歩踏み出る。

「僕は絶対に許さない!!」

 風にマントがなびき彼の言葉は容易く男を怯ませた。

「お、おのれ管理局か! 格なる上は……いでよ!!」

 男の片手が印を描き指先から赤い光を大地に放つ。すると地面から石膏像のような人型が次々に現れた。

「貴様らこそ盗掘者ではないか!」
「おまえが言えた義理かよ。あたしたちは悪人の手からロストロギアを守るために戦ってんだ!」

 啖呵を切り少女が鉄槌を振り回す。

『みんな、そのロストロギアは時限式であと三分で停止させないと暴走状態になるよ! 早くしないとそこごと吹っ飛んじゃうからね!』

 通信されるエイミィの声に彼は、いやそこにいた五人は竦むどころか口元を緩ませるほどの余裕を見せた。

「三分……ユーノくん」
「うん、確かにちょっとした冒険だね」

 だけどそれこそが自分達の原動力――!

「いくよみんな!!」
「ええ!」
「おう!」
「うん!」
「まかせて!」

 号令にあわせそれぞれの足元から生れ出でる光の文様。
 地平に横並びした五色に輝く光の柱。掲げた手に機械仕掛けの相棒は世界を眩く照らし、悪事を働く輩を竦ませ圧倒する。

「レディ!!」

 お構いなしに彼らへ飛び掛るは悪に忠実な兵士たち――またの名を一般兵とかやられキャラとか。

「ディバインバスターーーーーッ!!」

 少女の一声に桜色の咆哮が木霊する。
 たったそれだけで斜線上にいた哀れな生贄は跡形も無く消滅した。

 高町なのは――またの名を高き冒険者。

「手当たりしだいブチ撒けろっ!!」

 旅の鏡は両手に、近場の相手から次から次へと動力機関なのか不気味に鳴動する臓物を引き抜いていく女性。すでに彼女の背後には山となった臓物と飛び散った体液で赤く染まっている。
 とても日曜の朝にお茶の間にお見せできるような風景ではない。

 湖の騎士シャマル――またの名を深き冒険者。

「ギガント! シュラーーーーークッ!!」

 遺跡の天井を盛大に破壊しながら膨れ上がった大質量の鉄槌がありとあらゆる存在を巻き込み、粉砕していく。
 敵も当然、遺跡も彼女の周りだけ無残にも廃墟と化している。まるで数千年に渡る風化の歴史を一息でしてしまったように。

 鉄槌の騎士ヴィータ――またの名を強き冒険者。

「スプライトザンバー! ハアアアア!!」

 背丈を悠々と超える大剣を軽々と振り回しながら鬼神のごときを活躍を見せるは迅雷の申し子。
 胴と足に別れを告げる一撃はその後ろの柱ごと見事なまでに一刀両断せしめる。

 フェイト・T・ハラオウン――またの名を速き冒険者。

「チェーンバインド!!」

 そしてユーノ・スクライア――誰よりも冒険にかける情熱は熱い、またの名を熱き冒険者。
 手にした鎖鞭は敵を痛快になぎ倒す彼の十八番。絡みつき鉄球代わりに振り回される敵兵は成す術も無く仲間を薙ぎ倒していく。

 彼らはロストロギアを探し、守るスペシャリスト。
 胸に秘めしは果て無き発掘スピリッツ。華麗に決めポーズすれば彼らの背後を爆音と爆炎が盛大に飾るはずだ。

「おのれ! おのぎゃあああ!!」

 悲願を蹴散らされ顔を歪めていた法衣の男は誰かが放った魔砲に巻き込まれながら遺跡の壁をぶち抜いて彼方へと消えていった。丸く開けられた壁に太陽が柔らかな温もりを差し込む――

 ドーーーン! ズゴゴゴゴ!! メキメキメキ! ガゴゴゴゴ!! グシャ! ドッカーーーン!!!

 もし自由に動けるなら今すぐにもこの場に光を注ぐことを拒否したい。そう、太陽は思った。
 暴風が渦巻き敵と共に崩壊の序曲を辿る遺跡。神秘とか荘厳とかそんな言葉なんて欠片も残らず砂塵と化し風に弄ばれていた。
 爆音と吹き上がる白煙の数が増えるたび瓦礫は存在感を増し、悪は残らずというよりとっくに滅んでいた。

「よし! ロストロギア確保!!」

 悪と奮闘する――名ばかりの破壊活動などと言ってはいけない――仲間を背中に一人暴走寸前だったロストロギアをユーノが回収する。

 司書は大事だ。考古学も大事だ。
 だけどそれ以上に大事なことを見つけた。

「ミッション!」

 世界を股に駆ける冒険者。今のユーノにはそれこそが全てだ。
 彼らの冒険は終わらない。

 むしろそれは、

「コンプリート!!」

 ――今ここに始まったのだ。

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【編集】 |  12:09 |  インジュー・ジョーンズ  | TB(0)  | CM(1) | Top↑
保管庫で読んだ時「おもしれ~」ってすごい思いました
なのはと晴天の書のユニゾンシーンが追加されてたのですね
とても得した感じですw
tim | 2009.01.28(水) 22:20 | URL | コメント編集

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