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2007.07/08(Sun)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第五話 Apart 


【More・・・】


 ――こんな気持ちは初めてだった。

 暗闇が心を包んで胸がざわめく。口の中は乾いて、体中にはじっとり嫌な汗が張り付いて気持ち悪い。

「いい加減にして!!」
『Divine shooter』

 まだ殻に覆われてない所目掛けディバインシューター一斉射撃。思い描く通りの動きで全弾命中していても相手は構うことなく突っ込んでくる。
 苦手な近くでも、得意な遠くでも、相手はわたしに満足に反撃すらさせてくれない。

「シールド!」

 背中に見える光の塊。またあの砲撃がくる。
 防御にだって自信はあるのに右手の盾は一秒も持たず壊れてしまう。

『Master,don't rush』(マスター、焦らないでください)
「大丈夫! このくらいじゃ」

 なんとか凌いで、すぐにフラッシュムーブ。相手は素早くないから追いきれないはず。
 そう考えて即実行!
 思ったとおり、相手はわたしを探してキョロキョロしている。今のうちに弱点さえ見つかれば。

「エイミィさん! 何か弱点とか!」
『駄目……こっちじゃ何も』
「っ! 何とか頑張ります!」

 こうなったら一か八か、あの顔にむき出しのL・ジュエルに直接砲撃を叩き込んで封印するしかない。

(ユーノくん! いける?)
(なんとかね……可能な限りフォローするよ)

 念話が途切れると同時に、森からいくつものチェーンバインドが相手の体中に巻きつき一気に動きを封じていく。

(でも、無理に近づかないで……そこまではフォローできるかわからないから)

 心なしかトーンの落ちた声。だけど聞いていられるほど時間はない。
 最大加速で一気に飛び込む。ぐんぐん近づく距離に相手も気づく。向けられた顔にL・ジュエルの鈍い輝きが見えた。

 これで決めなきゃ――!

「ゼロ距離! ディバイン!!」

 レイジングハートの先に光が生まれその先にはL・ジュエル。距離は一メートルもなく外れようがない直撃コース。
 光満ち、わたしは間髪入れず心の中の引き金を引いた。

「バスターーーーーッ!!」

 瞬間、目の前が真っ白になって何もかもが見えなくなる。
 あまりの眩しさに目を閉じ耐えて、衝撃を体全体で受け止めながらありったけの魔力をレイジングハートに込める。

「シーリングモード!」

 自分でも眩暈がする渦の中で、光の帯がL・ジュエルへ突き刺さっていく。これだけの魔力を流し込めばL・ジュエルだって封印できる。

「リリカル……マジカッ――!?」

 不意に体から力が抜けかけた。手から零れ落ちそうになったレイジングハートを慌てて握りなおし、一緒に飛びかけた意識も握り締める。

(まだ魔力が戻りきってない? だけど!)

 約束したんだ。二人に、アリサちゃんとすずかちゃんに帰ってくるって。

 だから――

「リリカル! マジカル!!」
 
 負けられない!

「ジュエルシード! ロストナンバー!」
『Stand by』
「封印!!」
『Sealing』

 今までで一番の振動が腕を揺さぶった。それさえ歯を食いしばって必死に耐える。
 台風でも来たような暴風と轟音。その中でわたしの桜色が青い光を少しずつ飲み込んでいく。
 ――いける! 心の中で確信してありったけの力をレイジングハートに注ぎ込んだ。

『――のはちゃん! 駄目! 離れて!!』
「えっ!?」

 音の洪水の中で不意に耳に飛び込んだ誰かの叫び。
 だけど封印に魔力も意識も、全部注ぎ込んでいたわたしにそんな言葉が届くはずもなくて。

 それが危険を知らせるメッセージだと気づいた時には、すでにわたしの体から全部の力が抜け出て行った後だった。

「え……? な、なに……?」

 目の前が二重にぶれて意識が白に薄められていく。
 水の中に沈んでいくみたいなふわふわした感覚に、わたしは一瞬何が起きたのかさっぱりだった。
 ここから離れなきゃ――そう思ってレイジングハートを引き寄せようと腕に力を込める。

「あ……れ?」

 なのにレイジングハートは動かない。
 いくら力を入れても一向にわたしの方へはやってこなくて、まるで誰かが反対側から引っ張っているみたいだ。

『Master,this mode can't keep!?』(マスター、シーリングモードを維持できません!?)

 異変の声と音はすぐにわたしに届いた。
 レイジングハートの訴えと宝玉に入った一筋のヒビ。眩い輝きは嘘のように消えて、赤く透き通っていた宝玉はどんどんくすんでいく。
 ピシッ、ピシッと聞きたくも無い音はどんどんわたしの耳に飛び込んできて、宝玉だけじゃなくフレームにもたくさんのヒビが広がっていく。

『Danger,this will stop my self』(このままでは機能停止の危険性が)
「っ……そんな!? し、しっかりして! レイジングハート!」

 何かがおかしい。おかしすぎる。
 これじゃまるでレイジングハートが封印されているみたいだ。
 そんなわけない! 今わたしの目の前で封印しているのは紛れも無いL・ジュエルなんだから。

「封印してるのに!」

 なのに、自分の言葉に自信が持てなかった。さっきからレイジングハートに纏わりついている変な手ごたえがわたしをさらに不安にさせていく。
 何度も首を振って、わたしだけでもしっかりしようと努力して、
 
「な、なにこれ……?」

 そのおかげか、ここに来てようやくわたしは異変の一つが何であるかを理解できた。 
 
 レイジングハートに何か帯のようなものが沢山巻きついている。さらに帯はわたしの手首や足首にも巻きついていて、まるでわたしをここから逃げさせないようにしていた。
 蒼く不気味に光る細い帯。思わず帯を目で辿った。

「……嘘」
 
 いくつもの帯はレイジングハートを囲むように伸びていた。だけどその根元にあったのは決してL・ジュエルじゃない。
 辿り着いた場所で今も光っているそれは、

「ジュエル……シード」

 そうだ…・・・そうだった。
 相手はL・ジュエルだけで動いていたわけじゃない。自分で作ったジュエルシードを二個も体に埋め込んでいたんだ。

『Esca……pe here ……early』(脱……出を、ここから……早く)

 わたしたちの真似をするなんて信じられなかった。信じられないけど信じるしかなくて。
 ぼやぼやしてたらレイジングハートがやられちゃう。
 下した決断は逃げる以外に考えられなかった。

 すぐにフルドライブを解除。
 巻きつく帯はこのまま後ろに飛んで強引に引きちぎるしかない!

「なのはっ!! 危ないっ!!」

 そうしてわたしが封印を止めてしまうことが、相手の本当の狙いだったことにわたしは全然気づいてなくて。
 わたしの目の前に飛び出したユーノくんが叫んでシールドを張って、その向こうでは大きな白い光が煌いていて。

 気がつけば景色がすごい勢いで流れて、鈍い音が聞こえて、息が出来なくなっていた。

「ぁ……ぁう」

 遅れてじんじんと背中に広がっていく痛いって感覚。体中は痺れてて立てそうにもなかった。
 きっとプロテクションが発動しなかったら気を失ってたと思う。

「ゆぅ……のくん」

 わたしを咄嗟に庇ってくれたけど大丈夫だったのか。これだけの砲撃、まともに貰ってたら絶対無事じゃ済まない。
 何とか首を上げると、目の前にわたしを守るように両手を広げるユーノくんが立っていた。

「大丈夫……君は僕が守る――」

 頼もしい背中と言葉にわたしは安堵した。 
 だけどそれも束の間のことで、次にはユーノくんの膝がガクリと折れ踏み止まることもせず前のめりに地面へ倒れていた。
 倒れ伏したユーノくん。よく見ると右肩が赤く染まっている。
 その瞬間に初めてわたしはユーノくんが怪我をしていることに気づいてしまった。

「そん……な」

 もしかしたら最初に庇ってくれた時に怪我してて、だからあの時声に元気がなくて。
 地面に突っ伏したままでユーノくんは動かない。きっと気を失ってるだけだよね? 
 だけどそれはわたしにとって最悪の事態を招くことしか意味していなくて。

 影がわたしを覆った。見なくたって相手がやってきたことぐらいわかる。

「い……や」

 脱力している体に立ち上がる力も、レイジングハートを構える力もなくて。
 絶対いけると思った相手が自分の力じゃどうにも出来ないものだと思い知らされて。

「あ……ぅ」

 不規則にわたしの口から鳴るカタカタ。

(なんでわたし……震えてる?)

 心の中の暗闇が一気に噴き出した。

 体全体に伝わっていく寒さ。恐い時に背筋が凍るっていうけど本当のことなんだ。
 どうにか動かそうとした手は決して上がることなく、ただ地面を引っ掻いてばかり。

「いや……やだ……」

 ――誰かに負ける。

 初めてはフェイトちゃんだった。首に鎌を突きつけられた時はすごく怖かった。
 でも今はその時の怖さの何倍も、何十倍も怖い。銀色に光る怪獣に見下ろされ、怖い以上の嫌な気持ちが心を押しつぶそうとしている。

 弱々しく首を振って意味のない抵抗。後ずさりも動けなければしようがない。
 あの時押し切っていれば、もしかしたらL・ジュエルを封印できていたんじゃないか、って考えちゃうとどうしていいかわからなくなる。
 わたしは目の前にぶら下がっていた勝利を見逃してしまったのだ。

「そんなの……いやだぁ……やだぁ!」

 真っ白な光が見えた。ここから見えて数は三つ。バリアジャケットしか守る手段のないわたしには一発あれば十分だと思う。
 冷静にそんなこと考えているのはきっとこれから先に起こる結末を忘れたいから。
 本当ならもう家に帰って、家族のみんなに元気を見せて、また明日から頑張ろうって思って――……。
 わたしはきっと魔法使いになって初めて思い知らされた。
 
 やり直すことが決して出来ないこともあるんだってことを。
 
 怪獣が腕を振り上げる。腕に埋め込まれたジュエルシードが青い軌跡を描いた。

「あ……やぁ……」

 手からレイジングハートが滑り落ちた。
 自分が諦めてしまったことを他人事みたいにわたしは感じていた。
 どうしようもない後悔、恐怖、不安。もうぐちゃぐちゃになって自分じゃどうしようも出来ない心を拒絶するように、わたしはぎゅっと目を瞑った。
 最後に脳裏に浮かんだ友達に謝りながら……。
 
 ――ごめんね、アリサちゃん、すずかちゃん。 

『Splash wave』

 そんなこと言わせないわよ! なのはっ!!

 声が――聞こえた。

* * *

 大地を割る光の波。間欠泉みたいに地面から光を吹き上げて、アタシ人生初の魔法は盛大な音と共に山みたいな化け物に爆裂した。

「もう一発!!」

 相手が怯むよりも早くデバイスを振り上げ――

「スプラッシュ!」

 これでもかと地面へ叩きつける!

 大胆に地を耕す光はマグマみたいに燃え盛って化け物へ襲い掛かる。
 ダイナマイトでも爆発させたみたいにさらに一撃、化け物に痛手を負わせる。
 キラキラと夕日を反射する鏡みたいな破片は今の今まで敵の鎧だったもの。アタシの魔法で一瞬に砕けちった姿だ。

「どんなもんよ!」

 よろりとバランスを崩していく相手を目の前に、指を突きつけ鼻高々。
 背中から白煙を上げながら化け物は頭をこちらに向ける。突然の来訪者になんだか驚いているみたいだ。
 ゆっくりと開く口から低いうなり声。自慢の鎧を壊された恨み言でも言っているのか。
 通じないから意味ないけど。

「次! すずか頼んだわよ」
「まかせて!」

 後ろに下がり今度はすずかが前へ飛び出す。
 相手が次にすることはもう把握済み。こっちだってさっきからモニターで散々不細工な姿を拝んできたんだから。

「シルフ、お願いね!」
『Obey,mistress』(仰せのままに、お嬢様)

 相手が動く。当然撃ったのはなのはを撃とうとしていた砲撃だ。
 でもそんなんで今のすずかは、

「セット!」
『Protection』

 ――止められない!

「お返し――」
『Distortion』

 すずかに襲い掛かった真っ白な光線が突然バリアの上でぐるりと渦を巻く。

「させてもらうから!!」
『and――』

 渦はすぐに真っ白な球体に姿を変えて、

『Refrection』

 ズドン! と大砲でもぶっ放したみたいな音を残して光線を撃ち返す。
 受けた光線は三発。それを束ねて一発。防御するだけかと思ったら跳ね返すなんて侮れない。抜け目ないすずかの発想にちょっと舌を巻いた。

『目標、外殻の再生を開始! やっぱり遠くからじゃ埒明かないよ!』

 状況を伝えるエイミィさんにアタシは思考を巡らし次なる手を練る。
 そうして出てくる答えは単純明快、馬鹿でも分かる。

「バーサーカー! 飛ぶわよ!」
『How do?』
「とにかく飛ぶのよ!」
『It is a interesting order.I hope to clear a little more idea』(随分と面白い注文だな。もう少しわかりやすくしてくれ)

 ムカッと来た。確かにインテリジェンスなだけあって自分の考えを持っている。
 だからってビギナーのご主人様にいきなりそんなこと言うのか、こいつは。

「あんたねぇ……ちゃんとアタシ考えてるでしょ! もっと説明欲しいの?」
『It's joke.Your thinking knows』(冗談、君の考えはわかってる)

 嵌っていた宝玉が煌いて何かが足元を押し上げ始める。

『You have entered power too much.Please pull out power a little』(力みすぎだ。もう少し力を抜け)

 茶化すかと思えば、いきなりそんな真面目な事を言うこの子に一瞬呆気に取られて、やっぱり手玉に取られたのがちょっぴり悔しくて。

「ああもう! 分かってるなら行くわよ!」
『Yeah buddy!』(ああ、相棒!)

 膝を折り曲げ、体を落として、目指すべき場所に狙い定めて――

『Boost jump』

 思いっきり地面を蹴るっ!!

 ロケットエンジンでも背負ったみたいに飛び出すのはアタシ。伸び上がる景色、向かって来る風圧、一秒も待たず空へ放り出される。
 初めて空を飛んだ。でも感動を味わうのはまた後で。

「大事なのは!」

 怪獣の背中に飛び乗れば視界一杯に広がる銀色。とっくのとうに再生していて、近くで見ると銀細工みたい。

 それをアタシは、

『Hammer squash!!』

 ぶっ飛ばす!!

* * *

 工事現場にでもいるような重低音が敵の背中から何度も鳴り響く。
 アリサちゃんがハンマーを振るうたび茜色の光が爆発みたいに弾け煙が相手の背中を覆っていく。なんだか元が杖だってことを忘れてしまいそうだ。
 もちろんそれにぼーっとしている暇は無い。私だって握り締めたこの子と共にやるべきことをやらなきゃいけないから。

「シルフ、次いくよ」
『Please don't hesitate to ask me,mistress』(遠慮なくお申し付けください、お嬢様)
「うん!」

 丁寧な物腰で私の指示を待つこの子はなんだかノエルみたい。
 けど今やるべきことはシルフとお話することじゃない。

「イメージを……浮かべて」

 すっと目を閉じリンディさんの言葉を思い浮かべる。
 落ち着いて焦らず、最も形にしたいことを願う。そうすれば応えてくれる。

 形にするもの――盾の次はやっぱりこれしかない。

「シルフ!」
『Air saucer』

 真上にジャンプ! そうして私の足は風を捉える。
 足元に作り出されたのは光の輪。アリサちゃんみたいな加速はしない代わりに、乗りごこちはすごい安定している。
 あっという間に森を抜け、空へ飛び出し眼下に今の状況全てを捉える。

「リンディさん、これでいいんですよね」
『いいというか……満点だけじゃ足りないくらいね』
「ありがとうございます、それでどうすればあの怪獣を止められるんですか?」
『それは簡単! 前足と頭の宝石、あれを封印するだけだよ!』

 なら話は早い。今の私とアリサちゃんの力なら絶対出来るはず。

「そうだよね、シルフ」
『Yes.I am this feeling』(はい、同感です)

(アリサちゃん、聞こえた? もうちょっと頑張って弱らせて!)
(まかせなさい! フォローはお願いね)
(もちろん!)

 すでに準備は万端。私のすぐ真下にはアリサちゃんの魔法で出来た煙が雲みたいに渦巻いている。
 少しやりすぎかな、というか敵が確認できないのはやっぱりやりすぎだ。

「でもわかるよ……シルフが教えてくれる」

 煙の中から伝わってくる三つの胸騒ぎみたいな感覚。

「これがジュエルシードの魔力なんですよね?」
『正解よ、やるわねすずかさん』
「なんとなくですけど」

 今まで何度か感じていた違和感。その正体は他でもない魔力そのものだ。
 私は今この空で魔力を感じ取っている。
 一つがすごく大きくて怖い感じで、後の二つはなんというかただ漂ってくるみたいな感じ。
 きっと一番大きいのを止めれば、残りも封印っていうのをできるはずだ。例えればあれがボスで残りはただの端末装置。

「まず動きを止めるよ!」
『Yes,the punishment is necessary』(ええ、お仕置きが必要ですね)

 凛と響く声。同時に手にしていたシルフが変形を始める。

『Shielder style stand by』

 今まで装甲だと思っていた二枚の板が下へとスライドし、ゆっくりと左右へ広がる。変形が完了するとそれは羽のように杖を飾った。
 シルフの準備は大丈夫みたい。結構メカニカルな杖に高揚感を覚えながら、私はまた新たな魔法を思い浮かべる。

 ――必要なのは相手の動きを完全に封じること。でもさっきからずっと見てて足や手を部分的に拘束するだけじゃ駄目。

 体全体を封じ込める、檻に入れるとかじゃなくてゼリーとかそんなので固めてしまうような。
 この子はそういうのがすごく得意な杖だって聞いた。
 だからこのくらい、

「いけるね」
『Yes』

 杖を構えて――

(アリサちゃん! 今すぐ離れて!)

 声をかけて合図みたいに爆発音が轟いて、

「捕まえて!」
『Whirl bind』

 くちばしを模したような先端が上下に開いていく。その間に生まれる蒼穹の輝きはすぐさま五条の閃光となって真下へ発射される。
 躊躇うことなく光たちは煙に突っ込んでいく。そうして今度は光同士が渦を巻くように、天目掛け立ち上った。
 光と風が弾けて煙が吹き飛ぶ。姿を露にした怪獣は私の想像通りに、前のめりになりかけた状態で固まっていた。

(やるじゃない、すずか!)

 頭の中にアリサちゃんの弾んだ声。私は大地へ降りながらアリサちゃんへ大きく頷いた。

『艦長……これが新型の』
『我ながら管理局の技術を甘く見ていたわ。……これならいけるわ、二人とも!』

「「はい!」」

 ピッタリ声が重なって来るべき時が来たこと告げる。

「とちるんじゃないわよ、バーサーカー」
『Okay,buddy』

「よろしくね、シルフ」
『Of course,mistress』

 互いに自分の杖へ願いをこめて。

 ちょっと気になって振り向く。木に寄りかかりながら何とか立ちあがっているなのはちゃんが見えた。
 その目はどこか心配そうに、どこかぼうっとしながら私たちを見つめている。
 言葉の変わりに私は頷いて見せた。

 ――大丈夫、なのはちゃん。私たち支えられるよ。

* * *

『Grand position stand by』

 宣言と共に柄の付け根が前へとスライド。少し長くなって伸びた所から角のような茜に染まる羽が一枚、勢いよく飛び出す。
 丸い宝玉は夕焼けに劣らない橙で煌き、金属の所に反射して強く辺りを照らしていく。


『Saver style stand by』

 金属音響き、広がっていた羽が杖から離れる。杖を軸に羽は周りに浮かび、杖からも青い翼がはためいた。
 鉄と光、四枚の羽に青い珠は一層の輝きを放つ。まるで空を映すように。

『さぁ! 心に浮かんだ呪文を唱えて!』


 目を閉じる――。
 真っ暗な世界……ってわけじゃない。瞼を貫く光はアタシの決意そのもの。
 自分の心に問いかけて、ふっと浮かんだ魔法の言葉。


 心の中に風はない。
 風のない世界? 違うもうすぐ風は吹く。だって空はこんなに澄み渡ってる。
 だから、ほら――。


「Higher! Faster! Stronger!!」


「風よ運べ! 想いと願い!!」


『封印すべきは失われし器――ジュエルシード!!』

 リンディさんの声に目を開く。
 目に飛び込んでくる光の嵐。握った手から伝わる熱い力。
 すべては、最後まで抗う光の只中へ。

「ロストジュエル――封印!!」 
 
 全力全開、真っ直ぐな願いで、

『Sealing』

 暴れる願いを光へ帰した――。

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