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2007.11/25(Sun)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第十五話 Apart 


【More・・・】


 夏の風物詩と言って最初に頭の中に浮かんでくるものはみんなは一体なんなんだろう?

 わたしの場合、それは翠屋「夏のスイーツ祭り」が一番であってこれが始まると「もう夏なんだなぁ」なんて感慨深げに考えてしまうくらいです。

『現在この台風は勢力を拡大させながら本州に接近中です――』

「七月になっていきなりか……桃子、店の方は大丈夫か?」
「どうかしら……? この調子だと台風が来る日はお休みにした方がいいかもね」
「というよりそんな日に出歩く人間はいないだろう」

 お兄ちゃんのもっともな意見に居間にいる全員が頷く。
 テレビに次々映し出される情報と、ぐるぐると時計回りに回る台風をぼんやりと見つめて夏の迷惑なお客さんにため息をつく。
 今年に入って初めて本州へ上陸コースを取ろうとする台風はなんだか今までにない規模のもの。なんだか耳を傾けていると風速90メートルとか中心気圧820ヘクトパスカルとか、いろんなことが言われている。

「家の方は大丈夫なんですか?」
「そうだね……板張りぐらいはしたほうがいいと思うよ、とーさん」

 ユーノくんの一言にお姉ちゃんもうんうんと同意する。ちなみにユーノくんは現在お姉ちゃんに後ろから抱きしめられ、頭の上にはお姉ちゃんが顎を乗せていたり。
 ユーノくんはとっくに諦めているのか気にしない素振りをしているけどほんのり頬が赤かったり。
 もう……ユーノくんってば。

「それにしても流石にこの台風は異常じゃないか?」
「わたしもそう思う……」

 首を傾げるお兄ちゃんにわたしも首を縦に振る。いくら台風のシーズンといってもこの台風さんの大きさと元気さはなんだか群を抜いている気が……。
 ほんとにわたしの家大丈夫かな?
 
「まっ、あれこれ考えてもしょうがないだろ。喉元過ぎればなんとやら、通り過ぎるのを気長に待つのが一番だ」
「もう士郎さんったら! 楽観的過ぎるんもどうかと思うけど?」
「自然相手じゃ俺でも分が悪いからなぁ……。お、そうだ。なのはの魔法で何とかできるんじゃないのか」
「ふぇえ!?」

 いきなりのお父さんの閃きに思わず素っ頓狂な声で答えてしまうのがわたし。

「実はこう……呪文なんか唱えると台風が進路を変えるなんてことが――」
「無理! ぜーったい無理だよ!!」

 身振り手振りでへんてこなポーズをしているお父さんにわたしは両手でバツを作って思いっきり首を横に振った。
 そんな無理難題出来たとしてもわたしは絶対やりたくない。魔法のことだってわたしの周りの人たちしか知らないのに、これで台風がいきなり進路を変えたり、消えちゃったりしたら全国規模で騒がれて大変なことになってしまうはず。
 ただでさえリンディさんたちには迷惑をかけているのにこれ以上拍車をかけたら管理局に逮捕されちゃいそうだもん。

「魔法だってそんなに便利なものじゃないよ。それに魔法は自分たちの勝手だけで使っちゃいけないと思う。みんなのために使わなきゃ駄目だよお父さん」
「そうよあなた。なのはだって遊びでリンディさんたちのお手伝いしてるわけじゃないんだから」
「私もかーさんに賛成。流石に自然相手にしちゃまずいでしょ?」
「台風弄って地球規模で気候が変動したらどう責任取るんだよ、父さんは」

 こういう時に家族みんなが味方になってくれるのはとても気持ちがいい。これでもかという非難の集中砲火の前にお父さんもたじろいでいる。
 
「い、いやぁ……お父さん冗談のつもりだったんだけどなぁ……。なぁ、ユーノ」
「僕もなのはの味方です」
「そういうことだよお父さん!」

 愛想笑いで場の雰囲気が和まないのはこういう時のお約束。
 取り付く島がなくなってしまったお父さんにわたしはちょっと誇らしげに胸を張って勝利宣言だ。

「あ、あははは……そ、そうだ! そろそろ風呂は入ってこないとなぁ」

 閃いた――なんて言いたげな顔で席を立ったお父さんは悔しそうにわたしの方を見た後、とぼとぼと居間を出て行くのでした。
 なんだか背中になにか言い表せない寂しさが漂っていたような気がしたけど……まぁいっか。
 
「でも確かに変な台風よね……」
「そうか? 規模が大きいだけじゃないか」
「う~ん……どうもお母さん何か引っかかるのよ」

 眉間にしわを寄せながらお母さんが首を傾げた。口をへの字にしてニュースが始まったテレビと睨めっこを始めている。
 そのニュースもやっぱり台風が一番のニュースになって、キャスターの人がさっきの天気予報と同じようなことを喋っていた。 

「別に目が二つあるわけじゃないしちゃんとぐるぐる回ってるし、何もおかしいことないと思うけど……」
「美由希の言うとおりじゃないか? 母さん考えすぎだよ」
「でもー……な~にか引っかかるのよね」
「わたしもお母さんの考えすぎだと思うよ」

 唸るお母さんにわたしもみんなと同じ意見。
 大きいから上陸したら大変なことになりそうだけど、結局はそれだけ。お姉ちゃんの言う通りちゃんと回ってるし目だってある。変なところがあれば誰だってすぐに気づくはずだ。
 きっと気のせい。うん、それしかない。
 
「そういえば母さん明日の仕込みは大丈夫なのか? 夏のフェア思ったより繁盛してるんだろ」
「そうなのよ~、もう母さんもびっくり! もう少し大目に仕込みしておかないと確かに捌き切れなさそうなのよね」
「なら明日早めに出るか今夜のうちに仕込むとか……今夜だったら俺も手伝うよ」
「いいの恭也? ああ、なら今夜で準備しておこうかしら。……じゃあ八時ごろお店に顔出そうかしら」

 笑顔で頷きながらお母さんは時計のを見て時間の確認だ。今日は早めの晩御飯だったし今はちょうど七時のニュースだ。当たり前だけど時計は七時のからあまり針を動かしていなかった。引っ切り無しに動いているのは秒針ぐらい。
 お母さんはじっと時計を見ている。壊れたのかな? なんて思ってもう一度見た時計はいつもどおり規則正しいリズムを刻んでいる。
 時間の確認だけなら別に見つめる必要なんてないと思うのに……。

「ねぇみんな……台風って時計回りだっけ?」
 
 そんな時お母さんの投げかけた一言がわたしの中で得体の知れない違和感を生んだ。

「あれ……? 台風っていつも右回りじゃなかったんじゃ……」
「母さんまさか台風が左回りなんて言い出す気か?」
「だって本にだって日本に来るのはみんな時計回りだって書いてあった……のかな?」

 ――何かがおかしい。

 きっとここにいる全員が感じた違和感だった。
 当たり前なことを疑うなんてどうかしてる。そう思って飲み込もうとしても頑固な汚れみたいに頭の中にこびりつく。間違いだって教えるように訴えている。
 
「ねぇ……何か変じゃないかしら。なんだか納得できないのよ。モヤモヤしてるっていうか……」

 一度浮かんできたおかしな感覚は沈みもせずわたしの中にプカプカ漂っている。お母さんもしきりに顎に手を当てたり、天井を仰いだりしながら、唸ってどうにか答えを出そうとしている感じ。
 一人がそうなるともう手がつけられなくなる。
 モヤモヤはたちどころにみんなへ感染して、十秒もしないうちにリビングの中は難しい顔で溢れてしまった。

「やっぱり台風って時計と逆じゃないかな? なんだかそっちの方がしっくり来るっていうか」
「美由希もか? 俺もなんだか昔から台風はそういうもののような気が……」
「えと……ねぇユーノくん、ミッドチルダじゃ台風ってどっち周りなの?」
「えっ? ミッドだと魔力的な要素がよく絡んでくるから特に決まった方向はないな」
「そうなんだ……」

 そっか……魔法のある世界じゃ台風も魔力の影響を受けるんだ。
 記憶の中から今まで見てきた台風の姿を思い浮かべようとするわたしだけど、なんだかどの天気図も台風のところだけ黒く塗りつぶされているみたいで思い出せない。
 何かがおかしい……。
 でもおかしくない。

 おかしくないけどおかしい――。
 
「でもそうしたら今の台風もなにか魔力の影響を受けてるかもしれないね。ジュエルシードだってあるんだしその影響があってもおかしくないし」

 うん、全くもってユーノくんの言う通りだ。
 もしかしたらジュエルシードが台風にくっついたりして渦巻きを反対にしちゃってるとか―― 

「――そっか! そうだよユーノくん!!」
「えっ、なのは!?」

 周りのことなんて気にせずわたしは椅子から勢いよく立ち上がって手を叩いていた。
 いきなり目の前に現れた出口はわたしの頭の中を綺麗に掃除して、隠されていた本当を見つけ出してくれた。

「台風はみんなわたしと同じ左利き! 右利きなんてないんだよ!」

 まるで見えない何かにせき止められていたみたいだった。こんな当たり前なことを何でわたしもみんなも間違って思い込んでいたのか不思議に思える。
 「これがジュエルシードの悪戯だったなら」って思えた瞬間にわたしは不思議な迷宮から脱出できたのだ。

「またジュエルシードか……本当に何でも取り付くんだな。見境なしは嫌われるぞ」
「うわぁ……これじゃ集団催眠みたいだよ。……でもそうするとなのはの出番かぁ」
「魔法って怖いわねぇ……あ、お弁当作った方がいいかしら?」

 わたしに続いてみんなも本当を取り戻す。
 つっかえが取れれば後は目の前の問題と向き合うだけ。口々にいつの間にか襲ってきた不思議へ文句を言っている。

「よーっし! 早速リンディさんに連絡しなきゃ!」
「台風と戦うなんて人類初だな、なのは」
「くれぐれも無理しないようにね」
「ユーノも出動かぁ……なるべく早く済ませて帰ってきてよ」

 みんなの応援でわたしのやる気も全力全開! 心にみなぎる力を感じながらわたしは電話へ駆け出した!

「あっ、夜分遅くにすいません。高町です――」

 アースラへと電話を繋いですぐにリンディさんたちへ事態を知らせる。相手が台風だけにぐずぐずしてはいられない。
 危うく見逃してしまうところだったジュエルシード。前みたいに町を滅茶苦茶にしてしまう前に、 

 わたしたちをまんまと騙したジュエルシードに今度はわたしたちから逆襲だ。

* * *

「それにしても台風が相手なんてとんでもないことになってきたわね……」 
「ジュエルシードに限界ってないのかな」

 モニター一杯に映し出される雲の塊を私たちは呆然と見つめていた。
 これまでにないジュエルシードの侵攻は嘱託魔導師をしている私でも経験したことのない規模のもの。
 震えはしないが、視界を覆う圧倒的な重量感を前に私も気圧されてしまっていた。
 
「これだけ巨大な上にご丁寧に認識阻害までとはな……」

 クロノが唇を噛みながら不機嫌そうに呟いている。睨んだ先には巨大な一つ目が負けじとクロノへ睨みを利かせていた。
 
「相手にとってはいい誤算だったでしょうね。まさか地球出身じゃない人間が町にいたことは」
「僕らは地球の気候なんてほとんど知りませんからね」

 まさかこの台風がジュエルシードの影響受けたものだなんてミッドチルダ生まれの私たちが予想できたら苦労はしなかっただろう。
 この台風の異常を感知できるのは同じ地球生まれの人間だけ。だからジュエルシードは自分を察知されないようになのはたちの記憶を曖昧にした。

「知らないからこそジュエルシードに干渉されるような隙がなかった……皮肉なものね」
「もう少し早くこの世界に馴染んでいたら私たちも同じ目にあってたんですからね」

 エイミィの言うことはもっともだ。
 認識阻害の魔法は割りとポピュラーな部類。私たちの中ではすずかが空を飛んでも見つからないように使っていたり、アースラだってこれだけの質量を外部に一切漏洩することなく隠匿できているんだ。
 けどそんなものとジュエルシードの規模はケタが違う。なのはの住む町の人全員がきっと今回の異変に気づいていないはず。もし誰か一人でも知っていれば、今頃テレビに映っているのは台風速報じゃなくて何か別のオカルト特番だと思う。
 昨日エイミィが見ていたみたいなヘンテコな内容がずっと流れるのは私としては退屈で仕方ないし。それなら歌番組でも見ていたほうが百倍マシだもん。

「でも……なんだか怖いな。みんなが違うことを正しいって思い込むなんて」

 よくよく考えてみれば、テレビに映ってるなら日本中の人の目にあの台風が晒されたわけだ。それを鵜呑みにしたということは、みんな偽りの事実をジュエルシードによって記憶に刻まれていたことになる。下手すれば世界中の人がみんなそうなのかも。
 あんな小さな宝石がここまで多くの人に影響を及ぼすなんてにわかには信じられない。けどなのはが気づかなければ嘘が本当に、本当が嘘になっていたんだ。
 真実って実はすごく脆いものなんだと教えられた気がした。

「誰も気づかなければジュエルシードの思いのままか……」
「それにしても台風なんかになってどうするつもりだったんだろう?」
「この際そんなことどうでもいいわよ。日本中が水浸しになる前に封印行くのが先決よ」
「アリサちゃんの言う通りだね。早いところ対処しないと大変なことになるの目に見えてるし」
 
 コンソールを叩く電子音にモニターにいろんなフィルターが追加されていく。

「おそらくジュエルシードは中心部、なのはちゃんの世界の言葉で台風の目の中にあると思うよ」

 赤くマークされた場所の魔力値は他と比べて段違いの数値を示している。素の映像じゃ白い渦の中心は薄暗い穴だけどあの中に青い輝石が確かに存在しているのだ。
 
「なら上から突っ込んで一気に封印すれば簡単ね」
「そうもいかないのよ……。先発隊からの情報なんだけど、あの目の周りは空間が歪んでて簡単に近づけないのよ」

 ただの結界ならまだしも空間自体が歪んでいてはなのはやアリサの結界破壊も役に立たない。
 だとすると考えられる突入経路が存在しないことになるんじゃ……。

「フェイトちゃん! 考え込む必要はないよ。もう通路の方は確保してあるから」
「えっ!?」
「まぁ、今回はいつも以上にストライカーズの連携が重要になるんだけどね」

 今度は台風の模式図だ。
 まず台風の渦に沿うように緑の大きな矢印が配置される。続けて三つの矢印が軌跡を残しながら台風の側面から徐々に渦に沿って中心部へと入っていく。
 
「作戦としてはこうやって風の流れに沿うようにして内部に潜入。そのまま中心のジュエルシードを封印……こんな感じだね」
「手段としては定石だけど……流石に暴風雨の中を突っ込むって言うのは無茶じゃないかしら?」
「大丈夫ですよ艦長。そのための作戦もちゃんと考えてます」
「あの矢印が三つしかないのも……」
「うん、それもこれから説明するから」

 艦長となのはの疑問もどうやら既に答えが出来ている様子だ。
 すぐにエイミィの操作によって模式図に新たな点や矢印がマーキングされた。

「まずコアがジュエルシードって時点で台風自体が魔法みたいなものだと思うんだよね。だから突入班には常に結界で体を保護する必要が出てくるわけ」
「じゃあ私の魔法が」
「そう、すずかちゃんには残りの二人の防御に徹してもらいたいの。出来たら補助加速も加えて欲しいな」

 なるほど、確かにすずかのプロテクションなら動きながら張れるから悪天候でも十分に行動できる。それに加速の補助が加われば突然の暴風にも負けずに飛べるはずだ。
 
「あとの二人はアタッカー。今回は機動力のあるフェイトちゃんとアリサちゃんが適任」

 これで突入部隊の人選は完了だ。
 そうなるとなのはの役割は一体何なんだろう?
 
「なのはちゃんには台風の外から長距離砲撃でコアを狙って。多分、上手く魔力の渦に乗せれば自然と中心へ届くはずだから」
「でもわたしそんなこと今まで一度も」
「そこはご安心! ユーノくんにガイドさせればきっと最適なコースが見つけられるはずだよ」
「なるほど……だから僕は頭数に入ってないわけか」

 つまり私とアリサがコアに封印を行うと同時に、外からもなのはによる封印を行わせる二段構えか。
 すずかはきっと私たちの補助に手一杯だろうからユーノを連れて行くのは得策になる。フェレットなら余計な負担もかからない。

「よかったな! 久しぶりのフェレット大活躍だ!」
「久しぶりは余計だよ……」

 でもいつも通りクロノにからかわれたユーノの機嫌は斜めみたいだけど……。

「作戦プランは以上……艦長、これで行けますね?」
「ええ、問題はなし。なんとしても上陸する前にジュエルシードを封印するわよ!」

 艦長の声にその場にいる全員が頷いた。後はみんながそれぞれの役割を果たすだけ。簡単なことだ。

「よろしい。それでは……リリカル・ストライカーズ出動!!」

 右手を前へ突き出し艦長が高らかに宣言すれば、

「行くよ、みんな!!」

 私たちは翼広げ魔法の世界へ羽ばたいた。

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