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2007.11/17(Sat)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第十四話 Cpart 


【More・・・】


 海鳴全域を包み込んだ封時結界はなのはちゃんたちとジュエルシードだけを完全に世界から分離させる。

「発動したジュエルシードはみんなただの暴走体! 今のなのはちゃんたちの敵じゃないよ!」

 次々に送られる情報を目まぐるしく処理しながら私はモニター越しのみんなへと呼びかけた。
 のどかな昼下がりの静寂を、突如として破った礼儀知らずは全部で九つ。頼んでもいないのにこれだけの同時発動。脳裏に嫌な光景を連想させてしまう。
 幸いどれも暴走状態止まりで深刻な状況にはないと判明し、胸を撫で下ろすに至ったわけだが……。

「如何せん数が多いのよね」

 既に現場の一つにはクロノ君とアルフが直行している。我がアースラの武装職員も手分けして他に回した。
 今はまだ小康状態だ。これで原生生物なんて取り込んだりして形を得たらそれこそ手のつけられない事態になっていたかもしれない。

『けどエイミィさん! これだけ数が多いと……』

 町を見渡しながらなのはちゃんが顔に困惑を浮かべ尻込みした。
 なのはちゃんの言いたいことは分かる。単純な引き算なら戦力の数が僅かに足りない。ジュエルシード一つに一人割り当てでもクロノ君とアルフを筆頭になのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん――。
 ユーノ君はこの大規模結界の維持で頭数に入れないとすれば最低でも後三人は必要な算段。武装職員を集めても残りはカバーできるか怪しい。

『やっぱり一人一個で封印していくしかないんじゃ』 

 バルディッシュを握り直しながらフェイトちゃんが呟く。
 果たして最善策か……? 一応はジュエルシードが相手だ。L・ジュエルなんて大物を目先に置いている私たちから見れば軽視してしまうのが人の性。
 
「待ってみんな。下手に時間をかけないほうがいいと思う」

 あれだって立派な危険物であることに変わりは無い。PT事件の時はあれのおかげで次元震やらいろいろ起こされているのだ。もしかしたら今の暴走体は私たちの目を欺くための罠って可能性も捨てきれない。
 管制官として最悪の結末を念頭に持ってくるのは定石だ。ならば短時間で一気に決着をつけてしまう方が背負うリスクは遥かに少ない。
 
『相手は雑魚……っていっても何があるか分からないんだから。油断は禁物よ』

 三人の顔を見回しながらアリサちゃんが釘を刺す。
 以前、似たような目にあった先駆者の言葉はよく胸に沁みる。
 
 さぁ、どうするエイミィ・リミエッタ。このまま手を拱いておくわけにも行かないだろう。先を行くクロノ君や職員のことも考えれば一刻も早く行動に移さなければいけない。
 コンソールを操作し各暴走体のデータを参照し直す。まるで狙い澄ましたかのようにどれも平均的に揃えられた魔力値にキナ臭さを感じずにはいられない。
 
『どうしよう……四人がバラバラになっちゃ連携も出来ないし』

 すずかちゃんが眉を寄せる。最もな意見に私も額に手をやり息をつく。
 彼女たちのストライカーズは連携前提の特別部隊だ。誰が欠けてもその力は大きく落ちてしまう。それでもここはやはり相手が雑魚ということで分散作戦を取るべきか。
 悩ましい問題だ。勘繰りすぎて手が出せないってのは最悪のジレンマだけどもしもの可能性に私の一手は動けない。

『エイミィ、それなら一つ試してみたらどうだ』
『クロノ君!?』

 私の頭の中に割り込むようにサブモニターにクロノ君の姿。既に封印は終わったのか背景は空の色で一色だった。

『なにも四人で行動しなくても連携はいくらでも出来る。二人いれば力を合わすことが出来る』

 言われ思わずハッとした。
 よく考えれば何も四人に拘る必要性なんて全く無い。先入観に囚われてすっかりおざなりにされていた。大事なのは端から端へ、じゃなくてその中間点の考え方。
 自ずと導き出されるは突破口を開く光明だ。

「みんな! ここはペアで行動して! 組み合わせはあの時の模擬戦と同じで!」

 即座に飛んだ指示にみんな目を丸くする。が、すぐに凛とした顔つきへと戻っていく。

『わかりましたエイミィさん!』
『でもこれならアタシはすずかと組んだほうがいいんじゃ……』

 確かにアリサちゃんはデバイスのこともあるし普通ならすずかちゃんと組ませるのが妥当だろう。だけどこの組み分けにはちゃんとした私の意図がある。

「今回はジュエルシードの複数発動っていう結構イレギュラーな事態だよね。だから極力一つ一つの固体に時間はかけたくない」

 そのために必要なのは何か?

 それはズバリ圧倒的火力での殲滅だ。

「打撃と砲撃、力押しでカタをつけるのが一つ! そして強力な封印魔法による強制封印が一つ!」

 なのはちゃんとアリサちゃんによる火力により暴走体の破壊による封印。純粋な魔力構成体である相手ならこの単純明快な戦法は決定打となり得る。

 防御や補助魔法に秀でたすずかちゃんと残りの三人の中で最も封印魔法の使い方を心得ているフェイトちゃん。二人による強制封印はジュエルシード相手だろうが関係なく封印できるだろう。

「どう? 模擬戦のことも考えれば息もピッタリのコンビじゃないかな」

 四人で戦えば確かにあっという間に封印は出来るだろう。でも戦力を集中させるには役不足なのは否めない。なによりフェイトちゃんを合わせた四人での実戦は実際まだ一度も無い。
 もしここで何かのトラブルで連携に不協和音が生じればそれだけでタイムロスだ。たたらを踏んでいる暇は無い。
 この組み合わせでの連携は既に一回、前の模擬戦で試したこともある。安定性は抜群だろう。

『うん、わたしアリサちゃんとなら』
『あっという間に終わらせられるわ!』

 私の妙案に俄然やる気になるはなのはちゃんとアリサちゃんのアタッカーコンビ。

『ナイスアイディアですよエイミィさん!』
『うん、私とすずかなら……負けない!』

 模擬戦では見事な連携で勝利を手にしたフェイトちゃんとすずかちゃんのサポートコンビ。

「この前の模擬戦の課題の答え……見つけたりかな?」

 けどこれはあくまでメンバーをこちらで決められるからこそ出来る作戦の一つに他ならない。
 そういう意味では課題の正答とするには今一歩足りないか。
 
「よし! それじゃみんなこれから指示するポイントに急行して! 封印は迅速に、終わり次第次のポイントへ!」

『はい!!』

 四人の唱和は作戦開始の狼煙だ。
 空を翔る四色の光はすぐさま二本ずつに纏まり暴走を続けるジュエルシードの元へ一直線に伸びていった。
 私も全てのジュエルシードの状況を並列させたモニターへ映し出す。二度目の戦闘状態に入ったクロノ君とアルフの他に奮戦する職員たち。皆がそれぞれの想いを胸に戦っていた。

「頼むわよみんな!!」

 気合を飛ばして腕を捲くる。指先は軽快なタップダンスを踊り私の仕事を最大能率へと押し上げていった。
 バラバラの仲間たちには指示を、そして激励を。
 離れていても常に隣にいられるように私がみんなを繋ぐ!
 
 頑張れ! みんな!!

* * *

「えへへ、なんだか不思議な感じかも」
「不思議って?」

 アクセル全開で風を感じながらわたしは自然とそんな言葉をこぼしていた。
 
「だっていつもフェイトちゃんと二人きりだったから」

 わたしが魔法の世界に飛び込む時はいつだってフェイトちゃんが隣にいた。逆に言えばフェイトちゃんしかいなくて、フェイトちゃんが当たり前。そんな感じ。

「ならアタシだって魔法少女してることが不思議そのものよ」

 アリサちゃんは横目にわたしの様子を窺いながら、そっけない返事を残して前に向き直る。

「いつも一緒にいた親友ととことん一緒にいられる偶然……っていうか必然って感じかしら?」
「どうなんだろうね……? でもわたしはそれでいいと思う」
「アタシたちがなのはと一緒に飛べること?」
「うん!」

 巻き込んじゃいけないとか、傷つけちゃいけないとか。そんな独りよがりな責任感で背伸びしてたわたしを叱ってくれる人はフェイトちゃんじゃない。
 アリサちゃんが魔法少女になってくれたから今のわたしがここにいる。見落としてしまっていた大事なものを見つけることが出来たことを偶然なんかにわたしはしたくない。

「やっぱりどんなことだって分け合いたいもん! 楽しいこと悲しいこと、魔法のこと!」
「それ、別の言い方すれば腐れ縁って奴よ」
「そ、そうかも……」

 うう、なんだかそう言われると一気に安っぽいイメージになってる気が……。
 と、とにかくわたしはこうやってみんなで空を飛べることは嬉しくて、楽しいから大好きなんだ。素直に風を感じてみんなと気持ちを分け合えばどんな困難だって絶対乗り越えていける。

「取り合えずしんみりは置いといてさっさと片付けるわよ!」
「――うん!」

 視線の先に広がる森から突然鳥が群れを成して飛び立っていく。息つく暇も無くそびえていた幾つかの木々がゆっくりと傾き轟音を残して倒れていった。
 欠けてしまった森の中。光の爆発が巻き起これば煙の中から何かがわたし達目掛け猛スピードで突っ込んできた。

『Flash move』
『Boost jump』

 もちろん当たるわけがない。わたしの横をむなしくすっ飛んでいく真っ黒な塊に少し同情しながらも、左手のレイジングハートはシューティングモードに変形完了だ。

「じゃあ最初から全力全開で!」

 逆方向へ避けたアリサちゃんに目配せして、

「ぶっ飛ばすわよ!!」

 作戦開始!!

「まずはわたしが先制! 新しい魔法のお披露目で!」
『Divine launcher』

「それよりアタシが先よ!!」
『Splash burst』

 わたしたちにお尻を向けたまま森へと落ちようとする敵に狙い定め、最初に飛び出すはわたしの新魔法だ。
 レイジングハートから放たれるのは細長い形をした光の弾丸。シューターを改良した魔力弾の連続射撃だ。追尾性は無くなったけど小回りとスピードは抜群なんだから!
 

「一気に仕掛けてあげる!!」

 けど当然わたしたちの攻撃は終わりじゃない。
 全弾命中する前に突っ込んでいくアリサちゃんを追い抜きながら桜と茜の光が鮮やかな軌道を描いて駆け抜けていく。
 アリサちゃんもバーサーカーに魔力を漲らせ振りかぶる体勢に入った。

「レイジングハート!」
『All right.Divine buster』

 何をするのかなんて聞く必要ない。そのための準備はもう完了しているから。

「でぇぇぇぇい!!」
『Hammer squash』

 二色の光が敵を包み込み、次から次へと炸裂していく。
 相手が反応する暇も無く、弾幕が止むと同時にアリサちゃんのハンマーが黒い巨体へ襲い掛かった。
 上から一振り、横から一振り。最後に下から天高く相手を打ち上げる。

「どんぴしゃりだよ! アリサちゃん!」

 成すすべなく巨体が宙へと放り上げられれば、予知したみたいに直撃するディバインバスターの光。
 
「まだまだーーっ!」

 逃がさない――そう言わんばかりにアリサちゃんがバーサーカーを持ち替える。
 向けられたのはハンマーの後ろについている二本の爪だ。決して釘抜きをするわけではないはず。

『Straight claw』

 その証拠に爪が茜色に輝いた時、すでにその先端は敵の体にめり込んでいた。
 完璧なタイミングでの追い討ち。ドン、と大きな音がするたび爪はより深く体の奥へと突き刺さっていく。

「行こう!!」

 アリサちゃんなりの拘束に敵は完全に動きを封じられている。わたしは最後の一撃を入れるために空を蹴った。

「さぁ、最後の仕上げと行くわよ!!」
『Yeah!! Finish!!』

 光が爆ぜる。アリサちゃんが爪を覆っていた魔力を爆発させたみたい。
 お手玉のように空中へ三度放り上げられる様はジュエルシードであることを忘れ去れるように呆気無い。
 ここまでは怖すぎるくらいにピッタリすぎる連携だ。わたしとしてはこのまま射撃に最高な位置まで飛べればよかったんだけど……、

「あっ! は、速すぎた!?」

 不幸な偶然かアリサちゃんが吹き飛ばした敵はわたしが飛んでいくはずの軌道に丁度よく重なっていた。
 飛び出すタイミングは早かったせいなのか、それとも飛行速度を上げすぎたのか。

「ど、どうしよう!?」

 このままいけば正面衝突は間違いない。
 かといって急停止すれば体勢が一気に崩れて敵に反撃のチャンスを与えてしまうかもしれない。

『Well…….There is nothing for it』(これは……仕方ありません)
「レイジングハート?」
『It thrust it』(貫きましょう)
「ふぇぇ!?」

 わたしが戸惑いながら考えてるのを他所にレイジングハートの答えはなんというか単純明快。

『Please imagine』
「だ、だったら――!」

 もう急ブレーキしたってぶつかる距離だ。選択の余地が無い問題ならわたしだって覚悟を決める。
 真っ直ぐ前を、どんどん大きくなる真っ黒な塊を見据えて思い浮かべるは闇を貫く光の刃。

 わたしが想像して――レイジングハートが創造する!
 
『Strike flame open』

 キン! と高らかな音が響き渡る。
 宝玉を守っている金色のフレームに光が纏われる。桜色にデコレーションされた二股の先端それぞれから鋭い刃が突き出した。
 土壇場での今までに見たこと無い魔法。アリサちゃんの魔法を真似たように煌く刃は、有無を言わさず正面に待ち受ける敵の体へ見事に突き刺さった。

「うくっ!!」

 経験したことのない手応えに顔をしかめるも、怯むことなく心の中のトリガーを思いっきり引く。

「ディバインバスターーーっ!!」

 瞬間、目の前は桜色一色。
 新しい魔法に串刺しにされ、ほとんど密着状態からの砲撃は反動だけで手が痺れてしまいそうだ。上へ下へ激しく動き回るレイジングハートを押さえ込みながらわたしは有りっ丈の魔力注ぎ込む。
 そして臨界点を超える。あまりの奔流に雲のように目の前にあった敵の体はものすごい勢いで押し流されていく。

「これで最後だよ!!」
 
 錐揉みしながら落下するジュエルシードはもう息も絶え絶え。体を作っていた魔力が黒い欠片となってどんどん剥がれ落ちていく。
 その先には左手に魔力を圧縮させるアリサちゃんがいた。小さな太陽みたいに生まれた光は赤熱して今もアリサちゃんによって力を蓄えている。
 お互い考えることは同じ。ぐるぐる回る敵を追い抜いてわたしはアリサちゃんの隣へ飛んだ。

「ぶっつけでも合わせられるって親友の特権かしら?」
「うん! もちろん!」

 羽を広げるレイジングハートに魔法陣が巻きつき唸りを上げる。
 魔力を収束させながらちらっとアリサちゃんの横顔を伺う。なぜだか目が合ってどちらともなく笑った。

『Don't take the delay』
『You too』

 バーサーカーとレイジングハートもこの上なくご機嫌な様子だ。
 
 落ちてくる相手との距離はほぼゼロへ――。
 迫り来る災いを打ち払うのは、

「完全ゼロ距離! バーサーカー!!」
『Slug shower』

 アリサちゃんの豪雨のような魔力拡散弾と、

「いくよ! レイジングハート!!」
『Divine buster』

 わたしの激流のような魔力砲撃だ!!

「「いっけーーーっ!!」」 

 光の暴風雨を前にジュエルシードは魔力を一方的に削り取られていく。
 体中に叩きつけられる魔力の雨と、傷跡を広げるように浴びせられる魔力の渦。反撃を一切許さない波状攻撃だ。
 黒は白に塗りつぶされる。闇が払われ、最後に残ったものはジュエルシードだけ。それすら光に飲み込まれすぐに見えなくなった。

 やがて砲撃は一筋の線になって消えていく。
 次にわたしの目が捉えたジュエルシードはもう眩い色を失ったただの宝石だった。

「――ふぅ」

 ガシャンとレイジングハートが白い息を吐き出した。
 取り合えずこれでひとまず終わり。エイミィさんの言う通り、二人分の魔力を前に封印魔法を使うことも無くジュエルシードを停止させられたみたいだった。

「ちょろいもんね」

 バーサーカーをブンブン振りながら胸を張るアリサちゃんは誰が見ても誇らしげな顔つきをしている。
 ジュエルシードを回収しながらその視線ははるか遠く。次の現場へ向いているのはわたしも同じ。

『Let's go,buddy.Be quick!』(次だ相棒! ノロノロするなよ!)
『Here we go,master.For afternoon classes』(行きましょう、午後の授業が待っています)
「当然でしょ? 次も一分以内に片付けてあげるわ」
「ここで疲れちゃったらドッチボールも簡単にやられちゃうもんね」

 もうすぐ七月を迎える空には太陽が燦々と輝いている。まだまだ夏の蒸し返すような日差しには遠いけど、季節が巡ってくる予感だけはいつでも感じ取れる。
 きっとわたしとアリサちゃんも同じだ。友達、親友だから、気持ち全部分け合えているからやるべきことを感じ取れる。
 見つめ、頷き、微笑みあってわたしたちは再び空を駆ける。

 もっともっと先へ飛んでいきたい! 飛んでみたくてしょうがない!!

* * *

『Stinger brade』
「ハァッ!!」

 青刃煌き、黒い人型にまずは一閃お見舞いする。刃の軌跡に沿って闇に染まった魔力が噴出し霧散していく。
 悲鳴一つ上げないのはなんだか気味が悪いが時間と競争をしている僕にとってはそれ以上興味を引くようなことでもないのは事実だ。
 暴走体は純粋な魔力で動いていると思っていたがやはり何かしらの情念を受けていたのだろう。僕らが到着する頃には既に影絵を立体化したような人形が山を闊歩していたのだから。

「まったく面倒だねっ!!」

 四肢を魔力殻で覆ったアルフが間髪いれず流れるような打撃を叩き込んでいく。
 拳が振られるたび暴走体はその細い体型もあいまって右へ左へ大きく揺さぶられている。いいサンドバックだ。

「一気に終わらせるぞ! S2U!!」
『Braze cannon』

 稼動状態の魔力装置を強制停止させるというのはストレージデバイスだと手間がかかる。発動前なら簡単に済む作業が嘘のようだ。
 幸い相手は純粋な魔力の塊だ。その起動プロセスに割り込むよりかは魔力砲撃で押し切った方が効率がいい。

「アルフ離れろ!」
「あいよっ!!」

 両手を頭上で組み合わせ、鉄槌のごとく振り下ろす一撃を最後にアルフが脇へと退く。強力な一撃をくらい人型は大地へと頭を打ちつけ沈黙している。
 刹那、相手を飲み込む熱線。巻き上げられる砂塵と木の葉の中で人型はぐにゃりと溶解するようにその形を崩す。
 が、熱線が駆け抜けてしまえば再度、伏した塊は元の形に復元されていく。瞬間的な放出効率を上げたために持続力が無くなったこの魔法の弱みをを突かれた格好だ。

「ちっ……しぶとい」
「なにやってんだい! 止め刺しきれてないじゃないか!!」
「相手がしぶとすぎるんだ! くそっ、こんな時だっていうのに!」

 負け惜しみも良い所だ。やはりさっきと同様の戦法でまかり通るほど世の中甘くはないということか。
 相手が物質で構成されているならブレイクインパルスで木っ端微塵に粉砕も出来るだろう。だが半実体とも言える魔力の塊に対しては焼け石に水でしかない。
 
「だったら噛み千切って無理矢理にでも引きずり出してやるさ!!」
 
 立ち上がろうとする相手を睨みつけ、アルフが旋風を巻き上げながら天高く跳ぶ。日差しを背に狼へと姿を変えれば瞬時に首筋へと牙を突き立てた。
 荒々しく息を吐き野生の勢いそのままに黒き肉を寸断していく。確かに下手な魔法よりも効率は良いかもしれない。
 人型は背中に圧し掛かるアルフの重みに再び地へと崩れ落ちていく。その間にも強靭な顎が首の肉を辺りへ撒き散らしていった。
 
「まったく自前で封印魔法を使うなんてな……いつ以来だか」

 デバイスから封印魔法に関する術式を取り出し頭の中で一息に構築する。インテリジェントなら勝手にやってくれる詠唱も人から見れば尋常ならざる術式量だ。
 これを走らせるには相当な魔力と演算が必須なのは言うまでも無い。

(単身でやるなんて教科書にだって載ってないぞ)

 儀式魔法に近いものを一人でやるなど馬鹿げた話だ。師の耳に入れば呆れられるだけでは済まないだろう。

「さっさとそれ寄越すんだよっ!!」 

 ゴムが引き千切れるような音と共に青い光が天高く放り上げられた。明滅を繰り返す様は未だ機能を停止させていない証。
 
「厄介なんて言ってる場合じゃないか……行くぞ!」
 
 S2Uを引っ提げ飛び立つ。ゆっくりと引力に引かれ始める輝石を眼前に僕は封印魔法を行使させる――

『Divine shooter』
『Blitz action』

 ――わけにも行かなかった。

「なぁっ!?」 

 天上からジュエルシード目掛けて光の雨が降り注いだ。続けざまに旋風が巻き起こり僕を含めた何もかもを綺麗サッパリ吹き飛ばしていった。 
 突然の急襲に封印に神経を集中させていた僕が対応できるはずも無く、軽々宙を舞った後に眼下の茂みへ頭から突っ込んだ。

「捕まえたっ! なのはっ!」
「オッケー! まかせてフェイトちゃん!」

 一体何事だ! 新たな刺客か!?
 水を差され、混乱をきたす僕の耳には聞き覚えのある声が届いてくる。声に混じって何かの衝突音や発砲音、雑音の協奏曲に茂みを貫く光の乱舞。
 耳と目を痛くしながら頭を出せば、

「リリカルマジカル! ジュエルシード封っ印!!」

 なのはが体よくジュエルシードを封印している真っ最中だったりする。
 その封印でさえ十秒もかからず、瞬き一つするころには既に魔力が収束し始めている時だった。

「ふぅ……これで最後かな?」
「アリサたちも上手くやったみたいだしそうじゃないかな」
「二人とも……一体どうしたんだ」

 なんとか体を起こし頭に突き刺さっている小枝を振り落とすと、僕は安堵の表情を浮かべている二人に声をかける。

「あっ、クロノ大丈夫だった?」
 
 僕の姿など気にも留めず日常会話でもするようにこちらを振り向くフェイト。僕は僕で多分あっけらかんとしているのだろうか。

「まぁ……なんとかな。それよりなんでなのはとフェイトが一緒にいるんだ?」

 確かエイミィの指示通りならなのはと一緒にいるのはアリサで、フェイトと一緒にいるのはすずかのはずだったが。
 僕の言葉に一瞬なのはがきょとんとするもすぐに若干の気まずさを含んだ笑顔になる。
 
「そ、そのぉ……途中で落ち合ってもしかしたら他のみんなと組んでもいけるかなぁって思いまして……」

 誤魔化しの敬語に僕はため息をつきたくなるわけだが……、

「エイミィ……状況は?」
『あっ、今ので全部封印完了だよ』
「……そうか」

 僕が二個目を封印しようとしている内になのはたちは残った七つ全てを封印したということらしい……。

 ……。

 それなんてご都合主義?

「よく思いつきのコンビで封印できたな……」
「そうかな? フェイトちゃんとは何度も力を合わせたことあったからあんまり気にならなかったよ」
「そうだね。お互い分かり合えてるから何してもすぐ合わせられたんだと思う」
「ああ……そうなのか」

 元はといえば僕の提案である。それがまさかここまで絶大な成果を上げるなんて誰が予想したか。
 いや、いくらなんでもない。
 
「五分で……四つか?」

 二組おのおのがこの短時間で封印を完了した以外にこの結果を導き出せるものは無いだろう。
 ああでも、なのはとフェイトは以前敵対していた時にも複数のジュエルシードを封印したこともあるのだしあり得なくはない――のか?

「やっぱり適材適所かねー。フェイトもみんなも凄いよほんとに」

 お手上げしながらアルフが感嘆している。普段サポートに徹しているアルフでなくたってお手上げしたい気分だ。
 
「えへへ、ありがとアルフ」

 まぁ目を細めるフェイトを見ていると、そんなことどうでも良くなってくるのでこれ以上は考えないことにした。

「しかし大したものだな。一体どうすればそこまで阿吽を合わせられるのやら……秘密とかあるんじゃないか?」
「別に秘密とかないと思うけど……ただなのはが次どうするかわかるからそれに合わしてるだけかな?」
「うん、わたしもそうだよ。多分アリサちゃんやすずかちゃんも同じ感じだと思う」
「自分のやるべきことを把握してるからこそ出来る技……にしてもな」

 それぞれが役割を担っている部隊なら、予め誰がどんな魔法を行使するかある程度のルールが成り立っているだろう。 
 客観的な視点から導き出せばそのポジションにいる当人が何をするか、そのために自分が合わせる魔法が何かなんて答えは簡単に出せるといえば出せるのかもしれない。
 しかしそれだけでは説明できない引力が彼女たちの間に存在する気がしてならないのもまた一つの事実。

「じゃあうんと……強いて言うなら」
「やっぱり」
 
 言いかけ二人が顔を見合わせる。目線で何を語り合い、しばしの間の後でふい表情を崩した。
 何か面白いことを思いついたように悪戯っぽく口元を緩ませながら四つの瞳が僕を見つめた。
 その口が開く。彼女たちからの返事は、

「「友達だから!!」」

 僕の小難しい方向に煮詰まっていた頭に明快な答えとなって叩き込まれるのであった。

「……なるほど、それならしょうがないか」

 別に理由について深く考え、眉間にしわを寄せる必要など無いということだ。
 すべては彼女たちの心が紡いだ旋律に合わせているだけ。友情という確かな絆が彼女たちに以心伝心の境地を授けているだけのことだ。
 これでは流石の僕も勝てそうも無い。今回に限ってではなくこれからのジュエルシード集めに完敗だ。

「僕の出る幕をすっかり取ってしまうなんてな……バカに出来ないな友達ってのは」
「クロノだってユーノと友達でしょ?」
「馬鹿言え。あんなフェレットと友達なんて考えたこともないよ」
「そうなんだ……喧嘩するほど仲が良いってなのはが言ってたよ」
「なのは、そんな根拠の無いことをフェイトに吹聴しないでくれ……」
「にゃはは、でも嘘じゃないでしょ?」

 そう満面の笑顔で言われてしまえば……確かにユーノに対してそれなりの念はあるわけだが。
 
「か、勘違いするなよ。一応今までのことに敬意を払って友情だけは感じておいてやる。でも君たちみたいには以心伝心したくはないからな」
「きっとユーノくんもそう言うね」
「うぐ……」

 年下に言い負かされるのはエイミィ相手に慣れているものの、予想もしない相手ではなんだか無性に悔しい気分だ。
 フェイトも隣でくすくす笑いを堪えているし、まるで僕はピエロか何かだ。情けないって言ったらありゃしない。

「と、ともかく君たちは午後の授業があるんだろう。早く行かないと遅れるぞ」
「そうだね。じゃあまた後で、クロノ!」
「……ああ」

 この場をいい具合に収める話題が合って安心した。失態を重ねるなんてもう沢山だ。
 
「帰るぞ、アルフ」
「はいはい、まったくクロノももう少し素直になっていいのにねぇ」

 後ろでアルフが何か言ってるが僕はだんまりを決め込むことにする。どうせ僕が何か言うたび泥沼に引きずり込まれるのだ。
 騒がしい午後とはおさらばして自室に引きこもろう。これからの対策でものんびり考えながら昼寝をするのが一番だ。

『あーあ、クロノ君はいつだってこんなはずじゃないことばかりだね』
「エイミィ……君まで」

 どうやら僕のアースラでの今の立場は執務官なんて大層お偉い肩書きを持つ人間だけではいられないようだ。
 その立場だって世間はどうあれ僕的には最悪でしかない。願わくばこの称号をすぐにでも返還したいくらいに。

「はぁ……」

 これからこの世界は暑くなるだろう。せいぜいその暑さに頭がやられて何か変な考えが沸いてしまわないように注意しなくてはいけない。
 沸いたら最後、それこそ僕は彼女たちに良いように弄られるヘタレになりかねないのだから。

「参ったなぁ……」

 ストライカーズの団結力が深まって一つの問題が解決した。そして新たな問題が一つ生まれるのであった。
 ああ……頭は痛いが今回も目を瞑るか。
 フェイトが喜んでいるんだし。

 というわけで、いろいろと問題がありそうだが僕は気にしないことにした。

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