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2007.10/03(Wed)

守り手 23話 


【More・・・】


 時計の針が一つになり太陽は灼熱の光を大地に降り注ぐ。
 ぐんぐん上がる外気温は止まることを知らず、木陰にいても辟易するようなくらいの暑さだ。海鳴公園だけあって、すぐ目の前に海を展望できるので悪くはないのだけど。

「はぁ、すごく暑いね」
「ミッドチルダの夏ってもっと涼しいの?」
「ううん、発掘に行っていた所が寒冷地だったから慣れてないだけ。暑いとことはここよりずっと暑いよ」

 実際、以前行った所はここなんかより比べ物にならないくらいの暑さだった。部族の人が何人も熱中症にやられたこと思い出す。
 そういう意味ではここはまだ快適だ。

「なんだか旅行に行ってみたいね」
「なのははアースラしか知らないもんね」

 あれは艦だから厳密にはミッドチルダじゃないし、考えてみればなのはがミッドに行くことなど今まで一度もない。

「フェイトやアルフ、みんなと一緒に行ってみたいね」
「そしたらアリサちゃんやすずかちゃんも連れて行きたいな」
「そうだね、きっとすごく楽しくなるよ。……でも」

 そうしたら本当のことを話さなきゃいけない。今まで隠していた魔法のこと、フェイトとのこと全部。嫌われるとか、そんなことはないと思うけど正直心配だ。

「大丈夫。二人ともきっと分かってくれるから」

 屈託のない顔でなのはは明るく答えた。それだけで二人のことを信じていることが感じられる。

「問題はユーノくんだよ」
「僕……?」

 そういえば僕も二人は知らないんだった。

(ちょっと待てよ……)

 よく考えたら僕はある意味僕は二人に本当のことを話せないのでは……。
 不可抗力とはいえ温泉に連れて行ってもらったときいろいろと見てしまったわけで。
 特にアリサに洗われている時なんて……いや、止めよう。なに思い出そうとしているんだ。
 多分、僕は無事ですまない気がする。

「念話とかで話は出来るし僕は……ね」
「ユーノくんわかってない」

 なのはが突然すねた。呆れたように僕を見て口を思いっきりへの字にする。

「隣にユーノくんが、本当のユーノくんがいなきゃ駄目だよ」
「あっ……」
「……好きな人だもん。フェレットなんて……やだ」

 真っ赤になってなのはは俯いてしまった。僕に見られないようにか顔を少しそっぽを向けている。

「そうだよね……恋人だもんね」
「……ユーノくんの…………バカ」

 遠く蝉の声が聞こえる。むあっとした熱気。加えて僕らは気恥ずかしさで沸騰しそうだった。
 飛行機が遥か空で低い声で嘶いた。
 一陣の風が涼しさを持って来てくれても僕らの熱を取るには少し足りない。

「朝に教えた秘密……覚えてる?」
「うん……」
「じゃあお昼だしちょうどいいよね」

 ぎこちない手つきでなのはが傍らに置いていたリュックに手をかけた。リュックにはさっきのぬいぐるみがちょこんと顔を出している。

「ごめんね、くーちゃん。ちょっとどいててね」

 くーちゃん、というのはぬいぐるみの名前だろうか。可愛らしくて狐にはぴったりの名前だと思った。
 木の根元にぬいぐるみを座らせて、リュックの中を探るなのは。出てきたのは四角い箱二つに、細長い筒みたいなもの。

「その、あんまり作ったことないから味の保証は出来ないんだけど」
「もしかしてお弁当?」

 無言でなのはが首を動かした。

「この黒い方がユーノくんの」
「ありがと」

 受け取り蓋を開けた。流石に喫茶店の娘だけあって色とりどり鮮やかな食材が箱一杯に詰められていた。
 初めてみるものばかりだったけどなのはの気持ちが込められているのがすごく感じられる。赤、緑、黄色と色使いも絶妙で食欲をそそる。
 そのせいか今頃になって腹の虫がなった。お弁当がいい目覚ましになったみたいだ。

「あはは、飲み物は紅茶だよ」

 なのはが持っていたものは水筒だったらしい。コップを外し、注がれる褐色の液体。

「少し甘くないかもしれないけど、はい」
「大丈夫、ストレートはよく飲んでいたからね」

 受け取って一息で飲み干した。花のような香りが鼻腔をくすぐり、喉から心地よい清涼感が体中に染みていく。

「生き返るよ」
「暑いもんね」

 なのはもそれは同じらしくコップを手に取ると気分がいいくらいにぐいぐいと飲み干した。

「ぁ……ユーノくんと関節キスしちゃった」

 思い出したようになのは舌を出し悪戯っぽく笑った。
 また顔が熱くなった。

「恥ずかしいよ、なのは」
「えへへ~」
「もう食べようよ」
「うん! いただきます」

 二人の昼食が始まる。
 僕はまず黄色い物体に箸をつけた。それなりの弾力で口に入れると程よい甘みが下に広がる。

「なのは、これはなに?」
「それは玉子焼き。……そっかユーノくんあんまりこっちの料理知らないんだよね」
「もしよかったら教えてくれるかな」
「うん、もちろん」

 なのはの世界の料理はミッドチルダと似ているようなものあれば、全然違う、見当もつかないものなどいろんなものがあった。
 特にミートボールは僕のお気に入りになった。

「でもすごいな、なのはは」
「お母さんに教えてもらったから、魔法は出来ても料理はまだまだかな」
「そうかな? なのはならきっとすぐに上達するよ」

 あの短期間であそこまで魔法を使いこなせるんだからきっと料理も本腰になればもっとうまくなれるはず。

「きっと将来は翠屋の二代目だね」
「そ、そうかな……? じゃあこんどお菓子作りにも挑戦してみようかな」

 俄然やる気になったなのはに次にも期待が持てそうで楽しみだ。

「ふぅ、ごちそうさま」
「お粗末さまでした」

 腹八分に丁度収まったなのはのお弁当に満腹感と満足感を感じながら紅茶に口をつけてほっと一息。
 木陰に吹いてくるそよ風に体の力が抜けていく。

「あっ、ユーノくん。ちょっとじっとしてて」
「えっ?」

 急に身を乗り出すなのはに言われたまま身を硬くする。
 なのはが人差し指を差し出す。指はそっと僕の顎をなぞって、

「えへへ、お弁当つけちゃ駄目だよ」

 悪戯っぽく笑うなのはの指にはご飯粒がちょこんとくっついていた。
 なのはそのまま指を咥えてそれを舐め取り今度は頬を染めてはにかんだ。

「もうユーノくんったら。誰かに見られたら笑われちゃうよ」
「そ、そうだね。見られたのがなのはだけでよかったよ」
「ふふ、わたしだけがおっちょこちょいなユーノくんを知ってるんだね」

 目を細め、声を弾ませて感情を露にするなのはに僕も応えるように口元を緩めた。
 大切な人と心から楽しい一時を過ごすことがこんなにも心地良いものだとは知らなかった。

「もっとユーノくんのこと知りたい……もっと、もっともっとなのはだけのユーノくんでいて欲しい」
「僕だってなのはのこと独り占めしたい」

 家族とか、兄弟とかじゃない他人。他人だけど誰よりも、どんな時も一緒にいたいと思える人。そんな人と巡り合えることはもしかしたら幸運なんてものじゃなくて奇跡そのものなのかもしれない。
 これが恋は盲目ってことなのかもしれないけど、やっぱりそうとしか思えないのは惚気なんだろう。
 
「なんだかお母さんとお父さんの気持ちが分かる気がする。お互い大好きだからいつまでもあんな風に仲良くできるんだなって」
「僕らもなれるといいね」
「なるの! ぜったいならなきゃ! 誰にも負けないくらい全力全開で!」

 握った両手を胸の前に僕を見つめ返しながら力の篭った声でなのはが話す。
 なのはらしい言葉だと思った。全力でぶつかることは恋に関しても同じらしくてなのはにとってそう遠くない未来の目標は希望なんかじゃなくて絶対らしい。
 
「あんまり力んでも後が続かないよ。もう少しゆっくりしたって僕は逃げないから」

 熱くなるなのはに僕はそっと頭を撫でた。
 一瞬拗ねたような表情をしたなのはだけど、すぐに目を細めて僕の手の温もりに笑みを浮かべた。

「もう……ずるいよユーノくん」
「はは、可愛いよなのは」
「うにゃあ……」

 こんな言葉だって平気で言えてしまうなんて恋をするってのは不思議なことだと思う。
 ここに流れているのは僕となのはだけの時間なんだ。大げさかもしれないけど僕らの聖域なのかもしれない。

「じゃあお昼も食べたしそろそろ行こっ、ユーノくん」
「そうだね。あんまり長居してても午後は始まらないしね」

 そんなこんなで時計の長針が一周した頃、昼食を終えた僕たちは公園を後にした。
 次はどんな場所へ連れて行ってくれるのだろう。わくわくして楽しみで仕方がない。

* * *

「暑かったでしょ、はいレモネード」
「ありがとうお母さん」
「いただきます」

 カウンターの上に置かれた半透明の飲み物。程よい酸味と甘みが絶妙にマッチし、レモンの香りが清涼感を誘う。灼熱に包まれた街路を歩いてきた僕らにとってこのレモネードは何よりのご馳走だ。

「おかわりあるからね」
「すみません」
「いいのよいいのよ。その分お客様に飲むなり食べてもらうから」

 ……いいのかなそれって。

「そうだ! 二人とも今新作の開発中なんだけど、それ食べてみない?」
「新作ですか?」
「そう! 翠屋夏の赤字覚悟の目玉なのよ」
「お母さん、それはちょっと問題なのでは……」

 目玉商品で赤字覚悟って、確かにすごい売り文句だ。
 隣のなのはも気持ち引き気味だ。

「そうかもしれないんだけど、人の意見も取り入れないといい物は生まれない訳で。だから翠屋の未来の売り上げに貢献すると思って、お願い!」
「そ、それじゃあそれ一つ」
「僕もお願いします」
「はい注文かしこまりました。赤字スペシャル一つ!」

 そこまで言われるともう引き下がれない。僕もなのはも流されるままにその新作の試食をすることになってしまった。
 桃子さんはそれを聞いて目を輝かせ腕まくりまで始めている。なんだかすごい魔力みたいな気合が感じられる。

「じゃあ神速で、すぐに作ってきてあげるからね」
「他にお客さんがいるんだからそんなに急がなくてもいいから、お母さん」
「はいはい、子供は遠慮しないの。そんなに手間もかからないしね」

 そういうなり桃子さんはキッチンへと行ってしまった。
 僕もなのはも思いっきり手玉に取られてていたのは気のせいだろうか。

「あなた~、ちょっと厨房借りるわね」
「えっ? 別に構わんが……って、待てそれは作るな、桃子!」
「いいでしょ、可愛い二人のためなんだから。予算オーバーしたらあなたの小遣いから引くし」
「可愛い二人って……話が見えん! それに俺の小遣いからっ――」

 賑やかな声が聞こえる。桃子さんのものすごいやる気が端々から聞き取れた。
 でも最後の士郎さんの言葉が突然遮られたのは一体何が起こったのか……。
 いやむしろ僕たちは二人なのに桃子さんが一つと言っていたのが気にかかるのだけど。

「…………ねぇ、なのは」
「いつもはあんなのじゃないよ。今日だけだから、多分……」

 即答のなのは。なのは自身も桃子さんの勢いに圧倒されているのだろう。
 桃子さんの意外な一面を見た気がする。いや、むしろあれが本来の桃子さんなのかもしれない。 

「はい、お待ちどうさま!」

 カウンターの向こうが見えなくなった。何事かと思えば桃子さんの新作が置かれただけのこと。

(……これが……?)

 一瞬、山かと思った。
 どんぶりくらいはあろうかというガラスの器に真っ白な大山が鎮座している。もうもうと冷気が立ち昇り山肌には棒状のお菓子が何本も突き刺さっている。
 もちろん色合いを考えてかいろんな果物を添えて見るからに飽きさせない工夫がなされているのも見逃せない。

「お母さん、これなに……?」
「夏限定! 桃子さん全力全開ウルトラスーパースターライトジャンボパフェブレイカーカップルバージョン!!」
「な、長い……」
「略して桃子スペシャル」

 そしてほとんど略ではない。

「飽きないように下にはソーダを入れてみました。飲む時はそのストローでね」
「は、はぁ……」

 器のそこに満たされているこの液体がそうなのだろうか。確かに申し訳程度にアイスの隙間からストローが飛び出していた。
 よく見るとそれは二本あって隣り合うようにある。これだと同時に飲んだら顔が触れ合いそうだ。

「だから一つだったんですか……」
「カップル用を二つも頼んじゃ駄目よ、二人とも。それじゃ私は他の注文あるからこれでね。ゆっくりしていってね」

 桃子さんがまた奥へ消えた。
 後には真っ赤な顔の僕となのは。それに真っ白な赤字スペシャル……もとい桃子さんスペシャル。

「食べようか……ユーノくん」
「そうだね、なのは」

 前にも、ほんとすぐ前にもこんなことがあったような気がするのは多分気のせいではない。
 どうすればいい? 正直ヒュードラなんかよりよっぽどの強敵だ、これ。

「じゃあ、なのはスプーン」
「はい、どうぞ……」

 顔が引きつっている。手が震えている。怖気づいている。
 でも食べなきゃいけない。これはどうみても大赤字覚悟の一品だから。
 
 ――無駄には出来ない。

「いただきます」

 唱和して僕らはこの白い悪魔に戦いを挑んだ。

* * *

「う……ぷ……」

 ――敗北した。

「もう、だめ……」

 ――完敗だ。

 大体僕らの歳でどうにかできるほど甘くはない分量だった。バケツ一杯まではいかない。だけど一食分はある。
 芯まで冷えた体に痺れた舌。味覚なんて食べ始め一分で尻尾を巻いて逃げ出した。

「半分は食べれたかな……?」
「半分にはちょっと足りないね……。大丈夫なのは?」
「うん、ユーノくんは?」
「なんとか……」

 体は大丈夫だけど、どうしようほんとに。
 素直に残すべきだろうか。一応は意見を聞くための試食だし、赤字でも士郎さんのお小遣いから引くから問題ないみたいだし。

「もう二人ともなにやってんだか」
「えっ? あ、アリサちゃん!?」

 いきなりなのはの横から顔が一つ飛び出した。なのはの親友の一人、アリサ・バニングスだった。

「そうよ、アリサよ。で、こんな日曜日になのはは何をしてるのかしら?」
「え、あ……あはは、これはその」
「こんにちわ。えっと、なのはちゃんと……」

 僕の隣にはいつの間にかもう一人の親友である月村すずか。

「あっ、こんにちわ。すずか」
「へっ?」
「ゆ、ユーノくん!!」

 時、既に遅し。

 ああ、なんて馬鹿だ僕は……。

 僕はすずかのことを知っているけど、すずかは僕の本当の姿を知っているわけ――ない!
 案の定、名前を呼ばれたことにすずかは硬直している。

「あの、どこかでお会いしましたか……?」
「き、ききき気のせいです!」
「そ、そそそうだよすずかちゃん!! わ、わた、わたしがね話したの!」
「にしては、よくすずかってわかったわね?」
「そ、それはあれだよ。なのはにしゃし! 写真を見せてもらったりしたから」

 呂律回ってない。

「な、なのはって……」

 今度はアリサが凍りついた。なにかいけないことでも口走ったのか。

「よ、呼び捨てにしてもいいってわたしがね、わたしが言ったの!」
「そうなんだ。だから僕もご好意に甘えて……」

 もう駄目だ。自分でもなに言ってるのか意味不明だ。
 穴があったら入りたい。だけど穴なんてどこにもなくて。

「まぁ、それはいいとして。ユーノって聞こえたんだけど、あなたの名前?」
「あ、うん!」
「…………フェレット?」
「世の中には偶然というものがあって」
「まさかユーノくんと同一人物……じゃなかった。同じ名前もあるんだなぁ、と」

 もう絶妙なコンビネーションの僕となのは。アリサが変なことを考え付く前に話題を終わらせる。
 大丈夫絶対ばれない、ばれるわけがない、むしろばれるかっ!

「ま、そんなことはあるわけないものね」
「そ、そう!」
「でもアタシ初めて会った気がしないんだけど」
「そう言われると私も、そうかも」

 ばれかけてる!? そ、そんなわけない。普通誰も信じない。人間になれるフェレット、じゃなくてフェレットがなれる人間。

(意味同じだよっ!)

 自分に突っ込み暴走する頭を静めようと必死になる。

(な、なのはどうすればいいの!?)
(わたしに聞かないで! ユーノくんこそ何とかしてよ)

 そうだレイジングハートなら――なんにもならない。

「まぁ、別にいいんだけどね。それよりもアタシが気になるのは……」

 アリサがとても厭らしくにやついて僕を見る。その目は悪戯っ子そのもので一体何をされるのか、思わず背中に冷たいものが走った。

「ユーノ……でいいのよね? なのはが呼んでるからそう呼ばせてもらうけど、あんたとなのは、どんな関係?」
「アリサちゃん、いきなりそんなこと聞くのは失礼だよ」
「な~にすずか。あんたも気になってるんでしょ」
「……そうなんだけどね、でも大体見当ついちゃうかなって」

 笑顔で査定しないで欲しい。むしろ止めて欲しい。

「それでもなのはの口から聞かないと。もう、いつの間に男の子なんか連れて歩くようになったの」
「あ、あはは、それは長いというか短いというか……」
「ふ~ん……でもこんなの食べてる所見たら随分進んでるのかなぁって思ったり」

 なぜだろう、アリサってこんな子だったかな。そりゃ、人間と動物じゃ態度も違うと思うけど。
 一つ言えるのはアリサは僕らをからかうのを純粋に楽しんでいることだ。

「ねぇ、なのは。ズバリ! どこまで進んだの?」

 なぜ九歳がこんな質問をするのだろうか。もう少しこういうことに関してはミッドよりも疎いと思ってたのにこれじゃほとんど一緒だ。
 むしろアリサが例外なのかもしれないけど。

「A? B? ……まぁ、Cはないわよね」

 気持ちいいくらいストレートでシンプルな質問だった。こっちでもこういうことはABCなんだ。

「そ、そんなわたしとユーノくんは……ユーノくんは……」

 初めての時を思い出しているのだろう。アイスに埋もれているさくらんぼに負けないくらい、これでもかってくらいに赤くなっている。

「あ…………ごめん、なのは。聞きすぎたわ」

 そんななのはの様子にアリサが先に引き下がった。

「無理に言わなくていいわよ。まさかなのはがそんなになるなんて思ってなくて……」
「ごめんね、なのはちゃん。私からも謝る」

 すずかも一緒になって謝ってもなのはは相変わらず下を向いてもじもじしている。

 と、唐突になのはの口が開いた。

「したよ……キスは」
「え……?」
「好きだから……ユーノくんのこと」

 はっきりとなのはは言った。

「そうなんだ、おめでとうなのはちゃん」

 すずかは落ち着いて僕らを祝福してくれた。
 対してアリサは、

「あ、え? あ……」

 呆然としていた。
 そんなになのはの姿が予想外だったのだろうか。僕もなのはがこんなに大胆に出たことを驚いている。

「ほら、アリサちゃんも」
「う、うん……そのおめでとうなのは。まだ会ったばかりだからこんなこといえる立場じゃないけど、お似合いよ二人とも」

 促されアリサも僕らを祝福してくれた。

「ありがとう……すずかちゃん、アリサちゃん」
「僕からもありがとう」

 どうやら丸く収まったみたいだ。考えればこの三人は親友なのだから当然といえば当然なんだろう。
 突っ走るアリサに、ブレーキのすずか。そして間を取り持つ潤滑油のなのは。よく出来ている。

「なのはが選んだんだからあんまり言及しないけど、大切にしなさいよ」
「もちろん」
「よろしい。…………はぁ、なんか喉渇いちゃったわ」
「じゃあアリサもすずかもこれ一緒に食べない? まだこんなにあるから」

 小腹を埋めるには十分すぎる量のパフェ。四人がかりならきっとやれるはずだ。

「いいの?」
「どの道残しかけてたからね、僕もなのはも」
「じゃあ食べようよアリサちゃん」
「そうね。幸せのお裾分け、貰いましょうか」

 こうして僕ら四人でこの悪魔の退治に向かったわけだけど、

「あ~、ギブ……ギブアップ!」
「私も……これ以上は」
「ユーノくん、後お願い」
「僕も…………だめ」

 結局食べ切れなかったわけで――。

 後日、この桃子さんスペシャルは量から値段から思い切った削減をし、ちょうど二人で食べきれる量のものになったらしいけど果たしてこれを頼もうとする人たちは出てくるのだろうか?
 多分この桃子スペシャルは決してメニューに載らない、僕たちだけが知る裏メニューになることがそう遠くない未来に予感させる。
 僕らしか知らないから僕らしか頼まない本当に特別なスペシャルメニュー。

 だけどもう、頼まないと思うけど……。
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