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2007.10/01(Mon)

守り手 22話 


【More・・・】


「ここが商店街。デパートとかもあるんだけどほとんどの買い物はここで済ませられるんだよ」

 なのはの言うとおり道の両側に様々な店が列を成して並んでいる。肉、魚、野菜などの食材店はもちろん、服やペットショップ、宝石店さえある。

(なんだか懐かしいな……)

 発掘作業の時に利用していた市場を思い出した。遺跡というものは大抵僻地にあるものだから当然大きな商店なんてない。
 僕らにとってそういう時に補給の拠点とするのがこういうたくさんの店が集まった市場なのだ。
 もっともこんな建物でなく、もっと小さいテント張りのお店だったけど。

「そうだ、ユーノくんゲームセンターって行ったことある?」
「学院の時行ってたくらいかな」
「じゃあ行ってみようよ」

 指差す方向に派手な看板を掲げた建物があった。他とは明らかに違う雰囲気をかもし出すそこがなのはの言うゲームセンターなのだろうか。

「そうだね、この世界のゲームがどんなのか興味あるし」
「じゃあ、さっそく」

 なのはに急かされるまま密かな期待と共に僕は自動ドアをくぐる。

「すごい賑やかだね……」

 入って僕らを歓迎したのは種種雑多な電子音の嵐だった。
 あっちで、こっちで、多分何をしているか分かるような音と、全く想像のできない音が入り乱れ、鼓膜を否応なしに揺さぶる。

「想像と結構違ったな」
「じゃあ止めようか」
「ううん、あんまりこういうところは来たことないだけだし、嫌いじゃないから大丈夫」

 僕の行っていた所はどちらといえばこれより正反対の雰囲気で、静かで落ち着いた場所だった。
 そこではカードやテーブルゲームで互いの知力を競い合っていて学院に通っていたころはよく仲間と行っていたものだ。
 もちろんこのゲームセンターみたいに電子ゲーム中心の場所だってある。ただこういう場所は市街地にあるのが常で僕は行かないというよりは行く機会がなかったというほうが語弊がないと思う。

「そうだ、せっかく来たんだしなのはどんなのやってるか見てみたいな」
「ほんと?」

 僕が頷き返すとなのはは考えるそぶりを少しした後、あるゲーム台の一角へ駆けて行った。

「せっかくだからわたしが一番得意なこれで」

 さっ、と硬貨を取り出しゲーム開始。音楽の調子が軽快なものへと変わり画面も一緒に変わる。
 未来都市を思わせるようなビル群を眼下に白を基調とした戦闘機のようなものが下から飛び出してくる。なのはがレバーを動かすたびに右へ左へ動くことからこれがなのはの機体なのだろう。

(シューティングゲームなんだ……)

 スタートして間もなく、上から小さな戦闘機が次々にやってくる。撃ち放たれる弾幕をなのはは軽やかにかわして逆に反撃の一発をお見舞いした。
 レーザー、ミサイル、時にシールドで。縦横無尽に画面内をなのはの戦闘機が飛び回る。

「そろそろボスだよ、ユーノくん」

 声と共に音楽がまた変わった。いよいよを感じさせる重低音が鳴り響き画面の上から今までと比較にならない大きさの戦艦が現れた。
 戦闘開始と共に相手は無数の弾をがむしゃらにばら撒きだす。命中なんて関係ない数の暴力。画面全体を覆い尽くす勢いのそれはもはや拷問というべきか。

 だけどなのははその上を行く。取り乱すこともなく一瞬の間隙を縫っては確実に攻撃を命中させていく。一見、無秩序で危なっかしい軌道を描いてても、僕にはそれが敵の攻撃全てを把握した上での行動だと感じられた。

「いくよ、全力全開! フルパワー!」

 なのはの指が三つのボタンへ一気に叩き込まれる。刹那打ち出される極太の光線。相手は成す術べなく飲み込まれ爆砕した。ステージクリアだ。
 画面が変わり数字の列がせわしなく動き始める。それがハイスコアなのかは見当はつかないけどなのはの表情を見る限り悪いものではなさそうだ。

「すごいねなのは」
「うーん……でもまだまだだよ」

 傍から見れば凄い光景だというのになのはは満足し足りなさそうなことを言った。
 理由はすぐわかった。ハイスコアを記録するランキング。そこに答えがずらりと載っていた。

『T・SUZUKA』

 ああなるほど、と思った。

「どんなに頑張ってもすずかちゃんには敵わないの……」

 確かにランキングの一位から四位まで同じ名前が並んでいてはそうも思ってしまうのは仕方ない。なんとか五位に滑り込んだなのはのスコアだって四位のスコアに一回り足りていない。

「なんだか上には上がいるんだね」
「もっと頑張らないと」
「そうかもね。……そういえばアリサもゲーム得意なの?」
「アリサちゃんは格闘ゲーム専門。あっ、でもカードゲームとかも強いんだよ」

 なんだかアリサが迫り来る敵をどんどんなぎ倒していく様が想像出来る。アリサにはぴったりだ。それとカードが得意なら今度手合わせしたいな。

「それじゃ、ユーノくんやってみる?」
「僕はちょっと……」 

 流石にこの後にやる人はいないだろう。

「そっか……」

 しゅんとするなのは。このままじゃ明らかに悪いので僕も何かしようと辺りを見渡す。
 と、入り口のすぐ横にあったあるゲームに目が留まった。

「なのは、あれしよう」
「あれ?」

 入ってきた時は死角になってて気づかなかったけど、これなら僕もできる。むしろ得意中の得意だ。
 まさかこの世界にも同じものがあるなんて奇跡としか言いようがないけど、千載一隅のチャンスを逃すわけには行かない。

「ユーノくん、これできるの?」
「まかせて、これは誰にも負けない」

 ――クレーンゲーム。
 上から吊り下げられたアームをボタンで上下左右に動かし景品を手に入れる単純なゲームだ。結界魔導士として空間の認識、把握はお手の物だったから自然と上手くなってしまった僕の得意の一つ。
 勇み足で台の前に立ち懐を探る。そしてはたと気づく。

「どうしたの?」

 後ろから負ってきたなのはに僕は無言で腕を差し出す。顔は見ない。あまりに情けなすぎるから。

「なのは……お金……ある?」

 吹き出す音が聞こえた。とんでもなくかっこ悪いな……僕。

「何回するの? わたしお小遣いにはまだまだ余裕があるから大丈夫だよ」
「それはなのはが欲しい物によって変わるな。なのはは何がいい?」
「えっ? えっと……」

 行って中を見始めるなのは。僕が選んだのはぬいぐるみばかりが詰まった台でいろいろな動物の形をしたぬいぐるみが煩雑に放り込まれている。中には頭から突っ込まれて足だけ飛び出しているのや、反対に首だけ出しているシュールなものがあったりする。

「うんと、ユーノくんに任せる」
「いいの?」
「みんな可愛いし、ユーノくんの取りやすそうなのでいいよ」

 そう言われると結構迷ってしまったり。
 あんまり簡単すぎるのでは味気ないし、かといって難しいものを取ろうとして無駄遣いしてしまうのはいただけない。一応なのはのお金でやらせてもらってるわけだし。

(あれは……すぐ取れるし……これはまず取れないだろうし……)

 なのはを待たせるわけにはいかない。散々迷って僕は穴から少し離れたところで寝そべっているぬいぐるみに狙いをつけた。

「楽しみにしててね、なのは」

 硬貨を投入。電飾が艶やかな息を吹き返し、メルヘンチックな音が辺りを賑わせ始める。
 まずは一回目。アームは従順に僕の操作どおりに動き目標の上で止まるとゆっくりと腕を広げた。最初に掴むのは体と同じくらいに大きな尻尾。見るからにふさふさしている。

「あっ、掴んだ」
「そうだね」

 興奮気味のなのはとは対照的に僕は冷静だった。
 尻尾を吊られて逆さづりになるぬいぐるみ。掴んだ所だけにアームが動くと同時に頭が思い切り引きずられていく。だけどアームの力が弱いのか少しの出っ張りに躓いてしまう。
 腹をこちらに向けてぬいぐるみが転がった。

「なのは、もう一回お願い」
「うん今度こそ」

 取れるさ――。
 心の中でなのはに答えて二回目の硬貨が投入される。狙いは同じ、腹を出してふんぞり返っているこいつだ。
 アームが伸びてぬいぐるみを捕らえる。今度は頭。アームに挟まれて顔が変形し、そこから覗く目はものすごく恨めしそうに僕を見つめている。モデルになっている動物が動物だけに祟られそうな気もするけど。
 だけどそんなことでチャンスを手放すほど僕は馬鹿ではない。なのはのために手に入れられるものは全て手に入れてみせる。

「…………」

 なのはは固唾を呑んで成り行きを見守り、ぬいぐるみは頭を持ち上げられて直立した。
 アームが動き始めて頭が引っ張られ、体は傾き、今度は前のめりに勢いよく倒れた。ぬいぐるみの上でない穴の中ヘ向かって。

「はい、なのは」
「わぁ! ありがとうユーノくん!!」

 僕の手からなのはへとぬいぐるみが渡される。さっそくなのははぬいぐるみを胸に抱いてご満悦の様子だ。

「可愛いきつねさんだね」

 頭を撫でながらなのはが嬉しそうに呟く。穴から引っ張り出した時は不機嫌そうだったきつねも可愛い主に出会えて満更でもないように見えた。

「それでよかったか?」
「うん! 一番欲しいって思ってたのがこれだったから!」
「じゃあなによりだね」

 見ているこっちまで口元が緩んでしまうくらいになのはの笑顔は愛らしかった。好きな人が笑ってくれることは多分どんなことより嬉しいこと何だと思う。
 クレーンゲームがこの世界にあったこととうまくぬいぐるみが取れたことに僕は心から感謝した。

 偶然の神様、ありがとう。
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