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2007.09/09(Sun)

守り手 13話 


【More・・・】


「ユーノくーーんっ!!」

『Divine shooter』

 それは無理やり夢から現実に引きずり出されたみたいだった。
 光と、音と、声が僕に再び自由を与えた。
 直撃を受けて吹き飛ぶ触手。それだけで今の出来事全てが幻聴でも幻でもない、正真正銘の事実だと理解できた。
 いるはずのない彼女。それが今僕の隣へ降り立った。

「なのは……なんで」
「クロノくんに呼ばれたの。それで一緒にここまで来たんだけど」
「クロノは?」
「ロボット達の相手をするために……」

 そうか、あいつめ……。

 本当にリンディさんの言う通り考えることだけはよく出来ている。

「じゃあ大丈夫。あいつが、アースラの切り札が傀儡兵くらいでやられる性質じゃないしね」

 時の庭園のことも考えればあんな壊れかけの傀儡の相手くらいクロノなら造作もない。

 問題はやっぱり……。

「ユーノくん、今の一体なんなの?」
「緊急だからあまり詳しくは言えないけど、あの触手だけは気をつけて魔力を吸い取られるから」

 多分なのはが来なかったら魔力を残らず吸い尽くされていただろう。それでもあまり自分の魔力が吸い取られていない。多分張っていた障壁が身代わりになってくれたのだろう。
 どちらにせよあの触手にだけは触れちゃいけない。
 なのはの砲撃で先を吹き飛ばされた触手が逃げるように退いていく。目で追う先、そこには唐突に何もない空間から触手が飛び出している異様な光景があった。

「なのはさん! あの触手の付け根に攻撃を」
「あっ、はい!」

 リンディさんの指示になのはがレイジングハートを構える。

「いくよ!」

『All right my master』

「ディバインバスターーッ!!」

 レイジングハートが閃光を放つ。
 迫る光を避けることもできず触手はディバインバスターに焼き尽くされていく。もちろん触手が飛び出していた空間ごとだ。
 光が弾け盛大に爆発。砂塵が舞い上がり目の前を覆い隠す。

『High power terget……confirmation.Terget change』

 またこの声!
 ターゲット変更ってまさか!?

「なのは!!」

 慌てて僕はなのはの前に飛び出し両手に障壁を展開する。
 嫌な予感は当たった。間髪いれず砂煙を突き破っていくつもの触手が障壁へ突き刺さる。

「なのは!」
「うん!」

 背後から次々に魔力球が僕を抜き去り触手を残らず蹴散らしていく。

「光の鉄鎖よ! かの者を封印せん!」

 続けて放たれる拘束魔法。魔法陣から飛び出し煙の向こうにいるであろう敵目掛け伸びていく。
 すぐに大きな手ごたえが来た。鎖が軋み相手の動きを封じたこと、そして正確な居場所を知らせる。
 敵は真正面――かなり大きい。

「後はお願い!」
「まかせて! ユーノくん!」

 再びの閃光。なのはの得意とする砲撃魔法。今度はこっちの番だ。
 弾けるような音と同時に爆風、輝きが生まれ目と耳の役目を奪い取る。あまりの反動に光の鎖は悲鳴を上げ千切れ飛んだ。
 日々の鍛錬の成果か久しぶりに見たなのはの魔法は洒落にならないくらいの威力を見せた。

「やった……?」
「異常な魔力は感じられないけど……油断は出来ないわね」
「でもディバインバスターは当たったはずだよ」

 なのはの言葉が確かなら相手はもう襲う力は残っていないだろう。鎖の手ごたえから相手はかなり大きいはず。だけどあんなものをまともに食らって動けるわけがない。
 それなりに力をつけた僕の魔法でも今の一撃を受け止めきれるかは微妙なところだ。

 やがて舞い上がっていた全てのものが視界から消え去る。
 きっとそこには相変わらずの殺風景な風景が広がっているはず――

「っ!?」

 なんてことはなかった。幻覚でも見ているのかと自分の頭を疑った。
 それはおとぎ話にでも出てくるような獣、いや竜なのか。大樹の根のように足に当たるであろう部分は無数のコードやパイプで覆われて足の存在を完全に否定していた。
 根に支えられた漆黒の体躯はそのあちこちにパイプやコードやいろんなものが突き出し繋がれている。
 左腕は何があったか切り落としたかのように無くなって、たた無骨な右腕が生えその肩にはいくつものピストンが生え揃い今この瞬間も忙しく動き続けている。
 
「これ……な……に?」
 
 なのはが絶句していた。もちろん僕も、リンディさんも。
 隆起した胸に怪しく光る宝玉は赤黒く、首から上は機械で埋め尽くされていた。不気味としか思えないその非対称な顔がゆっくりと僕らを見下ろした。

「これが違法材料……? そんなものじゃ、ないじゃない……」

 心なしかリンディさんの声が震えていた。

「生物にこんなことをしてまで動力炉にするなんて何を考えてるの……プレシア・テスタロッサは」

 右目は赤く明滅し、左目はいくつもの金色の眼がめちゃくちゃに取り付けられている。どちらも冷たい、本当に冷たい無機質の瞳だ。
 機械に覆い隠された下にあった本来の顔はどんなものだったのだろうか。これが本当に彼女が研究していた物なのだろうか。

 次元航行炉――ヒュードラなのだろうか。

『Mode change diver accelerate…………』

 瞬間、魔力が弾けた。
 継ぎ接ぎの竜が己の存在を誇示するかのように翼を広げた。その翼さえ彼のものではない光で形作られた仮初。
 輝きはためく翼に吹き荒れる旋風、そして膨大な魔力。果たしてこれを見ている人がいたなら、それをただの魔力だと誰が思えただろうか。

 爆発だった。むしろそれすら超越した、なにか。

「こ、このっ!!」
「レ、レイジングハート!!」

『Protection full power』

 考えることは同じだった。守るために僕となのはが取った行動は同じ。桜と緑、二つの光が僕らを包みこんだ。
 だけど持つのか? 相手との力の差が大きすぎて強度が絶対的に足りなさ過ぎる。圧壊するのはは火を見るより明らかだ。
  
 もっと強力な結界、いや受けるのではなく受け流すような空間そのものを歪めてしまうような結界ならあるいは――。

(っ! 出来ないものねだりしてどうにもならないだろ!)

 やれることは魔力全てを使い果たしでてもここにいる二人を守ること。それしかない。
 地表を剥ぎ飛ばす奔流は止まることを知らない。僕らも巻き込まれれば結界ごと容易く粉砕されるのだろう。

「虚空を拓くは我が波動……蒼穹別つは祈念の閃裂……」
「リンディさん?」
「今の私には何も出来ない。だけど教えるくらいはできるから」

 突然僕の前に飛び出したリンディさんが振り向く、その顔には微笑み。

「若い二人ばかりいい格好はさせるわけにはいかないもの」
「で、でも……」
「これから私が教えるのは空間を湾曲させる結界魔法。それも初級を通り越した中級レベルの」
「それを僕に……?」
「ええ、封時結界を使いこなすあなたならできる。術式ぐらいなら頭の中に送ることが出来るから」

 確かに封時結界は特定空間の位相をずらし隔離する。その点では結界の中でもそれなりの高度な部類に入る。
 それでもこんな状況で一度も学んだことのない術式の魔法を唱えるなんて……。

「無茶もいい所? そうよね、だけど私はあなたの力を信じているわ」

 僕の言葉をリンディさんが先回りに言った。
 同時に流れ込んでくる未知の術式。いや、これは……。

「言ったでしょ? 封時結界もこの系統に属するいわば兄弟のようなものなの」

 これなら組み上げられる。そしてやれる……?

「やるのよ、時間はないわ」

 消し炭になりたくなかったら。そして守ってあげなさい。

 リンディさんの意思が僕の中に流れ込んでくる。嘘も偽りもない信頼の感情と共に。
 なのはは僕達のやり取りを気にしながらも今も結界に魔力を注ぎ込んでいる。
 ああそうだ、思い出した。こんな彼女を守りたいから僕も毎日修練していたことを。

 やるべきことは唯一つ。

「守るよ……なのは」
「えっ……?」

 今まで広げていた両腕をゆっくりと交差させる。

「虚空を開くは我が波動」

 心の中で神速に組みあがる新たな魔法。

「蒼穹別つは祈念の閃裂」

 たった一度のチャンス。

「透なる晶」

 両腕を再び開く。

 そして解き放つ――!

「ここに結ばん!!」

 魔法陣がいっそう大きく、輝きを放った。
 襲い来る災いから全てから心から守りたいと思える人を守るために。

「ディストーションレイヴ!!」

 瞬間、僕らの世界は光に塗りつぶされた――。
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