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2007.09/09(Sun)

守り手 12話 


【More・・・】


「つまりそっちの方の湾曲空間が安定したと同時にこちらの湾曲係数が跳ね上がったというわけね」
『はい、それと安定した空間は転移方陣のそれと極めて似た状態になっています』
「転移方陣と……一種のゲートみたいなものかしら。ところでそこに向かった二人は?」
『クロノ君とフェイトちゃんは無事です。可能なら今すぐ救援に向かわせますが……』
「……そうね、もしものことを考えてクロノをお願いできる? フェイトさんは念のためさっきの空間で待機」

 外では大変なことが起こっていることは明白だった。だけどそれを感じさせないのはここが恐ろしく静かだからなのだろうか。
 もちろん二人が冷静に事の成り行きを見定めていることも起因していると思うんだけど。

「次元震に備えていつでもディストーションシールドを展開できるように。それと安全圏までアースラも退避よ」
『わかり……した。二……とも気をつけ……さい。あ、あれ?」
「どうしたのエイミィ?」
『予想……上に、湾曲が酷く……みたいで……』

 中空に浮かび上がる映像が雑音とともに酷くぶれる。多分通信が繋がったこと自体幸運なことなんだ。きっと僕が結界を展開して空間をある程度安定させてるから。

『とにか…………けて……ふた…………』

 もはや意味を失った声が断続的に聞こえ、映像が激しく乱れ、ついには消える。

「……転移魔法、使わない方がいいわね」

 途切れた通信を前に誰に言うともなくリンディさんが呟いた。
 通信でこの有様なのだ。もし人なんか転送すれば目的の座標にたどり着くことはおろか、下手をすれば空間の歪みに巻き込まれどこに飛ばされるかわかったものではない。
 結果的にはエイミィさんが僕たちを救ってくれたのだ。けど今はその偶然に感謝する余裕はない。
結界はまだ十二分に張り続けられても、残された時間はあまりないだろう。
 転移方陣が使えない今、考えられる手段は自分の足でここから脱出することだけ。
 危険が伴うのは承知の上で、だ。

「……覚悟、決められる?」

 無言で頷く。
 同時に、これからのことを頭の中でシミュレーションしてみる。
 結界を解除と同時に飛行魔法を全速力。もちろん横たわっている傀儡兵だって動き出すだろう。それら追撃をかわしながらこの地下施設から脱出するのだ。なのはやフェイトほど飛行魔法に長けてない僕にとってはなかなかの難題だ。
 だからって時間は待ってくれない。嫌でも覚悟は決めなければいけない。

「じゃあ行きます――」

 心の中に沸き出してくる不安を言葉で押し止めた。
 魔力を足に込め目指す出口を見据える。
 
 距離はある――けど真っ直ぐ飛べば三十秒とかからないだろう。服の袖にしがみついたリンディさんに目配せして僕は結界への魔力を絶つ。
 すぐにその時は来る。風景が一瞬揺らぎ空間が修復されていく。
 それがスタートの合図。僕は両足をばねみたいに跳ね上げ、出口目掛け一気に飛び出した。
 目には加速する景色。体には圧し掛かる風。見る間に出口は大きくなり次に瞬きをする時にはもう僕はこの空間から脱出することが出来るはずだ。
 不安要素は追って来ても、待ち伏せてもいない。代わりに正面から何か赤く光るものが迫ってくるだけだけど、

 ――って、まずい!!

「シールドっ!!」

 慣性で前へ吹き飛びそうになるのを精一杯こらえ間一髪、障壁が何かを受け止めた。

「だ、大丈夫ですかリンディさん」
「な、なんとか……」

 よかった。リンディさんは無事みたいだ。
 一体何が来た? 僕がそう考える暇もなくリンディさんが叫ぶ。

「後ろっ!」

 反射的に空いていた左腕を魔法障壁と共にその方向へ突き出した。
 直後、ものすごい衝撃が腕を駆け抜けた。腕が押し込められる。しかも両方から。支える肩は嫌でも悲鳴を上げた。
 横目に映るのは激しく明滅する障壁とそれに張り付く赤い何か。

「な、なんだこれ……」

 障壁越しに見えるそれは宝石のような赤い結晶を先端にぶら下げて壁を突き破ろうと身を躍らせる触手だった。黒一色の体が蛇のように不気味にくねりじりじりと障壁へと頭を押し込んでいく。

「障壁が――! ユーノ君っ!」
「わかってます!」
 
 めり込んでいく結晶に障壁が悲鳴を上げる。
 幾重にも亀裂が走り、もう持たない事実を嫌でも叩きつけてくる。
 
「くぅ! こん、のぉ!」
 
 この状態じゃ広範囲結界に切り替えることはおろか動くことすらままならない。無機質の触手を破壊する手立ては僕にはないのだから。
 一瞬でいい。僅かな隙さえあればその隙に相手を拘束魔法で捕縛することはできるだろうに。

『……Target ……lock…………power absobe』

 切羽詰る頭に今度は聞き覚えのない声が頭の中を駆け抜けていった。
 それは明らかに人を超越した者のもの。

「これは……誰? いえ、デバイス!?」

 声はリンディさんにも聞こえたらしい。しきりに辺りを見渡しその主を探している。
 念話のように心へ直接響く声。それに呼応するように突然腕の圧迫感が消えた。
 決壊寸前。瀬戸際で触手が攻撃を止めたのだ。

「攻撃が! なら、今のうちにぃっ!?」

 体勢を立て直さないと。
 思考と同時に動く体――そうなるはずだった。

 だけど――

「ユーノ君!?」

 異変が僕を襲った。

「あぁ……がっ……?」

 なんだ? これ……。

 体が動かない。磔にされたみたいだ。
 続けて何かが流れ出す感覚。体の奥から温かいものが腕の方へ引き寄せられる。
 流れは手へ、そして指先から外へ出て行くように感じた。

「魔力の流動!? まさか!!」

 リンディさんが何かを言っている。
 それが聞こえない。五感薄れていく。目の前が霞んでくる。
 そうか、これが職員達がされたことなのか。
 魔力を吸収した犯人。今僕の両側にいるこの触手がみんなの魔力を吸い出していたんだ。
 だからなんだって言うんだ。もう僕に抵抗する力はないも同然なのに。

(……まずい、意識が)

 始めてこの世界に来て、暴走するジュエルシードを封印しようとした時みたいだ。

 結局失敗して、それでその後――

(なのはが僕を)

 始まりを作ってくれた女の子。

(今度こそ駄目かも……)

 つくづく情けない。こんな時にまでなのはのこと考えているなんて。
 今は自分のことに集中しないと……。

 否応無しに意識が刈り取られていく。もう頭がぼぅっとして何も考えられなかった。
 真っ白に霞み、景色が揺らぎ消えていく寸前、見覚えのある光が見えた気がした。

 桜色に輝く光――紛れもないあの子の光。
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