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2007.07/04(Wed)

魔法少女リリカルなのはSTEP 第三話 Bpart 


【More・・・】


 これは例えばの話。
 大好きな友達――親友が突然遠くに行っちゃうことになったらアタシは笑ってその子を送ってあげられるだろうか。

 多分……自信ない。
 きっと怒って、泣いて……。仕方がないことなのに、その子自身の問題だから当然なのに。
 
 アタシに何か出来ることないの?
 
 言うなれば無力。何も出来ないからアタシは見送ることしか出来ない。

「どこ行っちゃったのよ……」

 昼休みの喧騒に包まれた廊下と踊り場の境。後ろから前から、アタシと同じ学年の子達がひっきりなしに行ったりきたり。
 階段を見れば屋上へ行くのかお弁当片手に楽しそうにお喋りをする子たちがちょうど見えた。もしかしたらいつもの場所とられちゃうかな……。今日はいい天気だから人も多いだろうし。

「ほんとにどこ行ってんのよ……」

 どうしようもない不安。なのはが見つからないことが胸の中のそいつを調子に乗らせてる。 
 トイレとか、大方そんなとこに決まってる。だから今頃なのははすずかと一緒にアタシが教室から飛び出していったことに目を丸くしてる。

 でもそうじゃないって、なぜだかアタシにはわかっていた。

「……なのは、出てきなさいよ。……出てきなさいよ」

 月曜日から今日まで、アタシはなのはの調子がどんどん崩れていくことに当然ながら気づいていた。
 なのはも気づかれまいと元気な振りしてたけどアタシにとっては焼け石に水だ。
 実際クラスの他の子達だって気づいているだろう。隠し切れない本当のなのはがそこかしこに出ていたんだから。

「アリサちゃん!」
「すずか……」

 聞きなれた声に振り向くとすずかがいた。ずっとアタシの後を追っていたのだろうか。

「あんたまで追いかけてこなくていいのに……お昼、食べられなくなるわよ」
「でもアリサちゃん放っておけないよ」
「……まぁ一人で食べても面白くないわよね」

 流石に屋上に一人ぼっちというのは辛いものがあるか。突っ走りすぎ……ちょっと反省。

「なのはちゃんどこに行っちゃったんだろう……」
「知らない! トイレにでも行ってんじゃないの?」

 息を切らせてそんなこと言ってる自分は馬鹿みたいだ。自分でそう考えているならすずかと屋上で待ってれば良かったのに。
 フラって消えたのだって何か理由があったから。だからこうやって探す必要もない。

「きっともうなのはちゃん屋上に行ってるよ。だから私たちも行こう」
「……ええ」

 そうよ、いるに決まってるわ。
 きっとアタシたちを驚かせようと先に出て行っただけ。屋上に行けばいつも通りなのはがいて、待ちくたびれながらお弁当を前にお預けを食らっているのだ。

「でもお互い教室戻らないとね」

 慌てて飛び出し来たせいでお弁当持ってくるの忘れてた。すずかも同じみたいで自分の手元を見て照れ笑いを浮かべた。

「なんだかなのはちゃんすごく待たせちゃうね」
「いいのよ、アタシたちを無駄に走らせた罰なんだから」

 そう、待ちくたびれてお腹空かせてればいいのよ。

 だけどその日、アタシはなのはと一緒に屋上でお弁当を食べることはなかった……。

* * *

「今日も……いい天気だね」
「…………そうね」

 晴れ渡った四月の空。空色に浮かぶ飛行機雲を目で追いながら私はアリサちゃんの様子を横目に窺っていた。

「えと……こ、こんな日はお弁当日和だよね」
「…………昨日もそうだったわね」

 ああ……これじゃあ気まずくしてるだけだよ。……私のバカ。
 周りはみんな楽しそうなお喋りをしているのにこのベンチだけものすごく静か。静かというか暗い。
 切り取ってしまったみたいにここだけポッカリ穴が開いてるみたい。

「その……大丈夫だよ。きっともうすぐなのはちゃん来るよ」

 根拠のない気休めの言葉。時計はもう昼休みが終わりに近づいていることを教えてくれているのに。

「来ないわよ……どうせ教室で夢の中でしょ」

 箸を置くアリサちゃんのお弁当はほとんど手付かずだった。卵そぼろの乗ったご飯がちょっとだけ減っているだけ。

「……午後、持たないわよ。あんた体育のときは別人みたいに動くんだから」
「だ、大丈夫。ドッチボールはそんなにスタミナ使わないから」

 うん、うまく立ち回ればなんとかなると思う。いつもみたいに他の人を庇ってシュートできるかは微妙だけど。
 でもそれよりファリンに心配させちゃうな、これじゃ。
 手元のお弁当箱はまだ半分以上おかずがぎっしりと詰まっていた。私も心の中のモヤモヤのせいで箸が進まない。

「昨日はびっくりしたね」

 あの後なのはちゃんは屋上に来なかった。どこにいたかといえば私たちの教室の他にない。なのはちゃんは自分の席に突っ伏して寝息を立てていたのだ。
 私自身、そんななのはちゃんは初めて見るものだった。

 ……ううん、初めて見るというならこの一週間ずっとそう。

「アタシたちが起こさなかったら、きっと授業中まで寝てたわ、絶対」
「私もそれは否定しない」

 あれはお昼寝なんてものじゃない。熟睡とか爆睡のレベル。四時間目にマラソンでもしてクタクタになった男子が五時間目によくしてしまうそれ。
 だけど今日の四時間目は国語。確かに違う意味で眠たくなるかもしれないけどそれが午後まで伝染するはずがない。

「月曜日はまだ元気だった……火曜日にいきなり元気なくなった」

 そして授業中に何度もウトウトしていたなのはちゃん。

「でも水曜日までは多少目をつぶれば……なのはよ」

 朝も、お昼も、一緒に帰る時だってなのはちゃんはいつも通り私たちと一緒にいろんな話をして笑ってくれた。
 いつものなのちゃんであることに変わりはなかった。

「それが木曜日……屋上に来なかった……どっか行ってて、いつの間にか教室で寝てて」

 夜更かしとかそういうものじゃないのはきっとアリサちゃんもわかってる。

「今日は……」
「来る! 絶対来るに決まってるわ!」

 言い聞かせるみたいにアリサちゃんが頭を振った。

「変よ……あんなのなのはじゃない。あんな……あんな元気のないなのはなんて!」
「何かあったのかな……」
「悩んでるとか……もうそんな感じの話じゃないわ!」

 家族の人と喧嘩したとかいろんなことが頭をよぎる。でもそれがなのはちゃんをあそこまで疲れさせることになるのだろうか。

「なのはの家って剣術やってたわよね」
「うん……でもなのはちゃんが急にそんなの始めるなんて」
「そうよ、運動オンチで頭脳労働のほうがずっと得意な子なのよ」

 あれは激しい運動を繰り返さない限り絶対にならない。それも無理するくらいに。

「まだ一年前みたいにボーっとしてた方がずっと可愛いわ。今のなのは……抜け殻みたい。変に無理してボロボロで……」

 スカートを握り締めながらアリサちゃんが言葉を紡いだ。

「ねぇ……すずか」
「なに?」
「アタシ……もう待てない」
「えっ……」

 その言葉だけはとても小さくて、屋上の笑い声に掻き消えてしまいそうだったけど、私にだけははっきりと聞こえた。
 俯いていた顔を上げながらアリサちゃんは再び口を開く。

「アタシあの時みたいに怒って待とうなんて……もう思えない」

 それはあの日、何も出来ない私たちが唯一出来ることだとそれぞれに考えた約束だ。
 拳を握るアリサちゃん。震え、どうしようもない自分を抑えようとしている。

「ねぇすずか、あの後のしたお茶会の時……なのはが言ったこと覚えてる?」
「…………うん」

 頷く。それはお茶会でアリサちゃんに言葉へのなのはちゃんの答えだ。
 アリサちゃんが怒っていたのは力になれないことへの苛立ちだった。
 でも本当はそれよりもなのはちゃんが悩んで考え込んで、そのままどこかへ行ってしまうのではないかっていう不安だった。

「なのによ……そんなこと言って遠くに行ってる! アタシたちのことなんて全然眼中にないって感じで!」
「でもなのはちゃんだって……」
「わかってるわよ!! でも昨日の今日なのよ……さよならして、また明日って言って……」

 私だってきっとアリサちゃんと気持ちは同じだ。まるで別人のようになのはちゃんは変わっていた。
 誰だってあんなに笑っていたなのはちゃんが急に、そんな風になれば気にしないわけがない。私だってそうなのだから。

「私たちに話せないことなのかもしれないよ……」
「どんなことでもアタシたちには相談する価値もないってわけ……? 一緒に悩んであげられるような資格がないってこと?」
「そうじゃない……と思う」
「あんな無理してる姿なんて見ているこっちが迷惑よ!」
「……アリサちゃん」

 予鈴が鳴った。賑やかな雰囲気が一転して慌しさを帯び始める。
 周りのみんなはそれぞれに身支度し屋上から出て行く。私たちも戻らないと五時間目に間に合わなくなってしまう。体育なんだし着替えのこともある。

「勝手に悩んで、学校休んで……でもあの時はちゃんと戻って来てくれた」

 私も覚えてる。
 いろいろ悩んで、でも最後は吹っ切れたみたいでなのはちゃんは私たちに言ってくれた。

 ――友達だもん、どこにも行かないよ。

 それがあのお茶会でなのはちゃんがくれた答え。
 だけどアリサちゃんの心の中にはその言葉さえ揺らいでしまうくらいの不安があるんだと思う。

「本音言っちゃうとね……昨日なのはあのまま戻ってこないんじゃないかって思ってた」
「そう……なんだ」
「なのはの目、合うたびにどんどんアタシたちを、周りを見なくなってる気がする。一瞬じゃないのよ、一日中そんな目をしてて」

 放っておいたらほんとにいなくなっちゃう。そう言いたいんだと思う。でも言ってしまうと本当にそうなってしまう気がして、言えない。
 多分、アリサちゃんはそう思ってる。なんとなくだけどその気持ちは私にもあるから。

「……どうせ力になれないなんて諦めたくないのよ。都合よく言い訳つけて、ただ怒って待つなんてできそうもない、あんな姿見せられたら」

 決意に満ちた声。真っ直ぐ前を見たアリサちゃんの顔は怒っているように見えた。

「そっか……じゃあ私止めない」
「……え?」

 アリサちゃんの気持ちは私も一緒。
 だって親友を心配しない友達がどこにいるだろう。それに、こうなったアリサちゃんは止められないんだから。

「だってなのはちゃんが好きなのはアリサちゃんだけじゃないもん」
「別に……アタシは自分が許せないだけよ。物事には何事も限度があるの。それにあんななのはじゃアタシたちの元気が吸い取られちゃうんだから。一種の正当防衛よ」

 ぷいっ、とそっぽを向いて私から顔を見せないようにするアリサちゃん。

「ほんと……意地っ張り」
「…………ふん、だ」

 きっと顔、真っ赤なんだろうな。

* * *

 いつまでこんなことするんだろう……。

 アリサちゃんとすずかちゃんには本当に悪いことしてる。
 そういえば五時間目体育だったんだ……大丈夫かな。
 なんだかすごく眠いや……。

「ありがと、ユーノくん……」

 柔らかな翠の光が収まるころにはぐらぐらしていた体もちょっとは楽にはなった感じ。
 昨日、今日と、連続で昼休みのジュエルシードの封印は辛いを通り越してなんだか嫌だ。

「お礼を言われるほどのことじゃないよ。少しでもなのはを元気にしたいだけだから」
「もっと手際よく出来ればこんなに魔法を使うこともなかったよね」

 なんだかここ数日、どうも調子がおかしい。なんとなくいつもみたいに魔法が使えない。
 ユーノくんが言うには過度の疲労で魔力を溜める力が弱まっているらしい。だから仕方のないことだって。
 でもおちおち休んでいられない。放課後にはまだ発動していないジュエルシードを封印しなきゃいけないんだから。

「二つだよね……あと見つかったのって」
「うん。けど微弱な反応だから多分今日ぐらいは大丈夫だよ。だから今日は休んで」
「駄目だよ封印しないと! 発動しちゃってからじゃ遅いんだから!」

 わかっていたのに見過ごして、それで大変なことになってしまうのはもう絶対させない。
 このくらいで弱音吐いてる暇なんてない。
 頑張らなくちゃいけない。ここが踏ん張りどころ!

「けど、あれくらいの小ささなら僕やアースラの人たちでも封印できるよ。何も全部なのはが封印する必要なんて」
「あるっ!」

 ユーノくんの言葉を聞きたくなかった。きっとその言葉を聞いたら甘えてしまう。

「全部わたしが悪いんだから……だからやらなきゃ」
「そんな……あれは不可抗力みたいなものだよ。なのはは悪くない」
「悪くなくてもわたしの町だもん。守らなくちゃ」

 わたしがやらなきゃみんなに迷惑がかかるんだ。
 これでわたしが休んで、ユーノくんやアースラの職員さんたちが代わりにジュエルシードを封印しに行って。その時に危ない目にあってもわたしはすぐに飛んでいけない。そのせいで誰かが怪我したりしたら取り返しがつかない。
 それにもし封印しなかったジュエルシードがまた暴走して、町中が大騒ぎになったら……やっぱりいけない。

「だからってそれが無理していいって理由にはならないよ」
「じゃあユーノくんはほかにいい方法があるの?」

 わたしの言葉にユーノくんは答えが出てこないのか少しの間の後、視線を逸らした。
 一番いい方法はわたしが封印し続けること。

 ――それしかないんだ。

「ないけど……でもこのままじゃなのはが」
「大丈夫。ユーノくんの魔法のおかげでだいぶ楽になってるし、それに自分の体は自分が良く知ってるよ」

 どうしても駄目な時はユーノくんたちにお願いするって決めてる。だけどまだその時じゃない。 
 それにその内、一日くらい何もない日だってあると思うし。その時一気に休めれば問題なんてない。
 そうすればまだまだ頑張れる。

「じゃあもう五時間目始まっちゃうし、わたし行くね」
「あっ、なのは!」
「じゃあ放課後いつもの場所で!」

 駆け出し、茂みから飛び出した。あまり人気のないここは転送場所にうってつけ。それに体育館への渡り廊下も近いからすぐに校舎の中に入れる。
 いつもの――といっても二度目だけど――道を通ってわたしは授業に遅れないように足を速めた。廊下は走っちゃいけないけど、今日だけは少し大目に見て欲しいかな。

「確かドッチボールだよね……? なるべくじっとしておこう」

 でも一番心配なのはやっぱりアリサちゃんとすずかちゃんのこと。
 この一週間、心配かけさせないようにわたしは朝のバスから、放課後一緒に帰るまでいつも通りの自分でいるよう心がけた。
 本当ならアースラに泊まって専念したほうがいいんだと思う。でもアースラが不時着してジュエルシードの数がわからない今じゃこの方がずっといいはず。

 家族にも友達にも、誰一人心配させずわたしが頑張れる最善の方法。

「さっ、行こ」

 駆け出して、まだ騒がしい校舎へわたしは飛び込んだ。

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