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2007.09/01(Sat)

Starmine Love Romance 3 


【More・・・】


 更ける夜に反比例するように熱気は高まり、行き交う人は数を増し、海鳴市内は今や祭り一色に染め上げられている。
 親兄弟、恋人、友人、それぞれの大切な人たちと共に夢の一夜は続いていく。太鼓の調べに体も心も弾んで飛んで、屈強な男衆に担がれた神輿は上下に揺さぶられてこの上なくご機嫌。
 石畳を駆ける子供たち。稲荷の面を頭に引っ掛け、手には綿菓子、リンゴ飴。はしゃいではしゃいで、とにかくはしゃぐ。お小遣いの残りなんて気にしない。
 
 楽しめればそれでいい!

「……」

 そんな祭りの定石とはかけ離れるように沈黙する少年が一人。彼はある使命にただ今必死。

「頑張って……ユーノくん」 

 声援にはわずかに頷くことで応え、ゆっくり、ゆっくりと手にある錨を下ろす。
 この紐の材質、耐久強度から水につけるのは何が何でも避けなればならない。触れたら最後、溶けるようにこの白紐は千切れてしまうだろう。
 正直、吊り上げる物体の重量はこの紐の限界スレスレなはず。無理を最初から要求するこの仕様がどうやら祭りの場では暗黙の了解らしい。

「よ……し」

 難しいことを考えながら錨だけが水に浸る。ギリギリの領域でユーノは慎重に錨にゴムを引っ掛けた。
 後は引き上げるだけ。それで隣の彼女の想いは叶えられる。
 そーっと……そっと。捕獲対象が自ら引き上げられ雫を落とした。雫が水面に波紋を作り、それが静まる頃――

「はい、なのは」
「うわぁ、ユーノくんありがとう!!」

 なのはの手には丸々とした桜色の水ヨーヨーが収まっていた。
 嬉々としながらさっそくゴムを中指にかけスナップを利かせるなのは。上下に風船が揺れるたび中の水がパチャパチャと音を立てた。
 
「えへへ……」

 コミカルな動きになのははにんまり。彼女に笑顔をプレゼントできてユーノもまた満足だ。 

「次どこ行こうか?」 
「えっとねぇ……あっ! あれがいい!!」
「どれ?」

 なのはの指差す先、そこには太字で「しゃてき」と書かれた看板。
 いち早く腰を上げるなのはにユーノもすぐに後へ続く。人並みを縫って追いつけばもうなのははライフルを構えて準備万端。

「わたし撃つのは大得意!」 

 流石、魔砲少女――いや魔法少女。
 右手が銃身を支え、左手はトリガーへ。片目つぶって狙いをつけて、本当の銃のようになのはは構える。
 こういうのは出来るだけ標的へ近く、突きつけるように銃を構えるのが定石ではあるが、どうやら狙撃主気取りのなのはには関係ないらしい。

「高町なのはとレイジングハート! 行きますっ!」

 ちはみにレイジングハートで照準補正などズルイ行為は行っていないのでご安心を。
 あくまで戦意を高ぶらせる気持ち的な意味で。
 そして引かれるトリガー、空気が勢いよく抜ける音、真っ直ぐな軌跡を描くコルク栓。

「……あれ?」
 
 初弾――目標前で減速、命中せず。
 緩やかな放物線を描いてコルクは地に落ちた。標的に届きすらしない結果になのはは、

「もう一回!」

 再び構え、誤差修正。
 距離、空気抵抗、標的の耐久力――考えられる全てを頭脳へ叩き込み最適な結果をシミュレート。

「シューート!」
 
 次弾――発射!

「う、うそぉ……」

 命中するも着弾時の衝撃不足で目標は倒れず。

「な、なのは」
「ま、まだ最後の一回あるもん!!」

 ユーノに格好良い所を見せられぬまま終わってたまるか。
 このまま恥を晒して終わるなんて高町なのはのプライドが許さない! まだだ、まだチャンスある。
 
 まだ終わらない!

「ユーノくんが風船取ってくれたんだ。なのはだってユーノくんのために!」

 恋する乙女は燃えていた。
 もはやなりふり構わない。最後に彼女が取った射撃体勢はもはやこの地球上では考えられないものであった。
 体は横向きに、両腕はだらんと下げライフルを握り締める。右肘を曲げて標的の方向へ銃口を向け狙いをつける。
 後は魔力を込め、じゃくて想いを込めて。

「ディバインバスターーーーっ!!」

 ポン!! と今までより大きな発砲音を響かせてコルクが飛翔した。
 風を切るコルクは真の銃弾のごとく。僅か数メートルの距離を想いは駆ける。

 刹那の戦い、結果は――
 
「ふぇぇ……ユーノく~ん」
「よしよし、なのは頑張ったよ」

 見事なまでに空振りであった。哀れコルクは明後日の方向へさようなら。
 同じ射撃だから絶対大丈夫なんて定石はここには存在しなかった。理想と現実の違いに叩きのめされてなのはは半泣きでユーノに慰められた。
 頭を撫でくれるのは心地いいがやっぱりすごく悔しい。でもやっぱりこのままが心地いいから今年は大人しく引き下がろう。

 妥協することを覚え、なのはまた一つ大人になった。

「それじゃ次どうしようか、なのは」 
「えっとそれじゃあ――」

 ピンポンパンポーン……!

 なのはが言い終える前にお祭りのアナウンスが町中へ響き渡った。
 誰しもその音に首を上げ、何があったのかと耳を澄ました。

『はいはーい、これから毎年恒例の月村家協賛の花火大会が始まりまーす。お祭りのちょっとした息抜きに皆さん空見上げてくださいねー』

 軽いノリで聞こえてきたのはすずかの姉、月村忍の声であった。
 そう、何を隠そうこの海鳴祭りにはクライマックスとして花火大会が設けられているのだ。月村家協賛のこの大会は年を追うごとに豪華絢爛さをまし規模もどんどん膨れ上がっている。
 
「あっ、花火見に行こうよ!」
「そうだね、息抜きには丁度いいし」

 もちろんこの二人だってお相伴に預かるつもりだった。
 
 しかし二人には花火が内がるよりも早く、

(あ~……お二人さん仲ようしてるとこ悪いんやけど~)
(はやて? どうしたの)
(実はかくかくしかじか――)

 はやてよりの念話、すぐに応じる二人。

(というわけで機材の不具合で花火が一つ駄目になってしもたんや)
(その代わりにわたしたちが?)
(フェイトちゃんの話やと前に二人で花火打ちあげたって聞いたから今度もな)

 そういえばかなり前にフェイトの契約記念日のお祝いとしてスターライトブレイカーを花火にしたことを思い出す。

(繋ぎとして頼むわ!)
(私からもお願い! 一つでも欠けちゃうとプログラム組みなおすの大変だから)

 はやてとすずかの懇願に二人は顔を見合い苦笑い一つ。

「それじゃあしょうがないか」
「うん、人に見せるならまっかせて!」

 以前は封時結界を張り忘れてたおかげで大衆に秘密の花火を晒す羽目になったわけだが、今度は逆だ。
 ならば喜んで引き受けよう。友人の役に立てるのなら断る理由は他にはない。

「場所は?」
(うん、えっとね――)

 すずかのナビゲーションを元に二人はすぐに移動開始。緊急事態なので転移魔法で一気に駆けつける。

「ここか……?」
「真っ暗だね……」

 鬱蒼とした森の中は世闇に完全に支配されていた。天上の星々は満点だけど地を照らすにはいささか輝きが足りなかった。月明かりでさえ、夜を光で多い尽くしている現代人には心もとなかった。
 暗闇に心細くなってなのはは無意識にユーノの腕にしがみついた。

「大丈夫だよ、一人じゃないだろ?」
「……うん」

 優しくその腕を摩りながらユーノは微笑んだ。秘境で発掘をしてるユーノにすればこんな暗闇で心乱すことはない。むしろ安らぎさえ与えてくれる存在とも感じている。 
 頼もしいユーノになのはもまた勇気をもらいすぐに闇への不安に打ち勝つのだった。

「じゃあ早速準備しようか」
「うん! じゃあレイジングハート」

『All,light』

 桜色の光が森の中を射抜く。真紅の宝石はすぐになのはの愛杖へ姿を変えた。 
 射撃形態に移行すればなのはは浴衣姿のままそれを握り締め魔力を一気にかき集める。

「さてと……僕は」 

 この魔力をうまく保持したまま空中で炸裂させる。以前となんら変わりない作業ではあるが流石にユーノは慎重だ。
 以前の方法をもう一度思い出して手順の確認に入る。一度成功したからといって二度成功するとは限らないからだ。

「ね、ねぇユーノくん」
「どうしたのなのは?」

 魔力を充填しながらなのはがユーノの名を呼んだ。何かトラブルでも発生したのかと思って顔を上げるが見たところ特に問題はなさそうで。

「お願いあるんだけどいいかな?」
「う、うん」

 こんなときにお願いをしてくるなんて一体どうしたのだろうか。
 怪訝な表情でユーノはなのはの言葉を待った。

「レイジングハートを……一緒に握ってほしいんだけど」
「あっ、それぐらないお安い御用で――えぇ!?」

 収束していく魔力の輝きに照らされたなのはの顔は既に真っ赤だった。 
 
「ほ、ほら! 良く考えたらレイジングハートってユーノくんが元マスターだし一緒に握ったほうがもっとレイジングハートをサポートできるかなって……」

 早口で捲くし立てながらなのははあまりの恥ずかしさにユーノから視線を逸らす。
 ユーノもユーノでなのはの発言にしどろもどろといった様子である。

「あ、えーっと……」

 いや、確かにこんな魔法を碌な制御もせず打ち上げるなんて無謀にも程があるというのは事実だけど別にそこまでしなくてもこのレベルなら多分問題はないだろうし――。
 
 頭の中ではユーノも早口で捲くし立てていたりするが、他ならぬなのはのお願いである。
 それでなのはの不安が少しでも解消されれば魔法を扱う上でもリスクが減るだろうし、レイジングハートと直接意思疎通が出来れば制御効率は段違いに跳ね上がる。

『Please receive master's courage.』(マスターの勇気を受け取ってください)

「れ、レイジングハート!?」

『The way things are going, it will explode by accident』(このままでは暴発しますよ)

 そう言われてしまえば頷けてしまうのも現実だ。こんななのはがスターライトブレイカーを扱い続けたら制御に失敗してここら一体が吹き飛ぶ可能性だって捨てきれない。 

『However.If anything I'll go off accidentally』(むしろ私が暴発させます)

 ――……。

 どうやらお節介な恋のキューピッドはここにもいたらしい。

「なのは……覚悟はいいね?」
「うん!」

 話は決まった。ならばとことんまでやってやろうではないか。
 レイジングハート左側になのは、右側にはユーノが立ちそれぞれレイジングハートに手をかける。
 久しぶりのデバイスの感触にユーノは懐かしさを覚えると同時にすぐにレイジングハートを通しての制御を開始する。
 今まで桜一色だった魔力の塊に翠が混じり始める。光はすぐに球の表面を伝いながら桜色の光を優しく包むゆりかごとなった。

「やっぱりこの方が制御がしやすい」
「でしょ!」

『It's well-matched couple』(お似合いですよ)

「あ、あはは」
「もう、レイジングハートったら!」

 なんてやり取りの間にも魔力は収束し巨大な球体目指し成長を続けている。
 耳には遠く花火が音が聞こえて自分たちの出番が近づいてくるのが否応なしにわかってしまった。
 肩を寄せ合い、ちょっと動けば頬が触れてしまう距離。そんなことは考えない方がいい。ここからは真剣勝負だ。

「じゃあユーノくん!」
「まかせてなのは!」

 拘束率を限界まで引き上げ魔力を一気に凝集させる。膨れ上がった魔力球はその大きさを半分まで減らし、圧縮された魔力が眩い光と化し森の中に一瞬の朝を訪れさせた。

「スターライドブレイカー! 平和的応用編!」
「スターマイン!!」

「「ブレイクシューーーーーートっ!!」」

 天高く掲げるはレイジングハート。その先端には生まれたばかりの新星の輝き。
 声高らかに、撃発代わりのトリガーボイスが夏の夜空に木霊した。
 爆音轟き地鳴りが駆ける。音速に届きそうな勢いで一番星が遥か空の彼方目指して解き放たれた。
 星を見送る二人はすぐ訪れる瞬間に息を呑む。あっという間に小さくなっていく星。だけど輝きはそのままに、まるで本当に星の大海の一部となるように二人の光は吸い込まれていった。

 そして――……。
 

 ズッ――……ドーーーーーーーーーーンッ!!


 轟音が大気を、人々を、そして世界を撃ちぬいた。

 一閃の煌きを中心に四方八方、空一杯に咲き乱れる大輪の花。桜が幾戦もの光の軌跡を残し、翠はそれに寄り添うように何度も弾けながら明滅を繰り返す。
 それでも夜空に咲いた光の芸術は一瞬で散ってしまう。けれどすぐに新たな花が咲くからこそ寂寥は残らない。
 少しだけ静寂を取り戻した森の中。でもすぐに鼓膜に新たな花が咲く音が聞こえてくる。まるでなのはとユーノ、二人に続けと言わんばかりに。

「やったね……」
「うん」

 静かに、心の中から湧き上がる満足感に浸りながらなのはは恍惚としながら空を見上げている。
 その横顔にユーノは見とれ、そしてこの人を好きになって良かったと心の中でごちた。

「やっぱりわたし……ユーノくんが隣にいて欲しい」 

 囁くようになのはは呟いた。二人ならなんだって出来る。どんな困難も乗り越えられていける。
 
 空を飾った花はそんなことをなのはに教えてくれた。
 だからこそちゃんとした形で、やっぱりユーノに応えたい。こんな中途半端な形じゃイヤだ。
 ここまで通じ合えるから、以心伝心ってくらいに分かり合えるから今夜は一緒にこれたけど、やっぱりこれは違う。
 想いは通じてるけど通じてない。もうお互い好きって知ってることに甘えてお祭りを楽しんで。

「でもわたし言葉に出来ない……ユーノくんのこと見て言えない」

 恥ずかしくて、心臓が痛いくらいに鼓動を早めて、好きだから、大好きだからこそもうその顔を見るだけで満足してしまう。
 それ以上先に進みたいのに、怖くて進めない。これ以上ユーノを好きになることがどうなるかわからないから。

「ユーノくん、こっち向いて」
「……うん」

 振り向くユーノ。でもその顔をなのははもう見ていない。
 瞼の裏にユーノの姿を思い浮かべて、後は少し顔を寄せるだけ。頬だって触れ合える距離、だからそこにだってすぐに触れ合える。

(わたしも……ユーノくんこと好き、大好き)
 
 煌々とした月明かりに照らされた二つの寄り添う影。
 一つに重なり二人の唇もまた一つに重なった。

 もう花火の音なんて聞こえやしない。熱くて、真っ白になる頭の中。どうしていいか不安になってレイジングハートを握っていた手を手探りでユーノの手に重ねた。
 触れ合う場所から伝わる温度はユーノの温度。なのはの温度だってユーノに伝わる。でも熱さならなのはの勝ちだ。
 頭の中が沸騰するなんて人生で初めての経験。息をするのも忘れてなのははユーノに初めてを捧げ続ける。今まで気づけなかった自分の想い、全てを込めるように。

 やがて苦しくなって唇を話したのはどちらが先か。ゆっくり瞼を上げればリンゴのように真っ赤なユーノがそこにいた。

「ん……逆だよね」

 こういう行為はお互いの想いを確認しあってから及ぶもの。なのはの中の教科書じゃそうだけど、結局破ってしまった自分だ。
 でもこうでもしないと先に進めなかったから。ちょっと反則はロマンスの神様だって見逃してくれるはず。

「でも言うよ……わたし、高町なのははユーノ・スクライアくんのことが誰よりも大切で……」

 すぅっと一度息を吸い込み小休止。

「誰よりも一番……大好きです」

 ――言えた。

 ようやくなのはは告げることが出来た。
 真っ直ぐで純真、どこまでも澄み切った素直な想いを。

「待ちくたびれたよ」
「ごめんなさい……男の子のこと好きになるの初めてだったから」
「僕だって誰かを好きになるなんて初めてだよ」

 お互い様――だからやっぱり嬉しい。
 長い人生で初めて好きになった人と想いを通わせたから。

「なのは、顔真っ赤」
「ユーノくんだってぇ」
「でもここまでなのはが照れる顔、初めてかも」
「……ばかぁ」

 ユーノにからかわれてなのはは蚊の鳴くような声で抗議する。如何せん、赤い顔のまま瞳を潤ませてそんなこと言われて説得は皆無だ。
 意識してしまえばまた心拍数が上がり始める。相変わらずユーノの手に自分の手を重ねたままを思い出し慌てて離す。
 顔を上げればユーノ。あまりに近すぎる距離、またキスだって出来そうでそれを意識してなのははもうこれ以上にないというくらいに顔を赤くした。
 自分の頭から湯気が出ているのではと錯覚してしまいそうだ。

「じゃあさ……次どこ行こう」 

 照れくさいのはユーノも同じだ。今だって自慢の冷静さはどこ吹く風。これからの予定なんて忘れてしまった、というか考えてない。

「えと……花火が終わったら盆踊りだから……それ一緒に」

 祭りの最後を飾る恒例行事。沢山の人たちと踊り明かせばこの気持ちも少しはマシになるかもしれない。
 そうは思うのが半分。恋人を自慢したい気持ちも半分。
 ここまで世話を焼いてくれたアリサやすずか、はやてやフェイトにお礼も兼ねて、だ。

「うん、わかった」

 快く承諾してくれたユーノにはにかんで、そっとレイジングハートを宝石へと戻し首にかける。 
 既に転送魔法の準備は万端。魔法陣の上に立ち二人の陰が並ぶ。いつの間にか手は繋がれていた。

 そして光に包まれ消える二人。
 散々遠回りをしてようやく二人の道は重なった。これからはどんなことがあってもこの道が別たれることはないだろう。
 絶対に――だ。

* * *

「はぁ……ええことしたあとのカキ氷は格別やなぁ」

 真っ青なシロップがこれでもかとかかった氷山にスプーンを入れながらはやては感慨深そうにう頷いた。
 
「でも妬けるわ……自分たちで実らせた種だけど」

 ジト目で舌をレモン色に染めながらアリサが唸っている。

「なんだか私たちも恋したいって思えるよね」

 夢見がちな瞳で呟きながらすずかはカップの底に溜まった赤い液体をストローで吸い上げた。

「おめでとう……なのは」 

 親友を祝福しながらメロンとはこういう味の果物なんだと感心するフェイト。 

 目の前では櫓を中心に沢山の人たちが円を描いて踊っている。
 設えたスピーカから流れる音頭に乗ってドンドンと太鼓が叩かれれば人は皆回ったり、両手をヒラヒラさせてみたり海鳴に代々伝わる盆踊りを披露していく。
 
「ほらユーノくん、こうだよ」
「えっ? こっち!? それともこう!?」
「あはは! もう全然違うよ~。いい? ここは――」

 その中で一人不器用な盆踊りをするユーノ。なのはは後ろからユーノの手を取り踊り方を甲斐甲斐しく教えている。

「結局アタシたちってあんなお似合いになれる相手すらいないのよね」

 行き遅れは顔を見合わせ、

「「「「はーーーーーっ」」」」

 大きなため息をつくのだった。

「ああもう! あったまきた!!」
「せやな! 少しぐらい幸せのおすそ分けしてくれても罰はあたらへんやろ!」

 腕を捲くり鼻息荒く立ち上がるアリサとはやて。意気投合しながら突貫するのは、

「こぉら! そんな教え方は甘いわよ! ここはこう!!」
「あいててて! 痛いってアリサ!」
「腰の捻りが足らんのや!! ここはこうや!!」
「ぎゃああ! なのはたすけてぇ!」

 どう見てもコブラツイストで盆踊りは出来ないだろう。
 踊りの輪に加わった二人を見ながらすずかとフェイトは同じことを思う。

「でもやっぱり羨ましいよね」
「なのは……取られたもんね。ユーノは少し頭冷やした方がいいかも」

 下駄が鳴る、駆け出す二人の行き先もやっぱりあの幸せ者のところへ。

「ユーノ君、盆踊りってのはまず指先のしなやかさが大事なんだよ」
「ユーノ……これぐらいすぐに踊れるようにならなきゃ駄目だよ」
「ふ、ふたりまでぇ!? 痛い痛いいててて!!」
「わぁ、ユーノくん!!」
「なのは、少しぐらい幸せ分けなさいよ!」
「うにゃあ!? お下げ引っ張らないで~~~!!」

 沢山の歓声に負けないくらいに楽しげな声をあげる五人。見る人全てを幸せに巻き込んでくれるような他愛ないやり取りを繰り返す。
 魔法が縁で結ばれた沢山の絆。今宵もまた新しい絆が結ばれて、高町なのはの周りは笑顔で溢れている。
 大好きな人、大切な人たちに囲まれてなのはは思った。
 
 自分は世界で一番幸せな女の子だと。

「もうこうなりゃやけくそよ!!」
「朝まで踊ったる~~!!」
「流石に朝までは」
「無理だと」
「思うけど」

 それでも踊らにゃ損なのは誰もが知ってる。
 だから今夜は踊り明かそう。この音頭と太鼓の調べに乗って――。


 どんどんぴーひゃら、どんぴーひゃらら――今夜集いし人に許されるのは笑顔だけ。

 どんぴーひゃらら、どんひゃらら――一年一度のお祭り騒ぎ、恥も外聞もみんな捨てて。


「ユーノくん! ずっと、ずっと一緒だよ!!」

 
 夏が終わって、二人の恋が始まったこのめでたい日なのだから――。

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