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2007.08/31(Fri)

Starmine Love Romance 1 


【More・・・】

 
 彼女をよく知る友人の一人はこう語る。

「私、恋愛ってよくわからないけど……でも二人には絶対幸せになって欲しい」

 また古くからの友人の一人はこう語った。

「……ちょっとお節介してあげないと多分無理だよね。自然消滅しちゃう前に早急に手を打たないと」

 最近知り合った友人でも二人の事に関してはことさら雄弁に語る。

「恋ってのはオートマかと思とったけど……あれはあかん、わたしも初めて知ったわ。あんなテコでも使わん限り動かんような時代錯誤も甚だしいアナログな恋があるなんてな」

 そんな三人の話を腕を組みつつ静かに耳を傾ける少女が一人。彼女もまた「彼女」の友人の一人であるのは言うまでも無い。
 しかし好き放題とは言わないまでも、それなりの言われようなのはあの二人がそれだけ周囲の人間に対して負の影響を及ぼしている表れだろう。
 相思相愛で全く進展しない恋ほど目の毒になるものは無い。いじらしいも度を越えてしまえばただの不快指数を上げる元だ。

「やっぱり」
「なんとかしなくちゃ」
「あかんよ」

 言葉のバトンは刹那のロスすらなく完璧に繋がる。

「そう、アタシたちには力がある。なのに見ているだけなんて出来るわけがないわ!」

 それを最後に受け取った少女は突如として目を見開き、熱き宣言と共に立ち上がった。
 冷房のよく効いている室内だというのにここだけ切り取ったように熱いのはそれだけ自分たちが昂っている証だ。
 想いは灼熱。テーブルに並べられていた空のアイスティーはそのとばっちりを受けたように内に積まれていた氷をコップにぶつけた。

「やるわよ! あの国宝級の恋する乙女の恋をこの夏で成就させることを!!」

 アリサ・バニングスが夏に吠えた。
 何が何でも今年の夏の主役をあの二人にする。メラメラと燃焼を始める決意に突き上げた拳に汗が滲むのを感じた。

「うん、やろう!」
「ふふ、楽しみだね」
「せやな、何が何でもやったるで!」

 続けと言わんばかりに椅子から腰を上げる三人。やる気に満ちた顔には満面の笑み。
 フェイト、すずか、はやて――皆の気持ちは今ここに一つに重なった。

「覚悟しなさい! なのは、ユーノ! このアタシたちが夏のロマンスをあんたたちに大サービスしてあげるから!」
 
 押し付け、押し売りになったって構わない。それぐらいしたってあの二人には足りないはずだ。
 そう、必要なのは度胸、勇気、やる気、根気、タイミング、シチュエーション――……足りないものが多すぎる。
 もう背中突き飛ばしてでも恋の一歩を踏ませてやる以外にあの二人が進展する道はない。
 
「準備はいいわね? 恋の花火、ドカンと一発打ち上げるわよ! えいえいおーーーっ!!」

「「「おーーーーっ!!」」」

 四人で拳を突き合わせ、高く掲げるは夏の空。屋内だけど気分的にはそうなのだ。

 夏は恋の季節。煌めく砂浜、さざ波をバックに女は逃げる振りして男を誘い、男もまた捕まえる振りで女を誘う。
 やがて二人の気まぐれが重なれば女は男に捕まって砂の上で折り重なる。
 そっと見つめる瞳と瞳。頬を朱に染め、どちらともなく瞼を下ろして、求めるものは唯一つ。
 二つの影は一つになって触れ合うそこは熱を帯びた。触れるだけのキスだって今の二人にはとびっきり媚薬となる。

 ――なんてあまりに使い古された甘いシチュエーションだってこなせるぐらいお似合いの二人になってもらうために。

 四人のお節介――もとい、夏のアバンチュールが幕を開けた。


Starmine Love Romance


 現在、高町なのはは自分が仕出かしてしまった大罪に枕を濡らす真っ最中であった。

 顔を埋めて、さらに頭から毛布を被って防音対策は完璧。思う存分後悔に浸ることが出来るのはこの場合良しとしていいのだろうと思われる。 
 肩を揺らし、咽びながらなのはは何度も何度も両手で枕をポカポカ叩き続ける。不甲斐ない自分への怒りであったり、恋に臆病な悔しさであったり――。

「ふぇ……わたしのばかぁ……」

 想いはちゃんとした言葉で伝えることをポリシーとしているなのはには一週間前のあの日の行動は何があっても許せない。
 彼の想いを半分どころか全部踏みにじるのもいい所なのだ。きっと彼にとっては一世一代の、全力全開の勇気を出したのだ。ならば自分だって全力を持って彼に応えなければならない。
 
『ちょっ、ちょっと待って!!』

 あの時のなのはが出し尽くした全力全開の言葉。
 告白に答える形にすら、もはやその場の雰囲気そのものを粉砕する空気の読めないものである。
 そういえば彼女の魔法の全力全開であるスターライトブレイカーは結界を粉砕する力を備えている。
 まさかとは思うが彼女の全力には必ず何かを粉砕する力を秘めるのかもしれない。
 
 良い方向であろうと悪い方向であろうと――。

「せっかく……せっかくユーノくんがぁ……ぐす……」

 後悔先に立たずとはまさにこのことである。
 己の恋愛に対しての朴念仁さを呪いに呪う。瞳の大洪水に枕は染みだらけだ。瞼越しに伝わる湿り気によくもここまで泣けるものだと人体の不思議を思う。
 それだけなのはにとってユーノという少年の存在はあまりに大きすぎたのだ。

「なんで言えないの……ねぇ、なんでぇ……」

 自問自答で答えが出るなら苦労はしない。出ないからこそこうして一人寂しく泣いているのだ。
 PT事件から闇の書事件を経てもう一年近い付き合いの二人。常になのはの影にはユーノがいた。彼が支えていてくれたからこそなのははどんな困難にもぶつかっていけた。

 実際それを自覚したのは最近であるとしても。

 要はある日何気なくユーノという人物について考えてみたことがなのはの乙女を覚醒させるきっかけであった。
 いつものように友人たちと翠屋でのどかなティータイム。噂話から始まりジャンル関係なく四方山に花を咲かせて最後に辿り着いた恋の話。
 年頃の――まだ十歳そこそこの娘たちだからこそ学校のクラス内を漂う小さな恋物語には目がない。男子のあいつが女子のあの子が好きだとか、女子のあの子が悪ガキのあいつに恋してるとか……。

 一折話せばもちろん話は彼女たち自身に着地する。
 五人もいれば誰かの小指に赤い糸が結ばれていてもおかしくない――とはアリサの談。
 しかし現実には誰の指にも糸はないわけだ。
 ならば結ばせてやろうとお節介を焼きたがるのが女の子。意中の相手はいないのか、身近な子であの子はどうなのとか、片っ端から適当な理由を見つけては小指へ糸を巻きつけていく。

「うぅ……好きなのにぃ……」

 この五人の中で一番男の影がありそうなのはなのはであった。
 守ってくれる人がいるって素敵だよね――それはフェイトの談。
 別に深い意味で言ったわけではなくただ単に戦力的な意味で、だ。彼女にもアルフというパートナーがいるがお互い接近戦にばかり秀でてるためどうしても防御が欠けてしまう故に。
 そういうわけでこういうのに首を突っ込みたがるはやてがなのはからユーノのことをどう思っているか聞き出そうとする。
 なのはだってユーノのことは頼れるパートナーといった具合に考えていた。あくまでそれは魔法という世界の上でのお話。
 ではこの日常という世界でなのはにとってユーノとはどういう存在であろう?

「ユーノくんのこと……大好きなのにぃ……」

 その言葉をあの時言えればこんな無様に落ちぶれることもなかったろうに……。もしもお似合いの二人になれてたなら今頃きっとアリサやはやてにからかわれたりして恋する乙女の特権を独り占めに出来ていたはずなのだ。
 
 ユーノのことを魔法と切り離して、あくまで日常で、例えばクラスメイトみたいに考えて――。
 
 優しくて、思いやりがあって、いつも自分のことを気にかけてくれる男の子。
 いつだって背中を守って、支えてくれて勇気をくれる人。
 責任感が強くて無茶しようとしたり頼りない一面もあるけれど、突然かっこ良くなったり……。
 
 いつだって隣にいてくれて、いつだって隣にいてあげたい人。

 ここまで口に出したのはなのはの談であった。
 うんうんと頷きながら、あんなぁなのはちゃん……それはわたしたちへの当てつけか? なんてのははやての談。
 そこまでお互い分かり合えてるってなんだかお姉ちゃんと恭也さんみたいだね、とすずかの談。
 
 ここまでしてようやっとなのははユーノに恋していることを自覚したのだ。
 大体なのはが言ってることは傍から聞けばこれただの惚気である。その場にいた四人には頭から水飴をぶっ掛けられたようなものである。

「ふぇぇぇぇん……」

 また大きな波が来た。湧き上がる感情を抑えることもなくなのははまた枕に涙を塗りこんでいる。
 結局この一件でなのはは完全に恋する乙女に覚醒してしまったわけだ。
 もはやこうなったなのはは誰も止めることが出来なかった。授業中だろうが昼休みだろうがなのははユーノのことを考え、その都度一人にやけているのだから始末に終えない。
 放っておくと妄想の中のユーノと共に遠い世界へ旅立つのだ。しかも酷い時はアリサがお下げを引っ張っても帰ってこない。

 もはや気の毒――もとい目の毒とも思えるなのはをどうにかするためにアリサを始めとする四人は事の元凶であるユーノを無限書庫から拉致――ではなく呼び出し、告白しろと脅迫――強く勧めたのだ。
 話しを聞いて流石にユーノも覚悟を決める他無かった。あのなのはがそんな醜態を晒すなんて太陽が東に沈むくらいの大惨事だ。それを招いた責任が自分にあるなら事態を収拾するのも自分の役目。
 丁度、無限書庫も人員が整えられいよいよ本格稼動し始める時期である。忙しくなって疎遠になるくらいならこの気持ちに決着をつけるべき。ユーノは男になる覚悟決めたのだ。

 
 ――で、結果はこの通り。


 千載一遇のチャンスは突然背中に羽を生やし天高く飛び去ってしまった。
 そもそも致命的な問題があることにユーノも四人も気づいていなかった。

 なのははユーノがまさか自分に恋焦がれているなんて全く考えていなかったのだ。むしろなんでもかんでも砲撃で吹っ飛ばすような自分に振り向いてくれるはずないとさえ思っていたのだ。
 しかも恋に目覚めたばかりの乙女である。これで両思いなど知った日には顔から火が出るどころか大噴火にもなろう。
 正直なのはに免疫が無さすぎた。純朴な田舎娘なんて目じゃないくらいに彼女は純粋で真っ直ぐだった。
 魔法ならとっさの機転でどうにか出来たかもしれない。それが恋でもイコールで結ばれるなど虫が良すぎたのだ。
 ユーノに告白されるというあり得ない、絶対あり得ない――はずの事態になのはの思考回路はショートを越えて大爆発! もはやまともな思考を提供してくれることはなかった。
 
 というわけで、火災と黒煙に包まれさらに温度が急上昇し続ける頭に出せた唯一の答えが、

「ユーノくん待ってくれるわけないよぉ……」

 冷静になってから答えを出せ。それだけ。
 その後のことを簡単に説明すればなのはは回れ右をしてユーノから逃げだした。後に一人寂しく残されたユーノはさぞ惨めだっただろう。彼の無念に涙を禁じえない。
 なのはが自分の過ちに気づいたのはそれから間もなく。皮肉にも冷静さを取り戻した頭が教えてくれた。
 それ以降、彼女はユーノと連絡すら取っていない。今度顔を合わせれば絶対嫌われる。
 ネガティヴシンキングばかりな頭でなのははゆっくりと沈没していったのだ。

 もうそれから毎日なのはの周囲は曇天、時々大雨、嵐なんてざらであった。全ての絶望を抱え込むようになのはは毎日を抜け殻のように過ごした。
 いきなり眼を潤ませてはべそをかいたり、塞ぎこんだまま昼飯も口にしなかったこともある。情緒不安定の極み、クラスの一大事もいいとこだ。
 負の塊と化した高町なのははもはや周囲を巻き込む猛毒であった。由々しき事態に変わりは無く、彼女をここまで変貌させてしまったものたちは少しばかりの反省と共になのはとユーノ、二人の関係の修繕に立ち上がったのだ。

 長いものであるが、これが彼女を良く知る友人四人のここまでの経緯である。

「ひっく……」
 
 ようやく大きな波に過ぎ去り小康状態を取り戻すなのは。
 時折すすり泣く程度になればまたいろいろとユーノに対して考え始めてしまうだろう。無論、マイナス方面で。
 負の無限連鎖を止める術はなのはにはない。今日も泣きつかれて眠るまでこんなことを繰り返すのだろう。

 と、ここで枕元に申しわけなく座っていた携帯が場違いなメロディを奏で始めた。

 枕に顔を埋めたままなのはは手探りで形態を手に取る。片手で起用に携帯を開いてそのまま耳元へ――。

「なのは……ちょっと話があるんだけど」

 遠慮がちな声で切り出したのはフェイトであった。
 親友を邪険にしてはいけない。こんな時でもなのはの思いやりは健在でフェイトに応じるためようやく枕から顔を離した。

「どうしたのフェイトちゃん……?」

 泣き腫らして真っ赤な目。乱れた前髪はあっちやこっちへ跳ねて見るも無残だ。電話越しで本当に良かった。もし直接を顔を合わせてたら余計な気を使わせてしまっただろう。
 
 もうすでに十分友人に気を使わせていることは置いておく。

「その、なのはに教えてもらいたいことがあってね」

 少しばかりの安堵感を心に浮かべてなのははフェイトの言葉を待った。
 ちなみにこの時点でアリサたちの作戦は開始されていたのだ。先陣を切るフェイトは実は緊張でガチガチ、彼女も電話越しでよかったと思ってるくらい。
 
「ほらもうすぐ――」

 きっときっかけさえあればなのはがうまくやってくれると信じて。

 フェイトは万感の思いを込めて携帯を握り閉めた。
 
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